Feature Image

FEATURE

製品開発ストーリー #33:コルグ KORG Gadget for Mac 〜 開発者が語る、大注目の“純国産DAW”のすべて

1月のNAMM Show直前に発表され、大きな話題となったコルグの新製品「KORG Gadget for Mac」。まだかまだかと待ちわびていた人も多いと思いますが、本日13時、遂に販売が開始されました。

KORG Gadget」は、コルグが2014年1月にリリースしたiOS向けの音楽制作アプリ。“ガジェット”と呼ばれる内蔵ソフト音源のクオリティの高さと、2画面でほとんどの操作が行えるシンプルかつ明快なユーザー・インターフェースで、世界中の人々から絶大な支持を集めています。

そんな「KORG Gadget」が、遂にMacでも使用できるようになりました。Mac版のリリースに合わせて、オーディオの録音/再生にも対応し、新しいドラム・マシン・ガジェット「Recife」が追加。また、Ableton Liveとの連携機能も大幅に強化され、「KORG Gadget」のトラックの状態をほぼ完璧にAbleton上で再現できるようになっています。さらにはガジェットをVST/AU/AAXプラグイン化した「Gadget Plug-in Collection」も付属。なんと「KORG Gadget for Mac」を購入すれば、約30種類ものソフト音源が付いてくる(!)というわけです。

コルグが満を持して送り出す“純国産DAW”、「KORG Gadget for Mac」。そこでICONでは、開発を手がけたスタッフに、そのコンセプトと機能、今後のビジョン(はたしてWindows対応はあるのか)について話を伺ってみました。インタビューに応じてくださったのは、株式会社コルグ開発部の福田大徳氏と中島啓氏のお二人です。なお「KORG Gadget」、Mac版の発売を記念して期間限定セールが行われていますので(Mac版は約33%OFF、iOS版は50%OFF)、このインタビューを読んで気になった方はこの機会にぜひどうぞ。

KORG - KORG Gadget for Mac

“音源ファースト”で開発された、まったく新しいDAW「KORG Gadget」

——— Mac版の話に入る前に、そもそも「KORG Gadget」とはどのようなコンセプトで誕生したアプリなのか、まずはその開発のスタート・ポイントからおしえていただけますか。

福田 ぼくはコルグに入社してからずっと、ソフトウェア製品の開発をメインに手がけてきたんですけど、そろそろ昔の名機を復刻するのではなく、新しいアプリを作ってみたいなと思ったんです。KORG Legacy CollectioniELECTRIBEiMS-20と、名機を元にしたアプリをずっと開発してきたので、何か新規で作ってみたいなと。

——— 音源アプリではなく、曲作りのための“音楽制作アプリ”を作ろうと思ったのですか?

福田 iMS-20も一見音源アプリのようなんですが、実はシーケンサーを搭載していて、それだけでちょっとした曲作りができてしまうんです。そんなイメージで、パソコン用のDAWほど高機能ではない、シンプルな音楽制作アプリを作ろうと考えました。そんなアイディアが浮かんだのがiMS-20をリリースした2011年暮れのことで、でも他の製品開発が忙しく、実際に開発をスタートしたのは2013年初頭のことだったと思います。

——— iPadをプラットホームとしたのは、iELECTRIBEiMS-20の流れから自然に?

福田 そうですね。iELECTRIBEは、iPad用に開発された最初の音楽アプリの一つですし、iPadというデバイスが登場してからずっとそれ用のアプリ開発を行ってきたので、他のプラットホームのことは特に考えませんでした。それに画面が大きく、指先で直感的に操作できるiPadというデバイスに可能性を感じていたというのもあります。ぼくらがイメージしていた音楽制作アプリにはベストなプラットホームだなと。

——— iPadで動くシンプルな音楽制作アプリということのほかに考えたことというと?

