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2021年式アナログ・コンピューター、Anabrid「The Analog Thing」がデビュー…… 小型で安価、しかし本格的なアナログコンピュータ
アナログ・コンピューター(Analog Computer/アナログコンピュータ、アナコン)は、数値をデジタル化(ビット化)せずに、物理的な量(アナログ量)を計測して演算を実行する装置です。例えば、電子回路を使用した電圧型アナログ・コンピューターで加算を行う場合、1Vの電圧と2Vの電圧を加算器に送って3Vという和を求めます。実際にはこのような単純な計算でアナログ・コンピューターが使用されることはありませんが、1970年代頃までは様々な分野の試験/解析などで広く用いられました。
今やレガシー機器であるアナログ・コンピューターですが、現在も一部の電子音楽家の間で人気があり、学習用のアナログ・コンピューターであるCES Ed-Labシリーズを電子楽器/シンセサイザーとして使用しているアーティストもいます。また、モジュラーシンセ/Eurorackの中で最も人気のあるMake NoiseのMathsは、“音楽用途のアナログ・コンピューター”をコンセプトに開発されたモジュールとして知られています。オフセット電圧、リニア曲線、対数曲線、指数曲線といった信号を生成できるMathsは、それらを自由に増幅、減衰、反転、加算、減算、OR演算して、様々なタイプのCVを作り出すことが可能。また、アナログ信号からデジタル信号、デジタル信号からアナログ信号を生成することもできます。
そして2021年の今日、なんと新型のアナログ・コンピューターがデビューを果たしました。ドイツ・ベルリンのAnabridというメーカーが発表した「The Analog Thing(通称:THAT)」は、デスクトップ筐体のコンパクトなパッチ式アナログ・コンピューター。オープン・ソースのため、ユーザーの手で機能を拡張することもできる設計になっています。「The Analog Thing」を見て、“なぜ今、アナログ・コンピューター?”と思った人も多いでしょうが、Anabridによれば、デジタル機器全盛の現代においても、アナログ・コンピューターは動的な事象の計測/予測に最適で、神経系モデルに基づいた(“ニューロモルフィック”な)AIアプリケーションにも適しているとのこと。また、デジタル・コンピューターに比べてエネルギー効率も高く、サイバー脅威に対しても本質的に安全など、多くのアドバンテージがあると紹介しています。
縦型/スリム筐体の「The Analog Thing」は、上部に各機能に対応するパッチ盤を備え、モジュラー・シンセサイザーのようにケーブルをパッチして、自由に回路を組むことが可能。標準で搭載されているのは、積分器(Integrator)が5、加算器(Summer)が4、比較測定器(Comparator)が2、乗算器(Multiplier)が2、手動でアナログ量を設定するための可変抵抗器が8、演算結果を表示するデジタル・メーターといった回路で、デジタル機器と接続するためのインターフェースである“ハイブリッド・ポート”も装備。また、複数台の「The Analog Thing」を連結することで、より大規模な演算を実行することも可能になっています。
数学や電子工学、制御工学の学習用教材としても適しているという2021年式アナログ・コンピューター「The Analog Thing」。気になる価格は一般が299ユーロ、教育関係者向けのエデュケーショナル価格が225ユーロとなっています。さらなる詳細は、AnabridのWebサイトをご覧ください。