Feature Image

FEATURE

製品開発ストーリー #38:コルグ volca mix 〜 3台のvolcaを強力な音楽制作/パフォーマンス・ツールに変える専用ミキサーが遂に登場!

prologue(開発者インタビュー記事はこちら)と同時に発表され、『The NAMM Show』でお披露目されたコルグの新製品、「volca mix」の出荷が遂に開始されました。volcaシリーズの最新モデルとなる「volca mix」は、4ch入力(モノ×2、ステレオ×1)のアナログ・パフォーマンス・ミキサー。複数台のvolcaの出力をシンプルにまとめることができる、volcaユーザー待望の純正ミキサーです。各チャンネルには効きの良いLO/HI CUTフィルターが備わり、出力段には完全アナログ回路(!)のコンプレッサーとステレオ・エキスパンダーを搭載。外部エフェクターを接続するためのセンド・アウト/AUXイン端子も備え、便利なステレオ・スピーカーも内蔵しています。さらには最大3台のvolcaに電源供給することも可能で、同期時にはシンク・マスターとしても機能。要するに、複数台のvolcaを併用する際の“最強便利ツール”、それが「volca mix」なのです。volca 3台と並べるとモジュラー・シンセのような見た目になるのも魅力的な「volca mix」。そこでICONでは、開発を手がけたコルグのノロ・エベール・エティエン(Etienne Noreau-Hebert)氏に、そのコンセプトと機能について話を伺ってみることにしました。

KORG - volca mix

出力をまとめるだけでなく、電源やシンク信号も供給できる「volca mix」

——— エティエンさんは、あのLemurの開発に関わられていたそうですね。

エティエン そうです。コルグに入社する前はドイツに住んでいて、LiineでLemurやAbleton Live用のコントローラー、あとはオーディオ系ソフトウェアの開発を手がけていました。コルグに入社したのは一昨年の10月のことです。

——— Liineからコルグに移られたきっかけは何だったのですか?

エティエン 今はコルグを辞められてしまった坂巻さん(註:コルグの元商品企画室長の坂巻匡彦氏)に、声をかけていただいたのがきっかけです。Liineでの仕事も楽しかったんですが、もともとシンセサイザーが大好きで、そっちの仕事もやってみたいなと思っていたときに、“だったらコルグに来れば?”と誘っていただいて。それで日本に引っ越してコルグに入社することにしたんです。日本には10年くらい前から何度も遊びに来ていて、ワーホリで約1年間住んだこともあったんです。

——— この「volca mix」が、エティエンさんが中心になって開発された最初の製品ということですね。

エティエン はい、去年一番関わった製品はprologueなのですが、プロジェクト管理を手がけたという意味ではこの「volca mix」が最初の製品ということになります。

KORG - volca mix

「volca mix」の開発リーダー、ノロ・エベール・エティエン氏

——— なぜこのタイミングでvolca用ミキサーを作ろうと思ったのですか?

エティエン 私も個人的に使っているので分かるんですが、volcaって複数台併用しようと思うと結構煩わしいんですよ。出力をまとめるためのミキサーが必要になりますし、電源アダプターもかさばる。なのでそろそろvolcaに最適化したミキサーを出して、複数台併用する際の面倒さを無くしたいなと思ったんです。実際に開発がスタートしたのは去年の5月のことです。

——— 開発をスタートした時点で考えていたことと言うと?

エティエン 単なるミキサーではなく、”パフォーマンス・ミキサー”にしようということですね。volcaはリアルタイムに遊ぶものですから、パフォーマンス向けの機能を盛り込もうと。例えば、各チャンネルには強力なフィルターを装備して、DJ感覚でミックスできるマシンにしたいなと思いました。1つのノブをクイッと回せば、音色が劇的に変わる強力なフィルター。あとはデジタルではなく、完全にアナログ回路のミキサーにしたいということも最初から考えていましたね。

——— 「volca mix」の機能についておしえてください。

エティエン 3ch入力/ステレオ出力のミキサーで、各インプット・チャンネルにはLO/HI CUTフィルター、センド・ノブ、ミュート・ボタン、ボリューム・フェーダーが備わっています。3ch入力と言いましたが、1〜2chはモノ、3chはステレオなので、4ch入力という表現の方が正しいかもしれません。なぜこのような仕様にしたかと言うと、volca samplevolca fmはステレオ出力、それ以外のvolcaはモノ出力だからです。また、マスター・チャンネルにはコンプレッサーと左右の拡がり感を増すことができるステレオ・エキスパンダーが入っていて、出力はステレオ・ミニのヘッドフォン端子に加えて、RCAピンのライン出力端子も装備しています。

——— スピーカーも内蔵しているのですか?

