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製品開発ストーリー #30:VOCALOOP 〜 歌声を自在にシーケンスできる、VOCALOID音源を搭載した電卓型ループ・シーケンサー 〜

2014年3月に発表され、大きな話題を呼んだ「VOCALOOP(ボカループ)」が今月9日、遂に発売になりました。加々見翔太氏(コバルト爆弾αΩ)率いるクリエイター・チーム、“あにぞん(Anizon)”が開発した「VOCALOOP」は、非常にユニークな“ボーカル・ループ・シーケンサー”。昔のケータイのような感覚で言葉を入力し、その歌詞をリアルタイムに歌わせることができる、手のひらサイズの電子楽器です。歌声を生成する音源はヤマハ NSX-1(eVocaloid)で、まさに“スタンドアローンで使用できるVOCALOID+専用シーケンサー”と言っていいでしょう。

VOCALOOP」がおもしろいのは、歌詞を入力する『リリックモード』と、メロディーを入力する『メロディモード』が独立しているところ。これによって、同じメロディーを違う歌詞で歌わせたり、同じ歌詞を違うメロディーで歌わせるといったことが簡単に行えるようになっています。また、ループ再生しながらリアルタイムにパラメーターをエディットできる点も「VOCALOOP」の大きな特徴で、メロディーを逆方向に再生したり、歌詞の読みだし位置を変えたりすることで、新しいフレーズを偶発的に生み出すことができます。

音系ガジェットのセンター・ポジション、“ガジェット界のボーカリスト”(by 加々見氏)を標榜する新感覚の電子楽器「VOCALOOP」。その開発コンセプトと発売に至るまでの経緯について、“あにぞん”の加々見翔太氏(企画/インタラクション担当)、内田亮太氏(デザイン担当)、白川徹氏(ハードウェア設計担当)、佐々木敦史氏(回路/ソフトウェア設計担当)の4氏に話を伺いました(註:“あにぞん”はもう一人、片岡大祐氏(ソフトウェア設計担当)を含む5人のチームです)。

VOCALOOP

日本語歌声ループ・シーケンサー「VOCALOOP」

——— 「VOCALOOP」は、日本語の歌声を自由自在にシーケンスできる、とてもユニークな電子楽器です。まずは、“歌声シンセサイザー音源のループ・シーケンサー”を開発しようと思ったきっかけからおしえてください。

加々見 ぼくはDJやVJをやったりするんですけど、クラブ・ミュージックって4小節ごとに人間のかけ声が入ったりするじゃないですか。“Hey!”とか、“Disco!”とか(笑)。それがけっこう好きだったりするんですけど、そういえばそんなかけ声をシーケンスできるガジェットって無いなと思ったのがそもそもの始まりですね。それが約3年半前のことで、神田のカフェでデザイン担当の内田くんに、“こういうモノを作ろうと思っているんだけど、どう思う?”と相談したのをよく憶えています(笑)。それで早速Cycling ’74 Maxを使ってループ・シーケンサーのパッチを作り、ゆっくり系ボイスのAquesTalk(註:アクエストが開発した音声合成ソフトウェア)を鳴らすところから試作を開始しました。それから間もなくしてヤマハからeVocaloidが入ったNSX-1(註:ヤマハが開発した音源チップ)が発売になり、どうせだったらVOCALOIDを音源にした方がおもしろいものになるんじゃないかと思い、eVY1(註:NSX-1を積んだアイデステクノロジの音源ボード)を使うことにしたんです。

——— VOCALOIDを歌わせるだけだったらDAWで十分だと思うんですが、単体で使用できる“スタンドアローンの歌声シーケンサー”を作ろうと。

加々見 そんな感じですね。あとはループ・シーケンサーというのも肝で、例えば6音のメロディーで5文字の歌詞をループ再生すると、メロディーに対して歌詞が1文字足りないので、ちょっとずつズレていくんですよ。もちろん日本語としては破綻してしまうんですけど、その偶発的な感じがおもしろいなと。完全なランダムではなくて、自分が打ち込んだメロディーと歌詞から新しいフレーズが生まれるのがおもしろいんです。

VOCALOOP

「VOCALOOP」を開発したクリエイター・チーム、“あにぞん(Anizon)”。写真左から、加々見翔太氏(企画/インタラクション担当)、佐々木敦史氏(回路/ソフトウェア設計担当)、内田亮太氏(デザイン担当)、白川徹氏(ハードウェア設計担当)

——— 「VOCALOOP」の機能について、あらためておしえてください。

加々見 基本はVOCALOIDを音源とするループ・シーケンサーで、歌詞を入力する『リリックモード』と、メロディーを入力する『メロディモード』を備えています。コンピューターでVOCALOIDを歌わせる場合は、メロディーの音符一つ一つに言葉を載せていきますが、「VOCALOOP」では歌詞とメロディーを無関係に入力するというのがポイントですね。歌詞とメロディーは、それぞれ最大16個登録することができ、メロディーをループ再生しながら歌わせたい歌詞を選択します。歌詞を切り替えれば、メロディーはそのままで、歌詞だけが変わります。

——— 歌詞は何文字まで、メロディーはどれくらいの長さ入力できるんですか?

