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INTERVIEW

SUPERBOOTH19: コルグ開発チームが語る、『Nutube』を搭載した“真空管シンセサイザー”、「volca nubass」のすべて

本日、ドイツ・ベルリンで開幕した世界最大のシンセサイザーの祭典、『SUPERBOOTH19』。各社から多数の新製品が発表されていますが、中でも大きな注目を集めているのが、コルグ が発表した「volca nubass(ヴォルカ・ニューベース)」です。volcaシリーズの最新作となる「volva nubass」は、新世代真空管『Nutube』を使用した、とてもユニークな“真空管シンセサイザー”。『Nutube』に搭載された2系統の真空管回路のうち、1系統をメイン・オシレーターに、もう1系統をサブ・オシレーターのドライブ回路に使用することで、真空管ならではの太く、温かみのあるサウンドを実現しています。真空管オシレーターの後段には、新開発のトランジスタ・ラダー型のフィルターを搭載し、さまざまなキャラクターの音色を作り出すことが可能。もちろん、使い勝手の良さで定評のあるステップ・シーケンサーも搭載し、内蔵スピーカー/電池駆動対応というvolcaの基本仕様はそのまま受け継がれています。真空管の弱点を克服した『Nutube』だからこそ実現できた、まったく新しい“真空管シンセサイザー”、「volca nubass」。その開発コンセプトと機能について、コルグ開発チームに話をじっくり伺いました。取材に応じてくださったのは、ハードウェア担当の池内順一氏、同じくハードウェア担当の市川俊孝氏、サウンド・デザイン担当の岡本達也氏の3氏です。

KORG - volca nubass

新世代真空管『Nutube』でオシレーター波形を生成

——— 1月の『The NAMM Show』で登場したvolca modular(開発者インタビュー記事は、こちら)もインパクトがありましたが、新しい「volca nubass」は『Nutube』を使用した“真空管シンセサイザー”ということで、こちらもかなり注目を集めそうな印象です。まずは開発のスタート・ポイントからおしえていただけますか。

池内 “我々にはせっかく『Nutube』があるんだから、それを使ったシンセを作ったらおもしろいんじゃないか”と自然に始まった感じですね。企画自体は、volca modular/たvolca drum(開発者インタビュー記事は、こちら)と同時に持ち上がったのですが、こちらの方が試さなければならないことが多かったので、少し時間がかかってしまいました。“真空管シンセサイザー”というアイディアは斬新だと思うんですが、肝心の出音が良くなければ意味がありませんからね。

——— コルグとノリタケ伊勢電子が共同開発した『Nutube』は、真空管の弱点を克服した“次世代の真空管”と言われています。『Nutube』とはどのようなものなのか、あらためてご紹介ください。

池内 真空管についても知らない人がいると思うので簡単に説明すると、真空の中に閉じ込めた電子をヒーターで温めてプレート(電極)に飛ばすことで、電子流を作り出すという動作原理になっています。三極管には、電極の間にグリッドというものがあり、それによって電子を飛ばす量を変化させることで、増幅器やコンパレーターとして働くというわけです(註:『Nutube』と真空管について詳しくは、コルグのWebサイトで紹介されています)。

ギター・アンプなどの音響機器で真空管を使用した場合の特徴としては、何と言ってもそのサウンドが挙げられます。単純ではない歪みによって、真空管ならではの温かみのあるサウンドが得られる。真空管で生じる歪みは他の部品では代え難いものですから、現在でもアンプなどで使用されているわけです。ただ、その後に登場したトランジスタなどの半導体と比べると、図体がデカくて消費電力が大きいのが弱点。電池駆動の製品では使用できませんし、製品のサイズも大きくなってしまうので、ギター・アンプなどの音響機器以外ではほとんど使われなくなってしまったんです。

しかし真空管の歪みは何者にも代え難いですし、弱点を克服すればまだまだ活用しがいがあるのではないかということで、ノリタケ伊勢電子さんと共同で開発したまったく新しい真空管が『Nutube』なんです。最近はほとんど見かけなくなってしまいましたが、一昔前のコンビニのレジでは、蛍光表示管が使われていたのを憶えていますか? あの蛍光表示管も、真空管と同じように電子を飛ばすことで光の表示を制御しているんです。真空管と違ってゼロかイチかの制御なんですが、原理はほとんど一緒なので、だったら真空管のような動作にも耐えるんじゃないかと。それで試してみたところ、それなりに動作することが分かって、『Nutube』が生まれたというわけです。

『Nutube』では、真空管の弱点がほぼ克服されています。サイズは小さく、消費電力も電池駆動の製品で使えるくらい低い。基本的には蛍光表示管なので、耐久性も普通の真空管と比べるとかなり長くなっています。昔の真空管は、ああいう構造なので振動に弱かったんですけど、蛍光表示管はカー・オーディオなどでも使用されていたことかも分かるとおり、物理的な強度がとても高いのも特徴です。

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「volca nubass」の心臓部と言える、新世代真空管『Nutube』

——— 今回の「volca nubass」で、『Nutube』はどの部分に使われているのですか?

