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Product Review #5:IK Multimedia iLoud Micro Monitor 〜 エンジニア 森元浩二.と音楽プロデューサー 田辺恵二が語る、人気スピーカーの魅力と使いこなし術

発売以来、世界的に大ヒットを記録しているIK Multimediaの「iLoud Micro Monitor」。横幅90mm×高さ135mm×奥行180mmというコンパクト・サイズながら、スタジオ・モニターとして十分な高出力を実現(50W RMS)、内蔵DSPによる位相/周波数コントロール機能まで搭載した高性能なアクティブ・スピーカーです。そのクリアで色付けのない音質は名だたるプロたちから賞賛されており、トム・ロード・アルジやエディ・クレイマー、ブライアン・キリロといったグラミー・エンジニアたちも使用。今や小型スピーカーのリファレンス機と言っていいほど、プロ/アマ問わず多くの人たちに愛用されています(アーティスト/エンジニアのレビュー記事は、こちらに掲載されています)。そこでICONでは、「iLoud Micro Monitor」を愛用している二人のプロ、エンジニアの森元浩二.氏とプロデューサーの田辺恵二氏に、このスピーカーの魅力と使いこなし術について話を伺ってみることにしました。26日まで約27%OFFのBlack Fridayセール中ですので、検討している方は購入前にぜひご一読ください。

IK Multimedia iLoud Micro Monitor - Review

変な誇張が無いので、出音を信じられるスピーカー(田辺氏)

——— お二人はいつくらいから「iLoud Micro Monitor」を使われているのですか?

田辺 ぼくはiLoudを使っていたので、その流れで「iLoud Micro Monitor」も発売直後から使い始めました。iLoudは凄く気に入っていたんですが、左右一体型なので、ステレオ感がちょっと分からないなということが何度かあったんです。なので「iLoud Micro Monitor」が出たときは、すぐに飛びつきましたよ。でも同じiLoudでも、両者はまったく違いますね。

森元 ぼくが手に入れたのはつい最近のことで、田辺さんにおしえてもらったんですよ。少し前に吉祥寺で、加納くん(註:レコーディング・エンジニアの加納洋一郎氏)主催の呑み会があったんですが、そこでみんなに“小さいスピーカーで何か良いのある?”って訊いたら、田辺さんが“「iLoud Micro Monitor」がメチャクチャ良いですよ”と言って。それで次の日にRock oNに行って改めて聴いてみたら凄く良かったので、その場で購入してしまいました。そのときに思い出したんですけど、「iLoud Micro Monitor」は発売のときもRock oNで音を聴いているんですよ。凄く良いスピーカーだなと思って、知り合いには薦めたりしていたんですけど、自分では買ってなかったという(笑)。さっそく自宅の地下にある作業部屋にセッティングして聴いてみたんですが、こんなに良かったんだなと改めて認識しました。今は持ち運び用と自宅作業用の2台持ってます。

——— 森元さんのような大きなスタジオで作業されるエンジニアの場合、「iLoud Micro Monitor」はどのような使い方になるのですか?

森元 大きなスタジオで仕事していると言っても、実は半分くらいはラジカセを鳴らして作業しているんです。最終的なチェックをラジカセで行うというのではなく、ミックスもラジカセでやってしまう。メインのスピーカーで音を作って、ラジカセで聴いて調整して、またメインのスピーカーに切り替えて……。昔からこの繰り返しですね。ずっとソニーのZS-M50という古いラジカセを使っていたんですが、最近はBluetoothのものとか、小さくて性能の良いスピーカーがたくさん出ているじゃないですか。それがちょっと気になって、新しいものをいろいろチェックしていたんですよ。例えば、知り合いが良いと言っていたので、7万円くらいする少し高めのBluetoothスピーカーを買ってみたり。そうしたら、Bluetoothの音は良いのにライン入力の音がダメで(笑)。でもせっかく買ったんだからとBluetoothのトランスミッターも買ってみたりしたんですけど、そうすると今度はレーテンシーが生じてしまって。そんなときに田辺さんにおしえてもらったのが、「iLoud Micro Monitor」だったんです。

