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NAMM 2013: Ohm Studioに対抗馬現る…… ニューヨーク発の新しいクラウドDAW、「Xonami」が間もなくローンチ!

2013年のNAMM Show、ICON的注目の新製品・第2位はコレ。間もなくローンチ予定のクラウドDAW、「Xonami(ゾナミ)」です。

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XO Audioというブランドが現在、鋭意開発中の「Xonami」は、離れた場所にいる複数の人たちがインターネットを介して、共同で音楽/オーディオ制作を行うことができる新しいサービス。以前、ICONで紹介したフランス Ohm Force社のクラウドDAW、「Ohm Studio」とよく似たコンセプトのサービスです(注:「Ohm Studio」については、こちらの記事もご一読ください)。クライアントとなるDAWソフトウェア「Xonami」は無償で提供され、正式ローンチ後は、ユーザーはサービス料金を支払うことで利用することができます。

まだまだ開発の初期段階という感じで、未完成な部分も多い「Xonami」ですが、マスタリング機器で有名なZ-Systems社のエフェクトを標準で実装するなど、“ならでは”のフィーチャーもいくつか散見できます。特に音質にはこだわった設計がなされているようで、今後が楽しみなサービスという印象を持ちました。

そんな「Xonami」を一人で開発しているXO Audioのビョーン・ロシェ(Bjorn Roche)さんに、会場で話を伺いました。デモ・ムービーと併せてご覧ください。

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——— まず、「Xonami」とは一体どのようなものなのか、簡単に紹介していただけますか。

BR 「Xonami」は、クラウド・ベースの“コラボレーション・プラットホーム”です。専用のDAWソフトウェア「Xonami」を使用することで、離れた場所にいる複数のユーザーが同一のプロジェクトにアクセスして、共同作業が行えるようになります。たとえば、あなたが今ここでプロジェクトに録音すると、別の場所にいるユーザーのプロジェクトにも、録音したデータが瞬時に反映されます。編集に関しても同じです。あなたがオーディオ・リージョンをトリムしたら、その内容が別の場所にいるユーザーのプロジェクトにも反映されます。すべてが自動かつ一瞬で実行されるため、ユーザーは録音や編集したファイルを、わざわざメールやFTPなどでやり取りする必要はありません。「Xonami」では、作成したプロジェクトはクラウド・サーバーに置かれ、クライアント側で録音したり編集したりすると、サーバー側のプロジェクトが書き換えられます。そしてその内容が、別のクライアントのプロジェクトに自動で反映されるというのが「Xonami」の仕組みです。

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——— 「Xonami」を開発しようとしたきっかけは?

BR 最初にアイディアが浮かんだのは、かれこれ10年くらい前のことなんですが、コンピューターとインターネット回線を活用すれば、レコーディング・スタジオでの作業を離れた場所からでも行えるんじゃないかと考えたのがそもそものきっかけですね。ぼく自身は別にエンジニアだったわけではないんですが(笑)、ロサンゼルスに住んでいるミュージシャンが、レコーディングのためだけにわざわざニューヨークに来る必要はないんじゃないかと思ったんですよ。いまは昔と違って、録音はコンピューターに対して行うわけですし、インターネットを活用すればもっとスマートに作業できるのではないかと。それでアイディア自体は10年くらい前からあったんですが、約3年前に開発に着手したというわけです。

——— 当然、Ohm Force社の「Ohm Studio」のことはご存じですよね。

BR 知ってますけど、それほど使い込んだことはありません。もちろん、「Ohm Studio」を見て、“あ、これは「Xonami」と同じようなコンセプトだな”とは思いましたけどね。そんなに詳しいことを知っているわけではありません。

——— そんなに使い込んだわけではないとのことですが、「Ohm Studio」と比較した「Xonami」のアドバンテージというと?

