MUSIKTECHNIK

AES 2014: 2ミックスの楽曲をボーカルとオケに分離する革新的なソフトウェア、Audionamix「ADX Trax」

昨年のAES Conventionで初披露されていた「ADX Trax」が、より洗練されたユーザー・インターフェースとなって展示されていました。フランスのAudionamix社が開発した「ADX Trax」は、2ミックスの楽曲データを解析して、ボーカルとオケに分離する魔法のようなソフトウェア。これを使用すれば、リミックス用に楽曲の中からボーカルだけを抜き出したり、逆にボーカルだけを除去してカラオケを作ったりすることが可能になります。Audionamix社によれば、非破壊かつ自動でボーカルとオケに分離するソフトウェアとしては、世界初の製品ということです。

Audionamix - ADX Trax

残念ながらヘッドフォンを使ったデモだったため、ムービーを撮影することはできませんでしたが、「ADX Trax」はとてもシンプルなソフトウェアです。2ミックスの楽曲ファイルを読み込んで処理を開始すると、Auto-TuneやMelodyneのようにボーカルのピッチ曲線がピアノ・ロールに表示されます。あとはSEPARATEボタンをクリックすれば処理は完了。2ミックスの楽曲ファイルが、ものの見事にボーカル・トラックとオケ・トラックに分離されます。もちろん、すべてがすべて上手く分離されるわけではなく、たとえばボーカルがリバーブに埋もれている曲など、処理が難しい楽曲もあります。「ADX Trax」は、そういった楽曲のために、解析結果をマニュアルで補正するための各種ツールも搭載。しかしAudionamix社のスタッフによれば、普通のロック/ポップスの楽曲であれば、大抵は上手く分離されるとのことです。

「ADX Trax」のアルゴリズムは元々、カラオケ制作のためのB to Bサービスで使われていたものとのこと。従って「ADX Trax」は新しいソフトウェアですが、そのアルゴリスムには既にかなりの実績があるということを強調していました(ブースでは多くの使用実績が紹介されており、カタログなどではUniversal Musicの上級副社長が賛辞のコメントを寄せていたりします)。そのアルゴリズムについては企業秘密とのことですが、複数のアルゴリズムを組み合わせたハイブリッド処理になっているのが肝ということ。そのアルゴリズムはかなりの演算能力を必要とするため、「ADX Trax」の処理はすべてクラウド・サーバーで実行されるとのことです(従って「ADX Trax」を使用するには、インターネット接続が必須となります)。

Audionamix - ADX Trax

「ADX Trax」は現在、Macのみ対応で(Windowsも近い将来対応するとのこと)、気になる価格は299.99ドル。また、月額19.99ドルのサブスクライブ・プランも用意されています。今後はより機能が強化されたProバージョンとDAW用のプラグイン・バージョン、そして分離したボーカルの音量をリアルタイムに可変するためのDAW用プラグインなどを発売していく予定とのことでした。

Audionamix - ADX Trax