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製品開発ストーリー #42:Image-Line Software FL Studio 20 〜 開発者が語る、Mac版FL Studio完成までの道のり

ここ数年、EDMのクリエイターを中心に、絶大な支持を集めているImage-Line Software FL Studio。使い手の気分/ワークフローに合わせて、様々な方法で曲作りを行うことができる、他とは一味も二味も違うDAWソフトウェアです。長らくWindowsオンリーのDAWソフトウェアとしてリリースされてきたFL Studioですが、先ごろ実施されたバージョン・アップで遂にMacにも対応。そのユニークな機能、音源類がMacでも利用できるようになりました。そこでICONでは、Image-Line Softwareのコミュニケーション・マネージャーであるスコット・フィッシャー(Scott Fisher)氏にメールでインタビュー。新しい「FL Studio 20」の開発コンセプトと機能について話を伺ってみることにしました。なお、「FL Studio 20」は本日(2018年7月30日)から、日本語パッケージ版の販売が開始されるとのこと(Rock oNの販売ページはこちら。Amazonの販売ページはこちら)。他のDAWソフトウェア・ユーザー向けの安価なクロスグレード版も用意されるとのことなので、気になっていた方はこの機会に入手してみてはいかがでしょうか。

Image-Line Software FL Studio 20 Interview

ベルギーだけでなく、世界各地で開発されるFL Studio

——— まずはImage-Line Softwareの現状について知りたいのですが、現在スタッフは何名在籍しているのですか?

SF パートタイムのスタッフもかなりいるので、正確に何名と言うことはできませんが、フルタイムの開発者は現在9名在籍しています。Image-Line Softwareはベルギーの会社ですが、9名の開発者のほとんどはベルギーにいません。イングランド、スコットランド、スウェーデン、フランス、ロシア、ルクセンブルグ、そしてベルギーと、世界各地で開発を行っているのです。ですので、FL Studioは世界中の叡智を結集して開発されたDAWソフトウェアと言えます。残念ながら、まだ日本には開発者はいませんけどね。

——— FL Studioのユーザーは、ここ数年で一気に増えた印象があります。現時点でのユーザー数をおしえていただけますか。

SF その質問に答えるのは容易ではありません。なぜなら、我々が販売している数以上にユーザーがいると思われるからです。ちなみに、FL Studioのインストーラーは、1日に2〜3万回ダウンロードされます。これは相当な数と言っていいでしょう。FL Studioは現在、最も人気のあるDAWソフトウェアの1つになっています。

——— FL Studioは、EDMのプロデューサーに特に人気がありますね。

SF はい。FL Studioは、ヨーロッパとアメリカのEDMシーンで最も支持されているDAWソフトウェアと言っていいでしょう。Afrojack、Alan Walker、Martin Garrix、K-391、Oliver Heldensなどなど、著名なEDMのプロデューサーの多くがFL Studioでトラック制作を行っています。ご存じでしょうが、日本のbanvoxもFL Studioのヘヴィ・ユーザーの一人です(banvoxのインタビュー記事はこちら)。

Image-Line Software FL Studio 20 Interview

Image-Line Softwareのコミュニケーション・マネージャー、スコット・フィッシャー(Scott Fisher)氏

Mac版FL Studioは、カスタム・コンポーネントの集合体

——— 先日、FL Studioの最新バージョン「FL Studio 20」がリリースされました。前のバージョン・ナンバーは12で、今回一気に“20”まで引き上げられたのはなぜですか?