福田 現在主流となっているDAWは、MIDIシーケンサーが出発点だったからか、トラック中心の設計になっていて、実際に音を出力する音源はそのトラックにぶら下がっているというイメージじゃないですか。しかしぼくらは逆の発想で、音源を中心に据えようと考えたんです。最初に楽器や音色を選んで、それからフレーズを作るというプロセスを自然に行えるものにしたいなと。トラック側からではなく、音源の側からDAWを作ってみようと思ったんです。

それと大切にしたかったのは、それだけで曲作りができてしまう箱庭感。コントローラーを繋げたり、プラグインをインストールしたりしなくても、単体で曲作りができるようにしたいと思いました。

また、ニンテンドーDS用のDS-10を開発したチームでもあったので、ゲーム感覚で曲作りができるようにしたいなということも考えましたね。

中島 でも最初は手探りで、メンバー間でもかなり議論がありました。本当にビギナー向けにしてしまうのか、それともプロも使えるようなものにするのかとか。しばらくは落としどころを探っていた感じでした。

福田 そしてスクラップ&ビルドを繰り返して、最終的に“ガジェット”と呼ばれる音源をたくさん搭載し、2つの画面を切り替えながら曲作りを行うという「KORG Gadget」の基本コンセプトが出来上がったんです。

KORG - KORG Gadget for Mac

株式会社コルグ開発部の福田大徳氏(写真右)と中島啓氏(写真左)

30種類以上のオリジナル音源=ガジェットを標準搭載

——— 「KORG Gadget」で高く評価されているのが、その秀逸なユーザー・インターフェースです。メイン画面とエディット画面という2画面構成で、メイン画面は上にトラック、下にミキサー、エディット画面は上にピアノ・ロール、下にガジェットのUIが表示される。このシンプルで明快なユーザー・インターフェースは、「KORG Gadget」の大きなウリになっていますね。

福田 そうですね。最初はiPadを横向きで使うユーザー・インターフェースも検討してみたんですが、パソコン用のDAWをiPadにそのまま表示させている感じで、どうも使いづらかった。そのときに思い出したのが、ニンテンドーDSの2画面なんです。ニンテンドーDSのようなイメージで、上にピアノ・ロール、下にガジェットのUIを表示すれば、フレーズの入力と音色のエディットが同時にできていいんじゃないかと。あとは上がトラック、下がミキサーのメイン画面を用意すれば、2画面/4つのエリアでほとんどすべての操作ができてしまうんじゃないかと思ったんです。

中島 好みの音色のガジェットを選んで、あとは打ち込むだけ。このユーザー・インターフェースのおかげで、凄くショートカットされたワークフローが実現できたと思います。

——— 「KORG Gadget」が発表になったとき、DAW的な音楽制作アプリでありながら、iPadを縦向きで使うのが斬新だなと感じました。

福田 トラックを第一に考えてしまうと、どうしても横向きのユーザー・インターフェースになってしまうんです。しかし先ほどもお話ししたとおり、ぼくらは音源を中心に据えたかったので、ガジェットのUIを常に表示させておくには縦向きの方が良かったんですよね。あと、iPhone対応も考えていたので、その場合横向きのユーザー・インターフェースはあり得ないというのもありました。

中島 でも一部のユーザーさんから、“自分のiPadケースは縦向きだと使いづらい”という声をいただきまして(笑)、バージョン1.0.3でランドスケープ・モードも搭載しました。ですので現在は、縦横どちらの向きでも使うことができます。

——— ユーザー・インターフェースが青と黄の2トーン・カラーというのも凄く良いと思います。

福田 どんなカラーリングにするか悩んだんですが、あるときが使っていた某アウトドア・ブランドのリュックを見て、“あ、良い配色だな”と思って決めました(笑)。それと個人的にYahoo!の天気アプリが好きなんですけど、あのアプリって快晴のときは青色で表示されるじゃないですか。あんな感じの爽やかな青色にしたかったんです。

KORG - KORG Gadget for Mac

iPadで動作する「KORG Gadget」。このように「KORG Gadget」は上下2画面構成になっている。写真はメイン画面で、上にトラック、下にミキサーが表示される

——— フレーズの入力方法に関しては?

福田 iPad用アプリということで、キーボード・コントローラーを接続しなければ打ち込めないというのはナンセンスだと思い、『ガジェット・キーボード』というソフトウェア・キーボードを搭載することで、指先でフレーズを入力できるようにしました。『ガジェット・キーボード』はスケールを指定することができるので、指先でも楽曲のキーから外れない演奏ができるようになっています。このあたりは、Kaossilatorで培ったノウハウが活かされていますね。

——— 音源となるガジェットは、最初のバージョンで15種類搭載され、その後もどんどん新しいものが追加されていき、現在は30種類以上用意されています。これだけの数の音源を開発するのは大変だったのではないですか?

