CREATOR INTERVIEW
イトケンに訊く、トイ楽器とPro Toolsを駆使した『子ども音楽』の制作術 〜 子ども向け番組で活躍する“ダメ音源”とは?
大友良英や蓮沼執太フィル、柴田聡子 in FIRE、栗コーダーポップスオーケストラなどの活動で知られる、ドラマー/マルチ・プレーヤー/作編曲家のイトケン。ソロ名義のアルバムもこれまで3枚発表し、トイ楽器を多用した遊び心とユーモアあふれる作風は、国内外で高く評価されています。また、NHKの幼児・子ども向け番組の音楽を長年手がけていることでも知られ、2021年度も『いないいないばあっ!』の2つのコーナーの音楽とインターミッションを担当。少し前に話題になった子ども向けオモチャ、『マグネタクト アニマル』のプロモーション音楽を手がけたのも氏で、今や日本を代表する“子ども音楽クリエイター”の一人と言っていいでしょう。そこでICONでは、2016年のインタビュー以来、約5年ぶりにイトケンのプライベート・スタジオを訪問。あらためて、“子ども音楽”のプロダクションと愛用のツールについて話を伺いました。“子ども音楽”に欠かせないという“ダメ音源”とはいったい?
“子ども音楽”を作り始めたきっかけと、現在のプロダクション
——— イトケンさんは、大友良英さんのプロジェクトや蓮沼執太フィルでの活動はもとより、NHKの幼児・子ども向け番組の音楽を長年手がけていることでも知られています。今日はそのあたりの話を伺いたいと思っているのですが、そもそも“子ども音楽”に興味を持たれたきっかけは何だったのですか?
イトケン 何だったんだろう? 昔からトイ・ピアノやウクレレ、おもちゃの打楽器とかの響きは大好きだったんです。ああいうトイ楽器って、チューニングがあまいじゃないですか。あの何とも言えない味が大好きで。
自分でそういう音楽を作り始めたのは90年代後半くらいだと思うんですが、クリンペライ(Klimperei)とフランク・パール(Frank Pahl)に会って、彼らと話をしたのがきっかけになっているような気がします。2人に会うまでも、そういう音楽を志向していたんですけど、実際に彼らと会って話してみて、世界には自分と同じような趣味の人がいることに気づいたというか。それまではトイ楽器をバンドの中で使ったとしても、音色として少し入れるくらいだったんですが、彼らの音楽を聴かせてもらって、“こんな楽器をこんな風に使っちゃっていいんだ”と凄く刺激を受けたんですよね。それからどんどんハマっていって、完全にそればっかりでいくようになって。
クリンペライとは最初にメールでやり取りを始めて、Harpyのツアーでフランスに行ったときに初めて会ったんです。彼はリヨンに住んでいたんですが、“こんどフランス行くから会わない?”という話になって。フランク・パールは90年代の半ばくらいに来日して、そのときにサポートをしたのが最初かな。以来、2人とはずっと付き合いが続いていて、Harpyでアメリカに行ったときに一緒にライブをしたりとか。実は去年から、3人で一緒に曲を作っていたりするんです。
——— クリンペライとフランク・パールが子ども音楽の世界に導いてくれたと。
イトケン そっちの方向に進んだきっかけは彼らですよね。あと影響を受けていると思うのは、昔のアニメのサントラ。『ひみつのアッコちゃん』や『魔法使いサリー』とか、小林亜星さんの曲は完全に自分の中に刷り込まれていますね。それとパスカル・コムラード(Pascal Comelade)も好きですけど、影響を受けているのはそれくらいかなと思います。
——— 2001年に発表された最初のソロ・アルバム『pins and needles.』と、2002年のセカンド・アルバム『cabbages on the moon』を制作されたときは、もう子ども音楽/トイ楽器にどっぷりという感じでしたか?
イトケン 意識していたわけではないですけど、完全にそういう感じになってましたね。2枚目からかなり時間がかかってしまいましたが、サード・アルバム(注:2015年発表の『speaker』。この作品発表時のインタビューは、こちら)のときも使ったのはトイ楽器ばかりでした。
——— そんなイトケンさんにとって、NHKの幼児・子ども向け番組の音楽というのは、おそらく“かなりやってみたい仕事”だったと思うのですが、どのようなきっかけで手がけることになったのですか?