SF 我々はこのバージョンで、FL Studioの誕生20周年を祝いたかったのです。また西欧諸国では、“13”があまり気持ちの良い番号ではないというのも理由の1つです。近い将来、西暦をバージョン・ナンバーにすることも検討しています。

——— 新しい「FL Studio 20」の目玉は、何と言ってもMacへのネイティブ対応です。長らくWindowsオンリーでリリースしてきたFL Studioを、Macに対応させた理由からおしえてください。

SF 多くの人たちからリクエストがあったというのが一番の理由です。しかし当初、我々はMac版への需要に対して少し懐疑的でした。既に多くのDAWソフトウェアがMac用にリリースされています。このタイミングでFL StudioをMacに対応させても、それほど多くのユーザーを獲得できないのではないかと思ったのです。そこで我々は、CodeWeavers(註:Windows用ソフトウェアをMac上で動作させるためのツール、「CrossOver」を開発している会社)の協力のもと、Windows用のFL StudioをMac上で動作させるカスタム・ラッパーを開発し、それをベータ・バージョンとして公開することにしました。そのベータ・バージョンのダウンロード数を見て、Mac版への需要が本当にあるのか判断しようと考えたわけです。Windows版FL Studioとプラグインのソース・コードの行数は、実に900万行に及びます。それほど需要があるわけではないソフトウェアの開発に、多大な労力を費やすわけにはいきません。しかし、ベータ・バージョンへの反響は我々が予想していたよりもはるかに大きく、こんなにも需要があるのならMacに対応させない理由はないと思ったのです。

——— Macプラットホームへの移植は大変でしたか?

SF かなり大変でしたね。我々には乗り越えなければならない高いハードルがいくつもありました。FL Studioは、Windowsの入力/出力コードとGUIコンポーネントに大きく依存したソフトウェアです。我々はMac版FL Studioを開発するため、VCL(Visual Component Library)をカスタム開発した際の外部パートナーに協力を仰ぎ、また独自のコンパイラ開発を行うとても優秀なロシア人プログラマーを新たに雇用しました。Mac版FL Studioは、多くのカスタム・コンポーネントの集合体で成り立っていると言えます。この困難な移植を成し遂げた開発チームを、我々は誇りに思っています。

——— Mac版FL Studioの機能は、Windows版と完全に同一ですか?

SF ほぼ同一です。ソース・コードは両方のプラットホームで共有され、まったく同じように設計されています。ただ、SoundFont PlayerやBlood Overdrive、Fruity Scratcher、Slayerなど、Mac版にはいくつかのプラグインがありません。また、Mac版はまだReWireには対応していません。大きな違いはそれくらいで、ほとんど一緒と捉えていただいていいと思います(註:Windows版とMac版の比較表は、こちらに掲載されています)。

——— 開発者の視点で、DAWソフトウェア用プラットホームとしては、MacとWindowsのどちらが優れていると感じますか?

SF 普通だったらそういう質問には、波風の立たない回答をするか、回答を控えるのがベストなのかもしれません。しかし私は、この記事を読んでいる人のために正直なことを言います。

Macは安定していると言われますが、実際には技術的な問題や不具合をいくつも抱えており、そのあたりはWindowsと変わらないと思っています。Macの一番の問題は、macOSの更新によってソフトウェアの互換性が大きく損なわれてしまう点です。多くのソフトウェア・デベロッパーは、macOSの更新によって生じた問題を修正するため、常に作業に追われています。ユーザーもmacOSの更新によって問題が生じることを知っているので、DAWソフトウェアをメインに使用している人などは、すぐにmacOSを更新することはしません。

一方、Windowsの更新では、ほとんどの場合はソフトウェアの互換性を損なうことはありませんが、時にシステム設定をリセットしてしまったり、ドライバーを混乱させたりします。その結果、ハードウェア・コンポーネントに大きな問題が生じてしまうのです。通常、Microsoftはこの問題を修正するためのアップデーターを比較的早くリリースしますが、それをダウンロードして適用するのはまた面倒です。

ハードウェアの品質と全体的な性能は、Macはとても優れていると感じます。お金を払えば、誰もが高品質なコンピューターを手に入れることができます。また、デザインも美しく、とても楽しいと思います。一方、Windowsプラットホームのコンピューターは、Macよりも安価に入手することができます。そして最も重要な点として、用途や予算に合わせてシステムを自由にカスタマイズすることができます。お仕着せのコンフィギュレーションに縛られることはありません。

MacとWindows、どちらが優れているかという論争は、もう何年も前に終わっています。今や、そんな話をする人はどこにもいません。単に好きな方を選べばいいのです。FL Studioは、どちらの環境でも同じように動作します。

