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Apogee、1U筐体の新型オーディオIF、「Symphony Studio」を発表…… “マスタリング・グレード”の音質を実現、イマーシブ・プロダクションにも対応
Apogeeが新型オーディオ・インターフェース、「Symphony Studio(シンフォニー・スタジオ)」を発表。アナログ入出力の音質を徹底追求、現代の音楽制作環境に最適化されたプレミアム・インターフェースの登場です。
アメリカ・サンタモニカに本社を置くApogee(正式名称:Apogee Electronics)は、ADコンバージョンの重要性をスタジオ業界にいち早く知らしめた、オーディオ・インターフェースの老舗メーカーです。デジタル・レコーディング黎明期の1985年、Soundcraft USAで社長を務めていたベディー・ベネット(Betty Bennett/現CEO)、レコーディング・エンジニアのブルース・ジャクソン(Bruce Jackson)、技術者のクリストフ・ハイデルバーガー(Christof Heidelberger)の3氏によって創設された同社は、デジタルMTRで温かみのあるサウンドを実現するアンチエイリアシング・フィルターを開発。ソニー/三菱のデジタルMTR用オプションというニッチな製品でしたが、そのサウンドはスタジオ関係者の間で評判となり、1991年に発売したスタンドアロン・コンバーター AD-500/DA-1000によって、“Apogee”は一気にその名が知られるようになりました。その後、続々と革新的な製品を世に送り出し、2000年代に入ってからはレジェンダリー・エンジニア、ボブ・クリアマウンテンも製品開発に参画。その高品位なサウンドと優れた機能性、高い堅牢性は、世界中のエンジニア/クリエイターから絶大な支持を集めています。
そんなApogeeが本日(2024年9月18日)発表した「Symphony Studio」は、2014年発売のEnsemble Thunderbolt以来、実に10年ぶりにラインナップされる1Uラック筐体のオーディオ・インターフェースです。接続インターフェースは汎用性の高いUSB(端子はType-C)で、Mac/Windows双方に対応。オーディオ入出力は、モジュラー設計ではなく固定設計となっており、アナログ2ch入力/12ch出力の『2×12』、アナログ8ch入力/8ch出力の『8×8』、アナログ8ch入力/16ch出力の『8×16』という3種類のモデルがラインナップされます。2ch入力/12ch出力という珍しいコンフィギュレーションの『2×12』は、流行のイマーシブ・スタジオでの使用を見据えたモデルで、最大7.1.4chのDolby Atmosミックスに対応。レコーディングはミニマムに2chのみ、しかしミックス/マスタリングはDolby Atmos/イマーシブにも対応するという、現代のプロダクション・スタイルにマッチした構成と言えるでしょう。最も多チャンネル仕様の『8×16』ならば、最大8chのレコーディングと、最大9.1.6chのミックス/マスタリングに1台で対応します。リア・パネルの端子は、入力がXLR、出力は25pinのD-Subという仕様で、入力部には最大75dB/ステップ・ゲインのマイク・プリアンプを搭載。前面には、さまざまなインピーダンスのヘッドフォンに対応するゼロオーム・ヘッドフォン出力も用意されています(端子は、1/4フォーンと3.5mmのミニを併装)。
そして「Symphony Studio」の最大の特徴と言えるのが、Apogeeが“マスタリング・グレード”とアピールする音質です。同社いわく、“最高品質のコンポーネントを妥協なく使用している”とのことで、ADコンバージョン・チップにはSymphony Mk II SEと同じAKM AK5574、DAコンバージョン・チップには最新のESS Sabre ES9027PROを採用(ESS Sabre ES9027PROは、前面のヘッドフォン出力にも専用のものが用意されているとのこと)。その結果、ADコンバージョン部で124dB、DAコンバージョン部で129dBという広大なダイナミック・レンジを実現しており、これは同クラスの“プレミアム・インターフェース”の中でも最高スペックとのことです。
「Symphony Studio」のもう1つのフィーチャーが、入力部に備わった『インプットDSP』と、出力部に備わった『アウトプットDSP』という2つのDSPの存在。レコーディング時に使用できる『インプットDSP』では、ボブ・クリアマウンテン監修のECS Channel StripベースのEQ、コンプレッサー、サチュレーターといったエフェクトをかけることができます。一方の『アウトプットDSP』は、スピーカー・プロセッシング/モニター・キャリブレーション用のDSPで、EQ、ディレイ、ベース・マネジメントといった補正をオンボードで実行することが可能。注目なのが、サード・パーティー製キャリブレーション・ツールとの統合も計画されているとのことで、これはかなり期待できそうな機能と言えそうです。そして「Symphony Studio」のモニター・コントロールを司るのが、『Apogee Control 2』という専用ソフトウェアで、ステレオ、5.1ch、7.1.4ch、9.1.6chなど、さまざまなフォーマットに対応(サブ・ウーファーは2台まで対応)。作成したモニター設定は、最大8種類保存/切り替えることができ、純正のApogee Controlを使用したリモート・コントロールもサポートしています。
現代の音楽制作環境に最適化されたイマーシブ時代のプレミアム・インターフェース、Apogee「Symphony Studio」。気になる価格は、『2×12』モデルが319,000円、『8×8』モデルが440,000円、『8×16』モデルが550,000円で、予約販売は本日より開始(出荷は10月〜11月予定)。なお、「Symphony Studio」の発売を記念して、予約した先着20名の人にGROOVE 40th Anniversary Edition(54,800円相当)が進呈されるとのことです。さらなる詳細は、メディア・インテグレーションのWebサイトをご覧ください。