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ついに歌いはじめたゲームボーイ女子! 女子大生チップチューナー TORIENA、ロング・インタビュー

一昨年、チップチューン・シーンに彗星のように現れたゲームボーイ女子、TORIENA。日本のチップチューンの聖地:京都を拠点に精力的なライブ活動を続け、これまでにEPを3作品、アルバムを2作品発表。昨年2月にはNNNNNNNNNNと共同で日本初のチップチューン・レーベル、“MADMILKY RECORDS”を立ち上げ、最近では海外のシーンでもその名は知れわたっています。そんなTORIENAが昨年末、初のボーカル・トラック、『Chip Brain Girl』を発表。自身の“LSDj愛”をキャッチーなトラックにのせて歌ったこの曲は、ファンの間で大きな話題となりました。そこでICONでは、若干20歳の女子大生チップチューナー、TORIENAにロング・インタビューを敢行。チップチューンにハマったきっかけ、作曲方法、最新作『Chip Brain Girl』のコンセプトなど、じっくりと話をうかがってみることにしました。

TORIENA

小学生時代は、ぼーっとした空想癖のある子でした

——— 音楽の話に入る前に、気になっていたことを……ジャケットやWebサイトのイラストは、すべてTORIENAさんが描かれているんですか?

TORIENA はい。ぜんぶ自分で描いてます。最初に鉛筆で下書きして、ハイテックCの0.3のポール・ペンとサイン・ペンで描いて、それからスキャナーを使ってパソコンに取り込んで……。太くて、パキパキした線で女の子を描くのが好きなんですよ。

絵を描くのは昔から大好きで、小さいころは音楽よりも、お絵描きや習い事のバレエの方に夢中でした。あとパソコンも大好きで、小学校4年生くらいから、イラストを掲載したサイトを作ったりして遊んでいたんですよ。

TORIENA

Illustration by TORIENA

——— 小学生でサイトを作ってしまうなんて、すごいですね。

TORIENA でも、小学生時代は、ぼーっとした空想癖のある子でした。先生に心配されるほどの。それでいておませさんで、かなり負けず嫌いな女の子でしたね。自分が得意な分野では誰にも負けたくないタイプで(笑)。あと、こだわりが強くて、たとえば小学校の図工では、どうしても自分の作品の仕上がりに満足できなくて、何時間も居残りして作業したりしていました。

——— そんな女の子が、音楽に興味を持ち始めたのは?

TORIENA もちろん音楽も何となく好きだったんです。両親が音楽好きで、お父さんは学生時代にレゲエのDJをやっていたみたいで(笑)。家にはDJブースとレコードがたくさんあって、ルーツ・レゲエやダブ、ブラック・ミュージック、ジャズなどがよく流れていました。あと、これは両親が言っていたんですけど、スーパーで買い物をしているときにアップ・テンポな曲が流れると、いきなり踊りだす子だったみたいです。

自分で意識して音楽を聴き始めたのは小学校5年生のときなんですが、当時テレビでディズニー・チャンネルが始まったんですよね。それでいろいろな海外ドラマを見ているうちに、ヒラリー・ダフ(註:幼いころから活躍しているアメリカの女優/歌手)にハマって、彼女がCDを出していることを知って。それで『Metamorphosis』というアルバムを買って聴いてみたら、すごくカッコよくて、それからCDを買って音楽を聴くようになりました。それが12歳のときで、そのアルバムが自分のお金で初めて買ったCDですね。両親に買ってもらったのは、矢野顕子さんの『ピヤノアキコ』が最初なんですけど。

中学に入ってからは、さらにいろいろな音楽を聴くようになって、BjorkやKraftwerk、Daft Punk、P-MODEL、TOWA TEIさんとかが好きでした。それとは別に、ポスト・ロックにハマった時期もあって、無鉄砲にCDを買い漁っていたときもありましたね(笑)。あんまりバンドの名前は憶えてないんですけど……。999やXTCをよく聴いていたような気がします。あとはお父さんのCD棚からLed ZeppelinやBrian EnoのCDを持ち出して、“ふんふん”とわかったふりをして聴いていました。

——— かなり音楽マニアだったんですね。

TORIENA 高校に入ってから、ネットで偶然The Adventの曲を聴いて、そこからはテクノにハマりました。Squarepusher、Clark、kettel……芋づる式にいろいろ聴き始めて。いまでもミニマル・テクノやエレクトロニカは大好きで、Clarkやkettel以外で好きなアーティストは、Gold Panda、Luke Vibert、Hertz、Alva Noto、μ-ziqとか……挙げていったらキリがないです。ネット・レーベルから出している国内のアーティストもよく聴いていて、中でもCalla SoiledさんやPa’s Lam Systemさんはめちゃくちゃ好きですね。わたしは、音が重なる部分が切なくて、母胎とか宇宙を感じさせてくれるような曲が好きなんですよ(笑)。そういう曲を聴くと、何だかドキドキします。あとはビートが複雑な曲も好みですね。最近はSoundCloudで、いろいろ探して聴いています。

TORIENA

——— いま聴くのは打ち込みものばかりですか?

