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Steinberg、「Cubase 10.5」を発表…… 2つのチャンネルのスペクトラル・カーブの比較/EQ補正が同一ウィンドウで可能に
Steinbergが、Cubaseの新バージョン「Cubase 10.5」を発表。Steinberg Online Storeでは、Cubase Pro/Cubase Artistのアップデート版/アップグレード版の販売が開始されています。
年末恒例となったCubaseのバージョン・アップ。今回リリースされた「Cubase 10.5」は、コンマ5のバージョン・アップになりますが、実践的な機能が数多く盛り込まれた非常に充実した内容になっています。

1:2つのチャンネルのスペクトラル・カーブの比較/EQ補正が同一ウィンドウで可能に
「Cubase 10.5」の目玉の新機能と言えるのが、2つのチャンネルのスペクトラル・カーブを同一のEQディスプレイ上に表示できる『比較モード』の搭載(Proのみ)。この機能はチャンネル設定ウィンドウのEQタブで使用でき、現在選ばれているチャンネルのスペクトラル・カーブ(青色)の上に、任意に選択した“比較チャンネル”のスペクトラル・カーブ(緑色)を重ねて表示できるようになりました。

これによって、例えばキックのスペクトラル・カーブ上にベースのスペクトラル・カーブを表示すれば、ぶつかっている(ダンゴになってしまっている)帯域が一目瞭然。もちろん、単にスペクトラル・カーブを表示するだけでなく、両方のチャンネルのEQカーブを操作することができるので、2つのチャンネルを行き来することなく、シームレスに気になる部分を補正することができます。チャンネル設定ウィンドウに新たに用意されたイコライザー設定によって、EQ前のスペクトラル・カーブの表示/非表示やピーク・カーブのホールド、スペクトラル・カーブの透明度などを設定することも可能。一度使ったら手放せなくなりそうな、かなり実践的な機能と言えそうです。
2:強力な新プラグイン『MultiTap Delay』が搭載
DAWの新バージョンで期待してしまうのが新しいプラグインですが、「Cubase 10.5」では『MultiTap Delay』という新開発のディレイ・プラグインが搭載されました(Pro/Artistのみ)。『MultiTap Delay』は、その名のとおり最大8タップのディレイ・プラグイン。タップごとにタイム/ボリューム/パンを設定できるほか、任意のタップのパラメーターをランダマイズできる機能も備え、エフェクティブなサウンドを簡単に作り出すことができます。

秀逸なのが、ディレイ音の音色を設定できる“CHARACTER”機能で、あらかじめ用意されているプリセットを選択できるだけでなく、サチュレーションやサンプル・レート、ローカット/ハイカットなどを細かく設定することが可能。ローファイなマルチタップ・ディレイというのはなかなか新鮮です。さらに『MultiTap Delay』は、プラグイン内で他のエフェクトを使用できるユニークな機能も装備。ディレイ音のフィードバックにエフェクトをインサートする“Loop FX”、タップにエフェクトをインサートする“Tap Effects”、出力段にエフェクトをインサートする“Post Effects”という3つのインサート・ポイントが用意され、Envelope Filter、Chorus、Phaser、Flanger、Bit Crusher、Delay、Overdrive、Gate、Vibrato、Filter、AutoPan、Frequency Shifter、Pitch Shifter、Reverbの計14種類のエフェクトが使用できるようになっています。強力なのが、これらのエフェクトを複数組み合わせて使用できる点で、ディレイ音を歪ませつつ左右に拡げるといった処理も『MultiTap Delay』の中で完結。Cubaseユーザーの新しい定番プラグインの登場と言ってよさそうです。
3:Padshop Proが大幅な進化を遂げて標準音源に
高度なグラニュラー・シンセシス・エンジンを核に据えた、Steinberg純正のソフトウェア・インストゥルメント、Padshop。これまでCubase Pro/Cubase Artistに付属するスタンダード版と、有償の上位バージョン“Padshop Pro”が存在していましたが、「Cubase 10.5」のリリースを機にこの2つのバージョンが統合。新生“Padshop 2”として、Cubase Pro/Cubase Artistに標準で搭載されるようになりました。Padshop Proの購入を検討していた方は、これだけでも「Cubase 10.5」にバージョン・アップする価値があると言えそうです。

