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Steinberg、多数の新機能を追加した「Cubase 10」を発表、ダウンロード販売を開始
Steinbergが、Cubaseの新バージョン「Cubase 10」を発表。オンライン・ショップでのダウンロード販売を開始しています。

年末恒例、今年もCubaseの新バージョンがリリースされました。新しい「Cubase 10」も、これまでどおり「Cubase Pro」、「Cubase Artist」、「Cubase Elements」の各グレードが提供され、ハードウェア付属版の「Cubase AI」も用意されます。「Cubase 10」の主な新機能は以下のとおりで、編集/ミックス機能の強化からユーザー・インターフェースの改善、新開発のエフェクト/インストゥルメント/サウンドの追加など、その内容は多岐にわたっています。
- さらに進化したオーディオ編集機能『VariAudio 3』(Proのみ)
- 刷新されたチャンネル・ストリップ
- MixConsoleにおけるスナップショットの保存/リコール機能(Proのみ)
- 新しいオーディオ・アライメント・ツール(Proのみ)
- 使い勝手がシンプルになったサイドチェーン(Pro/Artist)
- 新インストゥルメント:Groove Agent SE 5
- 新エフェクト:Distroyer (Pro/Artist)
- REVerence用新ライブラリ:Vintage Verbs(Proのみ)
- ユーザー・インターフェースが改善された既存エフェクト
- 使い勝手が向上したメディア・ラック
- 処理の遅延を視覚的に確認できるレーテンシー・モニター
- MPE対応(Pro/Artist)
- AAFファイルのインポート/エクスポートに対応(Proのみ)
- 近い将来、ARA 2にも対応(Proのみ)

1:編集に関する新機能
多くの新機能が盛り込まれた「Cubase 10」ですが、その中でも目玉と言えるのが、VariAudioの新バージョン『VariAudio 3』です(Proのみ)。新しい『VariAudio 3』では、分割されたセグメントのパラメーターを直接操作することが可能に。これによって微妙なピッチの補正や、フォルマントの設定を、素早く、直感的に行えるようになりました。Steinbergは新しい『VariAudio 3』を称して、“究極のオーディオ・コントロール・ツール”と謳っています。編集機能では他に、新開発のオーディオ・アライメント・ツールを搭載(Proのみ)。Synchro Arts Revoice Proに似た機能と言えるオーディオ・アライメント・ツールを使用すると、複数のオーディオのタイミングを波形ベースで自動的に合わせ込むことができます。例えばリード・ボーカルに対して、ダブリングのボーカルやコーラスのタイミングを簡単に揃えることが可能に。また、ポストプロダクション系の機能改善としては、オーディオ編集時のビデオ・トラックの映像表示がフレーム単位の精度になりました(Proのみ)。

VariAudio 3

オーディオ・アライメント・ツール
2:ミックスに関する新機能
「Cubase 10」では、ミックスのワーク・フローを向上させる新機能も多数搭載されています。その最たるものが、MixConsoleの保存/リコール機能(Proのみ)。「Cubase 10」では、MixConsoleの状態(フェーダー/パンの位置やEQの設定など)をスナップショットとして保存し、自由にリコールすることが可能になりました。MixConsoleには、新たにスナップショット・タブが用意され、保存したスナップショットを瞬時に切り替える(リコールする)ことが可能。これにより、以前のミックスと現在のミックスの比較試聴が容易に行えるようになっています。スナップショットは、MixConsole全体の状態だけでなく、特定のトラックやEQ設定のみの保存/リコールにも対応。Steinbergによれば、ユーザーからの要望が非常に多かった機能とのことですが、実際かなり使いでのある機能と言えそうです。加えて新しいMixConsoleでは、エフェクト・チェーンのレーテンシーを表示できるようになりました。