加々見 LCDディスプレイが1行16文字なので、歌詞は濁点/半濁点入れて最大16文字までで、メロディーの長さは1小節です。それをそれぞれ16個登録することができます。

——— 歌詞とメロディーの選択以外に、どんなパラメーターが用意されているんですか?

加々見 エンコーダーが4基備わっているんですが、『リリックモード』では歌詞の再生開始位置と再生終了位置、歌詞を読み進める方向をリアルタイムに変化させることができます。例えば、“こんにちは”という歌詞の再生開始位置を後ろにズラして“にちは”だけにしたり、逆方向から“はちにんこ”と歌わせたりできるんです。一方、『メロディモード』ではメロディー全体のオクターブ・シフトとピッチ・シフト、メロディーの再生方向を変化させることができます。これらのパラメーターを使って、1つの歌詞やメロディーからいろいろなフレーズをリアルタイムに生み出せるのが「VOCALOOP」の一番の特徴ですね。

——— 歌詞の再生開始位置と再生終了位置をリアルタイムに変えられるのがおもしろいですね。

加々見 そうですね。例えば“ポリリズム”という歌詞の再生開始位置をズラして、途中から“リズム”だけにすれば、Perfumeの『ポリリズム』もできたりします(笑)。あとは再生に関しても、単純な逆再生だけでなく、進んで戻るような再生もできるので、本当にいろいろなフレーズを生み出すことができますね。

VOCALOOP

——— エフェクトなどは入ってないのですか?

加々見 ビブラート、リバーブ、コーラス、バリエーションの4種類のエフェクトを同時に使用できる『エフェクトモード』と、2バンドのEQをかけることができる『EQモード』を装備しています。

佐々木 これらはNSX-1標準の機能で、けっこう遊べますね。

加々見 EQに関しては最初入れるつもりはなかったんですが、今回販売をお願いしたギズモミュージックの方に、“入れられるんだったら入れた方がいい”とアドバイスいただきまして。結果、入れて正解でしたね。クラブで使うときなどにEQで音圧を出したりできますから。

——— 電池駆動対応で、スピーカー内蔵なのがいいですね。

加々見 はい。アルカリの単4電池3本で動作します。背面にはmicroUSB端子も装備しているので、モバイル・バッテリーにも対応しています。スピーカーは下部に搭載してあり、上部にはステレオ・ミニの出力端子とボリューム・ダイアルが備わっています。

——— MIDI同期にも対応しているんですか?

加々見 MIDI入力端子を装備しているので、外部機器とテンポ同期させることができます。MIDI入力端子はステレオ・ミニ端子なんですが、普通の5pin DIN端子との変換ケーブルが付属しています。インターナル・クロックのテンポは、『リリックモード』と『メロディモード』のどちらからでも8〜320BPMの範囲で設定することができます。

VOCALOOP
VOCALOOP

思いがけないフレーズを偶発的かつリアルタイムに生成可能

——— 開発は、加々見さんが作ったMaxのパッチをハードウェアに落とし込んでいく形でスタートしたのですか?

白川 そうですね。今日来れなかった片岡さんが初期の回路設計とソフトウェア開発を行い、後から佐々木さんが参加して。

佐々木 eVY1やLCDディスプレイなどは、外付けのマイコン、PSoCやAtmel AVRを使って制御しています。

——— 開発にあたって苦労した点というと?

佐々木 eVY1がかなりの曲者で、MIDIメッセージを大量に送ると詰まってしまったりとか、文字も空白データだけ送ると止まってしまったりとか。そこで沼にハマることがけっこうありましたね(笑)。

加々見 かなりテストしたので、販売バージョンでは固まらないと思います。

——— デザイン面で意識したのは?