IK Multimedia iLoud Micro Monitor - Review

レコーディング・エンジニアの森元浩二.氏

田辺 ぼくも森元さんと同じ使い方で、メインのスピーカーは別にあって、「iLoud Micro Monitor」と切り替えながら作業しています。でも最近は、「iLoud Micro Monitor」だけで作業してしまうことも増えてますね。歌の直しなんかは「iLoud Micro Monitor」で聴いた方がピッチが分かりやすいんですよ。

森元 そうそう。ぼくも同じで、ミックスの修正は「iLoud Micro Monitor」でやってしまうことも多いです。「iLoud Micro Monitor」の方が修正ポイントが分かりやすい。クライアントは大きなスタジオ・モニターでチェックしているわけではありませんから、「iLoud Micro Monitor」がそのあたりを上手く通訳してくれるんです。

田辺 ぼくと森元さんのようなメイン・スピーカーと切り替えて使う場合も、「iLoud Micro Monitor」は違和感が無いのもいいんですよ。ラジカセはスタジオ・モニターとは明らかに音が違いますから(笑)。

森元 そうですね。切り替えながら作業しているとき、たまにどっちが鳴っているのか分からなくなる瞬間もあります(笑)。

——— 「iLoud Micro Monitor」のどのあたりが気に入ってますか?

森元 ぼくの場合、機材に関しては良い/悪いでしか判断できないので、どのあたりが良いかと訊かれても困ってしまうんですけど……(笑)。

田辺 変な誇張が無いんですよね。音にクセがあると、脳内で補正しなければならないんですけど、このスピーカーは出音をそのまま信じられるというか。

IK Multimedia iLoud Micro Monitor - Review

音楽プロデューサーの田辺恵二氏

森元 田辺さんが言うとおり誇張されていない音だと思います。スタジオ・モニターっぽい音というか。この前、知り合いのアレンジャーと倍近い価格帯の人気のある小型スピーカーと比較試聴してみたんです。その結果、「iLoud Micro Monitor」と比べると比較試聴したスピーカーの方はかなりサッパリした音ということが分かって。出音がサッパリしていると、どうしても頑張って音を作ってしまうんですよね。でも、それで出来た音を他のスピーカーで聴くと、頑張りすぎな音ということが分かる(笑)。そのときに一緒に試聴したアレンジャーは、「iLoud Micro Monitor」を“昔のGenelecっぽい音”と言ってましたね。

——— “Micro”という名前のとおり、かなり小型のスピーカーなわけですが、パワー感はいかがですか?

森元 何の不満もないですね。これくらいの部屋(註:取材を行ったprime sound studio formのroom 5)でも問題なく使えます。それでいて、サイズ以上に無理に鳴らそうとしていないのがいいんですよ。

田辺 多分、音を聴いたことがない人は、このパワー感を想像できないんじゃないかと思いますね。防音していない普通の6畳や8畳の部屋だったら本当に十分だと思います。それくらいの部屋で作業している人でも、6インチより大きいウーファーのスピーカーを買う人が多いと思うんですけど、実際にはそんなに鳴らせないじゃないですか。「iLoud Micro Monitor」くらいがちょうどいいと思いますね。

森元 107dB(註:Maximum SPL @ 50cm)も出るわけですから、十分ミックスができてしまいますね。

IK Multimedia iLoud Micro Monitor - Review

スピーカーで迷っている人は、これを買っておけば間違いない(森元氏)

——— お二人のセッティングについておしえていただけますか?

田辺 普通に作業デスクの上に置いて、底のスタンドを立てて使っています。最近オーディオ・インターフェースはFocusriteのRed 4Preを使っているんですが、「iLoud Micro Monitor」にダイレクトに繋いでいます。ヘタなモニター・コントローラーをかますくらいだったら、直接繋いだ方が絶対いいですね。

森元 底のスタンドで煽りは足りてます?

