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Legend is back!!! ローランドの創業者、梯郁太郎氏が新メーカー「ATV」を設立! 新製品発表会完全レポート

本日、都内のホテルにて、ATVという会社の新製品発表会が開催されました。このATVは、ローランドの創業者である梯郁太郎氏が立ち上げた新興メーカー。数々の名機を生み出してきた“レジェンド”が、新製品を引っさげて楽器業界に帰ってきました!

ATV- Press Event

梯氏はATV(ATV株式会社)の代表取締役会長の職に就き、代表取締役社長にはローランドで長年電子楽器や業務用映像/音響の商品企画・開発に関わってきた室井誠氏が就任。その他のスタッフもほとんどローランド出身者で固められています。ATVは「電子楽器」と「業務用映像音響機器」、2つのカテゴリーの製品開発を手がける会社とのことで、事業は“ファブレス”で行っていくとのこと。つまり、社内では製品の研究企画と販売を行い、実際の製品開発と生産は協力会社とともに行うスタイルということになります。協力会社はすべて日本のメーカーのようで、“Made in Japan”の製品に強いこだわりがあることはプレゼンからも伺えました。

ATV - Press Event
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ATV株式会社代表取締役社長、室井誠氏

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ATV株式会社取締役営業部長、渋谷達郎氏

気になるのがATVが送り出す製品ですが、本日の新製品発表会では業務用映像機器が8製品、電子楽器が1製品、計9製品がお披露目されました。

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最初に披露された製品、「AV-5S」シリーズ(3モデル)と「AV-3」シリーズ(3モデル)は、業務用のSDI・HDMIコンバーター。映像信号をやり取りするフォーマットは、業務の現場ではSDI、民生機器ではHDMIが普及していますが、「AV-5S」シリーズと「AV-3」シリーズは、その異なるフォーマットの相互変換をシンプルに実現するコンバーター。これにより高性能化が進む民生の映像機器を業務で使用したり、業務用機器の出力をHDMIで送出したりといったことが簡単に行えるようになります。

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SDI・HDMIコンバーター、「AV-5S」シリーズ(写真左)と「AV-3」シリーズ(写真右)

「AV-5S」シリーズ、「AV-3」シリーズともにSDI→HDMI、HDMI→SDI、SDI←→HDMIの3モデルがラインナップ。「AV-3」シリーズはSDIとHDMIの変換をシンプルに行う製品で、「AV-5S」シリーズには追加でオーディオ入出力やリファレンス入力、拡張端子が備わっています。

「AV-5S」シリーズと「AV-3」シリーズの特徴は、映像信号の劣化を極限まで抑えた“ロスレス変換”と、シンプルな使い勝手。入力信号の種類(2K、1080p、1080i)は自動的に判別され、相互変換モデルはSDIとHDMIの両方の信号を出力するスプリッターとしても使用できます。SDIはLevel AとLevel Bの両方の信号に対応し、安定した変換を実現するフレームバッファ機能も搭載。入出力端子はすべてリア・パネル、操作子や表示系はすべてフロント・パネルに備わっているため、ラック・マウントすることも可能になっています(1Uサイズに最大4台マウントすることが可能)。

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マルチ・フォーマット・コンバーター、「MS-8」

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AVミキサー、「A-PRO-4」(写真右)

次にお披露目されたのは、「MS-8」という1Uラック・サイズのマルチ・フォーマット・スイッチャー。SDI、HDMI、RGB、ビデオといった4種類のフォーマットの映像入力を8系統装備した「MS-8」は、それらを自由に切り替え、SDI、HDMI、USBの各フォーマットから出力することが可能。内部には高性能なコンバーター/スケーラーが搭載されており、またUSB 3.0端子を備えているため、SDIやHDMIなどの映像信号を簡単にコンピューターに取り込むこともできます。さらに4系統のSDI、HDMI、ビデオ入力を備えたAVミキサー、「A-PRO-4」もお披露目。こちらも出力はSDI、HDMI、USBで、Tバー・スタイルのビデオ・フェーダーも装備しています。

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ATVの業務用映像機器のラインナップ

そして注目は、やはり電子楽器。ATV最初の電子楽器として発表されたのは、「aD5」というエレクトロニック・ドラムでした。

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ATV初の電子楽器、エレクトロニック・ドラム「aD5」

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「aD5」のリア・パネル

コンパクトな筐体の「aD5」は、D-Subのマルチ・トリガー入力と2系統のAUXトリガー入力(フォーン)を備え、各社のドラム・パッドを接続して使用するエレクトロニック・ドラム音源。出力はステレオ(フォーン×2)で、その他にはステレオ・オーディオ入力(ステレオ・ミニ)やUSB、SDカード・スロット、謎の“ATV Link”といった端子/スロット類が備わっています。

本日お披露目されたのは試作機とのことで、搭載音色数や細かいスペックなどは明かされませんでしたが、“サウンド”、“テクノロジー”、“デザイン”の3つが「aD5」の開発コンセプトとのこと。ドラマーの演奏をダイナミックかつ忠実に再現する音色(サウンド)、最新のセンシング技術による高速レスポンスと高品位なオーディオ回路(テクノロジー)、モノとしての所有欲をくすぐるデザイン性の高い筐体(デザイン)が特徴とのことです。プレゼンの後はゴダイゴのドラマー、トミー・スナイダー氏が登場してデモ演奏を披露。その生々しいサウンドとダイナミズムを絶賛していました。この「aD5」、来年1月発売予定で、NAMM Showにも出品されるとのことです。

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「aD5」のコンセプト・ワードは“Artware”

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“サウンド“、“テクノロジー”、“デザイン”の3つが「aD5」のコンセプト

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「aD5」をデモンストレーションするゴダイゴのトミー・スナイダー氏

発表会の冒頭と最後には、“レジェンド”梯郁太郎氏が自らスピーチを行いましたが、御歳85にしてまだまだ電子楽器への情熱は冷めていないようす。「aD5」の次の電子楽器も「今日、お披露目できないが、もう産声はあげている」(梯氏)とのことで、ATVに関してはすでに北米法人、ヨーロッパ法人、オーストラリア法人も設立済みとのこと。ATVは今後も続々と電子楽器/業務用映像音響機器を発表し、ワールドワイドに展開していく予定のようです。

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ATV株式会社代表取締役会長、梯郁太郎氏

来月12日(土)と13日(日)には、梯氏が設立した公益財団法人、かけはし芸術文化振興財団主催のイベント『Think MIDI 2015』が開催。そこでは梯氏と冨田勲先生、服部克久氏、千住明氏によるパネル・ディスカッションが行われ、もしかしたらATVの製品群も見れるかもしれません。興味のある方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

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