福田 ガジェットに関しては、バージョン・アップでどんどん増やしていこうと考えていたので、まずは開発ツールを作ろうと思ったんです。Native Instruments ReaktorやCycling ’74 Maxのような開発ツールを作ってしまえば、その後のガジェット開発がラクになるのではないかと……。でも、そんな悠長なことをやっていたら少なくとも5年はリリースできないことが分かって(笑)。開発ツールを作るのはあきらめました。

——— それではすべて1つずつ開発したのですか?

福田 最初のバージョンで搭載した15種類のガジェットは、実はすべてKORG Legacy CollectionMono/Polyがベースになっているんです。実はKORG Legacy CollectionMono/Polyって凄く評価が高くて、実際ソフト・シンセとしてかなり良く出来ているんですよ。ですからMono/Polyのアルゴリズムを元に、オシレーターをサンプル・プレイバッカーに入れ替えたり、FM化したりして開発を行ったんです。

中島 とはいえ、実際はかなり手を加えているので、Mono/Polyの原型をとどめていないものがほとんどですね。別の音源と言っていいと思います。

福田 当初50種類ガジェットを搭載しようと考えていたんですが、15種類作るのが限界でした(笑)。

——— ガジェットにはすべて独自のユーザー・インターフェースが備わっているのがいいですね。

中島 音色に合わせて、いろいろなデザイナーにデザインしてもらっています。ユーザー・インターフェースに関しては、パラメーターを限定することで、操作が分かりやすくなっているのもポイントですね。パラメーターを増やすのは簡単なんですけど、エディットしにくかったら意味が無いですから。

——— 各ガジェットの名称は世界中の都市名なんですよね。

福田 そうです。最初のガジェットを作ったときに、名前を付けるのに1週間くらい悩んでしまったんですよ(笑)。こんなことに時間をかけるのはマズいと思い、都市名というルールを決めて、ガジェットに合った名前を付けることにしました。

KORG - KORG Gadget for Mac

——— 内蔵エフェクトについておしえてください。

中島 リバーブとリミッターという2種類のマスター・エフェクトに加えて、ガジェットの出力に最大5つのエフェクトをインサートすることが可能になっています。インサート・エフェクトは、コンプレッサー、EQ、フィルター、ディレイなど、計10種類のプログラムが用意されています。ガジェット本体にもエフェクトが内蔵されているものもありますので、かなり多彩な音作りが可能ですね。

——— ほとんどDAWという感じですが、これだけの機能をiPadで実現するのは大変だったのではないですか?

福田 そうですね。最初のバージョンをリリースしたときはまだiPadはそれほどパワーがあったわけではないので、がんばって処理を最適化しました。どうしても厳しいガジェットは機能を削っていったりして。それと「KORG Gadget」の開発では、動作をできるだけ軽快にするために、プログラミング言語はアセンブラを採用しているんです。これは今でもそうですね。

中島 その結果、第4世代のiPadでは16トラック程度なら問題なく使えるようになりました。その後発売になったiPad Airで一気に処理能力が上がり、30トラックくらい使えるようになったんです。現行のiPad Proでは50トラック以上、普通の曲作りだったら処理能力のことを気にする必要はないと思います。

福田 引っかかるとしたら処理能力よりもメモリーですね。でも、ほとんど問題ないと思います。

Mac版のリリースに合わせて、待望のオーディオ録音/再生に対応

——— そしていよいよMac版が発売になるわけですが、iOS用音楽制作アプリとして開発された「KORG Gadget」を、Macに移植しようと思ったのはどうしてですか?

福田 世界的にユーザーが増えていっているので、その世界をもっと広げていきたいと思ったんです。そうなると、次はやはりMacかなと。なぜならiOSとmacOSではAPIがほとんど共通ですから、比較的容易に対応版を開発することができる。また、iCloudという共通のクラウド・サービスが用意されているので、ワークフローという面でも大きなメリットがあるのではないかと思ったんです。iPhoneで始めた曲作りを、自宅のMacでシームレスに続けることができますからね。

——— iOS版とMac版の違いというと?

