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NAMM 2017: Percussa、未来型デジタル・シンセサイザー「SYNTHOR SYSTEM 8」を初披露! 大きな可能性を秘めた“シンセシス・コンピューター”
日本時間20日(金)3時に開幕する世界最大規模の楽器の展示会、『The 2017 NAMM Show』。その開幕を前に、なかなか刺激的な新製品がお披露目されました。Percussa社が完成させた「SYNTHOR SYSTEM 8」は、“シンセシス・コンピューター”とでも呼びたくなる大きな可能性を秘めたデジタル・シンセサイザーです。
数年前に日本でも販売され、一部で人気を集めたキューブ型のMIDI/OSCコントローラー「AUDIOCUBES」。「SYNTHOR SYSTEM 8」は、「AUDIOCUBES」を生み出したベルギーのPercussa社が開発した製品です(ちなみにPercussa社は現在、ベルギーからロサンゼルスに拠点を移したとのこと)。
その独特なデザインが目を惹く「SYNTHOR SYSTEM 8」は、コアとなる「ENGINE」(上のコンポーネント)、専用のリモート・コントローラーである「REMOTE」(下のコンポーネント)、「ENGINE」と「REMOTE」を合体させるアルミ製のアタッチメント、そして8個の「AUDIOCUBES」(現行モデルの“PRO”)で構成されます。「REMOTE」と「ENGINE」はUSBで接続され、ケーブルは右側のアタッチメント内に上手く収納。マット・ブラックの筐体は、非常に美しい仕上がりになっています。
「ENGINE」の元になっているのは、「SYNTHOR」というMac/PC用のソフトウェア・シンセサイザー(プラグインではなく、スタンドアローンで動作します)。「AUDIOCUBES」用の音源として開発された「SYNTHOR」は、“Waveshaper”や“Sampler”といったモジュールが10種類以上用意されたモジュラー・シンセサイザーで、パラメーターを縦横無尽に変調できる強力なモジュレーション機能が特徴です。
そしてこの「SYNTHOR」をMac/PC無しで使えるようにした、いわば“ハードウェア版「SYNTHOR」”が「ENGINE」なのです。クアッド・コア/1.8GHzのARM Cortex-A17(高性能ARMプロセッサー)を搭載した「ENGINE」では、Linux Kernel v4上で「SYNTHOR」がストレスなく動作。コードの最適化により、64bitの並列DSP処理を可能にしています。1,600×480の高解像度フル・カラー・ディスプレイとプロセッサーはLVDSで接続され、鮮やかで滑らかな表示を実現。背面には、2chのオーディオ入力端子、6chのオーディオ出力端子、MIDI入出力/スルー端子、2基のUSB端子、SDカード・スロットを装備しています。
“ルックスはカッコよくても、「SYNTHOR」のようなデジタルのモジュラー・シンセサイザーは珍しくはないのではないか”と思った人もいるかもしれません。しかし「SYNTHOR」は、“ならでは”の特徴をいくつか備えています。
まずは何と言ってもリアルタイム・パフォーマンス/コントロール性能に優れています。「REMOTE」は完全に「SYNTHOR」専用に設計されたコントローラーなので、モジュールや各種パラメーターの操作を直感的に行うことが可能。8基備わったエンコーダーの解像度は10bitとのことで、その操作感は非常に滑らか。アナログ・シンセサイザーのような感覚でオペレーションできます。
加えて8個の「AUDIOCUBES」を使用した無線でのリモート・コントロールにも対応。「AUDIOCUBES」は、置き方や距離などでパラメーターを可変できる非常にユニークなデバイスで、一般的なコントローラーとは一風異なるパフォーマンスを実現します。「ENGINE」との接続はBluetoothではなく独自プロトコルによって行われ、これについて開発者のBert Schiettecatte氏は、“コントロール・プロトコルとしてBluetoothはいろいろな制約があり、同時に接続できる台数も限られているため、独自プロトコルを採用した”と説明していました。
また、冒頭で「“シンセシス・コンピューター”とでも呼びたくなる」と言いましたが、実際「SYNTHOR SYSTEM 8」はLinuxベースのコンピューターです。Bert Schiettecatte氏によれば、Cでコードを書けるユーザーなら、独自のモジュールを追加することも可能とのことで、将来的には「SYNTHOR SYSTEM 8」用のソフトウェアを発表する人も現れるかもしれません。そう考えると、かなりの可能性を秘めたシンセサイザーなのではないでしょうか。
機能だけでなく、音質にもこだわって開発されたという「SYNTHOR SYSTEM 8」。オーディオ出力のDAコンバーターにはAKM AK4456、オーディオ入力のADコンバーターにはAKM AK5552が採用され、最高192kHz/32bitに対応し、入出力ともS/N比は115dBを達成しているとのことです。
「AUDIOCUBES」の発売は2007年のことですが、Bert Schiettecatte氏によれば、翌年の2008年には既に「SYNTHOR SYSTEM 8」の構想はあったとのこと。その後地道にR&Dを進め、この1〜2年で一気に完成まで漕ぎ着けたとのことです。なお、Percussa社のスタッフはBert Schiettecatte氏とパートナーのCeline Van Damme氏だけ(!)で、開発はすべて2人で行っているとのこと。美しいデザインも、Bert Schiettecatte氏自ら手がけたとのことです。
新世代の“シンセシス・コンピューター”、「SYNTHOR SYSTEM 8」。まだまだ開発途中かと思いきや、8週間以内に発売するとのことで、価格はNAMM Show初日に発表するとのこと。先行発売されている「AUDIOCUBES」8個と「REMOTE」、Mac/Windows版の「SYNTHOR」のセットで3,600ドルなので、「SYNTHOR SYSTEM 8」は5,000ドル程度という感じでしょうか。おいそれと手を出せるモノではありませんが、かなり魅力的なシンセサイザーと言えそうです。
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