イトケン 栗コーダーカルテットの栗原さん(注:栗原正己氏)とDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENで一緒になって、いろいろ話をしていたら音楽的な趣味が近いことがわかったんです。それで、“こんどレコーディングがあるから来てよ”と誘っていただいて、最初は確か『あずまんが大王』(注:2002年にテレビ東京系列で放送されたアニメ)だったのかな。その何個か後にNHKの仕事があり、プロデューサーさんが、“イトケンさんですよね。私CD持ってますよ”と声をかけてくださって。それからすぐに依頼があって、最初は『いないいないばあっ!』だったと思います。2002年とか2003年くらいだったかな。
——— 以降、ずっと手がけられているわけですね。
イトケン ありがたいことに。事務所に所属しているわけではないので、本当に人との繋がりだけで生きている感じです(笑)。今年度は、『いないいないばあっ!』の中の『ノリノリ!のりものタウン』と『もにょもにょ』という2つのコーナーの音楽と、コーナー間のインターミッションというクッションの音楽も何種類かやらさせてもらっています。『ノリノリ!のりものタウン』は、いわゆる劇伴っぽい感じで、『もにょもにょ』の方は、効果音と音楽が一緒になったものというか。粘土が何かに変わっていくコーナーなんですけど、その変化に合わせて音をあてていく。音を作っているのはそれくらいですけど、『みいつけた!』や『ピタゴラスイッチ』ではドラムも叩いています。ちなみに今年度の『いないいないばあっ!』には番組中のBGMというのがあって、栗コーダーカルテットだけでなく、toi toy toiもやってますね。toi toy toiは、コトリンゴさん、伊藤真澄さん、良原リエさん、Babiちゃんという4人組のトイ楽器ユニットで、ぼくはBabiちゃんの録音でドラムを叩いたり。彼女はちょうど子どもが産まれたばかりだったので、凄く喜んでましたね。
——— 『いないいないばあっ!』の単年度の制作量はどれくらいになるんですか?
イトケン 『ノリノリ!のりものタウン』は3〜4本、『もにょもにょ』は4〜5本、インターミッションは長いのと短いの合わせて10パターンくらいですね。だから2つのコーナーよりもインターミッションの方が物量的には多いのかもしれない。
——— プロデューサーからは、楽曲や音色に対してどれくらい細かくリクストがあるのですか?
イトケン コーナーにもよるんですが、『もにょもにょ』に関して言えば、“この粘土は最終的にこういう形になります”とか、それくらいですね。それと今年度は、“大と小”というコンセプトがあるみたいで、“そのコントラストが上手く出るようにしてください”ということも言われました。あとはもう映像を見ながらイメージを膨らませていきます。
——— ダメ出しもある?
イトケン ありますけど、楽曲というよりミックス具合に関してですかね。“もうちょっとトロンボーンを聴きたいです”とか。もっと違う感じの曲にしてほしいと言われることはほとんどありません。
——— イトケンさんが制作に入る段階では、映像は完成しているのですか?
イトケン 最初に紙のコンテを元に、どこにどういう感じで入れましょうかという話をしますけど、その次の段階ではもう映像はありますね。それをAvid Pro Toolsのビデオ・トラックにインポートして、映像を見ながら曲づくりや音づくりに入る。もちろん(映像の仕上げが)追いついてないときは、紙から起こしたVコン(注:手書きのコンテをビデオにしたもの)にあててみることもあります。
——— 今ですと、YouTubeで海外の子ども番組を観れたりすると思うんですけど、そういうのってチェックされます?
イトケン 観ないですね(笑)。海外の子ども番組に限らず、他のものはあまりチェックしないかもしれない。本当に友人たちの音源を聴くくらいです。
子ども音楽で大活躍のKONTAKTの“ダメ音源”
——— 子ども音楽の曲づくりは、どんな感じでスタートすることが多いのですか?
イトケン やっぱり音色からスタートすることが多いですね。昔はトイ楽器を鳴らすところから始まることが多かったんですけど、最近は音源がもの凄く優秀なので、パソコンと鍵盤に向かって。夜中に(ネット)サーフィンをしているときに珍しい音源を見つけて、“こんなのがあるんだ!”と買って、そのまま作曲に入ってしまったり(笑)。気がついたら朝になっちゃって。
——— 音源というのはサンプル・ライブラリー?
