SYNTH & MACHINE
ローランド、新世代サンプラー「SP-404 MKII」を発表…… 16GBストレージ内蔵/波形表示対応、過去にさかのぼってサンプリングできる新機能も搭載
世界中のビート・メイカー/クリエイターが愛してやまないサンプラーの名機、SP-404。その次世代モデルが満を持して登場します。
ローランドが本日発表した「SP-404 MKII」は、高機能サンプラーとパターン・シーケンサー、強力なマルチ・エフェクターを統合した新型サンプリング・マシン。SP-404のコンセプトと基本デザインはそのまま受け継ぎつつ、サンプラーとしての基本機能が大幅に向上し、操作面でもより使いやすく進化した次世代モデルです。2005年、ボス SP-505の後継機として登場したSP-404は、低価格ながらサンプル中心のトラックメイクが素早く行えるマシンとして、世界中のビート・メイカー/クリエイターから絶大な支持を集めました。特に絶妙な位置に配されたパッド/操作子によるオペレーションのしやすさと、トリッキーな効果を生み出せる内蔵エフェクトが高く評価され、J Dilla、 James Blake、Four Tetといった大物アーティストたちも使用。流行のローファイ・ヒップホップのクリエイターも多くがSP-404を愛用しており、そのムーブメントを下支えした存在と言っても過言ではないでしょう。SP-404は2009年にSP-404SXとしてアップデートされ、その後海外ではAIRAカラーのSP-404Aというモデルも発売になりました。
本日デビューを果たした「SP-404 MKII」は、SP-404SXの機能と操作性を徹底的にブラッシュアップした、次世代モデルです。縦型のデスクトップ筐体に、上から4基のノブ、ディスプレイ、スイッチ類、パッドを配した操作体系は同一で、ローランドによれば、SP-404SXに慣れた方であればすぐに使いこなせるだろうとのこと。サイズは、横幅177.5×奥行275.8×高さ70.5mm/重量1.1kgと、奥行が少しが長くなった程度でほぼ同じ(SP-404SXは、横幅177.6×奥行256.7×高さ72.1mm/重量1.2kg)。電源は付属のACアダプター、単3形のアルカリ電池/ニッケル水素電池(6本)に加えて、USBバス・パワー駆動にも対応しました。背面にはステレオ・ライン出力、ステレオ・ライン入力、MIDI入力、MIDI出力、USB端子(USB Type-C)が備わり、ライン入出力はRCA端子からフォーン端子に、MIDIはDIN端子から3.5mmのミニ端子に変更。SP-404SXには無かったUSB端子は、パソコンやモバイル・デバイスからオーディオを入力することが可能で、またパソコン上では専用エディターも利用可能になります。前面にはSP-404同様、マイクを直接繋ぐことができるモノ入力端子が備わり、今回から新たにハイ・インピーダンス入力にも対応。横のスイッチを切り替えることで、エレクトリック・ギターやベースもダイレクトに接続できるようになりました。左側には標準フォーンとステレオ・ミニ、2種類のヘッドフォン端子が備わり、SP-404SXでは前面に配されていたSDカード・スロットは右側面に移動しています。
このように基本的なデザインは大きく変わっていない「SP-404 MKII」ですが、中身は“総取っ替え”と言っていいほど、劇的な進化を遂げています。核となるサンプラーは、最大同時発音数が32音に強化され(SP-404SXは12音)、16GBのストレージが内蔵されました。これによりSDカードからサンプルを再生する設計のSP-404SXと比較して、起動時間や読み込み時間、発音レーテンシーが大幅に短縮。内蔵ストレージに保存できるデータも、サンプル/パターンともに最大2,560(16サンプル×10バンク×16プロジェクト)と、SP-404SXと比べて20倍以上に拡張されています。サンプル・フォーマットは、16bitリニア/48kHz(SP-404SXは16bitリニア/44.1kHz)で、WAV/AIFFに加えてMP3ファイルの読み込みにも対応。専用エディターを使用すれば、FLACやM4Aファイルの読み込みもサポートします。