加々見 Kraftwerkの電卓や、ゲームボーイは意識しましたね。

内田 最初は横型筐体の真ん中にディスプレイを配置して、両手で操作するようなデザインを考えていたんですよ。右手で歌詞、左手でメロディーを入力するような感じで。でも、ライブでの使いやすさを考えて、縦型の筐体に落ち着きました。縦型の筐体に、昔のケータイのような日本語入力のインターフェースを搭載するのがいいんじゃないかと。これが一番日本語を簡単に入力できますし、シーケンサー的にも4×4のグリッドというのは分かりやすいですしね。そこから筐体のサイズを詰めていったんですが、最後はチップチューンを意識して、初代ゲームボーイを意識した寸法にしました。そしてNSX-1のeVocaloidは女声なので、女性っぽく角を丸めて白色にしたという感じです。

加々見 ディスプレイは、16文字が2行ですね。16文字くらいが、テクノ的にはちょうどいいんじゃないかなと。

白川 筐体の材質はナイロンで、3Dプリンターで製作しています。白色と裏側の黒色は塗装ですね。

VOCALOOP

——— イメージどおりのものが出来上がったという感じですか?

加々見 はい。実物は想像していた以上に楽しくて、時間を忘れていじってしまいますね。先ほども言いましたけど、偶発的にフレーズを作れるのが本当におもしろくて、単純に逆再生しただけでも発見があったりします。

佐々木 こういう楽器って、これまで無かったですよね。開発中も思わず遊び始めてしまうんです(笑)。

白川 ウッチー(内田氏)が“アキバ”とか東京の地名を打ち込んで、コルグ ELECTRIBEと同期していたんですけど、バックトラックの雰囲気と地名のイメージがマッチする瞬間があるんですよ。それを聴いて、これはおもしろいなと思いましたね。

内田 プロト・タイプをELECTRIBEと組み合わせてDJで使ったんです。そのときもイベントに関連するワードをあらかじめ打ち込んでおいて使ったんですが、とても楽しかったですね。かなり可能性のあるガジェットだなと思いました。

——— またeVocaloidの素朴な歌声がいいですよね。

加々見 そうですね。ちょっとロボットっぽいというか、調教されていないVOCALOIDという感じで、それがすごく新鮮なんです。

VOCALOOP
VOCALOOP

eVY1のディスコンにより、15台しか販売されない「VOCALOOP」

——— そしていよいよ今月9日、「VOCALOOP」の一般販売が開始されます。それにしても発表からかなり時間がかかりましたね。

加々見 ソフトウェアの開発がけっこう大変で、みんな仕事がありますし、手弁当でやっているので、なかなか思ったように進みませんでした。途中、1年くらい止まってしまいましたしね。でも、佐々木さんがこっそり開発を進めてくれていて、今年のゴールデン・ウイーク明けくらいにかなり完成度の高いバージョンを見せてくれたんですよ。そのときは、“あ、こんなにできたんだ!”とビックリしましたね。それでこのままやれば、ようやく完成までたどり着けるんじゃないかと。

——— 「VOCALOOP」は、プロダクトのようなアート作品で、一般には販売しないのかなと思っていました。

加々見 いや、最初から発売するのが目標だったんです。これはぼくのフェティシズムだと思うんですけど、昔から人が使う道具を作るのが好きで。以前はメーカーで電子楽器の開発に携わっていましたし、趣味でVJソフトウェアを作ったりもしましたし。一点もののアート作品ではなく、プロダクトとして仕上げたいというのは最初からありました。

——— 一発当てたいとかではなく……。

加々見 お金を儲けるんだったら絶対に他のことをやった方がいいですよ(笑)。本当にみんな手弁当でやってますから。

——— 今回、残念なことに15台しか生産されないんですよね。

加々見 完成して、いざ量産しようとしたら、eVY1がディスコンになってしまっていたんです。それで慌ててショップに残っている在庫を探して、何とか15個確保したんですが……。

佐々木 もうちょっと作ってくれていると思ったんですけどね。

加々見 ですから「VOCALOOP」は、ぼくらのぶんを合わせても地球上に約20台しか存在しません。

VOCALOOP

15台限定で生産される「VOCALOOP」。箱の中にはエディション・ナンバーが記されたカードとステッカーが封入される

——— 今後、他のスピーチ・シンセサイザー・チップを積んだ別バージョンの「VOCALOOP」が生産される可能性はありますか?

加々見 “Disco!”と言わせられればいいので(笑)、他のチップを使ってもいいかもしれないですね。最近はいろいろスピーチ・シンセサイザーのチップがあるので。まだ具体的なことは何も決まってないんですけど……。

——— CVでコントロールできるEurorackバージョンとかもおもしろそうですよね。

加々見 それ、坂巻さん(コルグの坂巻匡彦氏)にも言われました。確かにEurorackは流行っているのでおもしろいなと思います。今回の「VOCALOOP」が“あにぞん”の最初の作品になるんですけど、みんないろいろアイディアを持っているので、また何か一緒に作れたらいいですね。明日の飲み会で話し合おうと思います(笑)。

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