TORIENA いや、そんなこともなくて、バンドものも好きで聴いています。Melt-BananaやCSS、Jimmy Eat Worldとか好きですね。けっこう移り気なので、そのときの気分によって聴く音楽が変わるんですよ。

——— そんなに音楽にハマって、楽器やバンドは?

TORIENA 中学生のときに吹奏楽部に入って、チューバ、コントラバス、ベース・ギターをやりました。でもあんまり上手ではないです(笑)。あと、大学に入ってから、友だちとオリジナルのロック・バンドを組んだんですが、すぐに解散してしまいましたね。わたしはベースとボーカルを担当だったんですけど。性格的にバンドは向いてないみたいです。良い経験にはなりましたけどね。

わたしにとって作曲は、口べたな自分の日記やラブ・レターみたいな感じ

——— チップチューンとの出会いをおしえてください。

TORIENA いろいろ音楽は聴いていたので、チップチューン自体は知っていたんですよ。本格的にハマり始めたのは、大学1年の春休みごろで、所属していたバンド・サークル出身の先輩がNNNNNNNNNNだったんですよ。それで同じサークルにNNNNNNNNNNが大好きな女の先輩がいて、“わたし、チップチューン作ろうと思っているんだけど、一緒に挑戦してみない?”と言われて、それでおもしろそうだなと思ってLSDj(註:Little Sound Dj。ゲームボーイ用の音楽制作ソフト)を手に入れたんです。そこから、自分で作るときの参考用に、いろいろなチップチューン・アーティストの作品を聴き始めて。間もなくして、京都のCafe la Siestaでライブをやったんですが、そのときに対ピコした方々のライブを見て、心底感動したんですよ。そのときの感動が、TORIENAの始まりかもしれないです。

TORIENA

——— ゲームは好きだったのですか?

TORIENA 大好きでした! でも、わたしはヘタクソなので、上手な妹の脇で“いけいけ〜!”と言っているタイプでしたね(笑)。初めて手に入れたゲーム機も赤色のゲームボーイだったんです。特にハマったゲームは、『ポケットモンスター 金・銀』、『星のカービィ2』、『MOTHER2 ギーグの逆襲』ですね。

——— 特に良いなと思ったチップチューン・アーティストは?

TORIENA chibi-tech、IAYD、Ultrasyd、Citrixが好きですね。8bitpeoplesから出ているアーティストは大概好きです。

——— 日本のチップチューン・アーティストとは交流あります?

TORIENA NNNNNNNNNNとは一緒にレーベルをやっていますし、わたしがいま住んでいる京都には日本のチップチューンの聖地、Cafe la Siestaがあるので、お話する機会も多いです。

——— LSDjを手に入れて、すぐに曲は作れました?

TORIENA 最初は画面が数字ばかりなので、“うげげ、こんなのわからない!”と思ったんですけど、慣れたら使いやすくて、すぐにできました。最初のころは自分で作ったフレーズをずっとループして、ひとりでニヤニヤしていましたよ(笑)。でも、イメージどおりの曲が作れているかと言えば、いまだにぜんぜんですね。悩みまくって、しょぼしょぼになりながら作っている感じです。でも、曲を作るのは本当に大好きで、わたしゲームボーイ触ってるとドキドキするんですよ(笑)。わたしにとって作曲は、口べたな自分の日記やラブ・レターみたいな感じ……。曲を作っているときは、本当に没頭してしまうので、ごはんを食べるのもトイレに行くのも忘れてしまいますね。いつも気がつけば夜になっている感じです。

TORIENA

——— もうけっこう作品を発表されていますよね。

TORIENA このまえ新しいEPの『Chip Brain Girl』を出したので、EPはぜんぶで3枚。アルバムは2枚出しました。毎回、ストーリーを考えながら作っていて、ファーストEPの『Orbit』、ファースト・アルバムの『Black Dance Hole』、セカンド・アルバムの『Space Fugitives』はつながった話なんですよ。ざっくりお話しますと、白化していく地球で少女が瀕死のライオンと恋に落ち、地球から逃げ出すというストーリーなんです。人には言えないわたしのロマンティックな想いを何とか作品として昇華しました。これまで出した曲はぜんぶお気に入りなんですが、この3作品は特にお気に入りですね。セカンドEPの『Over Sleep Insomniac Maiden』は、不眠症を患った双子の女の子のお話で、ひとりは普通の女の子なんですが、もうひとりはサイボーグというイメージで作りました。この曲は、それまでの3作品とは雰囲気が違う、かわいいポップな曲に仕上がっていますね。この曲を聴くと、何だか元気になれるので気に入っています。

——— TORIENAという名前の由来は?

