VIDEO SYNTH
Rutt/Etra Video Synthesizerの映像効果を再現したWebアプリケーション、「Rutt-Etra-Izer」
1970年代にアメリカの技術者、スティーヴ・ラット(Steve Rutt)と、同じくアメリカのビデオ・アーティスト、ビル・エトラ(Bill Etra)によって発明されたビデオ・シンセサイザー、Rutt/Etra Video Synthesizer(ラット・エトラ・ビデオ・シンセサイザー)。ブラウン管の水平走査線/垂直走査線を制御するランプ信号に別の信号を加算し、同時に電子ビームの強さ(=輝度)を変化させることで、まるで三次元で歪んでいるかのようなユニークな映像を生み出すリアルタイム・プロセッサーです。その処理のフローは、“スキャン・プロセッシング(Scan Processing)”と呼ばれ、現在も多くの愛好家たちがLZX Industriesのビデオ・モジュラーやPure Dataなどのソフトウェアを使って、独特の映像効果を楽しんでいます(ビデオ・シンセサイザーについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください)。
そのRutt/Etra Video Synthesizerの映像効果をコンピューター上で再現するのが、「Rutt-Etra-Izer(ラットエトライザー)」と名付けられたイミュレーターです。フェリックス・ターナー(Felix Turner)氏が開発した「Rutt-Etra-Izer」は、スキャン・プロセッシングをブラウザ上で実行する無料のWebアプリケーション。ロードできるのは静止画のみなので、正確にはビデオ・シンセサイザーとは言えないかもしれませんが、パラメーターの変化はリアルタイムに画像に反映され、さらにはマウス操作で画像を自由に回転/縮小〜拡大できるので、スキャン・プロセッシングのおもしろさを存分に堪能することができます。
使用方法はシンプルで、手持ちの画像を右側の“Drop Image Here”と記されたエリアにドラッグするだけで処理が実行されます(左側の“Load Image”ボタンをクリックして、ファイルをブラウズすることも可能)。画像はドラッグ操作によって三次元に回転させることができ、スクロール/ホイール操作で縮小〜拡大することも可能。さらには左側に用意されているパラメーターを操作することで、スキャン・プロセッシングの具合を変化させることもできます。
「Rutt-Etra-Izer」に用意されているパラメーターは、以下のとおりです。
- Scale:画像を縮小〜拡大します(スクロール/ホイール操作で変化するパラメーターです。デフォルト値は2)。
- Line Separation:水平走査線の間隔を設定します(デフォルト値は5)。
- Line Thickness:水平走査線の太さを設定します(デフォルト値は3)。
- Max Line Depth:水平走査線の歪みの深さを設定します(デフォルト値は100)。
- Brightness:輝度を設定します(デフォルト値は1)。
- Stage Size:画像の大きさを設定します(デフォルト値は1)。
- Load Image:処理する画像をロードします。
- Save Image:処理後の画像をセーブします。
発明から半世紀が経とうとしている現在も、多くの人を魅了し続けているRutt/Etra Video Synthesizer。いま、ハードウェアでスキャン・プロセッシングを実行しようとすると、モニター・ディスプレイがいちばんのネックになりますが(昔のオシロスコープなど、XYZ入力を備えたブラウン管モニターを用意しなければなりません)、「Rutt-Etra-Izer」ならば簡単にその効果を楽しむことができます。非常によくできたWebアプリケーションですので、ぜひチェックしてみてください。
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