福田 基本的には同じと思ってください。Mac版のリリース・タイミングで追加した新機能は、iOS版にも同じように追加します。ですので、決してMac版はiOS版の上位バージョンというわけではありません。ただ、iOSデバイスとMacではハードウェアが異なりますので、いくつか違う点もあります。

まず、ユーザー・インターフェースが違います。Macのディスプレイは当然横長ですので、左にメイン画面、右にエディット画面が表示され、画面を切り替えることなく作業ができるようになりました。

またMac版には、すべての『ガジェット』をプラグイン化した「Gadget Plug-in Collection」が付属します。これによってお気に入りの『ガジェット』を他のDAWソフトウェアで使用することが可能になります。

KORG - KORG Gadget for Mac

KORG Gadget for Mac」のウィンドウ。iOS版では2画面切り替えだったのが、1画面に4つのエリアすべてが表示できるようになった。右下のガジェットは、オーディオの録音/再生を実現する『オーディオ・トラック・ガジェット』の「Zurich」

——— Mac版のリリース・タイミングで追加される新機能についておしえてください。

福田 多くのユーザーの皆さんからリクエストされていたオーディオ機能が遂に搭載されます。ただ、一般的なDAWソフトウェアとは違い、『オーディオ・トラック・ガジェット』という新しいタイプのガジェットを使用することで、オーディオの録音/再生が可能になります。

中島 今回のバージョンでは、ボーカルなどオールマイティーに使える「Zurich」と、ギター用の「Rosario」という2種類の『オーディオ・トラック・ガジェット』が搭載されます。

——— 『オーディオ・トラック・ガジェット』の中にオーディオが録音されるのですか?

中島 いいえ、そういうわけではなく、他のDAWソフトウェア同様、オーディオはソングに録音されます。ですので、波形もしっかり表示されます。『オーディオ・トラック・ガジェット』は、オーディオを録音/再生するためのインターフェース兼エフェクト・プロセッサーとして捉えてください。「Zurich」を使って録音した後、『オーディオ・トラック・ガジェット』を「Rosario」に変更することもできますし、WAVやAIFF、MP3、AACの各フォーマットのオーディオ・ファイルをインポートすることも可能です。

福田 一般的なDAWソフトウェアと同じように、普通のオーディオ・トラックを搭載してもよかったんですが、そうすると“空のトラックに録音する”という普通のレコーダーのような感じになってしまうじゃないですか。そうではなく、「KORG Gadget」では録音したオーディオもガジェットとして扱いたいなと思ったんです。オーディオ・トラックの後段にプラグイン・エフェクトがあるという感じではなく、音作りのための『オーディオ・トラック・ガジェット』が前面にあって、その裏にオーディオがあるというイメージですね。

——— 2種類の『オーディオ・トラック・ガジェット』にはどのような特徴があるのですか?

中島 「Zurich」は色付けのない万能な『オーディオ・トラック・ガジェット』で、「Rosario」はギター用のエフェクト/アンプ・プロセッサーになっています。今後、新しいタイプの『オーディオ・トラック・ガジェット』も追加していく予定です。

——— ソングの頭から最後まで通して録音することもできるのですか?

福田 もちろんできます。シーンを跨いでの録音も可能です。

——— 編集機能に関しては?

中島 ソング上で、オーディオのスタート・ポイントとエンド・ポイントを変えたり、ゲインを調整したりすることが可能です。編集機能に関しては、これからもう少し強化していこうと思っています。

——— 内部処理はどんな感じですか?

中島 処理の解像度は、ガジェットによって異なりますが、浮動小数点処理です。

——— オーディオ・ファイルのインポートには対応しているようですが、エクスポートについては?

中島 16/24bit、44.1〜96kHzのWAVファイルとしてエクスポートすることが可能です。

KORG - KORG Gadget for Mac

新型MacBook ProのTouch Barにも対応

——— その他の新機能というと?

福田 Ableton Liveとの連携機能が強化されました。Ableton LiveのプロジェクトであるALSファイルを書き出すことができるんですが、Macで「Gadget Plug-in Collection」がインストールしてある環境なら、ガジェットを含むトラックの状態がAbleton Live上で完璧に再現されます。これによって、「KORG Gadget」に入力した曲のアイディアをAbleton Liveで膨らませるといったワークフローを、よりシームレスに行うことができます。

——— それは凄いですね。Abletonの協力で実現した機能なのですか?

