DAW & PLUG-IN
Ableton、Live 12を発表…… アレンジメント/ミキサー/主要ビューを一括表示できる新UIを採用、MIDIデータの自動生成/ソング・スケールなど作曲支援機能も充実
AbletonがLiveの新バージョン、「Live 12」を発表。世界中のクリエイターから絶大な支持を集めるDAWが、さらに大きな進化を遂げます。
Live 11のリリースから約2年9ヶ月、Abletonは本日(2023年11月14日)、Liveの次期バージョン「Live 12」をアナウンスしました。使い手の“音楽的創造性(Musical Creativity)”をさらに刺激するように設計されたという「Live 12」では、メジャー・バージョン・アップにふさわしく、新機能の追加/既存機能の改善が数多く実施されています。
「Live 12」で多くのユーザーから歓迎されそうなのが、新デザインのユーザー・インターフェースです。Liveと言えば、単一のウィンドウでほとんどの操作が行える“シングルUI”の先駆け的なDAWですが、「Live 12」ではそのコンセプトがさらに推進され、ウィンドウ下の詳細ビューがスタック表示(縦方向に積み重ねた表示)に対応。このスタック表示によって、従来は切り替えながら操作する必要があったクリップビューとデバイスビューを同時に表示/操作できるようになりました。さらには、これまではセッションビューでしか使用できなかったミキサーが、アレンジメントビューでも使用できるように。アレンジメント、ミキサー、クリップビュー、デバイスビューを単一の画面に表示して操作できるのは非常に快適で、これだけで「Live 12」にバージョン・アップしたくなるほどです。
ユーザー・インターフェースの刷新に合わせ、全体的な操作体系も見直され、メニューには『ナビゲート(Navigate)』という項目が新たに追加されました。『ナビゲート(Navigate)』は、文字どおりウィンドウ内を遷移するためのコマンドを集めたメニューで、各ビュー/ブラウザには新しいショートカットが割り当てられ、任意のセクションに瞬時に(キーボード操作だけで)移動することができます。
また、ブラウザーも強化され、ついにタグ検索に対応。タグは、標準のものだけでなくカスタム・タグも利用することができ、ブラウザー内のカテゴリーに縛られずに機能します。さらにはブラウザー内の類似するサンプルやプリセットを検索できる機能も実装されました。
「Live 12」の新機能として、Abletonが大きくアピールしているのが、MIDIレベルでの作曲支援機能です。クリップビューには新たに、MIDIデータをリアルタイムにトランスフォーム(加工)できる『Transform』と、MIDIデータを自動生成できる『Generate』という2つのツールが追加されました。『Transform』では、アルペジエーターの『Arpeggiate』、連続したノート/コードを連結できる『Connect』、装飾音を付加できる『Ornament』、ギターのストラムを再現できる『Strum』など、複数のアルゴリズムが用意され、トラック内のMIDIデータをリアルタイムにトランスフォーム(加工)することができます(MIDIエフェクトのようなイメージです)。一方の『Generate』は、MIDIデータを自動生成してくれるツールで、こちらも『Rhythm』や『Seed』など、複数のアルゴリズムを選択することが可能。『Transform』『Generate』ともに、Ableton純正のアルゴリズムだけでなくM4Lデバイスをアルゴリズムとして利用できるようで、『Transform』には『Velocity Shaper』、『Generate』には『 Euclidean』というM4Lアルゴリズムが用意されています(現時点での「Live 12」はベータ・バージョンなので、リリース時にはさらにアルゴリズムが追加される可能性もありそうです)。
そしてこれも作曲支援機能の一つと言えるでしょう。「Live 12」では、コントロール・バーで楽曲のキー/スケールを設定することができ、この設定を基準に、MIDIノートを表示/編集することが可能になりました。たとえば、設定したキー/スケールに合ったノートはクリップ内で強調表示され、外れているノートは1クリックで合致させることができます。
もちろん、新開発のデバイスも複数追加されています。中でも一番注目を集めそうな『Meld』は、2基のマクロ・オシレーターを搭載したMPE対応の新シンセサイザー。Mutable InstrumentsのBraids/Plaitsで一気に普及したマクロ・オシレーターは、音色を構成する要素をひとおり備えたオシレーターで、いくつかのパラメーターを操作するだけで音色の幅広いエディットを可能にします。『Meld』では、このマクロ・オシレーターを2基搭載した上で、高機能なモジュレーション(ADSRエンベロープ/LFO)やマルチモード・フィルター/レゾネーター、トーン・コントローラーなどを実装。ディープな音づくりにも対応した使いでがありそうなデバイスとして仕上げられています。
さらには『Roar』と名付けられた高機能サチュレーターも搭載されました。OTO Machines BOUMを彷彿とさせる『Roar』は、ディストーション/サチュレーター/マルチモード・フィルター/コンプレッサーが統合された高機能なサチュレーターで、真空管回路を通したような温かみのあるサウンドから激しく歪んだクリップ・サウンドに至るまで、さまざまな音色を作り出すことが可能。複数のサチュレーターを組み合わせ、パラレル/マルチバンド/MS処理できるのも特徴で、モジュレーション機能も充実しています。
「Live 12」は、2024年初頭リリース予定で、価格はLive 12 Suiteが84,800円、Live 12 Standardが52,800円、Live 12 Introが11,800円(すべて税込)。なお、「Live 12」の発表に合わせて、現行Live 11の20%OFFプロモーションがスタートしており、これから購入したユーザーには同じエディションの「Live 12」が無償で提供されるとのことです(「Live 12」の価格は昨今の円安で値上げになるため、現行のLive 11を購入して無償でバージョン・アップした方が価格的にはお得になります)。さらなる詳細は、AbletonのWebサイトをご覧ください。