ART & DESIGN
メイカーの祭典『Maker Faire Tokyo 2014』レポート 〜 あの80sシンセの名機の生みの親が、新たに開発した「8bit CPU Synth」を出品!
メイカーたちの祭典『Maker Faire Tokyo 2014』が、今年も大々的に開催されています(2014年11月23日(日)/24日(祝)、主催:株式会社オライリージャパン)。今年の会場は、昨年までの日本科学未来館ではなく東京ビッグサイトで、同じ西ホールでは『2014楽器フェア』と『2014豆腐&大豆食品フェア』という集客力のあるイベントが2つも開催されていたため、ビッグサイトはとにかく人・人・人で溢れ返っていました。しかし音系の人にとっては、楽器と音系DIYと日本各地の豆腐をシームレスに楽しむことができた、すばらしい3連休中日だったのではないでしょうか。ちなみに『2014楽器フェア』は今日で終了ですが、『Maker Faire Tokyo 2014』と『2014豆腐&大豆食品フェア』は明日24日も開催されています(『2014豆腐&大豆食品フェア』は入場無料です)。
それでは今年の『Maker Faire Tokyo』で、音系DIYものを中心に、特に印象に残ったものを10個紹介することにします。
「re:make」by ガレージ × spirot
ガレージ × spirotというグループが展示していたのは、モジュラー・シンセサイザー型の植物育成装置「re:make」。普通の植物育成装置は発泡スチロール製で、内部回路がむき出しの外観になっているのですが、この「re:make」はモジュラー・シンセサイザー型の筐体になっています。中央に育成したい植物を置き、各エンコーダーを操作することによって、水やり、温度、光などをコントロールすることが可能。まるでモジュラー・シンセサイザーを操作するような感覚で植物を育成できるようになっています。無数の端子も決して飾りではなく、ゆくゆくはパッチングできるようにして、複雑な植物育成に対応できればとのことでした。
「Custom Layout MIDI Controller CC-1」by WOSK
WOSKという謎の4人組グループは、ユニークなMIDIコントローラー「CC-1」を展示。この「CC-1」、フェーダーやエンコーダー、スイッチといった操作子がすべてモジュール化されており、電子ブロックのようにモジュールを自由に並べることで、好みのレイアウトのMIDIコントローラーが作れるというガジェットです。モジュールのスロットは計72スロット(12×6)用意され、標準のスライダー・モジュールは2スロット、クロス・フェーダーとして使えるスライダー・モジュールは4スロット使用。72のスロットには、それぞれMIDIコントロール・チェンジ・ナンバーが割り当てられているので(0〜71)、特別な設定を行うことなく使用することができます。また、各モジュールは発光するようになっており、レベル・メーターとしても機能。ブースでは、Native Instruments Traktor用のDJコントローラーとしてのデモが行われていました。
「asm/jmp」by Dm9 Records
Dm9 Recordsの「asm/jmp」は、マイクロSDカードに保存されたWAVファイルをカットアップして再生できるローファイ・サンプラー。内蔵キーだけでなくMIDIでもコントロール可能。キットが8,000円で販売されていました。
「コアラのマーチ振り機」
ロッテのコアラのマーチを激しく長時間振ると、丸いチョコレートの塊になることはよく知られていますが、それを自動化したのが「コアラのマーチ振り機」。このマシンを使用することで、気温が約25°の環境下では、約20分(約5,000回転)で塊化が完了するとのことです。
「MenZ-ARCADE」by The-MenZ
The-MenZという2人組グループが展示していたのは、Arduinoを使用して製作されたアーケード・ゲーム機のようなMIDIコントローラー「MenZ-ARCADE」。ディスプレイと「MenZ-ARCADE」を同じ筐体に組み込んだNative Instruments Traktor専用マシンは最高でした。
「フルカラ−LEDライトセーバー」by TAC
フルカラーLEDを大量に使用することで、映画『スター・ウォーズ』のライトセーバーを再現! 発光具合だけでなく、加速度センサーによって鳴るサウンドも本物のようでした。
「ATARI PUNK CONSOLE」by Tokyo Hacker Space
名機ATARI 2600のサウンド回路を小さな缶の中に仕込んだ手のひらサイズのサウンド・ジェネレーター。
「MMI(Musical Mechanical Instrument)」by TASCO Inc.
2本の指でギターを演奏する「オート・オートマタG」と、同じく2本の指でベースを演奏する「オート・オートマタB」、そして機械と人力の融合によってドラミングを行う「セミ・オートDrum」で構成されるマシン・バンド。ポジパンを彷彿とさせるハードでダークなサウンドが印象的でした。
「TinyBoy」by 遊舎工房
BASICでドット・ゲームをプログラムできるFRISKサイズの超小型ゲーム機。赤/白の2色展開。5,000円(税込)で、これは欲しい!と思ったのですが、売り切れでした……。
「8bit CPU Synth」by akira matsui
今年のMaker Faire Tokyoで個人的に最も印象に残ったのが、akira matsui氏が開発した「8bit CPU Synth」です。この「8bit CPU Synth」は、汎用の8bit CPU(C8051F330)によって、VCO、VCF、EG、LFO、ステップ・シーケンサーで構成されるアナログ・シンセサイザーのサウンドと機能を再現したもの。手のひらサイズのマイクロ・シンセサイザーですが、4つのツマミによってパラメーターのエディットも詳細に行えます。
いまの時代、Arduinoを使用した音系ガジェットがたくさん出回っているので、この程度のシンセサイザーであればそれほど珍しくありませんが、「8bit CPU Synth」がすばらしいのはそのサウンド。とにかく音が良いのです。それもそのはず、開発者のakira matsui氏は誰もが知っている’80sデジタル・シンセサイザーの生みの親なのです!
akira matsui氏は昨年、大手楽器メーカーを退職し、何か好きなことをやってみようと試しに開発したのがこの「8bit CPU Synth」とのこと。安い8bit CPUで、アナログ・シンセサイザーのサウンドと機能をどこまで再現できるかというのが「8bit CPU Synth」のコンセプトとのことで、まだ処理能力的には10%くらい残っているため、これから何か機能を追加していきたいとのことでした。
コードはアセンブラで書かれ、10bit/48kHzで動作する「8bit CPU Synth」。MIDI入力にも対応し、有機ELディスプレイによるオシロスコープも備わっています。このオシロスコープの波形表示がひじょうにカッコよいのですが、使用パーツの中で一番高価なのが、この有機ELディスプレイとのことでした。
残念ながら現時点では頒布する予定は無いという「8bit CPU Synth」ですが、ぜひともミニミニ鍵盤内蔵のカッコいいケースに仕込んで販売してほしいものです。J●-●Pの開発者が製作したシンセサイザーとなれば、世界中で話題になるはずですよ、matsuiさん!
『Maker Faire Tokyo 2014』は、東京ビッグサイトで明日24日も開催されています。お時間のある方はぜひ足を運んでみてください。