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連載『アイドルソングの作り方 〜 HOW TO MAKE “IDOLSONG”』by CHEEBOW 〜 第8回:作曲ができるようになる方法

作曲したい!

「どうしたら作曲ができるようになりますか?」とたまに聞かれます。イラストを描いたり、小説を書いたりするのとは違い、曲を作るというのはちょっと敷居が高いと感じる人が多いようです。「作曲してみたいけれど、楽器はできないし、音楽理論も知らないし……」と言われることもあります。ピアノを前に五線紙に音符を書く、昔ながらの作曲家のイメージも大きいのかもしれません。

でも実は、「作曲」はみなさんが思っているよりもはるかに簡単です。時は21世紀。パソコンを使えばありとあらゆる楽器を鳴らすことができ、実際に音を出して試しながら曲を完成させていくことができます。楽器ができなくても(ぼくもそうです!)、音楽理論を知らなくても大丈夫。曲を作るのも、イラストを描いたり、小説を書いたりするのと変わりません。音楽も聴くだけでなく、自分で作ることができるのです。

そもそも「作曲」とは

ひとくちに「作曲」と言っても、ぼくにとっての「作曲」と、曲作りをしたことがない人がイメージする「作曲」とでは、かなり違うなと感じることがあります。

ぼくにとって「作曲」は、メロディーを作り、それに合わせてコードを付ける行為のことを指します。そこから先、ドラムやベース、ギターなどの音を重ねて伴奏を作っていくのは、「編曲(アレンジ)」です。そしてボーカルや生楽器を録音し、最終的な音源を作る行為は、「レコーディング」「ミックス」「マスタリング」といった作業になります。

曲作りをしたことのない人は、「作曲」「編曲」「レコーディング」「ミックス」「マスタリング」、それらすべてをまとめて「作曲」と捉えていることが多いようです。当然と言えば当然です。普段耳にしている音楽は、「マスタリング」後の完成形なのですから。

「ミックス」や「マスタリング」を経た完成形を作るのは大変ですが、「作曲」そのものは実は簡単に始めることができます。鼻歌で適当にメロディーを口ずさんだなら、それはもう「作曲」と言えます。鼻歌をスマートフォンなどに録音し、「編曲」のできる人にアレンジしてもらえば、普段聴いている「音楽」になります。

ただ、「作曲」はすぐにできても、「編曲」はそう簡単にはいきません。おそらく初心者にとって最も敷居が高いのは「編曲」ではないかと思います。楽器やコードの知識、リズム・パターン、DAWの操作、打ち込みテクニックなどなど、覚えなくてはいけないことがたくさんあります。その壁の高さに、ここで怖気付いてしまう人も多いのではないでしょうか。

今回は、できるだけ敷居を下げて、誰でも実践できる「作曲法」「編曲法」を書いていきたいと思います。これは、ぼくが実際にやってきたことでもあります。

How to make IDOLSONG

「歌本」を使った「鼻歌作曲法」

先ほども書きましたが、鼻歌で適当にメロディーを口ずさめば、それはもう「作曲」と言えます。しかしこの「鼻歌作曲法」、簡単なようで実は結構難しいのです。メロディーを口ずさんでいるうちにいつの間にか転調していたり、曲調がどんどん変わっていったりと、でたらめな曲になりがちなのです。実際、ぼくがそうだったんですが、鼻歌で良いメロディーができたと思っても、楽曲として成り立っていないことがほとんどでした。それで鼻歌で作るからダメなんだと思い、家にあったエレクトーンでメロディーを作るということもやってみたんですが、これも鼻歌と同じでどんどん展開してしまい、できる曲は大抵まとまりがないのです。そんなことを繰り返しているうちに、ある日ふと、これはメロディーを走らせるための「線路」が無いからなのではないかということに気づきました。「線路」が無いから、メロディーがあっちこっちに行ってしまうのではないかと。

その昔、妹が買っていた芸能雑誌に「歌本」という付録が付いていました。「歌本」は、いろいろな曲の歌詞とコードが載っている冊子です(現在は雑誌の付録ではなく、「歌本」としていろいろ出版されていますので、本屋で探してみてください)。ぼくはこの「歌本」を参考に、知っている曲のコードを弾きながら歌って遊んでいたんですが、あるときそのコードに元曲とはまったく違うメロディーを乗せれることに気づいたのです。既に完成された曲のコード進行ですから、その上に適当に乗せたメロディーも、きちんと曲になっていました。コード進行という「線路」のおかげで、しっかり曲として成立するメロディーを作ることができたのです。