イトケン そうです。UVIとNative Instruments KONTAKTですね。UVIのToy Suiteは、トイ楽器音源の定番だと思いますが、あれは本当によく出来ていますね。鍵盤を離したときのリリース・ノイズもしっかり入っていますし、そのノイズの量も調整できますし。Toy Suiteには、アコースティック楽器のライブラリーとエレクトリック楽器のライブラリーが入っていますが、ぼくは両方とも使っています。一方のKONTAKTは、もういろいろありますけど、自分で作ったライブラリーをよく使いますね。自分で吹いた鍵盤ハーモニカとか、奥にしまってあるパーカッションとかも、出すのが面倒なものは録音してありますし。“カタカタッ”というノイズを入れたりとか、ライブラリーを作る上での技もけっこう習得したんですよ(笑)。UVIの音源を8トラック、KONTAKTの音源を8トラックくらい立ち上げてあるテンプレートがあって、まずはそこから打ち込みをスタートし、足りない音や生楽器を足したりしながら作っていく感じですね。トラックはそんなに使いません。
——— UVIのToy Suite以外にお気に入りの音源というと?
イトケン やっぱりダメな音源(笑)が好きですね。8DioがMisfitというシリーズでダメな音源をたくさん出しているんですが、あれのトロンボーンとかトランペットとかはよく使います。途中、何回かミス・トーンが入ったり、ああいうのを普通の音源と一緒に使うと、凄く脱力してイイんですよ(笑)。Soundironというメーカーもおもしろい音源をたくさん出していて、たとえば音響芸術家が作ったバカデカいトイ・ピアノをサンプリングした音源とか(笑)。いやぁ、最近は本当に変な音源がいっぱいありますよ。UVIのはどれもしっかりしているので、KONTAKTの方が変な音源が多いですね。ゴムを弦の代わりに使ったベースの音源とか(笑)、素人が作っているような音源にはいつも驚かされます。しかも大抵、19ドルとか安いですし。
——— そういう音源がたくさん売られているということは、イトケンさんのような作家の需要があるんでしょうね。
イトケン どうなんでしょうね(笑)。今は自分で作って簡単にネットで販売できてしまう時代ですから。
——— 流行りのSpliceでも、そういうダメ音源は見つからなさそうです。
イトケン 無いでしょうね。一度人に勧められてチェックしたことがあるんですけど、“ああ、ここにはオレの求める音は無いな”って(笑)。
——— イトケンさんの琴線に触れる音色というと?
イトケン 何なんでしょうね……。その時々で、必ず探している音があるんですよ。“こんな音、どこかに無いかな”とサーフィンするんですが、単純にそれが見つかったときですかね。
——— その他の愛用の音源をおしえてください。
イトケン UVIはシンセ系の音源もいくつか買いましたが、そういった音色が欲しいときはArturiaのV Collectionを使うことが多いですね。シンセ系では、ローランドのRoland CloudのものやコルグのKORG Collectionなど、結局実機と同じメーカーのものを使ってしまいます。民族楽器でよく使うのはUVIのWorld Suiteで、あれを混ぜると変な感じを出せるのでいいんですよ。エレピもUVIをいちばん使うかもしれません。
——— エフェクトの方は?
イトケン 好きなのは、Audio EaseのSpeakerphoneとAltiverbですね。Speakerphoneは、ちょっと突っ込んでみると隠し味が出ていいんですよ。それこそダメな楽器をダメなスピーカーから出してみたり(笑)。あとはSoftubeのプラグインも曇った感じの音が好きでよく使いますし、マスターには必ずiZotope Ozoneを挿してあります。昔はリミッターとかEQとかいろいろ挿していたんですけど、今はOzoneだけで十分というか、Ozoneに頼っているところがありますね。Ozoneが良い感じに仕上げてくれるので……。テープっぽいものとかレコードっぽいものとか、気に入っているプリセットがいくつかあって、それを元にどんどん変えていく使い方です。もちろんWavesも使っていて、最初はNative Power Packとかからスタートしたんですけど、セールの度にアップグレードしていって、今は結局Mercuryになってしまいました。気がつくと何かしらバージョン・アップの案内がくるので、どんどんお金を吸い上げられています(笑)。
プロダクションの核となるPro ToolsとPro Tools | Carbon
——— コンピューターをシーケンサーとして使い始めたのはいつ頃ですか?