エティエン はい。volcaと同じスピーカー・ユニットですが、ステレオ仕様になっていて、出力も大きくなっています。スピーカーは前面に備わっているので、他のvolcaよりもかなり音量感がありますね。  それと「volca mix」の大きな特徴が、3台のvolcaに電源を供給することもできて、シンク・マスターにもなる点です。左上にDC出力が3つ備わっていて、volcaを繋ぐための電源ケーブルも3本付属しています。また、シンク出力からすべてのvolcaを数珠繋ぎすれば、volca mix側でスタート/ストップとテンポ・コントロールを行うことが可能です。なお、フル・アナログ回路がコンセプトの「volca mix」ですが、このテンポ・コントロールの部分だけはデジタル回路です(笑)。

——— 3ch入力にしたのはなぜですか?

エティエン いろいろ検討したんですが、使いやすさやパネルのバランスなどを考えると、3ch入力がベスト・フィットでした。それ以上だと窮屈すぎるレイアウトになりますし、他の機能も削る必要が出てきます。あと「volca mix」の周りにvolcaを3台並べて置けば、スクエアな形になりますしね。3chでは足りないという場合は、インプット・チャンネルとは別にステレオのAUX入力が備わっているので、「volca mix」を複数台チェーンすることもできます。AUX入力に入った音は、マスター・エフェクトの後段でミックスされます。また、センド出力も備わっているので、エフェクターなどをつないでAUX入力に返すことができます。変な使い方としては、センド出力をそのままAUX入力に繋いで、内部でフィードバックさせるのもおもしろいですね。「volca mix」だけで音を作ることができます。

——— 先ほど実際に音を出していただきましたが、マスター・チャンネルのコンプレッサーはかなり効きますね。

エティエン 普通のコンプレッサーよりもダイナミック感を出したかったので、低い帯域をサイドチェーンのエンベロープ・フォロワーに入力するという設計になっています。volcaユーザーは、ダンス・ミュージックを作っている人が多いですから、低域のかかりにはかなりこだわりました。ぼくらはこのコンプレッサーのことを、“ダイナミック・レンジ・コンプレッサー”と呼んでいますね。

——— ”SPEED”というパラメーターは何に作用するのですか?

エティエン エンベロープ・フォロワーの反応です。例えばキックでダッキングした場合、このパラメーターでそのレスポンスを調整することができます。

KORG - volca mix

——— マスター・コンプレッサーは納得なのですが、加えてステレオ・エキスパンダーが入っているというのがおもしろいですね。

エティエン volca samplevolca fm以外のvolcaはすべてモノ出力なので、拡がり感を演出できる機能があった方がいいんじゃないかと思ったんです。アナログ回路のステレオ・エキスパンダーって世の中にほとんど無いんじゃないかと思うんですが、実際かなり複雑な設計になっています。少しお話しすると、オールパス・フィルターという位相だけをずらすフィルターがあるんですが、それを複数チェーンさせることで拡がり感を出しているんです。位相変化の量を周波数帯によって変えている。ステレオ・エキスパンダーの中には、モノ入力に対しては有効でも、ステレオ入力に対しては音が変になってしまうものもあったりするんですけど、今回開発した回路は入力ソースがモノでもステレオでも同じような効果というのが特徴ですね。パラメーターは“WIDTH”1つだけで、右に回すと拡がり感が増していきます。