ただ、知っている曲だと、どうしても元のメロディーに引っ張られてしまいます。そこで、「歌本」の中で聴いたことのない曲のコードを弾きながらメロディーを作ってみることにしました。これが、実にうまくいったのです! 元の曲を知らないので、もしかしたら同じようなメロディーもあったかもしれませんが、少なくともそのメロディーは自分の中から出てきたものです。

この知らない曲のコード進行の上に鼻歌でメロディーを付けるという作曲法を、ある時期たくさんやりました。この自分流の作曲法のおかげで、コード進行をどんどん覚えることができ、「歌本」無しでもコード進行を作れるようになっていったのです。

この「鼻歌作曲法」は、とても有効であると思っています。実際、今でも良いメロディーが思いつかなかったりしたときには、本屋で売っている「歌本」のコード進行を元にメロディーを作ったりしています。楽曲制作依頼で参考曲の指定があった場合は、まずその曲のコード進行を元にメロディーを作って、参考曲のエッセンスを生かすという作り方もしています。最終的にはまったく異なるコード進行に変えることの方が多いですが、メロディーが浮かばないとうんうん悩むよりは、ありもののコード進行から始めるというのはとても良い方法だと思います。

バンド・スコアの「写経」で「編曲」を勉強

作曲はなんとなくできるかもと思っても、編曲となると何から手をつけて良いのかわからないという人も多いのではないでしょうか。ギターやピアノが弾ける人でも、それ以外の楽器のフレーズに関しては、普段から意識的に各パートを聴いている人でないと、ピンとこないと思います。

これから編曲を始めたいという人にオススメなのが「写経」です。プログラミングの勉強をする際、参考書に掲載されているプログラムをそのままパソコンに打ち込んで動かしてみること、これを「写経」と呼ぶことがあります。これと同じことです。

まず楽器屋さんに行って、自分の好きなバンドのバンド・スコアを買ってきます。バンド・スコアには、ドラム、ベース、ギター、キーボードといったパートの楽譜が掲載されていますから、これをそのままDAWに打ち込んでいきます。もちろん、楽譜を読む必要はあるのですが、学校で習った程度の音楽の知識があれば何とかなります。最初は上手く読めなくても、実際に音を出して打ち込んでいけば、正しい音が分かるようになりますし、これを続けていくうちに楽譜を読むのが苦ではなくなってきます。

どの楽器がどんなフレーズを演奏しているのか、ドラムはどんなリズムを演奏しているのか、楽譜を見ながら実際に音で確認するのは編曲の良いトレーニングになります。「耳で聴けば、そのまま打ち込める!」という人は、バンド・スコアなど買わずに耳コピしてもいいでしょう。ぼくは耳コピが苦手なので、いろいろな曲のバンド・スコアを買ってきては打ち込みに励みました。

これを繰り返すうちに、自分の中に編曲のノウハウが蓄積していきます。フレーズの引き出しが増えますし、その曲で使っている音と同じような音色を探すコツも身につきます。これらは、自分の曲を編曲するときに、必ずに役に立ちます。この音楽の「写経」は、これから編曲を始めるという方にぜひオススメしたい勉強法です。

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楽譜は読めないとダメなのか、音楽理論は必要か

楽譜が読めないと作曲ができないかというとそれはノーですし、音楽の理論を知らなければ編曲ができないかといえばこれもノーです。楽譜が読めたり、音楽の理論を知らなくても作曲はできますし編曲もできます。

しかし、できた方がいい、とは言えます。楽譜の読み書きができれば、スコアを読むのも楽ですし、思いついたフレーズを人に伝えるのも楽です。音楽理論を知っていれば、効率良くメロディーに合うコードを見つけることもできるでしょうし、曲作りや編曲のヒントにもなります。

ただ、これらは最初からできる必要はありません。これは断言できます。なぜならぼく自身、作曲を始めたころは楽譜の読み書きはおぼつかなかったですし、音楽理論なんて本を読んでもまったく理解できなかったからです。その後、バンド・スコアを見ながら曲を聴くということを繰り返しているうちに、楽譜がどのように音として出力されるのか、徐々に理解できるようになっていきました。また、曲を作っていく過程で音楽理論の本に目を通すようになり、自分が使っていたコード進行の意味を知ることができたのです。

まずは作ってみること。これが一番大事です。知識は後でついてきます。

「作曲」に必要な道具

ここまで読んでいただけたなら、「もしかすると自分も作曲や編曲ができるかも!」と思っていただけたのではないでしょうか? もちろん、最初から名曲はできないでしょうし、完璧な編曲もできないと思います。しかし、何事もそうですが、続けるうちに上達していきますし、またそれを実感できるのは嬉しいものです。とにもかくにも始めてみましょう!

