ART & DESIGN
ラブ・フルテンとteenage engineeringがコラボ、先天性心疾患を持つ子どもの心拍でビートを刻むドラム・マシン「CHD-4」
デザイン性の高いオリジナルの電子楽器を製作し、WebサイトやInstagramで発表しているスウェーデンのオーディオ・ヴィジュアル・デザイナー、ラブ・フルテン(Love Hultén)。teenage engineeringとのコラボレーションで製作された新作『CHD-4』は、先天性心疾患を持つ子どもの心拍でビートを刻むドラム・マシンです。
生まれたときから心臓に障がいがある病気、先天性心疾患(CHD)。新生児の約0.3%は心臓に何らかの問題を抱えているというデータもあり、決して珍しくない病気と言われています。しかしながら一般の認知度はそれほど高くなく、ラブ・フルテンとteenage engineeringは、この病気を広く啓蒙するための電子楽器を企画。そして完成したのが『CHD-4』で、2022年9月29日の『世界ハートの日(World Heart Day)』に合わせて初めて披露されました。
フォルダブル(折り畳み)筐体が採用された『CHD-4』は、蓋側がモジュラー式のシンセサイザー、下側が4トラック仕様のシーケンサーとなっています。モジュラー式のシンセサイザーの中身は、teenage engineeringのpocket operator modularで、合計20個のモジュールをオリジナル・パネルとともに搭載。シーケンサーのトラック数に合わせて、オシレーターやフィルター、VCA、EGはそれぞれ4基という構成になっています(その他、ノイズ・ジェネレーターやLFO、ミキサーなども搭載)。
『CHD-4』の心臓部と言えるのが、この電子楽器のために設計されたスピニング・シーケンサーで、左側にリズム・パターンの源となる円盤を4枚搭載。円盤にはそれぞれ異なる情報が収録されており、4枚同時に回転することで、4トラックのリズム・パターンを生み出します。これだけだったら1960年代のドラム・マシンのような感じですが、スピニング・シーケンサーの円盤に収録されているデータは、先天性心疾患を持つ4人の子どもの心電図(ECG)が元になっているとのこと。このデータには、心電図のグラフの形状、ペース、BPMといった情報が含まれ、スピニング・シーケンサーはこれらの情報を元にリズム・パターンへと“デコード”します。心電図のデータは子どもによって当然異なるため、『CHD-4』は4つのトラックが複雑に絡み合ったリズム・パターンを生成するというわけです。スピニング・シーケンサーは、本物の心電図のようなディスプレイ(OLED)も備え、ユーザーは生成されたパターンのオフセットやミュートといった操作もできるようになっています。
『CHD-4』はワン・オフで製作された世界に1台しかない電子楽器であり、これから多くのクリエイター/アーティストに試してもらうべく、世界中を巡回する予定とのこと。そして来年2月14日のバレンタイン・デーに行われるオークションに出品され、すべての収益はスウェーデンのハートチャイルド財団(Swedish Heartchild Foundation)に寄付されるとのことです。