田辺 足りてます。もうちょっと煽ってくれるといいかなと思うときもありますけど……。オプションで、より大きな角度で煽れるスタンドが出てくれると嬉しいですね。

森元 でもこのスピーカー、それほど指向性が強くないので、多少軸がズレてもあまり音が変わらないんですよ。なので煽りを足してビシッと自分の方に向けても、音的にはそんなに変わらないと思います。気分の問題だけですね(笑)。

——— 内蔵DSPによる位相/周波数特性コントロール機能も「iLoud Micro Monitor」の大きな特徴です。お二人はどのようなセッティングで使用されていますか?

森元 一番上のスイッチは“DESK”で、ローは切って使っています。ローはもしかしたらフラットでもいいのかもしれないですけど、ぼくの場合は音量が大きいので……。多分、どんな環境でもこの設定にすると思いますね。フラットが標準だと思って一番上のスイッチを“FLAT”で使っている人も多いと思うんですが、デスクの上に置いて使うのであれば“DESK”にした方がいいと思います。“FLAT”は、ちょっとモケッとした音なんですよね。ハイに関しては、十分高域が出ているのでフラットのままで、ローはボリュームが大きいときにカットするという使い方がいいのではないかと。

IK Multimedia iLoud Micro Monitor - Review

DSPのセッティングは、お二人とも“DESK”で固定で、森元氏はローは切って使っているという

田辺 ぼくは一番上のスイッチは森元さんと同じ“DESK”で、あとは全部フラットで使っています。

森元 この前、この設定のことをFacebookに書いたら、同じく「iLoud Micro Monitor」を使用されているソナの中原さん(註:音響設計会社ソナの中原雅考氏)が、“DESKのポイントを調整したい”とコメントしてました(笑)。確かにもうちょっと上でもいいかなと思いますね。

田辺 さすがにそれは中のDSPを書き換えないといけないので難しいでしょう(笑)。

森元 でもMine-Chang(註:レコーディング・エンジニアのMine-Chang氏)は、“自分でクロスオーバー周波数を決めたいので、内蔵DSPをFIRフィルターに入れ替えたい”とか言ってましたね(笑)。miniDSPでFIRフィルターを作って。それ、ぼくもいつかやりたいんですよ。

——— 音にDSPくささは感じますか?

森元 やっぱり感じますよね。でもそれはDSPで処理されている以上、仕方ないと思います。

——— ボリュームの設定についてもおしえてください。

森元 最初、全開が一番良いのかなと思っていたんですが、いろいろ試してみたところ真ん中くらいがベストですね。

田辺 ぼくも真ん中くらいで使っています。それで音量が小さいと感じたときは、「iLoud Micro Monitor」のボリュームを上げるのではなく、入力側の音量を上げた方がいいですね。入力側の音量が小さすぎると、音の解像度が低くなりますし、ローも物足りなく感じます。

——— ライン入力とBluetooth接続では、音はかなり違いますか?

森元 違いますね。Bluetoothは一度音を圧縮しているので仕方ないと思います。でも、ぼくが最近いろいろ買ったBluetoothスピーカーと違うのは、「iLoud Micro Monitor」はライン入力を前提に音が作られているということ。民生用のBluetoothスピーカーなんかは、Bluetoothで使われることを前提に設計されているので、ライン入力よりもBluetooth接続の方が音が良いんですよ(笑)。「iLoud Micro Monitor」は逆で、ライン入力の方が音が良いんです。

——— お二人ともデザインは好きですか?

森元 ぼくは好きですね。

田辺 最近のGenelecも丸みを帯びた形になってますし、こういうデザインが今のトレンドなんでしょうね。ホワイト・モデルも出ましたけど、もっとカラー・バリエーションがあってもいいと思います。

森元 イタリアのメーカーなので、Ferrariカラーの赤とか。

田辺 赤、売れそうですね。Daichiくん(註:音楽プロデューサーの鈴木Daichi秀行氏)とか絶対買いそう(笑)。

森元 スタジオ・モニターっぽい音と言いましたけど、リスニング・スピーカーとしてもいいと思います。Bluetoothも付いていますし、聴いていて楽しい音ですから。ホーム・スタジオのスピーカーで何を買っていいか迷っている人は、これを買っておけば間違いないですよ。

田辺 10万円以下のスピーカーですと、間違いなくこれ一択ですよね。

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