TORIENA ネットで使うハンドル・ネームを何にしようかなと思って、妹に相談してみたんですよ。そうしたら「お姉ちゃんは顔が“ENA”っぽい」と言われて(笑)、最初“ENA”を名乗っていたんです。でも、“ENA”だと同じハンドル・ネームの人たちがすごく多かったので、頭に“TORI”をつけました。何で“TORI”かと言うと、わたしの干支が酉だからですね(笑)。たまに、「名前が“トリイ・エナ”なんでしょ?」とか言われるんですけど、本名とはまったく関係ないです(笑)。

ベースはできるだけ色気を出して、ここぞというところで休符を使うのがコツ

——— 現在使っている機材についておしえてください。

TORIENA とってもシンプルで、初代ゲームボーイとLSDjだけで作っています。ゲームボーイにソニーの2,000円くらいのイヤフォンを挿してピコピコと。そうやって作ったものをパソコンに入れるときは、オーディオ・インターフェースを通してSteinberg Cubase 6に録音しています。Cubaseは、大学に入ってから買って、チップチューンにハマる前に、ハード・ミニマルな曲をちまちま作っていたんです。

TORIENA

——— ミックスやマスタリングを誰かに手伝ってもらったりとかは?

TORIENA ぜんぶひとりでやってますよ。Cubaseでミックスとマスタリングをしています。最後、音を仕上げるときは、Cubaseについてきたコンプレッサーとマキシマイザーを使っています。

——— チップチューン・トラックを作るうえで、気をつけていることはありますか?

TORIENA LSDjでやっていると、どうしても音を詰め込み過ぎてしまうので、なるべく聴きやすくなるように心がけています。それとチップチューンは高音がキツくなりがちなので、音量バランスも気をつけていますね。

——— カッコいいチップチューン・トラックを作るコツというと?

TORIENA わたしもまだまだなんですけど、クラブで鳴っているところをイメージしながら作るようにしています。特に盛り上がる部分は、ライブをイメージしないとダメですね。あとベースはできるだけ色気を出して(笑)、ここぞというところで休符を使うと。でもいちばん大切なのは、自分が聴きたい曲を作ることですよね。ガチガチに気合いを入れて作ったときより、感覚的にふあふあした気持ちで作ったときの方がうまくいく気がします。

TORIENA

——— いま欲しい機材とかソフトとかってあります?

TORIENA 最近またDTMをちゃんとやりたいと思っているので、Ableton Liveが気になっています。人から使いやすいという話を聞いたので。あとは、LennarDigital Sylenth1とかNative Instruments Massiveといったソフト・シンセも気になってますね。でも、そのあたりはぜんぜん詳しくないので、これからちゃんと勉強したいと思っています。

アコギを弾き語るように、ゲームボーイをピコピコやって歌う女の子がいてもいいんじゃないかなと

TORIENA

——— 先月発表された新曲『Chip Brain Girl』は、TORIENAさん初の歌モノだったので、とても驚きました。なぜ突然、ボーカル・トラックを作ろうと思ったのですか?(『Chip Brain Girl』は、MADMILKY RECORDSのWebサイトからダウンロードできます

TORIENA 前々からいろいろな人に“ボーカル・トラックは作らないの?”と言われていたんですよ。でも、なぜか自分的に歌モノには手を出したくないなぁという気持ちがあって、あんまり作る気が起きなかったんです。しかし徐々にその考えも変わってきて、ヘンな意地を張らずに、やれるうちに新しいことをやった方がいいんじゃないかと。あと、こういう電子音楽だと、ボーカルは歌い手の女の子やVOCALOIDというのがほとんどじゃないですか。そういう誰か別の人をフィーチャーする感じではなくて、電子音楽の世界でも自分で曲を作って歌うようなシンガー・ソング・ライターがいてもいいんじゃないかなと思ったんですよね。アコギを弾き語るように、ゲームボーイをピコピコやって歌う女の子がいてもいいんじゃないかなと。もちろん、電子音楽の世界では歌が入る曲が主流ではないことはわかっているんですけど……。あとは単純に、自分のことばで、自分が作った旋律で歌ってみたくなったというのもあります。

