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Universal Audio本社スタッフに訊く、Thunderbolt版UAD-2 Satelliteの計画と、今後の展開(プレゼントもあります!)

Universal Audio本社から先日、Apollo/UADシリーズのプロモーションのために、おなじみのユウイチロウ“ICHI”ナガイ氏が来日。先日のNAMM Showでは、あまりお話しできなかったので、Apollo/UAD周りの最新の動向と今年の展開について話を伺ってみました。周囲の人に話を訊くと、Thunderbolt版UAD-2 Satelliteを望む声が大きいのですが、はたして年内に登場するのでしょうか……? (最後にプレゼントもあります!)

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——— 昨年の春に販売が開始されたApolloですが、セールスはいかがですか?

ICHI 絶好調です。我々の予想を上回るセールスを記録しています。アメリカでは、2,000ドル前後のオーディオ・インターフェースのことを、“プレミアム・オーディオ・インターフェース”と呼んでいるんですけど、そのクラスの製品の中では売り上げNo.1です。ヨーロッパでもセールスは好調で、特にフィンランドでの売り上げがすごいですね。オーディオ・インターフェースを購入する人は、“No-brainer”で(何も考えずに)Apolloを選んでいます。あの国では、口コミでUADの評判が浸透しているので、Apolloの評価がものすごく高いんですよね。

——— 先日のNAMM Showでは、UAD-2 SatelliteのThunderbolt版がデビューするのかなと密かに期待していたんですが……。

ICHI 期待に応えられなくてごめんなさい(笑)。でも、Apolloのリリース後も、我々はめいっぱい仕事をしているんですよ。Apollo用のThunderbolt Option Cardをリリースして、Windowsにも対応させ、マルチ・ユニットもサポートしました。64bitにもようやく対応しましたし、何も起こってないようで実はすごく進化しているんです(笑)。それにUAD Software v6.5もリリースしましたしね。

——— Thunderbolt Option Cardのセールスはいかがですか? FireWireで問題なく使用している人は、あまり興味を示していない感じですか?

ICHI いや、それがそうでもなくて、かなり売れているんです。製品に対して、そのオプションが売れる割合……我々はアタッチ・レートと呼んでいるんですけど、それも二桁(10%以上)に達しています。つまり、Apolloユーザーの1割以上が、Thunderbolt Option Cardを取り付けたということですね。これはこの類のオプションでは、ひじょうに順調な滑り出しだと思います。

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——— FireWire接続で問題なくApolloを使っていた人が、Thunderbolt Option Cardを導入するメリットというと?

ICHI Thunderbolt接続の方がより多くのプラグインを使用することができますし、入出力のレーテンシーも抑えることができます。Thunderbolt接続でApolloを使用するということは、UADカードをPCIeスロットに装着して使用することと同じで、FireWire接続と比べるとバンド幅が3倍になります。先日のNAMM Showでは、MacBook Proを使って200トラックのオーディオを同時に再生しながら、ライブ・レコーディングのデモを行ったんですが、まったく問題なく動作させることができましたよ。

あとはFireWire接続と比べて、システムとしての安定性が高い点もThunderbolt接続のポイントです。特別なドライバをインストールする必要はありませんし、ケーブルを繋ぐだけでシステムはバッチリ動きます。そこにThunderbolt接続のハードディスクやディスプレイを介在させてもまったく問題ありません。このすばらしく安定したシステムを手に入れるだけでも、Thunderbolt Option Cardを導入する価値はあります。

私は合体ロボが大好きなんですけど(笑)、Thunderboltで構築したシステムはまさにそんな感じですよね。ガチャンガチャンガチャンとハードウェアが合体してスーパー・ロボになるという(笑)。

——— 現状、MacとWindowsのサポートは同じと捉えて構わないのでしょうか?

ICHI ほとんど一緒になりました。UAD Software v6.5でMacもWindowsも64bitをサポートしましたしね。ただ、Windows 8はまだサポートしていません。日本でも同じだとは思うんですが、アメリカではWindows 8の普及はまだまだこれからなんですよ。ユーザーからもWindows 8のサポートに関してはそれほどリクエストはありませんし、将来的に対応させるのは間違いないのですが、現状は様子見の段階です。ただ、ユーザーの中にはWindows 8でUADを使ってしまっている人もいますけどね(笑)。我々としては常に、最もユーザー数の多いOSにフォーカスするということです。

——— WindowsのThunderboltサポートに関しては?