福田 いいえ、ぼくらだけで実装した機能です。Abletonのスタッフには知らせてません(笑)。ゆくゆくはAbleton Liveだけでなく、Pro Toolsなど他のDAWソフトウェアでも同じような連携機能を実現したいと思っています。

中島 Mac版だけでなく、iOS版でも同じようにALSファイルを書き出すことができます。ただ、Ableton Liveでガジェットを使用するためには、iOS版のユーザーもMac版を購入していただく必要があります。

——— なるほど、「Gadget Plug-in Collection」はオマケにしては太っ腹だなと思ったんですが、Ableton Liveとのシームレスなワークフローを実現するためには、プラグイン化したガジェットが必要だったというわけですね。

福田 そのとおりです。もちろんオマケではあるんですが(笑)、理想のワークフローを考えたときにガジェットのプラグイン化は避けては通れないなと思ったんです。ぼくらは「KORG Gadget」で曲のスケッチをして、より高機能なDAWソフトウェアでそのアイディアを膨らませるというワークフローを提案しているわけですが、鳴っている音源が違うというのは良くないじゃないですか(笑)。

——— それでも「Gadget Plug-in Collection」目当てで購入する人は多そうです。

中島 ぼくらとしては、それでOKだと思っています。ガジェットを入り口に「KORG Gadget」のユーザーが増えてくれれば。一度使っていただければ、その良さが分かっていただけると思いますので。

——— iOS版には有料のガジェットも用意されていますが、Mac版ではどうなるのですか?

福田 バンダイナムコスタジオのサウンド・チームと共同開発した「Kamata」も、M1をソフト化した「Darwin」も、すべて入れてしまいました。ですので、「KORG Gadget for Mac」を購入していただければ、MS-20やM1、ARP ODYSSEYなど、30種類以上のソフト音源が手に入ることになります。

中島 WAVESTATIONを元にした「Milpitas」のみ、次期バージョンでの提供となります。

——— AAXにも対応しているのがすばらしいですね。

福田 最近はPro Toolsで曲作りをしている人も多いですから、そのあたりはしっかり対応させようと。あとは次期バージョンでNative InstrumentsのNKSにも対応しますので、ガジェットのパラメーターをKOMPLETE KONTROLで操作できるようになります。

——— iOS版とMac版は、機能的にはほとんど同じとのことですが、音質も一緒なのでしょうか。

福田 音はまったく一緒です。ですからiOS版とMac版を違和感なく使い分けていただけると思います。

KORG - KORG Gadget for Mac

Windowsやゲーム機で動作する「KORG Gadget」も検討中

——— Mac版の開発は大変でしたか?

福田 考えていた以上に大変でしたね。ただ、苦労しただけあって動作は軽快です。処理の最適化をゴリゴリにやりましたから。

中島 本体もそうですが、「Gadget Plug-in Collection」の開発が大変でした。プラグインは、ホストによって挙動が違ったりするので……。

——— 「KORG Gadget」の開発はすべて国内で行っているのですか?

福田 はい。すべてここ(註:コルグ本社)で作っています。ですから“純国産DAW”と言っていいと思います。

——— Mac版は今後、どのように進化させていきたいと考えていますか?

福田 ユーザーの皆さんの意見に耳を傾けながら進化させていきたいと考えているんですが、シンプルさはできるだけキープしていきたいですね。特にこの1枚完結のユーザー・インターフェースは維持したいと考えています。別ウィンドウが必要となるような機能はできるだけ搭載しないように(笑)。

——— ユーザーの要望に従って機能を追加していくとどうしても複雑になっていってしまいますし、シンプルさを維持しながらバージョン・アップしていくのは大変そうですね。

福田 そうですね。Ableton Liveも昔はシンプルだったわけですからね。せめぎ合いになると思いますが、できるだけシンプルさはキープしていきたいと思っています。機能面に関して言えば、今回Allihoopaに対応したのですが、今後もこのような新しいインターネット・サービスには積極的に対応させていきたいですね。

——— VST/AUプラグイン対応はあり得ますか?