——— 『Chip Brain Girl』のコンセプトをおしえてください。

TORIENA ずっとLSDjを使って曲を作ってきたわけですが、最近曲作りへのトキメキがすごく増しているんですよ。そこで自分はどうしてLSDjで曲を作っているのか、その想いを改めて曲にしようと思ったんです。

——— ロマンティックな歌詞にグッときました。

TORIENA 今回の歌詞は、LSDjとチップチューンへのラブ・レターなんです。サビの部分の歌詞は、ライブをイメージして書いたんですよね。わたし、本当にあまのじゃくで口べたで、本音を人に話すのが苦手なんですよ。だから今回、わたしはこういうことを考えているんだよということを歌詞にしたためたんです。それをライブで披露すれば、みんなに伝わるかなって。これからはライブが、自分の想いを告白する場になりますね。

——— つまり“Chip Brain Girl”というのは、TORIENAさんのこと?

TORIENA そうです。ジャケットの女の子もわたしですね。そもそもTORIENAというのは、わたしの理想の人間像なんですよ。ふだんはとろくてドジばっかりなんですけど、TORIENAに変身したとたんにスーパー・ガールになっちゃうと(笑)。恥ずかしいんですけど、そんな感じなんです。

TORIENA

Photo by AKD (ASR / PSD)

——— 歌詞を書くのはたいへんでした?

TORIENA そんなことはないです。コンセプトが固まっていたので、けっこうさらさらと書けました。

——— 曲はラップから始まりますね。

TORIENA ラップを入れるのは、最後まで悩んだんですけどね。正直、あんまり韻を踏めてないので、ラッパーの方からは笑われるかなと……。

——— 歌モノということで、作り方はこれまでと違いましたか?

TORIENA ふだんは、かなり動き回るメロディーを作るタイプなんですよ。でも、そういういつもの感じだと歌いにくいだろうなと思って、なるべく音程差が激しくならないようにメロディーを作りました。あとはキーも、自分が歌いやすいキーにしましたね。

——— 歌は自宅で録音したのですか?

TORIENA 宅録です。SHUREのPG58を使いました。もちろんマイク・スタンドも立てて、あとはポップ・ガードも使いましたね。今回、初めて歌を録ってみたわけですけど、やっぱりたいへんでしたね……。自宅なので外から騒音が入ってきますし、当然昼間しか録音できないので。それと何度も歌っていると、だんだん何が良くて何がダメなのかわからなくなってくるんですよ(笑)。なのでOKテイクを決めるのがたいへんでした。そもそも自分の歌に自信がないので、途中で不安になりつつ、鍵盤で音程をとりながら一生懸命録音した感じです。

TORIENA

Illustration by TORIENA

——— 細かくパンしていたりと、ミックスも凝っていますね。

TORIENA 今回、ボーカル・トラックということで、かなり考えながら音作りをしました。いままでどおりに音作りをしてしまうと、オケがバキバキ過ぎて声が浮いてしまうと思ったので、オケには空間系のリバーブを薄くかけて、声とぶつかる周波数帯はEQで微妙に下げたり。ボーカルは、低域をEQでバッサリとカットして、ディエッサーとコンプレッサーで音を整えました。リバーブはなるべく薄く、ディレイは逆に深くかけましたね。エフェクトはすべてCubaseについてきたものです。

——— サビの部分では、ボーカルを重ねていますね。

TORIENA そうですね。重ねることで、“サビ感”が出るかなと思ってやってみました(笑)。オクターブ下げたボーカルを左右に広く振っています。

——— サビのAuto-Tuneのようなエフェクトは?

TORIENA 歌声をチップチューンに合わせるにはどうしたらいいか考えて、CubaseのPitch Correctという機能を使ってエフェクトをかけました。音程はカスタムで合わせて、スピードは確か85くらいにしましたね。

TORIENA

ボーカル・トラックばかりではなく、もちろんインスト曲も作り続けていく

——— 現役の女子大生とのことですが、大学の友だちはTORIENAさんがこういう活動をしていることを知っているのですか?

TORIENA いちおう話しています。友だちは“がんばってるね!”とか言ってくれますけど、それ以上は突っ込んでこないですね(笑)。大学内では、同じような趣味の女の子はほとんどいないです……。男の子だとちょこちょこいるんですけど。でも、クラブ繋がりの女の子の中には音楽の話ができる子がいますよ。

——— 音楽以外の趣味というと?