池内 『Nutube』には2系統の真空管回路が搭載されているのですが、1系統はオシレーターに使用し、『Nutube』でノコギリ波を生成しています。どうせ使用するなら、発振器として使わないとダメだろうと。真空管を使ったシンセサイザーはこれまでもありましたが、そのほとんどが歪みを付加させるために使っていましたからね。もう1系統は、どこで使うか少し試行錯誤したんですが、サブ・オシレーターのサチュレーション回路で使用しました。「volca nubass」には、メイン・オシレーターとは別に1オクターブ下の矩形波を生成するサブ・オシレーターが備わっているのですが、その出力を『Nutube』で歪ませているわけです。歪ませていると言っても、単純に歪ませているのではなく、ウェーブ・シェイパー的に波形を変化させていると言った方が正しいかもしれません。このサチュレーション回路が『Nutube』らしい音の変化で凄く良かったので、これなら取り組む価値があるのではないかと、本格的に開発がスタートしたんです。

——— 『Nutube』には2系統の真空管回路が搭載されているんですね。

池内 ミニチュア管というのは大抵そういうものなんです。有名な12AX7という真空管も、双三極管と言って三極管が2つ入っています。

岡本 『Nutube』を見てもらえれば、黄緑色の素子が両側に備わっているのが分かると思います。

——— 『Nutube』で生成される波形には特徴があったりするのですか?

池内 。原発振はノコギリ波なんですがVTOならではのアナログの出音になっています。これはヴィンテージ・アナログ・シンセとデジタルのモデリング・シンセを聴き比べると分かるのですが、フィルター・オープンで素のオシレーターの音だけで聴いても違います。VTOはヴインテージ・アナログ・シンセと同様、アナログ特有な出音になっています。

岡本 真空管ならではのサウンド・キャラクターという意味では、サブ・オシレーターのサチュレーション回路が大きいです。『Nutube』によるナチュラルな歪みによって、低域の量感をコントロールできます。

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新規開発したトランジスタ・ラダー・フィルターを搭載

——— メイン・オシレーターとサブ・オシレーターの出力は、フィルターに送られるのですか?

池内 そうです。このフィルターが大きな課題でした。『Nutube』のオシレーターに合うフィルターでなければ意味がない。いくつかの回路を試作し、その中で『Nutube』の音といちばん相性が良かったのが、トランジスタ・ラダー型のフィルターだったんです。

——— トランジスタ・ラダー型というと、MoogやTB-303などにも搭載されているフィルターです。どのあたりが『Nutube』の音と相性が良かったのでしょうか。

池内 -24dB/octの4ポール・フィルターで、『Nutube』の音への“ノリ”が良かったんです。トランジスタ・ラダー型と言っても、トランジスタは最新のロー・ノイズ・タイプのものを採用していますし、すべての素子は今時の新しいもので構成しています。

岡本 弾力としなやかさのあるフィルターですね。volca bassとはまたタイプの違ううねりで、いわゆるアシッド・ベースな音色にも、より向いています。レゾナンスもマックスでしっかり発振させられますが、ベース・マシンとして最適な音色のレンジにチューニングしてあります。

——— “volca nusynth”でも良かったと思うのですが、「volca nubass」という名前でベース・マシンとして売り出すのはなぜですか?

池内 確かに最初は、製品名に“bass”を付けない案もあったんです。でも、普通のシンセとして出すよりは、ベースに特化してまとめた方が分かりやすいだろうと判断しました。volca bassの評価がとても高く、後継機の要望も寄せられていましたしね。

岡本 でも、できあがった「volca nubass」は、volca bassとはまったく違うタイプのベース・マシンです。明快に太い低域や、レゾナンスを立てつつ柔らかいサウンドも出せる「volca nubass」と、3VCOのデチューン・サウンドや、トリッキーなポリ・シーケンスを組めるvolca bassでは、キャラクターが違います。ですのでvolca bassも引き続き販売していきます。

池内 ベース・マシンとは言っても、オシレーターのレンジは7オクターブくらいあるので、上ものを鳴らすマシンとしても使うことができます。

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——— エンベロープやLFOについておしえてください。

岡本 エンベロープは1基、フィルター・エンベロープとして搭載しています。パラメーターは、アタックとディケイのみで、今回はできるだけシンプルにしたかったんです。volca modular、volca drumと、かなり“やり込み要素”の強い製品が続いていたので、「volca nubass」はシンプルなベース・マシンにしようと。その方が『Nutube』の良さが生きてくると思いましたしね。