作曲に必要な道具についてですが、鼻歌だけだったら何も必要ありません。できたメロディーを録音する場合も、スマートフォンがあれば十分でしょう。そこからさらに踏み込んで作曲や編曲を行う場合は、いくつか必要なものが出てきます。

最初に手に入れるべきは、パソコンと作曲/編曲をするためのDAWソフトです。パソコンは手持ちのものがあれば大丈夫、OSはWindowsでもMacでもどちらでも構いません。DAWソフトに関しては、今はどれも同じような機能を備えているので何でも構いませんが、ぼくはSteinberg Cubaseというソフトを愛用しています。Cubaseには、鼻歌で作曲する際に便利な「コードトラック」という機能が備わっていて、歌本を見ながらコードを入力するだけで自動的に演奏してくれます(他のDAWソフトの中にも同じような機能を持ったものもあります)。またCubaseには、たくさんのソフト音源が付属しているので、バンド・スコアを使った「写経」にも便利です。

Cubaseには、「Cubase Pro」「Cubase Artist」「Cubase Elements」という3つのグレードがあります。どれを選んでも「コードトラック」機能は備わっていますし、ソフト音源もたくさん付属しています。ですので、まずは「Cubase Elements」から始めて、もっとたくさんソフト音源を使いたいとか、もっと機能が欲しいと感じたときにアップグレードするのもよいでしょう。しかし個人的には、多少無理をしてでも、最初から一番上のグレードである「Cubase Pro」を手に入れるのをオススメします。「Cubase Pro」なら、「やりたいことができない!」なんてストレスを感じることがありませんから。

パソコンとDAWソフト以外の道具としては、歌やギターを録音する際に必要となるオーディオ・インタフェースや、フレーズを打ち込む際に便利なMIDIキーボードなどが挙げられますが、これらはのちのち揃えていってもいいと思います。

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質問コーナー

読者の方から質問をいただきましたので、お答えしたいと思います(質問がある方は、ぜひ idolsong@idolsong.jp までメールください!)

Steinberg Cubaseを使用しています。CHEEBOWさんは、最終的にすべてのトラックをWAVファイルに書き出すとのことですが、そうするとオーディオ・トラックがかなりの数になると思うので、再生するとき遅くなったり、ドロップ・アウトしたりすることはありませんか? また、書き出すときのフェーダーは、どれくらいの値にするのかおしえていただけますか。

MIDIで音源を鳴らすよりも、オーディオに書き出した方がCPU負荷は少なくなりますので、再生が遅くなったり、ドロップ・アウトしたりということは起こりにくいと思います(もちろん、重量級のプラグインをたくさんかけたりすると、また違ってきますが)。自分でミックスするときは、打ち込んでいるときにマスターでクリップしないようにアレンジして、そのままのフェーダーの状態で書き出しています。フェーダーを0にして書き出しても、ミックスのときに結局フェーダーを下げることになるので。

XLN Audio Addictive Drumsを使っています。パラ・アウトせずにそのまま最後まで作業しているのですが、やはりパラ・アウトしてDAW側でミックスするのが正しいのでしょうか?

ぼくは基本、パラ・アウトしています。パラ・アウトして、DAW上でエフェクトをかけることの方が多いですね。音作りとしてはどちらでも良いと思いますが、最終的にCDになるときなどは、エンジニアさんにパラ・データを渡す必要があります。その場合はドラムがまとまった状態ではなく、キットごとのトラックを渡した方がいいのでそうしています。

ミックス/マスタリング用のヘッドホンを探しています。アイドルソングのミックス/マスタリングにも、ソニー CD900STがオススメですか?

ぼくがCD900STを使っているのは、それが業界標準のヘッドホンだからです。どのレコーディング・スタジオにも置いてありますからね。

『アイドルソングの作り方』トーク・イベントが開催!

CHEEBOWさんの人気連載『アイドルソングの作り方』。連載はまだまだ続きますが、最初のオリジナル曲『なのはなイントネーション』の完成を記念して、トーク・イベントを開催することが決まりました! 日時や場所は追って発表します。ぜひふるってご参加ください!

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今日のアイドルソング

『天使のテレパシー』寺嶋由芙

「古き良き時代から来ました。まじめなアイドル、まじめにアイドル。」がキャッチ・フレーズの寺嶋由芙の「古き良き時代」のアイドルソング。どこか懐かしさを感じるメロディーとアレンジは、80年代のアイドルを彷彿とさせます。MVの演出もとても昭和感があって、思わずにやけてしまいます(この曲が収録されたCDは3月22日リリースです。なんとカップリングは演歌です!)。

『アイドルソングの作り方』第9回は、2017年4月3日(月)に掲載します。

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