TORIENA お絵描きとお料理、マンガ、あとはアニメや映画も好きでよく見ています。イラストですと、『OH!スーパーミルクチャン』とか水野純子さん、山本ルンルンさんの作品が好きですね。あとはブライスやプーリップなどのドールも大好きです。それとわたし、ガチャガチャとかのヘンな食玩を集めるのも好きなんですよ。

——— ふだんのファッションはどんな感じですか?

TORIENA 古着屋さんやネットで気に入った服を買っている感じです。お店は、京都にあるキタノがお気に入りで、大阪のKAKAVAKA、東京ですと高円寺のSpank!も好きですね。でもぶっちゃけ、服にはお金かけてないですね……(笑)。今年はレトロ・フィーチャーみたいな感じでいきたいと思っています。

TORIENA

——— TORIENAさんが作品を発表しているレーベル、MADMILKY RECORDSについておしえてください。

TORIENA チップチューンにハマって以降、“こんなにすばらしい音楽なんだから、日本でももっともっと広まってほしい!”と思っているんです。でも、いざチップチューンの音源を手に入れようとすると、けっこうハードルが高いことがわかって。それに国内にはチップチューンの曲を出しているレーベルはたくさんあるんですが、専門のレーベルというとひとつも無い状況だったんです。それだったら自分で始めたいなと思ったんですけど、わたしはチップチューン歴も人生経験も浅いので、どうやればいいのかわからなくて。そんな想いを抱きつつ、2012年にTokyo Blip Festivalというイベントに出演させていただいたんですけど、そのときに一緒になったNNNNNNNNNNに“自分でもレーベルをやってみたいんだけど”という妄想を話したら、“じゃあ一緒にやろうか”という話になって。それで去年の2月くらいにNNNNNNNNNNと共同で立ち上げた日本初のチップチューン専門レーベルが、MADMILKY RECORDSなんですよ。

いまの野望は、“チップチューンを聴きたければマドミルをDIGったらいいよ”と言われるまでになることですね。まだわたしとNNNNNNNNNNの作品しか出していないんですけど、これから新人発掘も積極的に行っていきたいと考えていて、既にリリースが決まっているアーティストも何人かいます。また、嬉しいことに海外からもたくさんデモ音源が届いているので、それらの中からもカッコいい曲を厳選して出していきたいですね。国内のレーベルではあるんですが、ボーダーレスに作品を発表していければと考えています。

TORIENA

——— TORIENAさん自身の今後の展開をおしえてください。

TORIENA 今回、初めて歌モノを出してみたわけですが、これまで聴いてくれていた以外の層にもアピールしたみたいで、意外と反響があったんです。“歌詞がよかった”みたいな感想もあって、自分の考えがうまく伝わったのかなと嬉しかったですね。ただでさえ人前で話すのが苦手なのに、人前で歌うとなるとすごく緊張してしまうと思うんですが、たくさん練習してライブでも歌ってみたいなと思っています。そしてボーカル・トラックが集まったら、フィジカルでミニ・アルバムを出せたらいいなと考えてますね。

——— ということは、今後もボーカル・トラックを出していく?

TORIENA 自分でもまだわからないんですけど、ボーカル・トラックばかりになることはないと思いますし、インスト曲も作り続けていくと思います。完全に歌モノばかりになってしまうと、ライブ・スタイルも変えなきゃいけないですし、難しいですね。みんなTORIENAの歌モノを聴きたいのか、インスト曲を聴きたいのか、いちどアンケートを取ってみたいです(笑)。でも、たぶんそのときそのときで作りたいものを作るんだと思います。行き当たりばったりちゃんなので(笑)。

TORIENA

——— 近々、ライブの予定はありますか?

TORIENA 今月25日に京都のMETROで『アニメトロ』というイベントに、来月22日には京都nanoで三回転とひとひねりさんが企画した『渦巻くところ 二回転目』というイベントに出演します。ライブはすごく踊りまくって自信があるので(笑)、興味がある方はぜひ遊びに来てください! デカいスピーカーで聴くチップチューンは、家で聴くのとはぜんぜん違いますので。

——— 海外での活動にも興味はあります?

TORIENA あります! たまに海外のチップチューン・コンピレーションに参加したりしています。ライブのオファーもたまにくるんですけどね。いろいろあって、まだ一度も海外ではやったことないです。でも、このまえようやくパスポートをゲットしたので、今年こそは海外でやりたいと思っています。

——— 長々とありがとうございました! ICONは、今後も応援し続けます!

TORIENA