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ローランド、液晶ディスプレイ/タッチ・スクリーンとしてiPadを採用した新型デジタル・ミキサー、「V-Mixer M-200i」をお披露目

ローランドは本日6日、Inter BEEでお披露目される新製品の内覧会を開催し、新型ミキシング・コンソール「V-Mixer M-200i」を発表しました。

先ほど内覧会にお邪魔して、さっそく実機をチェックしてきたのですが、これがかなり魅力的な製品に仕上がっています。ローランドのV-Mixerシリーズは、基本的にはライブ/設備/中継収録向けのミキシング・コンソールで、スタジオでプロダクション用に使うには仕様的にツラい部分もあったのですが(たとえば、入出力ユニットとしてDigital Snakeが必要なところなど)、今回発表された「M-200i」は、スタジオ・ユースとしても十分使いものになるのでは?と思わせる、これまでの製品とは異なる仕様となっています。

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ミキサーの基本スペックとしては、32ch入力/メイン出力/8AUX/4マトリクス出力となっています。32chすべてのインプット・チャンネルに、ゲート/エキスパンダー、コンプレッサー、4バンド・パラメトリックEQを備え、メイン出力/8AUX/4マトリクス出力にはコンプレッサー、4バンド・パラメトリックEQ、リミッター、シグナル・ディレイを装備。エフェクトは、AUXバスやインプット・チャンネルなど、自分の好きなポイントにインサートできるマルチ・エフェクトを4基搭載し、さらにはそれとは独立した31バンド・グラフィックEQを4基装備しています。マルチ・エフェクトは15種類のプログラムが用意され、M-480などで好評の“ローランド・ビンテージ・エフェクト(SDD-320/SBF-325/SPH-323)”も3種類含まれています。

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そして「M-200i」の大きなフィーチャーが、大型ディスプレイ/タッチ・スクリーンとして、Apple iPadを採用している点です。専用アプリ「M-200i Remote」をインストールしたiPadから、すべての操作を行うことが可能。グラフィカルなUIで、指先で直感的に操作することができます。

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iPadを取り入れたミキサーとしては、Mackie DL1608がいち早くリリースされていますが、「M-200i」が秀逸なのは、フェーダーやスイッチ、エンコーダーなどの物理的な操作子を引き続き装備しているところ。エフェクトなどの細かい操作はiPad側で行い、ミックス・バランスはこれまでどおりフェーダーを使って行うという、ハイブリッドなオペレーションが可能なのです。iPadからすべての操作が行える「M-200i」ですが、逆にiPadが無い環境でも、本体だけですべての操作を行うことが可能。滅多にないことだと思いますが、iPadにトラブルが生じた際のことを考えると、非常に安心できる仕様と言えます。

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「M-200i」には、iPadを接続するためのDOCKコネクターが備わっていますが、もちろん無線で接続/操作することもできます。これはUSB端子にオプションのワイヤレスUSBアダプターを装着することで実現し、iPadと「M-200i」を1対1で接続するAd-Hoc接続と、無線LANルーターを介して接続する2種類の接続方法に対応しています。これにより、電波が届く場所であれば、どこからでも「M-200i」をリモート・コントロールすることができるというわけです。

なお、iPadは有線と無線で2台同時に接続/操作することが可能。他のV-Mixer同様、Mac/Windows用のリモート・コントロール・ソフトウェア「M-200i RCS」も無償で提供されるので、2台のiPadと1台のコンピューター、計3台のデバイスから同時に操作することができます。

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iPadインテグレーションと並ぶ、「M-200i」の大きなフィーチャーが、入出力を本体に内蔵している点です。冒頭でも述べたとおりローランドのV-Mixerは、本体にはアウトボードなどを接続するための最低限の入出力しか備えておらず、外部入出力ユニットのDigital Snakeを接続して使用するシステムとなっています(V-Mixerを中心としたシステムのことを、ローランドは“V-Mixing System”と呼んでいます)。このフレキシブルな仕様は、V-Mixerの大きな特長であり、ユーザーから高く評価されている部分でもあるのですが、入出力ユニットが分離していることのメリットが無い場所(小さなライブ・ハウスやスタジオなど)には、あまり適していない仕様でもありました。逆にそういった場所にとっては、Digital Snakeを必要とする分、トータルの価格が比較的高価になってしまう、一体型と比べて設置場所も必要とする……といったデメリットもあったのです。

しかし新しい「M-200i」では、アナログ24ch入力と12chの出力を本体に実装。アナログ24chの入力のうち16chはマイク入力にも対応し、V-Mixerシリーズでは初めて、単体でも(Digital Snake無しでも)十分使える仕様になっているのです。これは非常に大きなフィーチャーと言えるでしょう。アナログ入出力の他に、1系統のAES/EBU出力も装備し、もちろんこれまでどおりREAC端子も搭載しているので、Digital SnakeなどのREACコンポーネントを接続して入出力を拡張することもできます。

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また、「M-200i」の素晴らしい機能として、入出力がフル・アサイナブルな点が挙げられます。つまり24chのアナログ入力と40chのREAC入力は、32chのミキサー入力に自由にアサインすることができるのです。出力も同様に、12chのアナログ出力とAES/EBU出力には内部のどんな信号をアサインすることも可能。インプット・チャンネルやAUXバス、マトリクス出力など、自由にアサインすることができるのです。メインのステレオ出力に関しても一切の縛りはありません。言ってみれば、デジタル・ルーター/ミキサーとして機能するということで、これは様々な現場で活躍する機能だと思います。

もちろん、最近のデジタル・コンソールのトレンドの機能は、ひととおり網羅しています。USB端子に装着したUSBメモリーには、16bit/非圧縮のWAVファイルとして録音することができ、REAC端子とWindows PCを接続すれば、Cakewalk SONARへのマルチ収録も可能。先述のとおり、iPadだけでなくコンピューターからのリモート・コントロールにも対応し、MIDI端子はローランド製の映像機器との同期を実現するV-LINKにも対応しています。

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新しい「M-200i」においても、“ライブ/設備/中継収録向けのミキシング・コンソール”というV-Mixerの基本コンセプトにブレは無いようですが、このコンソール、スタジオ・ユースでも十分活躍しそうです。アナログ24ch入力/12ch出力という十分な入出力を備え、それらを本体内で自由にルーティング/ミックスできるという点はかなり強力です。また、REAC端子にオプションのS-MADIを接続すれば、MADI入出力とワード・クロック入力にも対応します。本体のアナログ24ch入力/12ch出力/AES/EBU出力と、S-MADIの40ch入出力を縦横無尽にルーティング/ミキシングできるというのは、スタジオではとても威力を発揮するのではないでしょうか。EQやダイナミクス、エフェクトなど、内部のプロセッサー類も豊富で、これらはどのポイントにもインサートすることができます。ローランド謹製のデジタル版SDD-320/SBF-325/SPH-323が内部で自由に使えるというのも、スタジオ・ユースでは魅力的です。

気になる価格は、定価で299,250円。もちろん、歴代V-Mixerの中で最もコスト・パフォーマンスに優れたモデルであり、この価格もスタジオ・ユースとして大きくアピールするのではないでしょうか。

「M-200i」は、来週14〜16日に開催されるInter BEEに展示される予定です。

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