ICHI まだ対応コンピューターが少ないので、いまはいろいろと検証している段階です。先日購入したばかりのAcerのノートPCは、Thunderboltが付いているので、さっそくチェックしました。確かLenovoもThunderbolt付きのノートPCを既に発売していますし、マザー・ボードに関しては4種類くらい出回っていると思います。

それにしてもこのAcerのノートPC、凄いでしょう? Core i7を積んで、128GBのSSDが2台、RAIDで入っているんです。Thunderboltも付いていて、すっごく薄くて軽い。これで1,000ドル以下ですから最高ですよ。

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——— UAD Software v6.5で追加されたTeletronix LA-2Aは、UADを使用しているプロの方々のTwitterやFacebookを見ていても、かなり評判がいいようです。

ICHI それは嬉しいですね。アメリカでも、メチャクチャ評判がいいんですよ。

今回、LA-2Aを改めて開発することにしたのは、やはり1176と並んで伝説の2機種だから。1176をリモデルしたので、こんどはLA-2Aの番だろうと。それと前にもお話しましたけど、我々は頻繁にアンケートを取っているんですが、その中で“LA-2Aを現代の技術で再度モデリングしてほしい”というリクエストが凄く多かったんですよ。そういうこともあり、約1年前に開発をスタートしました。最新の技術で、もう一度LA-2Aにアタックしようということですよね。

開発は、1176以上に大変でした。途中でエンジニアを招いて試聴するんですけど、“あと一歩、何かが足りない”とか指摘されたりして(笑)。そこからはプログラマーの謎を解く旅が始まるわけですよ。結局、アナログ機材なので、パラメーターの組み合わせはもちろん、入力ソースのちょっとした違いでビヘイビアが違ってくる。その微妙なノンリニアな変化を丁寧にモデリングするわけです。この作業にはかなり時間がかかりましたね。そしてようやく、耳の肥えたエンジニアを納得させられるものが出来上がったというわけです。最後は、“これだよ、これ!”と喜んでくれましたね。

——— 今回、LA-2Aはシルバー・モデルとグレー・モデル、そして前身のLA-2の3機種がプラグイン化されていますね。中でもLA-2などは、コンディションの良い実機を探すのは大変だったのではないですか?

ICHI LA-2に関しては、もの凄くレアなアウトボードなんですけど、ロサンゼルスのあるスタジオに貸してもらいました。LA-2Aのシルバー・モデルとグレー・モデルは、社内にとてもコンディションの良いものがあったんですよ。各モデルの違いとしては、まずタイム・コンスタントに差があって、LA-2がいちばん遅くてシルバー・モデルのLA-2Aがいちばん速い。サウンドも、LA-2がいちばん汚くて、グレー・モデルのLA-2A、シルバー・モデルのLA-2Aと、どんどんキレイになっていく感じですね。実機を知らない人でもチョイスのしやすい、分かりやすい音の変化だと思います。しかしこの微妙な音の違いが、ボーカルの処理には重要なんですよね。

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——— 実機に近づけようとすればするほど、DSPパワーを消費するようになると思うんですが、その辺りのバランスはどのように決めているのですか?

ICHI まずはDSPパワーのことは考えずに開発を行います。効率のことは一切無視(笑)。我々は本物の替わりになるものをつくろうとしているわけですから、最初からDSPパワーにリミットを設けてしまっては良いものはつくれないですよ。UADで、ManleyのMassive Passive EQを使ったことあります? あれはメチャクチャ重いんですけど(笑)、あのサウンドを再現しようとがんばった結果、あんなDSP喰いになってしまった。しかしそれでいいんだと思っています。DSPパワーの使用効率なんて、開発時に考えている事柄のベスト3にも入っていません。開発時に考えるのは第一に音質で、その次に使いやすさ、そしてデジタルならではの利便性です。

——— ヴィンテージ機材をプラグイン化する場合、機能はいくらでも拡張できると思います。たとえば、EQだったらバンド数を増やしたり、ダイナミクスだったらアタック・タイムの設定範囲を広げたり……。しかしこのような機能の拡張は、すべての人に喜ばれるわけではなく、嫌がる人も少なくないのですが、Universal Audioとしてはどのようなスタンスで開発を行っているのですか?

ICHI 我々のスタンスは明快で、基本的にはオリジナルのままです。ただ、リア・パネルに備わっているスイッチを、フロント・パネルに持ってきたりはします。それはどうしようもないですからね(笑)。我々は実機をリスペクトしているので、パラメーターの設定範囲を変えたり、そういう機能の拡張は基本的には行いません。

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——— Universal Audioは、アナログ・アウトボードのメーカーでもあります。UADプラットホームのアナログ・モデリング・プラグインを充実させてしまうと、アウトボードが売れなくなってしまうのではないでしょうか?

ICHI こういう言い方をすると語弊があるかもしれませんが、UADプラグインはあくまでもイミュレーションです。市場に出回っているプラグインの中では間違いなくベスト・イミュレーションですけどね。やはり本物には本物の良さがあります。ですから、まったく心配していません。我々にとってUADプラグインは、アウトボードのプロモーションにもなっているんです。UADで1176LNの良さを実感した人は、絶対に本物を試してみたくなりますから。逆にアウトボードを何台も持っている人にとって、UADは機材の数を補完するツールにもなっています。UADなら、1176LNを何十台も使えるわけですからね。

——— 今回のNAMM Showで、ぼくを含め多くの人が期待したと思われるUAD-2 SatelliteのThunderbolt版は、もう少し先の話でしょうか?