Image-Line Software FL Studio 20 Interview

——— Mac対応以外の「FL Studio 20」の新機能についておしえてください。

SF 「FL Studio 20」の目玉はMac対応で、大きな新機能が盛り込まれたわけではありません。しかし細かい変更点はいくつかあります。

最も重要な変更点は、拍子記号でしょう。「FL Studio 20」では、プレイリストとパターン(ピアノ・ロール)の両方で、無制限に拍子記号を変更できるようになりました。「FL Studio 20」のユニークなパターン・システムによって、プレイリストの任意のポイントで、異なる拍子記号を複数混在させることもできます。

また、選択したオーディオやパターン・クリップを瞬時にバウンスできる『In-situレンダリング』機能も備わりました。この機能を使うことで、複数のテイクを1本のオーディオにまとめてステムを作成したり、ソフトウェア・インストゥルメントの出力も簡単にオーディオ化できます。完成したフレーズのオーディオ化は、CPU負荷の軽減にも役立ってくれると思います。

さらにプレイリストは、複数のアレンジをサポートしました。各アレンジは、オーディオ、オートメーション、パターン・クリップの完全なレイアウトと言えます。ユーザーは、複数のアレンジを比較して、アイディアを練ることが可能になりました。

そして「FL Studio 20」では、プラグインの補正機能が完全に再設計されました。新しいプラグイン補正機能では、マニュアル補正と自動補正を混在させることができ、あらゆるオーディオ・バスに適用することができます。新しいプラグイン補正機能は非常に強力です。

——— 一部のプラグインでは、自動遅延補正が上手く機能しないという例もあるようです。

SF ユーザーからは、とても上手く機能しているとの報告が上がっています。実際、「FL Studio 20」のプラグイン補正機能は、ユーザーが意識しなくても動作するように設計されています。何らかの理由で上手く機能しないプラグインが見つかった場合は、手動で補正することもできます。

——— スコットさんが個人的に気に入っている新機能はどれですか?

SF 異なる拍子記号を複数混在できるようになった点です。「FL Studio 20」のそれは複雑ではなく、とてもシンプルに機能します。

ユーザーに約束した『ライフタイムフリーアップデート』は今後も継続する

——— FL Studioには、永続的に無償でアップデートできる『ライフタイムフリーアップデート』が付属しています。ユーザーにとってはすばらしいことですが、会社の経営的に本当に大丈夫なのでしょうか?

SF 我々の主たるビジネスは、ソフトウェアを販売することです。FL Studioの販売本数は、毎年右肩上がりで増加しています。特にこの5年間の売り上げは本当に力強いものでした。『ライフタイムフリーアップデート』は、ユーザーだけでなく、我々にとっても良い方策だと確信しています。我々は今後も、『ライフタイムフリーアップデート』を廃止するつもりはありません。たとえ将来、廃止したくなったとしても、『ライフタイムフリーアップデート』はユーザーに約束したことです。そう簡単に廃止することはできません。

——— お話しできる範囲で、次のバージョン・アップで考えていることをおしえてください。

SF 我々は7月12日に、いくつかのバグを修正した20.0.3をリリースしたばかりです。その先の予定については、まだお話しできる段階にありません。何か期待させることを言ってしまって、ユーザーの皆さんを失望させたくないですからね。それに我々は、ユーザーの皆さんを驚かせるのが好きですから。確実に言えるのは、我々はユーザーが求めている機能を順次追加していくということです。我々は現在、ユーザーからリクエストされた854もの新機能リストを持っています。ですので、しばらくはプログラマーが退屈することはありませんね。

——— 最後に、この記事を読んでいる人にメッセージをお願いします。

SF 日本の皆様のサポートには常に感謝しています。現在のFL Studioは、日本の皆様のサポート無しには存在しません。FL Studioのユーザー・コミュニティは、世界中に広がっています。FL Studioからどんな音楽が生まれるか、我々はいつも楽しみにしています。(日本語で)ガンバッテクダサイ!

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