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Makerたちの祭典『Maker Faire Tokyo 2015』レポート 〜 80sシンセの名機の生みの親が開発中の「8bit CPU Synth」が大幅バージョン・アップ! 〜
Makerたちの祭典『Maker Faire Tokyo 2015』が、8月1日(土)と2日(日)、東京・有明の東京ビッグサイトで開催されました(主催:株式会社オライリー・ジャパン)。今年は猛暑が厳しい中での開催で(昨年までは11月の開催でした)、前回の混雑ぶりを考えると一体どうなることかと不安だったのですが、今回は会場が大きな西4ホールに移り、通路の間隔がかなり広くなったため、今までで一番快適に見れたような気がします。それでは早速、ICON的におもしろかったものを紹介することにしましょう。
スライムシンセサイザー
個人的にいちばん楽しみにしていたのが、佐々木 有美さんとDoritaさんの手による「スライムシンセサイザー」。手首と外部音源をコードで繋ぎ、ドロドロのスライムを変形させることで、奇妙なサウンドを鳴らすことができる新しい電子楽器です。手首とトレイとなる鉄板が、スライムを介して通電したときに発音する仕組みになっているようで、何とも言えない音色の変化がとても楽しい電子楽器でした(キッズ・コーナーでの展示だったので、実際に触れなかったのが残念!)。ちなみにこの「スライムシンセサイザー」、第18回文化庁メディア芸術祭エンターテンメント部門で新人賞を受賞したとのことです。
ふぁみみみっでぃ
これはご存じの方も多いでしょう。hekekekunさん作、ファミコンをMIDI音源に変えてしまうカートリッジ、「ふぁみみみっでぃ」。カートリッジにはMIDI入力端子を備えたケーブルが取り付けられており、そこにMIDIキーボードやシーケンサーを繋げることで、ファミコンの内蔵音源のMIDIコントロールが可能になります。同種のものとして有名なWayfer Midinesは現在入手困難なので、実機派にとって「ふぁみみみっでぃ」は貴重なアイテムと言えるでしょう。常時在庫はしていないそうですが、たまに3,900円で販売も行っているとのことです。
CANADEON/鍵盤オルゴール
これはなかなかすばらしかったです。スリックという会社が開発したMIDI対応オルゴール、「CANADEON(カナデオン)」。熟練の研磨職人が1本ずつ丁寧に調律した櫛歯を、計80弁備えた本物のオルゴールです(つまり80音階ということ)。ピックアップを内蔵しているので、マイクを立てなくともオーディオ出力が可能。その美しいサウンドで、ブースを訪れた人たちを魅了していました。
またスリックは、ピアノ・タイプのオルゴール「鍵盤オルゴール」も展示。「鍵盤オルゴール」では、鍵盤で直接オルゴールを奏でることができます。こちらは発売も検討されているようです。
Booming Box
IntelのEdison Labのブースに展示されていた「Booming Box」は、澤井妙治氏、堀尾寛太氏、比嘉了氏の3氏が開発した音源とスピーカーを内蔵したドラム・パッド。手前のパッドを叩くことで、キックやスネアなどの音を鳴らすことができるガジェットですが、最大の特徴は音に合わせて筐体が振動する点。ガジェットなのにウーファーがブォーンと揺れ、筐体が振動するというのは、アコースティック楽器のようでたいへんおもしろかったです。内部ではもちろんEdisonが使用されているとのこと。
カスタムMIDIコントローラー CC-1
昨年も展示されていたWOSKというチームが鋭意開発中の「CC-1」は、カスタムMIDIコントローラー。「CC-1」では、フェーダーやエンコーダー、スイッチといった操作子が小さなブロックとなっており、それらを自由にハメ込むだけで、自分好みのMIDIコントローラーを作ることができます。電子ブロックのようなMIDIコントローラーとでも言えば分かりやすいでしょうか。各ブロックが点灯する点も特徴です。今年の『Maker Faire Tokyo』では、よりコンパクトな筐体で、スタンドアローン・シーケンサー機能を搭載した新バージョンが展示されていました。かなり完成度が高いので、すぐにでも発売してほしいものです。
ターンテーブルMIDIコントローラー TC-1
R-MONO Labというグループが展示していたのは、ターンテーブルMIDIコントローラー「TC-1」。ターンテーブルに装着する回転センサーと、回転センサーから送られたデータをMIDIデータに変換するユニットの組み合わせで機能し、ターンテーブルの回転に合わせてMIDIデータを出力します。例えば、MIDIインターフェースを介してDJソフトウェアと接続すれば、本物のターンテーブルで楽曲ファイルをプレイ/スクラッチすることが可能に。ブースでは、ターンテーブルでローランド AIRA TR-8をコントロールするというデモが披露されていました。回転センサーのデータをMIDIデータに変換するプロセッサーとしては、Arduinoが使われているそうです。
