WORKSHOP

連載『アイドルソングの作り方 〜 HOW TO MAKE “IDOLSONG”』by CHEEBOW 〜 第2回:ライブアイドルという存在

How to make IDOLSONG

ライブアイドルとは

「アイドル」という単語を目にして、頭に思い浮かぶのはどんな人たちでしょうか? 普通の人であればきっと、AKB48や嵐、ももいろクローバーZといったグループを思い浮かべるのではないでしょうか。こういった人気のグループは、テレビや雑誌といったメディアへの露出も多く、特にアイドル・ファンでない人も目にする機会が多いのではないかと思います。しかしそんなグループ(ここでは便宜上、「メジャーアイドル」と呼ぶことにします)とはちょっと違う、ライブ・ハウスなどでのイベントをメインに活動しているアイドルがいます。それが「ライブアイドル」です(「地下アイドル」と呼ばれることもあります)。

ライブアイドルは、テレビや雑誌にはあまり登場する機会がないので、アイドルに興味がない人はその存在さえ知らないかもしれません。しかし、ライブアイドルは現在、日本全国に数千グループ(!)存在すると言われています。熱心なアイドル・ファンでも、そのすべてを把握するのは困難と言っていいでしょう。東京や大阪、名古屋などの大都市では、かなりの数のライブアイドルが活動しており、複数のグループが出演する対バン形式のライブ・イベントが毎週末(あるいは平日にも!)行われています。さらに地方都市には、地元密着型の「ご当地アイドル」(ローカルアイドル)もいます。これを読んでいるあなたが住む街でも、ご当地アイドルが活動しているかもしれません。

つまりいまは、女の子がちょっと勇気を出せば、すぐにアイドルになれる時代なのです。学校にはアイドル的な存在のかわいい女の子がいるものですが、いまだったら本物のアイドルが同じクラスにいても不思議ではないでしょう。テレビや雑誌で見ることができるグループは、アイドル全体から見ればほんの一握り。実際には数え切れないくらいのアイドルが存在するのです。

ライブアイドルの魅力

ライブアイドルには、メジャーアイドルにはない魅力があります。中でもいちばんの魅力は、「距離感の近さ」にあるのではないかと思っています。

メジャーアイドルはホールやアリーナ・クラスの会場でライブを行いますが、ライブアイドルの主戦場は小さなライブ・ハウスです。となると、必然的にアイドルとファンとの距離は近くなり、ほんとうに小さなハコでは、ライブ中にアイドルの汗がかかることもあるくらいです。メジャーアイドルのコンサートでは、肉眼では豆粒のようなアイドルを追いかけつつ、設置された大きなモニターで表情を確認する…… なんてことをしなければなりませんが、ライブアイドルのイベントではそんな必要はありません。目の前にアイドルがいるわけですから、その表情は肉眼ではっきり見えます。

また、ライブアイドルはその呼び名のとおりライブを中心に活動していますので、出演するイベントの数がとても多いのもポイントです。メジャーアイドルであれば年に数回、大規模なコンサートを行う感じだと思いますが、ライブアイドルは週末ごとにイベントに出演していますし、平日にもライブを行うことがあります。複数のアイドルが出演する対バン形式のイベントもあれば、単独ライブもあります。どのグループもほんとうに頻繁にライブをやっているので、次に会えるのは数ヶ月後なんてことはありません。1週間もライブに行かないと、ずいぶん会ってないなぁという気がしてしまうのがライブアイドルの世界なのです。

ライブアイドルの魅力は、距離感が近いライブだけではありません。ライブの後には大抵、「特典会」(アイドルごとに名称が異なる場合があります)が行われます。特典会では、物販でCDやTシャツなどを購入すると貰える特典券を使って、アイドルと握手をしたり、並んでチェキを撮ったりすることができます(イベントによっては、チェキ券そのものを売っている場合もあります)。「2ショットチェキ」なら、アイドルと二人で話すこともできます。

この特典会こそ、ライブアイドルの大きな魅力なのです。想像してみてください。さっきまでステージでパフォーマンスしていたアイドルに直接ライブの感想を伝えて、一緒に記念のチェキを撮ることができるのです。撮ったチェキにサインやメッセージを書いてもらいながら、話をすることもできます。特典券(チェキ券)1枚で話せる時間は決まっているので、物足りなければ、特典券を再び入手してループするのもいいでしょう。特典会は、アイドル用語で「接触」と呼ばれるくらいで、ほんとうにアイドルとの距離感が近いのです。