BR もしかしたら「Ohm Studio」でも出来るかもしれませんが、Webブラウザ側で、プロジェクトの細かい設定が行える点は「Xonami」の特徴だと思っています。ユーザーごとにプロジェクトへのアクセスの権限を細かく設定したりとか。また、「Xonami」ではプロジェクトの変更履歴を細かく保存しているんですが、以前のバージョンへ戻る操作もWebブラウザ側で行えるようになっています。

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それと、プロジェクト・ウィンドウの上部に、様々なディスプレイを表示できる点も特徴かもしれません。スペクトラム・アナライザーやデシベル・メーターなど、作業に必要なディスプレイを選択して表示することができます。このディスプレイは、「Xonami」を見た人からは表示が美しいと好評の機能ですね。

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——— 「Xonami」ソフトウェアは、フル機能のDAWなのですか?

BR MIDIシーケンス機能を備えていないので、現時点ではオーディオ・エディターと言った方がいいかもしれません。ただ、オーディオ・エディターとしては十分な機能を備えていると自負しています。オーディオ・トラックの数にも制限はありません。

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——— ハイ・サンプル・レートにも対応していますか?

BR いいえ。現時点では44.1kHzのみに対応しています(注:48kHz対応は不明)。「Xonami」は、録音したデータをすべてクラウドにアップロードするDAWですので、ストレージの容量を考慮し、まだハイ・サンプル・レートには対応させていません。ビット・レゾリューションは、24bit対応ですけどね。

——— 複数の人で共同作業するとなると、問題となるのがプラグインの互換性です。「Ohm Studio」には、プラグインを使用したトラックをオーディオ化する“コラボレーティブ・フリーズ”という機能が備わっていますが……。

BR 現時点で「Xonami」は、プラグインには対応していません。そういう互換性の問題がありますからね。今後については未定なのですが、クラウド・ベースのプラグインが実現できたら便利なんじゃないかとか、プラグイン・デベロッパーと話をしたりもしています。いまはまだ、いろいろと検討している段階ですね。

サード・パーティー製のプラグインを使用しなくとも、「Xonami」には高品位なエフェクトがひととおり用意されています。EQなどは、Z-Systems社が開発したものなんですよ。Z-Systems社はご存じですか?

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——— もちろん、知っています。高級アウトボードで知られるZ-Systems社のエフェクトが入っているとは驚きですね。どうしてそんな大きな会社とコラボレートできたのですか?

BR Z-Systems社は、そんなに大きな会社ではありません。いろいろと話をする流れで、彼らからアルゴリズムの供給を受けることができたんです。

——— 将来的にはMIDIシーケンス機能も搭載する予定なのでしょうか?

BR 検討しているところですが、まだ分かりません。それと「Xonami」は、現時点ではMacのみ対応なので、Windowsに対応させる方が先かなと思っています。

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——— 「Xonami」は、いつローンチする予定なのでしょうか?

BR 予定よりもだいぶ遅れてしまいましたが、来月(注:2013年2月)にはパブリック・ベータ・テストを開始する予定です。既にベータ・テストは始めてはいるんですが、ごく少数のプライベートなメンバーだけでやっているので、そろそろ一般にも公開しようかなと。ですので興味を持った方は、ぜひWebサイトからメーリング・リストに登録してください。

——— 正式ローンチ後のサービス利用料については決まっているのですか?

BR ここに草案はあるんですが、まだ公開できません。さっき一瞬表示してしまって焦ったんですけど(笑)。ソフトウェアは、無償でダウンロードできるようにします。

——— 開発は、何人くらいで行っているのですか?

BR 私一人で行っています。だからかなり時間がかかってしまっています。XO Audioと言ってもオフィスを構えているわけではなく、マンハッタンの北側にある自宅の一室でコツコツと開発を行っていますよ。

——— クラウドDAWには、とても可能性があると感じています。期待していますので、ぜひがんばって開発を続けてください。

BR ありがとうございます。とりあえず来月開始予定のパブリック・ベータ・テストに参加して、ぜひ感想を訊かせてください!

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Xonami: Realtime Music and Audio Collaboration

http://www.xonami.com/

ICON: 開発者に訊く、Ohm Force「Ohm Studio」 〜 “クラウドDAW”が実現する新しい形のコラボレーション 〜

https://icon.jp/archives/2461