新生“Padshop 2”は、機能面でも大幅に進化。サンプルのタイム・ストレッチ/ピッチ・スケールに対応した新しいスペクトラル・オシレーターが備わり、よりバリエーション豊かな音色を生成できるようになりました。このスペクトラル・オシレーターに合わせて制作された新しいサンプル・セットや、100種類の新しいファクトリー・プリセットも付属。インストール後すぐに新しいスペクトラル・オシレーターの実力を堪能できます。さらにはRetrologue 2から多くの機能が移植され、レイヤーごとに設定できるパワフルなアルペジエーターや、ドラッグ&ドロップによるモジュレーション設定、詳細にカーブを設定できる3基目のエンベロープ・ジェネレーターなどが追加。より強力なソフトウェア・インストゥルメントとして進化を遂げています。
4:“オブジェクト選択ツール”と“範囲選択ツール”の自動切り替え機能が搭載
プロジェクト・ウィンドウでの編集作業時、誰もが頻繁に使用する“オブジェクト選択ツール”と“範囲選択ツール”。これまではこの2つのツールを切り替えながら作業を行う必要がありましたが、「Cubase 10.5」ではこれらのツールを自動的に切り替える『選択ツールを結合』という新機能が搭載されました(Pro/Artistのみ)。この機能を有効にすると、マウス・カーソルがトラックの下半分にあるときは“オブジェクト選択ツール”、上半分にあるときは“範囲選択ツール”に自動的に切り替わります。Pro Toolsのスマート・ツールに似た機能で、これはきっと多くのユーザーが待ち望んでいた機能なのではないでしょうか。

5:ビデオの書き出しに対応
「Cubase 10.5」では、プロジェクト上のビデオ/オーディオを、MP4/H.264のビデオ・ファイルとして書き出すことが可能に(Pro/Artist/Elementsのみ)。ロケーターを使用すれば、書き出しの範囲を選択することもできます。Cubaseでビデオを扱っているユーザーは多くないかもしれませんが、ちょっとした映像に音楽を付けたいというときに活躍してくれる便利機能と言えそうです。

「Cubase 10.5」の主な新機能は、以下のとおりです。
- 2つのチャンネルのスペクトラル・カーブの比較/EQ補正が同一ウィンドウ上で可能に(Pro)
- 強力な新プラグイン『MultiTap Delay』が搭載(Pro/Artist)
- Padshop Proが大幅な進化を遂げて標準音源に(Pro/Artist)
- “オブジェクト選択ツール”と“範囲選択ツール”の自動切り替え機能が搭載(Pro/Artist)
- ビデオの書き出しに対応(Pro/Artist/Elements)
- 非録音時のMIDI入力データ記録の改善(Pro/Artist/Elements/AI/LE)
- 『プロジェクトからトラックを読み込み』の改善(Pro)
- スコア・エディターの改善(Pro)
- MixConsoleチャンネルの色付けに対応(Pro/Artist/Elements/AI/LE)
- ノーマライズの参照先としてラウドネスを使用することが可能に(Pro)
- トラブル・シューティング時に便利な『セーフ・スタート・モード』の搭載(Pro/Artist/Elements/AI/LE)
- プロジェクトの自動有効化機能が無効に(Pro/Artist/Elements/AI/LE)
Cubase Pro 10.5/Cubase Artist 10.5の販売は本日から開始され、アップデート版/アップグレード版はSteinberg Online Storeで購入することが可能。Cubase Pro 10からCubase Pro 10.5へのバージョン・アップは6,500円、Cubase Artist 10からCubase Artist 10.5へのバージョン・アップは5,400円となっています。なお、2019年10月17日以降にCubase 10をアクティベートした人は無償で「Cubase 10.5」のライセンスを入手できるとのこと。さらなる詳細は、SteinbergのWebサイトをご覧ください。