福田 絶対要望はあるでしょうし、考えてはいるんですが、気になっているのがスピード感が損なわれてしまうのではないかということです。曲を作りたいと思ったときに即立ち上がるというのは「KORG Gadget」の大きな魅力だと思っているんですが、プラグインに対応させると起動が遅くなってしまうじゃないですか。大量にプラグインがインストールしてある環境ですとかなり時間がかかりますし、途中ライセンスに関するダイアログが表示されたりして、なかなか先に進まなかったり(笑)。即起動するスピード感は維持したいので、どうしようか悩んでいるところです。完全にプラグイン対応させてしまうのではなく、プラグインを使用するためのオプションを提供するという方法もありなのかなと。

——— Windows対応に関しては?

福田 特にAppleのプラットホームにこだわっているわけではないので、可能性はあります。Windowsだけでなく、ゲーム機に対応させてもおもしろいんじゃないかと思っているので、将来的にはいろいろなマシンで「KORG Gadget」が動いている可能性がありますね。

——— 最後に開発者的に注目してほしい点があればおしえてください。

中島 ぼくはシンプルなワークフローと、各ガジェットの音色ですね。どれも個性的なのでぜひチェックしていただきたいです。

福田 Ableton Liveとの連携ですね。「KORG Gadget」上のトラックがほぼ完璧に再現されるので、本当にシームレスな連携が実現できていると思います。あとはシンプルなユーザー・インターフェースによる使い勝手の良さ。DAWって、立ち上げるまでが腰が重かったりするじゃないですか(笑)。その点「KORG Gadget」は起動が速いので、思いついたときにパッと曲作りができると思います。

KORG - KORG Gadget for Mac

コルグ、nanoシリーズの新作「nanoKEY Fold」を発表…… 昔のケータイのように折りたためる、斬新なデザインのキーボード・コントローラーが誕生

teenage engineering、新製品「OP-XY」を発表…… 誰でも簡単にコード進行を作ることができる、次世代”シーケンス・シンセサイザー”が登場

Sonarworksの音響補正ツール SoundID Referenceが、Universal Audio Apollo Xに対応…… DSPでキャリブレーションすることが可能に

Native Instruments、「Maschine 3」を発表…… iZotope RX直系のステム・セパレーション機能を搭載、MP3などの圧縮オーディオのインポートにも対応

4つのノブでステムをミックスできる“クリエイティブ・ミキサー”、Native Instruments「Traktor Z1 MK2」がデビュー…… Traktor Pro 4が無償バンドル

iZotope、次世代ミキシング・スウィート「Neutron 5」を発表…… 3種類の新モジュールが追加、MPS 7も同時リリース

IK Multimedia、Bösendorfer 214VCをサンプリングしたPianoverseの新作、「Black Pearl B200」をリリース

“どこでも作曲マシン”、「Ableton Move」がデビュー…… バッテリー駆動、スピーカーやマイクも内蔵したコンパクトな音楽制作デバイス

IK Multimedia、TONEXの誕生2周年を記念して、TONEX Pedalのホワイト・バージョンを発売…… 完全数量限定

原音の明瞭度をキープできる画期的な“アンマスク・リバーブ”、iZotope「Aurora」がデビュー…… 画像編集のマスク処理のようなリバーブが登場

来たる10月18日、ジョナサン・ワイナーのマスタリング・セミナー第二弾が開催…… エアロスミスやデヴィッド・ボウイの作品を手がけた匠が、その技を徹底解説

ボーカル・トラックの歌声をまったく異なる声質に変換できるプラグイン、Sonarworks「SoundID VoiceAI」が2.0にアップデート…… 待望の永続版ライセンスも登場

IK Multimedia、ホワイト・バージョンのiLoud MTM MKIIを本日から販売開始…… 最新の『ARC』音場補正機能に対応

teenage engineeringのクルマ型オブジェ、「grip car」の国内販売がスタート…… B&O製品などで知られるアナース・ハーマンセンがデザイン

Product Review: 鈴木”Daichi”秀行が聴く、IK Multimedia「iLoud Micro Monitor Pro」

IK Multimedia、新製品「iLoud Micro Monitor Pro」を発表…… XLR入力を備え出力は2倍に、音場補正機能『ARC』も搭載

Apogee、1U筐体の新型オーディオIF、「Symphony Studio」を発表…… “マスタリング・グレード”の音質を実現、イマーシブ・プロダクションにも対応

iZotope、新作「Plasma」を発表…… 誰でも簡単に理想的なサウンドが得られる、“機械学習チューブ・サチュレーター”が登場

ICON