イトケン 90年代の半ばくらいですかね。ずっとヤマハのQY20で作っていたんですけど、譜面を出したいなと思って、MacのColor Classic IIとOpcode EZ Visionを買って。Macを手に入れたからといって音源モジュールとかは買わずに、QY20を繋げてしばらくやってました。
——— その後はもうPro Tools?
イトケン そうです。バージョンはよく憶えてないですけど、Digidesign Audiomedia III(注:コンピューターのPCIスロットに装着するタイプのオーディオ・カード)と一緒に買ったんですよ。なぜAudiomedia IIIを買ったかというと、PlayStationのゲームの仕事をいただいて、開発用のシミュレーターがAudiomedia IIIが一番相性が良いという話だったんです。Pro Toolsを買った時点でEZ Visionは使うのをやめて、MIDIもPro Toolsでやるようになって。機能は少なかったですけど、ステップ入力はできたので、QY20でできたことは全部できたような気がします(笑)。
——— コンピューター上でオーディオを扱えるというのは、やはりインパクトがありましたか?
イトケン もの凄くラクだなと思いましたし、録った音をきれいにできてしまうのが驚きでした。こんなことしちゃっていいんだという。でも当時はまだ16トラックくらいで、使えるトラック数は少なかったですけど。
——— その後は他のDAWに浮気をせず、Pro Tools一筋ですか?
イトケン 仕事の関係でWindowsマシンを手に入れたときがあって、何かあった方がいいなと思ってAbleton Liveを入れてみたんですけど、自分には合わなかったですね。去年、Apple Logic Proで作っている人のミックスをする機会があって、3ヶ月間使うことができたので試してみたんですけど、Logicも何かダメでした。機能面でも特に不満はないですし、もうずっとPro Toolsです。
——— あらためて、Pro Toolsの良さというと?
イトケン 何なんでしょうね。単純に、自分の中に染み付いちゃっているというのが一番大きいんじゃないかと思います。こうしたいと思ったときに、何も考えずに手が動く。老化なんでしょうね(笑)。今から他のものを覚えるのはできないでしょうし。あえて良いところを挙げるなら、映像に音をつけるという作業がやりやすいDAWだと思います。貰った映像をビデオ・トラックに貼り、パソコンの画面やiPadに表示させて、曲づくりができる。他のDAWでも同じようなことはできるのかもしれませんが、Pro Toolsはテレビ局とかでも使われているので、映像系の機能が洗練されていますよね。どんどんアップデートしてくれますし。昨日も新しいバージョンが出てたので、すぐにインストールしてしまいました。
——— Pro Toolsで特に気に入っている機能をおしえてください。
イトケン 今ですと、何と言っても『Audio to MIDI変換』ですね。海外の人とはオーディオ・データでやり取りすることがほとんどなんですけど、ぼくの場合は貰ったオーディオ・データを最初に『Audio to MIDI変換』でMIDIデータにコンバートしてしまうんです。なぜかというと、コードが分かると、その後の作業がラクに進められるんですよ。いろいろモードがあるんですけど、和音もけっこうきれいに起こしてくれる。もちろん、ハーモニクスとかが入っているとダメな場合もあるんですけど、変換したい部分を選択してしまえば問題ありません。ドラムなんかも、“タタン、タタン”というフレーズをMIDIデータに変換し、別のトラックで違う音を鳴らしてレイヤーしてみたり。『Audio to MIDI変換』が搭載される前は、Celemony Melodyneで同じようなことをやっていたんですが、やはりPro Toolsの中でできてしまうのは便利ですよね。人の楽曲をリミックスするときも重宝しています。周りのPro Toolsユーザーに訊いても、あんまり使っている人がいないんですけど(笑)。
——— オーディオ・インターフェースは何をお使いですか?
