
NEWS & INFO
香港発の強力なデジタル・シンセサイザー「HYDRASYNTH」がデビュー…… 元Arturia/元Novationのスタッフが開発
週末、アメリカ・イリノイ州シャンバーグで開催された北米最大規模のシンセサイザーの祭典、『Knobcon 2019』。今年の目玉と言っていいのが、『Knobcon』直前に発表された新型シンセサイザー、「HYDRASYNTH(ハイドラシンセ)」です。

新興メーカー ASM(Ashun Sound Machines)の最初の製品となる「HYDRASYNTH」は、強力な“ウェーブモーフィング”音源を搭載し、独自のポリフォニック・アフタータッチ鍵盤を備えた新世代デジタル・シンセサイザー。49鍵のキーボード・バージョンに加えて、鍵盤レスのデスクトップ・バージョン(ラックマウントにも対応)も用意され、こちらは24個のポリフォニック・プレッシャー・パッドを搭載。キーボード・バージョンが1,299ドル、デスクトップ・バージョンが799ドルというコスト・パフォーマンスの高さも話題になっています。
開発元のASMは香港に拠点を置くメーカーで、「HYDRASYNTH」の開発は香港とロサンゼルスで行われ、生産は上海で行うとのこと。開発の中心人物であるグレン・ダーシー(Glen Darcey)氏は、AKAIを経てArturiaで多くの製品の開発に関わってきた人物で、プロダクト・マネージャーであるドミニク・オウ(Dominic Au)氏は元Novationという経歴を持つ、業界ではかなり有名な人物(『Knobcon』を訪れていた中国人ジャーナリスト談)とのことです。このようにASMは新興メーカーではありますが、チーム・メンバーは業界で実績のある人たちばかりで、なおかつ全員が生粋の“シンセ・マニア”というのもポイント。そういう人たちが集まって作った新型シンセサイザーというだけでも、興味をそそられます。

右がグレン・ダーシー(Glen Darcey)氏、左がドミニク・オウ(Dominic Au)氏
「HYDRASYNTH」の音源部は、3基のウェーブテーブル・オシレーター、FMやPWMといった処理が行える『MUTATOR』、11種類のフィルター・タイプを切り替えられるマルチモード・フィルター、5基のLFO、5基の6ステージEG、マルチ・エフェクトといったセクションで構成され、強力なモジューション・マトリクスやアルペジエーターといった機能も装備しています。サウンドの源となるウェーブテーブル・オシレーターは、用意された219種類の波形の中から最大8つを繋いでシーケンスさせることが可能。そしてその波形間の繋がりをモーフィングできるのが大きな特徴となっています。また、FMやPWM、デチューン、シンクといったシンセサイザーの古典的な機能を、『MUTATOR』と名前を付けてセクションでまとめているのもおもしろい部分で、外観は未来的ですが、中身は伝統的な音作りの手法を大切にしているという印象を受けます。

何と言っても注目は、ポリフォニック・アフタータッチに対応した新開発のキーボード『Polytouch keybed』を搭載している点で、これにより表現力豊かなパフォーマンスを実現。フル・サイズのキーボードは49鍵仕様で、鍵盤の上部にはリボン・コントローラーも装備しています。一方のデスクトップ・バージョンは、『Polytouch keybed』の代わりに、ポリフォニック・プレッシャーに対応した24個の『Polytouch pads』を搭載。このパッドも、複数のスケールが選択できるなど、音階演奏が行えるようになっています。キーボード・バージョンとデスクトップ・バージョンは、中身は完全に同一で、操作面の違いもデスクトップ・バージョンの方が少しエンコーダーの数が少ない程度。『Polytouch keybed』を搭載していない分、価格は500ドルも安いので、もしかしたらデスクトップ・バージョンの方が人気が出るかもしれません。
外部とのインターフェースはMIDI入出力/スルー端子、USB端子のほか、CV/Gate入出力端子も装備。2つ備わったCV入力はオーディオ・レートにも対応(!)しているとのことで、クロック専用の出力を備えているというのもユニークです。

久々に登場した本格デジタル・シンセサイザー、「HYDRASYNTH」。北米では11月に出荷が開始される予定で、プロダクト・マネージャーのドミニク・オウ氏によれば、日本のディストリビューターはまだ決まっていないものの、北米での出荷からそれほど遅れずに販売したいとのことでした。さらなる詳細は、ASMのWebサイトをご覧ください。