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NAMM 2020: Universal Audio、無償の純正DAW「LUNA」を発表…… 往年のコンソール/MTRを再現、Minimoogも付属
世界最大の楽器のトレード・ショー、『The NAMM Show』がいよいよスタートしました。初日のきょう、デジタル系プロダクトの中で最も注目を集めていたのは、Universal Audioの新製品「LUNA(ルナ)」と言っていいでしょう。開幕前にティーザーが公開され、製品名だけが明かされていた「LUNA」。その正体は、なんとUniversal Audio謹製のDAW(!)でした。Thunderbolt接続のApolloおよびArrowユーザーは、この春から無償で利用できるようになります。
“レコーディング・システム”を謳う「LUNA」は、Thunderbolt接続のApollo/Arrowを繋いだMacのみで利用できる無償のDAW。マルチトラック・レコーディング/ミキシング/プロセッシング/MIDIレコーディングといった機能を備え、音楽制作を完遂できるフル機能のDAWソフトウェアとして仕上げられています。もちろん、Universal Audioが自ら開発に取り組んだだけあり、他のDAWには無い「LUNA」ならではの機能もいくつか盛り込まれています。
その中でも特にユニークなのが、ミキサー部とオーディオ・プレイバック部に組み込まれた『LUNA Extension』と呼ばれるプロセッシング機能。「LUNA」のミキサー部には、Neve 80シリーズ・コンソールをモデリングした『LUNA Extension』がインストールされており、Neve 1272サミング・アンプの“混ざり具合”を忠実に再現するとのこと。そのサウンドのリアルさは、世に出ている“サミング・プラグイン”(おそらくは、Avid/Crane SongのHEATを意識しているのでしょう)を遥かに超越するとのことです。加えて「LUNA」のオーディオ・プレイバック部には、「Oxide」と呼ばれる『LUNA Extension』がインストールされており、この部分ではMTRにレコーディングされた音の温かみや“凝縮感”を再現するとのこと。往年のミキシング・コンソールとMTRのサウンドを、DAWの根幹部分(ミキサー部/オーディオ・プレイバック部)で忠実に再現する…… これは他のDAWには無い「LUNA」ならではの機能と言っていいでしょう。確かに複数のチャンネルが混ざり合うことで生じる効果(サミングやクロストーク)を再現するのは、従来型のプラグイン・エフェクトでは困難で、往年のミキシング・コンソール/MTRを忠実にイミュレーションするには、自社製DAWでなければ不可能です。なお、この部分は『LUNA Extension』としてプラグイン化されており、今後「Studer A800 Tape Recorder Extension」など、様々な製品をラインナップする予定とのこと。そう遠くない将来、SSLやAmpex、PCM-3348といった名機のサウンドを再現した『LUNA Extension』も登場するかもしれません。
そしてUniversal Audioが大きくアピールしているのが、レコーディング時のレーテンシーが(ほぼ)無いという点。新たに開発された『Accelerated Realtime Monitoring』という機能により、レーテンシー・フリーのルーティング/レコーディングが可能になっているとのこと。おそらくはApollo/Arrowに搭載されているDSPを、レコーディング/プレイバック/ミキシングにも活用することで実現した機能であり、DSPベースのPro Tools(Pro Tools | HDXなど)と同等のパフォーマンスが「LUNA」では得られるというわけです。DSPベースのPro Toolsが商用スタジオでスタンダードになっているのは、レコーディング時のレーテンシーの無さが大きな理由であり、10万円前後の「LUNA」+Apollo/Arrowで同じようなことができてしまうのは、かなり凄いと言えるのではないでしょうか。
また、「LUNA」はMIDIトラックも備えており、ソフトウェア・インストゥルメントを使用することも可能になっています。標準で、Moog Musicとのコラボレーションで開発された「Moog Minimoog」、Steinway Model Bを再現したピアノ音源「Ravel」、サンプル・ベースのマルチ音源「Shape」という3種類のソフトウェア・インストゥルメントが付属し、これらもレーテンシー・フリーで使用することが可能。「Shape」には、Spitfire Audio、Orange Tree Samples、Loops de la Cremeといったデベロッパーが開発したサンプルが多数収録されているとのことです。
遂にベールを脱いだUniversal Audio製DAW、「LUNA」。今後Windows版もリリースされるのか、どこまでDSPを使用しているのか、VST/AUには対応しているのか、「Moog Minimoog」などは他のDAWでも使用できるのか…… などなど、気になる点は多いですが、それらは間もなく明らかになるでしょう。Apollo/Arrowユーザーはもちろんのこと、他のDAWユーザーも要注目の新製品と言えそうです。さらなる詳細は、Universal AudioのWebサイトをご覧ください。