——— 開発者的に注目してほしい機能があればおしえてください。

エティエン やはりマスター・エフェクトですかね。アナログ回路のステレオ・エキスパンダーというのは本当に珍しいと思うので、その効果をぜひ聴いていただきたいです。volcaを使っていない人にとっても、フル・アナログ回路のコンプレッサーとステレオ・エキスパンダーがこの価格(註:市場想定価格 15,660円)で手に入るというのは、かなり魅力的なのではないかと思います。

——— エティエンさんのお話からは、アナログ回路への強いこだわりが感じられます。

エティエン ステレオ・エキスパンダーやミュート・スイッチは普通だったらデジタル回路でやると思うんですが、今回それらをアナログ回路でチャレンジしたのはおもしろかったですね。

——— 「volca mix」の登場で、volcaシリーズに再び注目が集まりそうですね。

エティエン そうなってくれれば嬉しいですね。volcaを複数台併用したときの煩雑さが、この「volca mix」によって一気に解消するので、volca 3台と「volca mix」の組み合わせを新しい“テーブルトップ・システム”として注目してほしいと思います。最近流行っているモジュラー・シンセ、私も大好きなんですが、「volca mix」と3台のvolcaを並べてケーブルで接続すれば、モジュラー・シンセのような見た目になりますしね。

KORG - volca mix

Sonarworksの音響補正ツール SoundID Referenceが、Universal Audio Apollo Xに対応…… DSPでキャリブレーションすることが可能に

Native Instruments、「Maschine 3」を発表…… iZotope RX直系のステム・セパレーション機能を搭載、MP3などの圧縮オーディオのインポートにも対応

4つのノブでステムをミックスできる“クリエイティブ・ミキサー”、Native Instruments「Traktor Z1 MK2」がデビュー…… Traktor Pro 4が無償バンドル

iZotope、次世代ミキシング・スウィート「Neutron 5」を発表…… 3種類の新モジュールが追加、MPS 7も同時リリース

IK Multimedia、Bösendorfer 214VCをサンプリングしたPianoverseの新作、「Black Pearl B200」をリリース

“どこでも作曲マシン”、「Ableton Move」がデビュー…… バッテリー駆動、スピーカーやマイクも内蔵したコンパクトな音楽制作デバイス

IK Multimedia、TONEXの誕生2周年を記念して、TONEX Pedalのホワイト・バージョンを発売…… 完全数量限定

原音の明瞭度をキープできる画期的な“アンマスク・リバーブ”、iZotope「Aurora」がデビュー…… 画像編集のマスク処理のようなリバーブが登場

来たる10月18日、ジョナサン・ワイナーのマスタリング・セミナー第二弾が開催…… エアロスミスやデヴィッド・ボウイの作品を手がけた匠が、その技を徹底解説

ボーカル・トラックの歌声をまったく異なる声質に変換できるプラグイン、Sonarworks「SoundID VoiceAI」が2.0にアップデート…… 待望の永続版ライセンスも登場

IK Multimedia、ホワイト・バージョンのiLoud MTM MKIIを本日から販売開始…… 最新の『ARC』音場補正機能に対応

teenage engineeringのクルマ型オブジェ、「grip car」の国内販売がスタート…… B&O製品などで知られるアナース・ハーマンセンがデザイン

Product Review: 鈴木”Daichi”秀行が聴く、IK Multimedia「iLoud Micro Monitor Pro」

IK Multimedia、新製品「iLoud Micro Monitor Pro」を発表…… XLR入力を備え出力は2倍に、音場補正機能『ARC』も搭載

Apogee、1U筐体の新型オーディオIF、「Symphony Studio」を発表…… “マスタリング・グレード”の音質を実現、イマーシブ・プロダクションにも対応

iZotope、新作「Plasma」を発表…… 誰でも簡単に理想的なサウンドが得られる、“機械学習チューブ・サチュレーター”が登場

IK Multimedia、「T-RackS 6」を発表…… 自分の楽曲をリファレンスに適合できる新モジュールを搭載、無償版の「T-RackS Intro」の提供もスタート

Native Instruments、「KOMPLETE 15」を発表…… 超強力サンプラー「KONTAKT 8」をフィーチャーした次世代バンドルが遂にデビュー

ICON