そして「SP-404 MKII」の目玉の一つと言えるのが、サンプル波形のグラフィック表示に対応したこと。メイン・ディスプレイには視認性に優れた高解像度OLEDが採用され(SP-404SXは7セグメント/3桁のLED)、サンプル波形が詳細かつ鮮やかに表示されるようになりました。もちろん、SP-404SXの“耳に頼ったエディット”にも良さはあるのですが、やはり波形が見えるとエディットがスピーディー。サンプルのトランケートやマーカー打ちも素早く行うことができます。サンプルの編集機能も強力で、ループ、トランケート、ノーマライズ、エンファシス、マーカー、フェード・イン/アウト(エンベロープ)、ピッチ/スピードなど、標準的なコマンドはひととおり網羅。サンプルを再生しながら編集ポイントをリアルタイムに指定したり、オート・マーカーによる自動スライス、パターンを組んだ後の音/エフェクト処理後の音をサンプリングできる『RESAMPLE』機能も搭載しています。さらに「SP-404 MKII」では、過去にさかのぼってサンプリングできる(!)機能、『SKIP BACK SAMPLING』も搭載。『SKIP BACK SAMPLING』は、RECボタンを押してなくても直前25秒に入力された音をサンプリングできるというもので、手弾きのシンセやギター演奏などをサンプリングする際に活躍しそうな機能です。加えて2種類のサンプルをDJミキサー感覚でミックスできる新機能、『DJ MODE』も搭載。これはライブ・パフォーマンス時に重宝しそうな機能です。
「SP-404 MKII」の写真を見て、すぐに気付いた人も多いと思いますが、パッドの数が4×4の16になったのも「SP-404 MKII」の大きな特徴です(SP-404のパッドは12)。また、従来のSP-404ではクリック感のあるパッドが搭載されていましたが、「SP-404 MKII」ではAKAI MPCシリーズのようなクリック感の無いパッドが新たに採用され、リアルタイム入力がこれまで以上にやりやすくなりました(先述のとおり、発音レーテンシーが短縮されたのも大きいと思います)。この“ノー・クリック・パッド”はベロシティにも対応し、右下には17番目のパッドとして使える『SUB PAD』も装備。パッドはマルチ・カラー仕様なので、ユーザー・サイドで発光色をカスタマイズすることもできます。(初出時、「ベロシティは17段階」と記しましたが、製品版は17段階ではないとのことが判明しました。お詫びして訂正いたします)
ビートやフレーズを直感的に組むことができるパターン・シーケンサーも、もちろん改良されています。4分音符あたりの分解能は480ティックと、96ティックだったSP-404SXの5倍の分解能に。これにより細かいパターンも、イメージどおりのビート感で組むことができるようになりました。そしてSP-404SXユーザー待望の新機能と言えるのが、『CTRL』ノブによってシャッフルを連続可変できるようになった点。クォンタイズ加減を設定する『STRENGTH』パラメーターと合わせ、詳細にグルーブを作ることが可能になっています。SP-404SXの看板機能であるエフェクトも強化され、SP-404SXに搭載されていた人気のエフェクトは維持しつつ、新開発のエフェクトを追加搭載。マルチ・エフェクトは37種類、インプット・エフェクトは16種類の中から選ぶことができます。エフェクトの数以上に大きいのが、「SP-404 MKII」では新たに“バス”という概念が導入された点で、2系統のバスを作ってそこにエフェクトをインサートすることが可能に。これにより、任意のサンプルの組み合わせだけにエフェクトをかけるといったルーティングも簡単に行えるようになりました。
完全なスタンドアローン・マシンである「SP-404 MKII」ですが、USB端子にパソコン(Mac/Windows)を接続すれば、専用エディターを使うこともできます。Roland Cloud Managerから無料でダウンロードできる専用エディターでは、より詳細な波形編集、パッドへのサンプルのアサイン、MIDIファイルやSP-404SX/SP-404Aプロジェクトのインポートが可能。Roland Cloudでは、著名なアーティストやサウンド・デザイナーが手がけたサンプル・パックも提供されています。また、自由にカスタマイズできるのも「SP-404 MKII」の魅力の一つ。アルミ製のトップ・パネルを取り外して、オリジナル・デザインのオーバーレイを装着すれば、簡単に外装をモディファイすることができます(オーバーレイ用のテンプレートは、ローランドのWebサイトで提供されるとのこと)。また、SDカード経由でBMP画像をインポートすれば、オープニング画面やスクリーン・セーバーもカスタマイズすることが可能。「SP-404 MKII」を“自分仕様”に仕上げることができます。
価格と機能(できること)のバランスが良く、末長く使用できそうな次世代サンプリング・マシン、「SP-404 MKII」。国内発売日は2021年11月19日の予定で、価格はオープン・プライス、市場想定価格は45,000円とのこと。ビート・メイカーはもちろんのこと、使いやすいサンプラーを探しているマシン・ライブ・パフォーマーやDAWlessクリエイターは要チェックの1台です。さらなる詳細は、ローランドのWebサイトをご覧ください。