AES 2012 San Francisco
AES2012: Endless Analog「CLASP」に8トラック/16トラック・モデルなど、新しいコンポーネントが多数追加
ちょうど先々週の終わりに開催されていた業務用音響機器の展示会、AESコンベンション・サンフランシスコ。諸事情により、現地からは思ったようにレポートができなかったので、忘れないうちに気になったものを紹介しておこうと思います。
まずは、米Endless Analog社の「CLASP」。ご存じ、本物のアナログMTRを“プラグインとして”Pro Toolsに組み入れてしまう力技のシステムです。「CLASP」は、アナログMTRとPro Toolsを接続するためのハードウェア・インターフェースと、Pro Tools上で使用するコントロール・プラグインで構成されるシステムで、一度アナログMTRに録音して再生したかのようなサウンドを、MTRにダンピングすることなく得ることができます。一度セットアップしてしまえば、接続したMTRはPro Toolsのトランスポートに完全に追随するので、その存在を意識することなく使用することが可能。約3年前の発売以来、欧米では着実にユーザー数(導入スタジオ数)を増やしており、レニー・クラヴィッツやジャック・ダグラスといったビッグ・ネームも使用しているようです。
そして今回のAESコンベンションでは、「CLASP」の新しいコンポーネントが4種類発表されていました。
● CLASP 16:16chの入出力を装備した、16トラックMTR用の「CLASP」。後から8chの入出力を増設し、24トラックMTRに対応させることも可能。5,495ドル。
● CLASP 8:8chの入出力を装備した、8トラックMTR用の「CLASP」。「CLASP 16」とは異なり、チャンネル数の増設は不可。3,995ドル。
● Machine Matrix:「CLASP 24/16/8」用の拡張オプションで、「CLASP」に常時3台のMTRを接続しておき、それらの切り替えを簡単に実現するユニット。MTRの切り替えは、フロント・パネルあるいはプラグイン側から簡単に行うことが可能。これにより、ベースにはは2inchのMTRを使用し、ボーカルのオーバーダブにはハーフ・インチのMTRを使用するという贅沢な使い分けが簡単に行えるようになります。3,850ドル。
● Machine Matrix I-O:「Machine Matrix」用の拡張ユニット。このユニットを追加することにより、「Machine Matrix」を使用したシステムで、24トラックMTRを3台使用することが可能になります(「Machine Matrix」単体では、MTRは3台使用できるものの、トラック数には若干制限がある)。3,495ドル。
Endless Analog社は今回、お馴染みVintage Kingブースの一部を間借りする形で出展していました。ブースでは「CLASP」の開発に深く関わっているというエンジニア/プロデューサーのクリス・マラ氏に話を訊くことができたのですが(ナッシュビルに「CLASP」が導入されたレコーディング・スタジオも所有しているとのこと)、今回発表した「CLASP 16」と「CLASP 8」に関しては、オリジナル・モデルの発売当初から要望が多かった製品だったとのこと。「ウチで眠っているMTRは16トラック(あるいは8トラック)なので、そのぶんチャンネル数を少なくして、安くしてほしい」ということでしょう。最も安価な「CLASP 8」は、オリジナル・モデルの「CLASP 24」の約半額なので、確かにこの程度の価格なら導入に踏み切るスタジオも増えていきそうです。
また、「CLASP」導入にあたって障害となるのが、コンディションの良いアナログMTRの入手/保守ですが、これについてもEndless Analog社は相談に乗っているとのこと。保守に関しては、マラさんも手伝っているそうで、Endless Analog社ではリストア済みのMTRとセットで「CLASP」を販売することもあるそうです。実際、先ほどEndless Analog社のWebサイトを覗いてみたところ、ヴィンテージのMCI JH110C(マラさんの手によるフル・リストア済み)と「CLASP 8」のセットが5,950ドルで販売されていました。これはなかなか魅力的なセットです。マラさんによれば、「確か日本にも数システム販売していると思う」とのこと。某スタジオに1式入っていることは知っていたのですが、他にも輸入している方(スタジオ)がいらっしゃるんですね。
そして最後に、プラグインのAAX対応についても訊いてみたのですが、これに関しては「そう遠くないうちに対応する」とのことでした。
デジタル・シミュレーションではなく、Pro Tools上で本物のテープ・サウンドを得ることができる唯一無二のシステム「CLASP」。登場時はちょっとキワモノなイメージがありましたが、その後着実に進化しており、欧米ではすっかり定着しているようです。
Endless Analog
ICON: Musikmesse: Endless Analog CLASPのデモ・ムービー