イトケン ずっとRME Fireface UCXを使っていたんですけど、少し前にAvid Pro Tools | Carbonに入れ替えました。作業デスクとしてOutputのPlatformを導入したときに、配線をもっとシンプルにしたいなと思って。Fireface UCXに、モニター・コントローラーとしてPreSonus Monitor Stationを接続していたので、裏側のケーブルがグジャグジャだったんですよ。それで何か良いオーディオ・インターフェースは無いかなと思っていたときにPro Tools | Carbonが発表になって、モニター・コントローラーは入っているし、マイク・プリアンプも内蔵しているし、DSPまで搭載しているしで、これがあれば他に何も要らないんじゃないかと。値段は少し高かったんですけど、当分使えそうだなと思って、すぐに注文してしまいました。
——— Pro Tools | Carbonの音質はいかがですか?
イトケン 良いですね。自分で作るときは基本24bit/48kHzなんですけど、それでも解像度の高さというか、凄く良くなった感じがします。気に入っているのが、解像度が高いと言ってもギラギラした感じではなくて、落ち着いた印象の音であること。これくらい落ち着いていた方が、音が作りやすいという気がしています。
マイク・プリアンプは、Chameleon Labs 7622とSytek Audio Systems MPX-4Aと使い分けているんですが、とても良いと思います。アナログ入力は、1〜2chは内蔵プリアンプ用に空けてあって、3〜4chにCDプレーヤー、5〜6chにMPX-4A、7〜8chに7622を接続してあるんですが、ケーブルが凄く減って嬉しいです(笑)。スピーカーも、アナログ出力にNeumann KH80 DSPをダイレクトに接続してあるんですけど、ノイズが出たりとかそういった問題もまったくありません。おそらく、ミュート機能がしっかりしているんでしょうね。Fireface UCXを使っていたときは、TotalMixを立ち上げ、そちらでモニターを調整していたので、Pro Toole上でモニターの管理までできてしまうPro Tools | Carbonは凄く便利です。一画面で完結しているので、ストレスがない。
——— 気に入っている機能はありますか?
イトケン やはりDSP機能ですね。これまで、TDMのPro ToolsやPro Tools | HDXを導入した経験は無かったんですけど、現在使っているMac miniはそれほどパワーがあるわけではないので、AAX DSPプラグインにはかなり助けられています。愛用のSoftubeのプラグインは、ほとんどがAAX DSPに対応していますしね。実際に使ってみると、録音のときにリバーブのプラグインを挿して、そのまま録れてしまうのが大きい。“こんな感じの音になるんだな”とわかった上で録音できますからね。Pro Tools | Carbonを導入してから、AAX DSP対応のプラグインを使う頻度が増えました(笑)。実は以前、Blackmagic designの外付けGPU、eGPUを導入したことがあるんですよ。eGPUを使うと、少し処理が軽くなるという記事を読んで。でも当然ですが、Pro Tools | Carbonの方がだいぶ役に立ってますね(笑)。50万円の価値のあるオーディオ・インターフェースだと思います。
——— 最後に、近況をおしえてください。
イトケン 最近は、『ピタゴラスイッチ』を作っていたユーフラテスから独立されたクリエイターの石川将也さんの仕事を何本か手がけました。光のインスタレーションに音楽というか環境音をつけたり、去年はISSEY MIYAKEのCMの音楽もやりましたね。コロナ禍で、CMを流すお店はほぼ閉まっている時期だったんですけど(笑)。それと石川さんがNTTコミュニケーション科学基礎研究所と一緒に作っている『マグネタクト アニマル』という磁石のシートみたいなキットがあって、それの音楽も作りました。子ども用の商品で、ちょうど今ワークショップが始まったところなんですけど、それは凄くおもしろいですね。他には、まだ詳しいことは話せないんですが、Oculus 3D VR用の音楽なんかもやっています。
——— ソロ・アルバムは?
イトケン もう全然(笑)。何か出したいなという気持ちはあるんですけどね。昔作ったソロの作品に関しては、少し前からAvidPlayで配信を始めたんですよ。自分の作品を配信するにあたって、どのプラットフォームがいいのかいろいろ調べたんですが、AvidPlayは配信ごとに何パーセントとか取られないのがいいなと思って。もちろん、サブスクなので基本料金はかかるんですけどね。いろいろプランがあるんですが、ぼくが入ったのは1年で何曲でも配信できるプランで、できた曲から配信してみようと。コロナが落ち着くまでもう少し時間がかかるだろうし、しばらく家に籠って曲を作ってみようかなと(笑)。