池内 アンプ・エンベロープは固定ではなく、アクセントの操作に合わせて自動的に変化する設計になっています。

岡本 LFOも1基搭載していて、アンプ、ピッチ、フィルターのカットオフをモジュレーションすることができます。波形は三角波と矩形波の二択ですね。

——— “DRIVE”と“TONE”というツマミも備わっていますね。

岡本 サブ・オシレーターのサチュレーション回路は、ウェーブ・シェイパー的な役割なので、後段にはより強く歪んだ音作りのためのオーバードライブ回路を搭載しました。このオーバードライブ回路は、レゾナンスで持ち上げたピークをがっつり潰すことができる、いわゆるディストーション・サウンドを作るためのものです。攻撃的に歪ませることができますね。一方、“TONE”は最終段での高域を調整するためのEQです。右に回せばハイが強調されてフィルターの動きがより目立ちますし、左に回せばハイを抑えるのでオーバードライブのザラザラした部分を整えることもできますね。

池内 音を生成/処理する回路は、出力に至るまでフル・アナログになっています。

アナログ回路の太さ、存在感が前面に出た自信作

——— シーケンサーには新しい機能は備わっていますか?

岡本 基本的には従来のvolcaと同じシーケンサーですが、今回はベース・マシンということで、トランスポーズ、アクセント、スライドという3つの装飾の機能が備わっています。これは作ったパターンを鳴らしながら、ステップごとに1オクターブ、2オクターブ上の音にしたり、アクセントを付けたり、音程をスライドさせたりといった設定が簡単に行える機能ですね。例えばトランスポーズを使えば、ベース・パターンの特定の音だけをビョンと持ち上げて、フレーズに動きを加えることができます。個人的に気に入っているのがランダマイズ機能で、自分で作ったベース・パターンを元に、おいしいフレーズにあたるまで装飾のパターンをどんどんランダマイズできるんです。もちろん従来のvolcaのように、パラメーターをオートメーションできるモーション・シーケンスや、任意のステップを飛ばすことができるアクティブ・ステップといった機能も備わっています。

——— 青と黒がグラデーションしたカラーリングになっていますが、デザイン面でのコンセプトというと?

市川 『Nutube』自体が放つ青白い光を活かすカラーリングにしたかったんです。また真空管オシレーターからトランジスタ・ラダー・フィルターへ、製品自体が持つグラデーション性をビジュアルでも体現しようと。このグラデーションはデザイナーが非常にこだわって、ドットの密集度でグラデーションを表現しているんです。上部の膨らんでいる部分はオーセンティックな真空管をイメージしていて、中に見える『Nutube』がサブ・オシレーターのレベルやサチュレーションに合わせて点灯するようになっています。

岡本 真空管を使ったまったく新しいベース・マシンなので、ヴィンテージ機材を踏襲したデザインとは真逆なルックスにしました。

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——— 完成までにハードルはありましたか。

池内 『Nutube』の良さがちゃんと音に現れるかというのが一番のハードルでした。その次はフィルターですね。本当にいろいろなタイプのフィルターを吟味しましたし、パーツもトランジスタだけでなく、コンデンサも厳選したものを使用しています。複数のコンデンサを使い分け、使用する場所によってベストなものを選びました。

市川 あとはノイズですね。最初の試作機はノイズが酷かったので、電源の構成を何パターンも試しました。回路ごとに電源を分けて、それぞれノイズを除去するという凝った作りになっています。

池内 volcaシリーズの中では、いちばん贅沢な電源になっていますね。

——— “真空管シンセサイザー”というコンセプトは明快ですが、開発はきっと手探りで行われたのではないかと思います。完成して、良いマシンができたという実感はありますか。

池内 ありますね。実際にやってみたら、サブ・オシレーターのサチュレーション回路が思っていた以上に良かったのは驚きでした。単純な歪みではなく、波形が連続的に変化していくので……。これだけでも『Nutube』を使った意味があったと思っています。

岡本 最近のモデリングもののソフト・シンセはとてもよくできているので、デジタルとアナログの違いがよく分からないという人もいると思うんですが、この機種はそういう人にもハッと納得していただけるんじゃないかと。アナログ回路の太さ、存在感が前面に出たベース・サウンドに仕上がったと満足しています。先日発売したvolca drumはデジタルならではのマシンになっているので、「volca nubass」と2台組み合わせてコントラストを出すのも楽しいと思います。

池内 手前味噌になってしまいますが、これまでのvolcaと比べてもダントツに音が太いです。正直、このサイズから出る音ではありません。完全にワン・クラス、ツー・クラス上のシンセから出る音。ぜひ楽器屋さんで試していただきたいですね。

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向かって左から、サウンド・デザイン担当の岡本達也氏、ハードウェア担当の池内順一氏、同じくハードウェア担当の市川俊孝氏

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