FEATURE
テレキャスを愛し、GarageBandで作曲するギター女子:のん セカンド・シングル・リリース記念! スペシャル・インタビュー
“女優・創作あーちすと”として多方面で活躍中の、のんさん。一昨年公開された大ヒット映画『この世界の片隅に』では主役すずの声を担当し、大きな話題を呼びました。そして昨年は、“ずっとやりたかった”という音楽活動をついに開始。『WORLD HAPPINESS 2017』への出演を手始めに、11月にはファースト・シングル『スーパーヒーローになりたい』を、年明け1月1日にはセカンド・シングル『RUN!!!』をリリース、いきなりフル・スロットルで音楽活動を行なっています。シングルのリリースにあたっては、自身のレーベル“KAIWA(RE)CORD”を立ち上げるなど、並々ならぬ意気込みで音楽活動に取り組んでいる、のんさん。そこでICONでは、次作のレコーディング真っ只中の、のんさんにインタビュー。新曲についてはもちろんのこと、愛用のギターやエフェクター、さらにはGarageBandでの曲作りについて、話を伺いました。(写真:鈴木千佳、スタイリスト:山口絵梨沙、ヘアメイク:菅野史絵、取材協力:株式会社CAMPFIRE)
ギターの魅力は、“勢いがいいところ”
——— のんさんって、中学生のときからギターをやられているんですよね。
のん あ、はい。そうです。
——— きっかけは何だったんですか?
のん 小学6年生のときに、友だちから“楽器に触れる場所があるよ”とおしえてもらって。それで連れて行ってもらったら、ギター、ベース、キーボード、ドラム、マイクとか、ぜんぶ一式揃っていて……。そこで初めてギターという楽器を見て、それで興味を持ったのがきっかけです。
——— そこは一体どんな場所だったんですか?
のん 町の中央ホールです。役場職員の方がいて、ホールの倉庫にたくさん楽器を持っていて。子どもたちに貸し出していたんですよ。
——— いろいろ楽器があった中で、ギターに興味を持ったのは?
のん …… いちばん目立つかなって(笑)。
——— 当時、聴く方の音楽は?
のん そのときはそんなに熱心に聴いている感じではなかったです。ただ楽器に触れることに興奮していました。
——— それでギターを弾き始めて……。
のん すぐにバンドを始めました。小学6年生のときもやっていたんですけど、そのときは歌だけで、中学に入ってからギターを担当して。
——— いきなりバンドを始めるというのはすごいですね。
のん 環境が整ってたから(笑)。子どもにやさしいおじさんもいたので……。
——— 他のメンバーは?
のん 同い年の子や、年下の子、あとは妹とか。みんな女の子で。文化祭とかは無かったので、町のイベントとかで演奏していました。夏祭りとか。
——— どんな曲をやっていたんですか?
のん 自分たちの好きな曲ですね。いちばん最初、小学生のときは大塚愛さんの曲をやってました。一生懸命コピーして……。バンドはいくつかやりました。組んでは解散、組んでは解散で。小学校から中学校に上がるときに自然になくなったり、あとは単純に仲が悪くなったり。すごく良い経験してます。
——— 中学生だとまだ手が小さいですし、エレキ・ギター、難しくなかったですか?
のん 難しかったですねぇ。でも楽しかったです。練習すれば(コードを)押さえられるようになったので。それが楽しかったです。
——— 最初のギターは買ってもらったんですか?
のん 買ってもらったというより、中学2〜3年生のときにお年玉で。無名のメーカーのテレキャスを通販で買いました。いまでも使っています。
——— のんさんにとって、ギターという楽器の魅力というと?
のん 魅力ですか。そうですね、勢いがいいところ。6弦ぜんぶにバーッと感情をそのままぶつけられる。そんな気がします。
——— どんな音色が好きですか?
のん 歪んだ音が好きです! 気持ちがいいです。
ずっとバンドをやっていたときの感覚が忘れられなかった
——— 昨年、満を持して音楽活動を開始されたわけですが、ギター好きののんさんとしては、ずっとやりたかったんですか?
のん そうですね……。部屋にひとりでいるときも、ギターを弾いたり、歌ったりというのは毎日やっていたので。昔、バンドをやっていたときのあの感覚、演奏する楽しさというのがずっと忘れられなくて。またバンドをやりたいなという気持ちは、ずっとあったんです。
わたしは中学を卒業して上京したわけですけど、バンド活動はそのまま続いていくものだと思っていたんですよ。実際、地元に帰ったときは、みんなで集まって練習したりしていましたし……。でも、そんなに頻繁に帰れるわけではないですし、遠距離のバンド活動なんて続くわけもなく。いつの間にかみんなで集まることもなくなってました。
——— 本当だったらソロで活動するのではなく、バンドを始めたかった?
のん はい。今のCDはソロ名義で、バンドでのレコーディングはしてないんですけど、ライブは“のんシガレッツ”というバンドを組んでやっているんです。
——— では気持ち的にはソロではなく、バンドでやっている感じ?
のん そんな感じです。これからバンドでのレコーディングもやっていきたいなって思ってるんです。
——— 昨年11月にリリースされたデビュー・シングル『スーパーヒーローになりたい』は、高野寛さんが作詞・作曲を手がけられていますが、のんさんから高野さんに何かリクエストはしましたか?
のん どんな感じの曲をお願いしようか、最初にスタッフと話し合ったんです。そのとき出たアイディアが、沢田研二さんの『TOKIO』のような曲。『TOKIO』のように派手で、ステージで映えるような曲を作ってもらいたいなって。そんな話をしたら、高野さんはのんにインタビューをしてから曲作りに臨みたいとおっしゃってくれて。それでいろいろな話をしてから、曲を作っていただきました。
——— どんなことを訊かれました?