3D VJジェネレーター VJ-3D
R-MONO Labはもう1つ、「VJ-3D」というソフトウェアも展示していました。「VJ-3D」は、受信したMIDIデータから3D映像を生成するというソフトウェア。非常に豊富なパラメーターが用意されており、元となるムービー・データを読み込むことも可能なようです。ブースでは、TR-8から出力されるMIDIデータで3D映像を生成し、ターンテーブル1台で音と映像の両方をコントロールするというデモが行われていました。
Vocaleaper
うここラボが展示していた「Vocaleaper」は、テルミンのような操作でeVocaloidをコントロールできる電子楽器。パネルにはアルファベットが印刷されており、その上に手をかざすことでeVocaloidを発声させることができます。パネルとの距離によって音程をコントロールすることができ、子音を発声させることも可能。手の動きの感知には、Leap Motionが使用されているとのことです。
スターウォーズのドロイド
スターウォーズに登場するドロイドを製作している愛好家の集まり、“R2ビルダーズ・クラブ”。今回の『Maker Faire Tokyo』では、その日本支部である“R2ビルダーズ・クラブ・ジャパン”が多くのドロイドを展示していました。中でもライフサイズR-2D2のリアルさと言ったらもう完全に趣味の範疇を超えています。
甦れあの日のガジェット
会場の隅では懐かしいガジェットが展示されていました。digitale bottega cresc.が出品していたのは、ArduinoやRaspberry Piを組み込んだ昔のガジェット。NEC初のパーソナル・コンピューターであるPC-8001はArduinoによってUSBキーボードに、富士通 FM-7はArduino+Raspberry Piによって一体化PCに変身していました。ぜひこのFM-7で、Pro Toolsでも走らせてみたいものです。
Orphe
今春、Indiegogoでクラウドファンディングが行われ注目を集めたOrpheは、no new folk studioという会社が開発した“スマート・シューズ・システム”。Orpheには、モーション・センサーとフル・カラーLEDが内蔵されており、コンピューターに足のモーション・データを送信したり、スマートフォンやタブレットからLEDの色をコントロールしたりすることができます。アイディア次第で、なかなか楽しい使い方ができそうなアイテムです。
8bit CPU Synth II
前回の『Maker Faire Tokyo』で注目を集めた「8bit CPU Synth」が、大幅にパワー・アップして今回も展示されていました(前回の様子はこちらに掲載しています)。「8bit CPU Synth」は、Studio601という長野の工房が開発中の手のひらサイズのデジタル・シンセサイザー。Studio601の代表である松井朗さんは、つい最近まで大手楽器メーカーでシンセサイザーやデジタル・ミキサーの開発を手がけていた知る人ぞ知る人物です。
8bit CPU(C8051F330/20MHz)1個で、減算方式のアナログ・シンセサイザーのサウンドと機能を再現した「8bit CPU Synth」ですが、今回展示されていたバージョン2では内蔵シーケンサーのステップ数が16に拡張され、有機ELディスプレイ(96×64のカラーOLED)で各ステップのノート・ナンバーを一括表示することが可能に。また、ステップごとにミュートも設定できるようになり、ループ再生にも対応しました。オシレーター部の解像度が16bitから24bitに向上したことで、より精度の高い波形が生成できるようになっており、新たにポルタメントにも対応。そして筐体の下部には1オクターブの鍵盤として機能するスイッチも備わりました。開発者の松井さんによれば、「鍵盤スイッチが備わったことによって、かなり“遊べる”シンセサイザーになった」とのことです。
シンセサイザーの名機を数多く手がけた人物が開発しただけに、見た目以上のサウンドと機能を備えた「8bit CPU Synth」。Studio601では販売も考えているそうで、今後の展開が非常に楽しみです。なお、Studio601は有機ELディスプレイを使用したデジタル・オシロスコープも展示しており、こちらはEurorackモジュール化を検討しているとのことでした。