ICHI よく訊かれるんですが、ノー・プランです。正直、UAD-2 SatelliteのThunderbolt化は、そんなに意味を感じていないんですよ。というのも、SonnetのThunderboltシャーシ(注:Echo Express SE)はアメリカだと400ドル以下で手に入るんです。そこにUAD-2を挿せば、Thunderbolt接続のSatelliteとして機能するわけですよね。現状、UAD-2 SatelliteはQUADが最もパワフルな製品ですが、ThunderboltシャーシにUAD-2 OCTOを挿せば、ApolloよりもパワフルなThunderbolt Satelliteとして機能するわけです。Magmaの3スロットのシャーシ(注:ExpressBox 3T)ならば、UAD-2だけでなく、オーディオ・カードやPCIフォーム・ファクターのSSDも装着することができる。ですから、UAD-2 SatelliteのThunderbolt化はそんなに重要だとは思っていません。

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——— OCTO版Apolloのリリースについてはいかがですか?

ICHI それもノー・プランです。OCTO仕様にするのは簡単なことなんですけどね。

——— では、新しいハードウェアはしばらくはない感じですか?

ICHI それはわかりません。秘密です(笑)。

——— UADプラグインのAAX対応については?

ICHI UAD Software v6.5で64bitに対応しましたし、我々の準備は万全です。あとはAvidと歩調を合わせて、然るべき時がきたら対応させますよ。

——— Avidとは、その後も良好な関係が続いていますか?

ICHI 良い関係が続いています。我々は今や、彼らの(デベロップメント・)パートナーですからね。RTASに(ラッパーではなく)ネイティブで対応して以降、UADを使うPro Toolsユーザーは2年連続で倍々で増えています。

——— Apollo/UADユーザーが使用するDAWでいちばん多いのは?

ICHI MacかWindowsかによっても違うんですけど、いちばん多いのは依然としてSteinberg Cubaseです(注:Nuendoを含むとのことです)。その次は、今はPro Toolsだと思いますね。昔はLogicとかの方が多くて、Pro Toolsユーザーはわずかしかいなかったんですけど。あと最近はLiveユーザーがすごく増えていますね。Liveをメインで使うユーザーはもちろん、他のソフトウェアのセカンドDAWとしてLiveを使い始めている人が増えています。あのワークフローが合う人にとっては、とても良いソフトウェアだと思います。

——— ICONの読者の方から質問があったのですが、Mac+Core Audio+UAD-2 Satelliteという環境で、Final Cut Pro X v10.0.7でUADを使用するとバッファー・エラーが出るそうなんです。Universal Audioでは、Final Cut Pro Xでの検証も行っているのでしょうか。(読者の方からいただいたエラー・アラートのキャプチャーを見せる)

ICHI DAWだけでなく、Final Cut Pro Xでの検証も行っています。このエラーは見たことがないですね……。詳しい動作環境が分からないと何とも言えないですが、サポート・スタッフに伝えておきます。

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——— 今後の展開について、お話できる範囲で聞かせてください。

ICHI 今年はエキサイティングな年になります。新しいプラグインも楽しみにしていてください。先日リリースしたv6.5では、8種類の新プラグインを追加したわけですが、そんなに一気に追加したアップデートはいままでなかったんですよ。今年は同じような感じで、プラグインをかなり増やしていきたいと思っています。Lexiconも224は出しましたけど、まだまだ他にありますしね(笑)。それと先日のNAMM Showでは、Brainworxがギター・アンプENGLのUADプラグイン版をお披露目しました。これもひじょうに楽しみなプラグインです。BrainworxのENGLは、UADエクスクルーシブ(注:ネイティブ版は販売されず、UADのみで販売されるプラグイン)なんですよ。

v6.5のコンセプトは、インプット系の充実でした。LA-2Aは言うまでもなくボーカル用ですし、API 500 Series EQはドラムやギター用、そしてSoftubeもインプット系ですしね。Apolloでは、レーテンシーのことを気にすることなくUADプラグインを使用することができるので、今後もインプット系は強化していきたいと思っています。

我々は3〜4ヶ月タームで、ソフトウェアをアップデートしています。ですので、新しいプラグインに関しては、4月あるいは5月頃を楽しみにしていてください。

——— 現在、ICONで読者プレゼントやっているんですけど、けっこう好評で、かなり応募があるんです。たいへんあつかましいお願いなんですが、プレゼント用にApolloかUAD-2をいただけないでしょうか……。

ICHI うーん、今日はハードウェアは難しいですね(笑)。その代わりと言っては何ですけど、Universal Audioグッズはどうですか? Tシャツとかマグカップならありますよ。

——— ありがとうございます!

……というわけで、Universal AudioのICHIさんから、Universal Audioグッズをいただきました。Universal Audio特製Tシャツ(3名)、マグカップ(2名)、パーカー(1名)を、計6名の方に差し上げます。欲しい方は、こちらからふるってご応募ください。

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フックアップ: Universal Audio

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