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嵐や星屑の音響を生成できるハリウッド御用達のソフト、Sound ParticlesがV3にアップデート…… 遂にプラグインに対応、間もなくソフト音源も使用できるように
ハリウッド御用達のサウンド・デザイン・ソフトウェア、「Sound Particles(サウンド・パーティクルズ)」がバージョン・アップ。新しいバージョン3では、待望のプラグイン・エフェクトに対応し、処理速度が大幅に向上。そしてなんと、MIDI/ソフトウェア・インストゥルメントへの対応もアナウンスされました。

“究極の3Dオーディオ・ソフトウェア”、「Sound Particles(サウンド・パーティクルズ)」
2015年に最初のバージョンがリリースされた「Sound Particles」は、ポルトガルのレイリアに拠点を置く、同じ名前のデベロッパー(つまり社名もSound Particles)が開発したサウンド・デザイン・ソフトウェアです。コンピューター・オーディオの博士号を持つヌーノ・フォンセカ(Nuno Fonseca)氏が設立したSound Particles社は、立体音響/イマーシブ対応のプラグインで一躍その名が知られるようになったソフトウェア・デベロッパーで、最近ではイマーシブ対応のソフトウェア・シンセサイザー SkyDust 3Dをリリースして話題になりました(ヌーノ・フォンセカ氏のインタビュー記事は、こちらに掲載されています)。

イマーシブ対応のソフトウェア・シンセサイザーとして話題を呼んだSkyDust 3D
そんなSound Particles社のフラッグシップ、同社の看板と言える製品が、社名を冠した「Sound Particles」です。“究極の3Dオーディオ・ソフトウェア”を標榜する「Sound Particles」は、仮想空間の中で複雑に広がり、複雑にパンニングする音を作り出すことができるサウンド・デザイン・ソフトウェア。ビデオ・ゲームの映像制作やモーション・グラフィックスの世界で、爆発や降雨といった自然現象を描画する際に用いられる技術=“パーティクル・システム(Particle System)”を、音響生成に応用したソフトウェアです。ヌーノ・フォンセカ氏は、「Sound Particles」を開発したきっかけについて、以下のように語っています。
2004年頃に映画を観ていて、私が最も興味深いと思った視覚効果は、“パーティクル・システム”と呼ばれるCG技術でした。この技術では、何千、何百万もの小さな点を生成し、火や雨、埃、煙、妖精の粉、爆発などをシミュレートします。そこで私は、“同じ技術をサウンドに応用すれば、周りにある何千もの細かい音素材を使って、もっとおもしろいサウンド・スケープを作ることができるのではないか?”と考えたのです。当時は単なるアイディアに過ぎなかったのですが、2012年に博士号を取得した当時も、誰も“パーティクル・システム”をサウンドに応用していなかったので、コンピューター・オタクだった私は、自分で作り始めることにしました。それが「Sound Particles」という製品の始まりです。
「Sound Particles」を使えば、少数の音素材を元に、数万〜数百万もの音源とその動きを簡単に作り出すことができます(「Sound Particles」では、生成される音源のことを“パーティクル”と呼びます)。たとえば、戦場のサウンドを作りたい場合、銃声や爆発音といったいくつかのSEをインポートすれば、そのSEを元に「Sound Particles」は数万〜数百万ものパーティクルを生成し、設定した大きさの仮想空間に配置してくれます。あとは“バーチャル・マイク”を使って、仮想空間の任意のポイントの音をキャプチャーし、オーディオ・ファイルとして書き出すだけ。“バーチャル・マイク”の出力フォーマットは、ステレオをはじめ、5.1chやDolby Atmos 7.1.2ch、Ambisonicsなどを選択することができます。もちろん、戦場のサウンドというのは一例で、地震、嵐、会議場、モンタージュ…… 細かい音が複雑かつランダムに鳴り響いて成立している音響を、「Sound Particles」を使えば簡単に作り出すことができるのです。
前バージョンの「Sound Particles 2」の公式チュートリアル動画(日本語字幕付き)
「Sound Particles」の肝となるフィーチャーとして、“モディファイアー(Modifier)”の存在が挙げられます。“モディファイアー”は、パーティクルや音素材に動きを与えることができるパラメーターで、速度や回転、無作為なゲインなどを細かく設定することが可能。音素材に適用できる“モディファイアー”には、EQやフィルター、グラニュラーといったエフェクトも用意され、自然現象のシミュレーションにとどまらないソフトウェアならではの音響生成/サウンド・デザインが可能になっています。また、即戦力となるテンプレートが用意されているのも「Sound Particles」の特徴で、“Stardust”や“Doppler”、“Fake Reverb”など、名前を見るだけで想像力を掻き立てられるものが多数収録されています。

上半分が仮想空間を表す“Views”セクションで、下半分がパーティクルやオーディオを扱う“Time Editor”セクション。そして右側の“Inspector”セクションで、“モディファイアー”などの設定を行う
そして本日(2025年7月8日)発表になった最新版の「Sound Particles 3」では、コアのエンジンが最適化されたことにより、処理速度が従来比で最大20倍向上。Mac版はAppleシリコンにネイティブ対応となり、同じマシンでもこれまで以上に複雑な音響を生成できるようになりました。さらにはプラグイン・エフェクトにも対応し、「Sound Particles」内で(DAWを立ち上げずに)トータルなサウンド・デザインが可能に。これからは、お気に入りのEQプラグインやダイナミクス・プラグインを使って、パーティクルを直接処理できるようになります。そしてこれから実装される新機能(リリース・バージョンでは実装されていない機能)もアナウンスされ、なんとMIDI/ソフトウェア・インストゥルメントにも対応予定とのこと。これが実現すれば、ソフトウェア・インストゥルメントをパーティクルに割り当てられるようになり、まったく新しいサウンド・デザインが可能になると言っていいでしょう。また、ユーザーが記述したプロンプトを実行してくれるChat GPTライクなAIアシスタント機能も実装予定とのことです。

アップデートでソフトウェア・インストゥルメントにも対応。AIアシスタント機能も実装予定
ハリウッドで働くサウンド・デザイナーの秘密兵器として、すでに多くの映像作品の音響制作で使用されている「Sound Particles」。MIDI/ソフトウェア・インストゥルメントに対応した暁には、映像作品の音響制作のみならず、作曲/ミュージック・プロダクションで使用する人も増えていくはずです。「Sound Particles 3」は、基本となる“Professional”、バッチ処理非対応の廉価版である“Artist”、業務ユース向けの“Enterprise”の3グレードが用意され、国内での販売価格(発売記念のイントロ・プライス)は“Professional”が53,460円、“Artist”が21,450円、“Enterprise”が214,500円(すべて税込価格)。さらなる詳細については、国内代理店のフォーミュラ・オーディオのWebサイトをご覧ください。