のん 本当にライトな話し合いでした。“どういうのが好きなの?”とか、“どういう音楽に憧れてるの?”とか。“どうしてギターを始めたの?”とか。世間話のようにラフにお話してくださって。それを高野さんは、ぱちぱちパソコンに打ち込んでました。
——— 『スーパーヒーローになりたい』、キャッチーなロック・ナンバーで、ステージで盛り上がりそうな曲ですね。ギター中心のアレンジというのは、のんさんからリクエストしたんですか?
のん そうですね。もうドラムとベースとギターと歌だけみたいな。でも、のんが音楽を始めるにあたって、ファンのみなさんだけでなく、たくさんの人に聴いてもらいたいというのがあって。いろいろ考えて、ちょっとピコピコを入れたりとか、そういうのもかわいいかなと思って。実はいろいろ入ってたりします。
——— ギターものんさんが弾いてるんですよね。
のん はい、ぜんぶ弾いてますよ。
——— レコーディングは緊張しましたか?
のん いやぁ、毎回緊張しますが、最初のギターの録音は『タイムマシンにお願い』(註:昨年8月、『WORLD HAPPINESS 2017』会場で販売された『オヒロメ・パックEP』に収録。デビュー・シングルの『スーパーヒーローになりたい』には、リミックスが収録)だったんですけど、高橋幸宏さんや小原礼さんといった本物のサディスティック・ミカ・バンドの人たちと一緒に演奏して……。緊張しまくりでしたし、その状況が夢見心地な感じでガチガチでした。
——— やっぱりレコーディングは大変?
のん 大変なのかな。大変なことなのでしょうし、まだ慣れはしないですけど、めちゃくちゃ楽しいですよ。
ピンクと赤、2本のテレキャスの愛用
——— いまはどんなギターを使っているんですか?
のん 最初に買ったピンク色のテレキャスターと、赤くてバインディングが入ってるテレキャスターの2本です。
——— テレキャスターが好き?
のん そうですね……。違うのも抱えてみたり、試してみたりしたことはあるんですけど、結局テレキャスが馴染むんです。
——— エフェクターは使ってます?
のん 使ってます! (ボスの)Blues Driverと、岩手で作られているオーバー・ドライブ……。オレンジ色のかわいいやつなんですけど……。うう〜ん、名前憶えてないですね。(註:後日確認したところ、One ControlのHoney Bee ODとのことです)
——— シングルにはのんさん作詞・作曲の曲も収録されていますが、曲作りはどのようにやってますか?
のん 『RUN!!!』のカップリング曲の『ストレート街道』は、ギターを弾きながら、最初にイントロ、次にAメロと順々に作っていった感じですね。それでできたものを録音して。
——— ギターのリフから作っていく?
のん そのときどきで違います。書き留めておいた歌詞に曲を付けることもありますし、ギターを手に取って“作ろう!”と始めるときもありますし……。気分によっていろいろですね。
——— できた曲は何に録音するんですか?
のん iPadに録音してます。GarageBandというアプリをダウンロードして。ドラムとかもGarageBandで鳴らしてます。
——— パソコンではないんですね。
のん パソコンって、何だか難しそうだなと思ってしまって。でも、おもしろそうですよね。パソコンってどんな感じなんですか?
——— いろいろなことができるので、きっと楽しいと思います。
のん でも難しそう(笑)。わたし、音楽的知識がぜんぜん足りてないので。そういうのできるのかなって。初心者向けのアプリとかもあるんですか?
——— GarageBand、パソコンでも使えますよ。
のん 本当ですか! いや、やってみたいです。すごく興味あります。
4月にアルバムをリリースして、その後はツアーを
——— 元旦にリリースされたセカンド・シングル『RUN!!!』についておしえてください。
のん 疾走感のあるすごく気持ちのいい曲です。作ってくださったSachiko Mさんも、走っているリズムに合う曲なんだとおっしゃってました。駅伝のテーマ曲になってほしいなって(笑)。だからランニングしているときとか、トレーニング中に聴くのがおススメです。
——— 次のシングルでは、のんさんのギター・ソロが聴きたいです。
のん ギター・ソロですか。次のシングル弾いてみたいですけど、まだ自分でソロを作ったりあんまりしてなくて。でも1stに入っている『へーんなのっ』間奏の、あれは自分で弾いたものなんですよ。タルル、タルル、タルル…… というギターが入ってるんですけど、あれはわたしがiPadに録音した音がそのまま使われちゃったんです。
——— それはよく聞く話ですよ。デモの音が良くて、本チャンでそれをなかなか超えられないので、だったらデモのテイクをそのまま使っちゃおうという。
のん へぇ、そうなんですか。“えええ、やり直したいんですけど!”となりました(笑)。でも良い感じに弾けてたので満足ですね。飯尾さん(註:プロデューサー/エンジニアの飯尾芳史氏)に感謝です。
——— これからの予定をおしえてください。
のん これから1年の計画どんどん立てていくんですが、去年はかなりいろいろやったので、(今年も)ごちゃまぜになっていくのかなとは思っています。音楽以外でもいろんな企画が進んでいるので、掻き分けて音楽の存在感を示していきたいです。
——— 音楽活動は?
のん アルバムを4月くらいに出したいなと思っています。アルバムを出したら、ツアーもぜひやりたいです。
——— ライブは好きですか?
のん レコーディングもどっちも好きです。ライブの気持ち良さも、レコーディングの楽しさも、どっちも好きですね。わたしはいま、“女優・創作あーちすと”という肩書きでやっているんですけど、自分を表現できることなら何でもやりたいと思っているんです。女優も音楽活動も、ぜんぶメインで。怖いもの知らずな感じでやっていきます。
——— のんさん、ありがとうございました! 応援してます!