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世にも珍しい電源不要の“パッシブ・シンセサイザー”、Landscape「Noon」がいよいよデビュー
電源アダプターを接続したり、電池を装着することなく動作する、アコースティック楽器のようなシンセサイザーが間もなく発売になります。ニューヨーク・ブルックリンの工房、Landscapeが開発した「Noon(ヌーン)」は、世にも珍しい電源不要(!)のパッシブ・シンセサイザー。先月23日に発表され、好事家の間で大きな話題になりましたが、いよいよ明日(2022年1月31日)から予約受付がスタートします。
カセット・テープを音源として扱う電子楽器 HC-TTや、タッチ・プレートをフィーチャーしたステレオ・インストゥルメント Stereo Fieldで知られるLandscapeは、楽器デザイナーであり音楽家でもあるエリック・ピトラ(Eric Pitra)氏が主宰するニューヨークの小さな工房です。アトリエは、ブルックリンのウィリアムズバーグにあり(モジュラー・ショップ ControlやMeMe Antennaのほど近く)、音楽とアートがあふれる環境で、ユニークな電子楽器をコツコツと製作。2018年にはSynth Libraryとのコラボレーションで、1970年代の“図書館の家具”をイメージした美しいデザインのモジュラー・ケース Libraryを発表、大きな注目を集めました(Libraryについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください)。
そんなLandscapeの久々の新作となる「Noon」は、電源なしで動作するというデスクトップ型のシンセサイザー(Landscapeは、“パッシブ・アナログ・ドラム/シンセサイザー”と謳っています)。電源なしで動作すると言っても、中身は電子回路ですから当然電力は必要で、「Noon」は8つのゲート入力から制御信号とともに電力を得るというユニークな設計になっています(つまり「Noon」を演奏するには、シーケンサーやコントローラーなどの外部機器が必要)。Landscapeによれば、ゲート入力から得られる電力は微弱で不安定であるものの、それが「Noon」独特の有機的なサウンドの源になっているとのこと。開発者のエリック・ピトラ氏は「Noon」の設計について、次のように述べています。
アナログ・サウンドの核となるのは、彫刻された電気の音です。“電力を安定させる要素”をあえて取り除くことで、電子回路をロードした音/アンロードした音、パワーアップの音/パワーダウンの音まで聴くことができ、電気の混沌した動きを増すことができます。
「Noon」は、音を生成するためのアナログ回路を8つ搭載した、8ch仕様のシンセサイザーです。音叉のようなデザインの各チャンネルは、“ドラム・ボイス”あるいは“シンセ・ボイス”として機能するように設計されているものの、実際にはその中間のような音色になる可能性が高いとのこと。チャンネルごとに、ゲート入力(制御および電力供給用)、音色とレスポンスを変化させるためのModボタン、CV入力のミュート・ボタン(「Noon」はチャンネルごとのゲート入力とは別に、奇数チャンネルと偶数チャンネルで共有の2つのCV入力も備えています)、隣り合ったチャンネルとリンクするためのボタン、音量をコントロールするためのスライダー、1ペアのタッチ・プレートを備え、オーディオ出力もチャンネルごとに装備しています(奇数チャンネルと偶数チャンネル、それぞれミックス出力も装備。しかしながらサミング回路はパッシブなので、ミックス出力では音が圧縮されるとのこと)。さらにはモジュレーション・ソースとして使用できるオーディオ入力も搭載し、任意のチャンネル出力を再び戻すことによって、独特のフィードバック効果を生み出せるとのことです。
「Noon」の演奏方法は、外部のシーケンサー/コントローラーを8つのゲート入力と2つのCV入力に接続し、ゲート信号で各チャンネルの発音をトリガー、CV信号とスライダー/ボタン操作で音色をコントロールする…… という感じになりそうです。音色の変化に関しては、実機を触ってみないとよくわからないというのが正直なところですが、Webサイトにアップされているデモ音源を聴く限り、そのサウンドの幅は“パッシブ・シンセサイザー”とは思えないくらい広い印象。2つのCV入力/CVミュートの使いこなしと、奇妙なステレオ・イメージを生み出すというリンク・ボタンの操作が、「Noon」を演奏する上での肝になりそうです。
いかにもLandscapeらしい独特のデザイン/カラーリングも魅力の「Noon」。販売価格は未定で、先述のとおり明日(2022年1月31日)から予約受付がスタートします。一風変わった電子楽器を探していた方はぜひチェックしてみてください。