MixConsoleの保存/リコール機能

エフェクト・チェーンのレーテンシー表示
見た目的になかなかインパクトがあるのが、新しいチャンネル・ストリップ。完全に設計し直したという新しいチャンネル・ストリップは、各プロセッサーのデザインが縦型のモジュールとなり、使い勝手と視認性が大幅に向上しました。各モジュールには専用メーターが搭載され、EQモジュールではフリケンシー・カーブ、ダイナミクス系モジュールではスレッショルド・レベルなどを一目で確認することが可能になっています。

新しいチャンネル・ストリップ
また「Cubase 10」では、サイドチェーンの設定が素早く行えるようになりました(Pro/Artist)。プラグイン側でサイドチェーンを有効にし、トラック・リストからソースを選ぶだけで準備完了。メディア・ラックの視認性も改善され、プラグインのユーザー・インターフェースがタイルとして表示されるようになりました。

新しいメディア・ラック
3:新開発のエフェクト/インストゥルメント/サウンド
「Cubase 10」ではもちろん、新開発のエフェクト/インストゥルメント/サウンドも搭載されています。エフェクトでは、新しい歪み系プロセッサー『Distroyer』が追加(Pro/Artist)。“ノンリニア・ディストーション”を謳う『Distroyer』では、原音を激しく歪ませるだけでなく、アナログ機器を通したような暖かみを付加することもできます。また、「Cubase Pro 10」のみではありますが、VR音源制作用ツールを集めた『Steinberg Virtual Reality』も追加されました。『Steinberg Virtual Reality』は、3Dパンナーの『MultiPanner』やAmbisonicsデコーダーの『AmbiDecorder』といったツールで構成され、CubaseでのVR音源制作をシームレスに実現します。さらにはコンボリューション・リバーブのREVerenceには、20種類のインパルス・レスポンスで構成される新開発のライブラリー、『Vintage Verbs』が追加されました。

新たに追加されたエフェクト/ツール
一方のインストゥルメントは、先日リリースされたGroove Agent 5をベースにした『Groove Agent SE 5』を新たに収録。『Groove Agent SE 5』は、新しいアコースティック・ドラム・キット『The Kit SE』が搭載されただけでなく、エレクトロ系ドラム・キットのBeat Kitには新開発のキットが20セット追加されるなど、音色がさらに充実。また、標準のサウンド/ループは約5GBに増量され、『Analog Techno』、『Hip Hop Vault』、『Soul Assembly』、『Raw Ambience』(ドラムン・ベース系ライブラリー)、『Blockbuster』(スコアリング系ライブラリー)、『Mystic Spaces』(実験的な音色ライブラリー)など、即戦力ライブラリーが多数追加されました。

Groove Agent SE 5
4:その他の新機能
「Cubase 10」では、新しいフォーマットを積極的にサポートし、互換性も大幅に向上。ROLIなどで採用されているMPE(MIDI Polyphonic Expression)に遂に対応し、RetrologueやPadshopといった標準インストゥルメントのプリセット・ライブラリーも付属しています(Pro/Artist)。さらにはAAFファイルのインポート/エクスポートもサポートし(Proのみ)、リリース・バージョンでは実装されていませんが、将来的なARA 2対応もアナウンスされました(Proのみ)。これにより、そう遠くない将来、Cubase内でMelodyneを使ったオーディオ編集が可能になります。

AAFファイルのインポート/エクスポートに対応
「Cubase 10」は本日から販売が開始され、ダウンロード版の価格は「Cubase Pro 10」が56,160円、「Cubase Artist 10」が29,160円、「Cubase Elements 10」が12,960円。「Cubase Pro 10」へのアップデート(ダウンロード版)は、9.5からが10,800円、9からが17,280円、7〜8.5からが21,600円、4〜6.5からが32,400円となっています。また他のDAWユーザー向けの「Cubase Pro 10」クロスグレード(ダウンロード版)も用意されており、そちらの価格は35,640円となっています(価格はすべて税込)。詳しくは、SteinbergのWebサイトをご覧ください。