要するにライブアイドルは、ほんとうにいま会える、とびきり身近なアイドルなのです。

ライブアイドルの楽しみ方

ライブアイドルを楽しむことができるいちばんの場は、やはりライブです。メジャーアイドルのコンサートは、チケットを入手するのが困難だったりしますが、ライブアイドルのイベントは当日ふらりと現場に行っても入れてしまうことがほとんどです。そもそもチケット制ではないイベントがほとんどで、Webサイトの予約フォームから申し込み、当日受付で名前を言えば入場できるというシステムをとっているところが多いです。毎日のようにどこかでイベントが行なわれているという状況なので、何かのついでにふらりとライブに行くということが可能なのです。

CDに関しては、ライブアイドルの作品は必ずしも全国流通しているわけではありません。従って通販やライブ会場での物販で手に入れることになります。先述のとおり、ライブ会場で購入したCDには、特典会でサインしてもらうこともできます。ライブアイドルのライブは、音楽やダンスだけでなく、アイドルとの会話や撮影も楽しめるとてもお得なイベントです。独特の文化があるので、最初は敷居が高く感じると思いますが、興味を持った方はぜひ一度体験していただけたらと思います。

ライブアイドルは、バンドにおけるインディーズ・バンドのような存在、「インディーズアイドル」と言ってもいいかもしれません(メジャー・デビューしているかどうかはさておき)。大きな資本に頼らずに、等身大で、ホームメイドに活動している姿は、ライブアイドルの大きな魅力です。最近では大きな事務所がライブアイドルを運営することも増えてきました。大きな事務所でも「ホームメイド感」を感じるのは、ファンとアイドル、そして運営との距離が近いからだと思います。

いま注目しているライブアイドル3組

たくさんのライブアイドルの中から、注目のグループを選ぶのはなかなか難しいのですが、実際にライブを観たことがあり、これはぜひみなさんにも体験してもらいたいと思う3組をご紹介します。

神宿

楽曲にバラエティがあり、わちゃわちゃ楽しい曲からグッとくる美メロ曲までいろいろ楽しめます。メンバーがそれぞれソロで活動できるくらいにキャラが立っていて、しかもかわいいというのも魅力です。特典会での対応はフレンドリーで、高校の同級生と会話しているような気分にさせてくれるので、気持ちが学生時代に戻ってしまいます。(オフィシャル・サイト

ヤなことそっとミュート

レコーディング・エンジニアや作曲家という制作側にいた人たちが運営しているアイドル・グループで、とにかく音が良いのが特徴です。楽曲のスタイルは、王道アイドルソングではなく、ゴリゴリのオルタナティヴ・ロック。女の子たちが力強く歌い、華麗に舞います。しかし、そんなカッコいいパフォーマンスからは信じられないほどにMCがグダグダで、そのギャップも魅力的だったりします。MCが上手くなる前にぜひ観ていただきたいですね。(オフィシャル・サイト

sora tob sakana

メンバーの平均年齢は14歳。可愛らしい雰囲気と、楽曲のオリジナリティが魅力的なグループです。単独ライブでは、VJと組んでのパフォーマンスがあり、独自の世界観を見せてくれます。楽曲の完成度の高さと、彼女たちの無垢さは、他のアイドル・グループでは味わえない唯一無二のものです。(オフィシャル・サイト

ライブアイドル神曲5選

ライブアイドルの楽曲の中から、神曲だと思うアイドルソングを5曲選びました。もちろん、独断と偏見です。この曲が入ってない! と思った方は、ぜひ「#ライブアイドル神曲」というハッシュ・タグを付けてTwitterに投稿してください。人の数だけ神曲はあります。

『nerve』BiS

BiSは2014年に解散していますが(そして今年再始動が発表されています)、この曲の素晴らしさは色褪せていません。メロディの良さ、アレンジの良さ、そして振付、すべてが完璧です。(オフィシャル・サイト

『いちごパフェ』アイドルカレッジ

アッパーかつキュートというライブアイドル楽曲の理想形とも言えます。ライブ映像を観てもらえば分かりますが、ぼく的にはキメをファンが歌うというのも衝撃でした。(オフィシャル・サイト

『デモサヨナラ』Dorothy Little Happy

切なくてキュンとくるメロディと歌詞が素晴らしいです。繰り返される「好きよ」のインパクト。「好きよ」と歌った後にファンが「オレモー」とレスポンスする一体感が印象的です。(オフィシャル・サイト

『ラリリレル』RYUTist

アイドルである女の子と恋する女の子の気持ちがシンクロする歌詞がとても素晴らしい。「またあおね」という言葉にファンもぐっとくるのではないでしょうか。(オフィシャル・サイト

『真夏の天体観測』つりビット

王道アイドルソングの直球ど真ん中で、個人的にも大好きな曲です。サビで一気に目の前に広がる夜空と流れ星。メロディと歌詞が見事にそれを描写しています。(オフィシャル・サイト

『アイドルソングの作り方』第3回は、2016年12月13日(火)に掲載します。

Steinberg - CHEEBOW