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世界の楽器店から 第2回:Armen’s Musical Instruments Repair Shop(アメリカ・ニューヨーク)〜 SP-1200ラックやJUNO-106ラックの生みの親のショップ 〜
マンハッタンにあるArmen’s Musical Instruments Repair Shopは、ニューヨーク随一のディープな楽器店です。楽器店と言ってもショップのドアは常に施錠され、呼び鈴を鳴らしてもほとんどの場合反応がありません。運良く中から店主が出て来たとしても、ものすごく無愛想な対応をされるのがオチで、“何の用だ? 楽器が欲しければeBayに出品してるからそっちを見てくれ”と、あしらわれてしまいます。
店主のMr. Armenは東欧系のアメリカ人で、1990年代にソーホーにあった楽器店、Dr. Sound(日本のクロサワ楽器店系列のショップ)でリペア・マンとしてのキャリアをスタートさせました。その後、同じマンハッタンにある楽器店、Rogue Musicに移り、2000年代に入ってから独立。Rogue Musicと同じ通り沿いに自身のショップ、Armen’s Musical Instruments Repair Shopをオープンさせました。
このMr. Armen、1990年代から2000年代にかけて、シンセサイザーやドラム・マシンをラック化したオリジナル機材を製作していたことでも一部マニアの間で知られています。“SOUND by ARMEN”と名づけられたオリジナル機材は、E-mu SP-1200、ローランド JUNO-106、SH-101といったマシンをベースに、ごく少量製作されました。“SOUND by ARMEN”は、ハウス・ミュージックやヒップホップのプロデューサーたちに特に好まれ、日本でもTOWA TEIや砂原良徳がSP-1200をベースに製作された“1200 SOUND by ARMEN”を愛用しています。
無愛想で変わり者として知られる店主のMr. Armen。いつもほとんど相手にしてくれず、すぐに追い返されてしまうのですが、今回の訪問時はちょうど知人と談笑中で機嫌がよく、店内を久々にじっくり見せてくれました。
「いつもは写真はダメだけど、今日は特別にOKだ。でも、ここにあるのは全部が売り物というわけじゃない。楽器が欲しければ、eBayをチェックしてほしい。ここはオレのギャラリーなんだ」(Mr. Armen)
久々に店の奥まで足を踏み入れたMr. Armenの城。その楽器量にとにかく圧倒されます。前日の取材でデニス・フェラーが“やっとの思いで手に入れた”と語っていた超レアなOctave Plateau Voyetra 8が4台もラックにマウントされています。その上にはかつて製作されたオリジナル機材、“SOUND by ARMEN”が。上からSH-101(レッド・バージョン!)、SP-1200、Minimoog(モーグ博士のサイン入り!)、JUNO-106、Moog Source、TR-909、TR-808と7台もマウントされています。残念ながらすべて非売品。現在は一切製作は行っていないそうです。
「(“SOUND by ARMEN”は)日本人にも何台か売ったよ。どれも本当に少量しか製作していない。最も数を製作したのはJUNO-106で、それでも数十台だ。いちばん下にTR-808を改造した“808 SOUND by ARMEN”があるだろ。実はこれ、ヘヴィ・Dのものなんだ。残念ながら彼は死んでしまったので、このままここに置いてあるんだ。もうこういったラックマウント改造は一切やっていない。ただリペアはやるよ」(Mr. Armen)
めずらしく、和やかに対応してくれたMr. Armen。ありがとうございました!