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製品開発ストーリー #7:RME Babyface Pro 〜 業務機と同等のAD/DAを搭載、さらなる高音質を追求した定番オーディオ・インターフェース

RMEの定番オーディオ・インターフェース、Babyfaceがフル・モデル・チェンジ! 現在開催されているMusikmesseにおいて、RMEは新製品「Babyface Pro」をお披露目しました。「Babyface Pro」は、オリジナルBabyfaceのコンセプト(コンパクトなテーブルトップ筐体で、バス・パワー駆動)はそのまま受け継ぎ、業務用機のADI-8 DS Mk IIIと同じAD/DAコンバーター・チップを搭載するなど、音質面を徹底的にブラッシュ・アップ。マイク・プリアンプやヘッドフォン・アンプも新設計のものに置き換えられるなど、“Pro”の名に相応しい超・高音質オーディオ・インターフェースとして生まれ変わりました。Musikmesse会場に掲げられている“Reengineered not remastered”というコピーからも、オリジナルBabyfaceの改良版ではなく、完全にゼロから作り直した製品であるということが伝わってきます。そこでICONでは、Musikmesse会場で、「Babyface Pro」の製品担当であるお馴染みのマックス・ホルトマン(Max Holtmann)氏にインタビュー。「Babyface Pro」の開発コンセプトと特徴について話をうかがってみました。

Babyfaceの改良品ではなく、ゼロから開発し直した新しいオーディオ・インターフェース「Babyface Pro」

——— Babyfaceは、USBオーディオ・インターフェースの定番と言える製品でしたし、まだまだ売れていたのではないかと思います。このタイミングでモデル・チェンジしたのはなぜですか?

MH いろいろな理由があります。まずは、ユーザーの皆さんから多くのフィードバックをもらっていたということ。おかげさまでBabyfaceは世界的にヒットしたわけですが、ユーザー数が多いということは、お客様からのフィードバックも多いということです。ユーザーの皆さんから寄せられた“ここがこうなっていればもっと良かったのに”という要望に何とか応えたかったということですね。

また、Babyfaceを発売したのは2010年のことです。4年以上も経った今では、開発当時には無かったような高性能なパーツが手に入るようになりました。オリジナルBabyfaceで、我々は高品位なサウンドをコンパクト筐体とバス・パワー駆動で実現するということにチャレンジしたわけですが、より高性能なパーツが手に入るようになった今なら、さらに音質を追求することができるのではないかと。

このような様々な理由からBabyfaceのモデル・チェンジを検討し始め、昨年の春ごろに開発に着手しました。

——— ユーザーからは、どのようなフィードバックが寄せられていたのですか?

MH 例えば、ブレイクアウト・ケーブルが要らない仕様にしてほしいとか。オリジナルのBabyfaceは、Hi-Z入力とADAT入出力、そしてヘッドフォン端子は本体に備わっていましたが、それ以外の入出力はブレイクアウト・ケーブルを繋いで使う仕様になっていたんです。それとアナログ入力を4chに増やしてほしいというリクエストも多かったですね。アナログ入力が4chあれば、もっと使いでがあると。また、スタンドアローン・モードは後からファームウェアのアップデートで追加した機能だったため、本体での操作が少々分かりづらかったんですが、これを何とかしてほしいという要望もありましたね。

——— 今回発表された「Babyface Pro」についておしえてください。

MH 「Babyface Pro」は、24bit/最高192kHzに対応したUSBオーディオ・インターフェースで、アナログ4ch入力、アナログ4ch出力、1系統のADATデジタル入出力を備え、合計12ch入出力を同時に使用することができる仕様になっています。オリジナルBabyfaceは、10ch入力/12ch出力という仕様でしたが、ユーザーからの要望に応える形でアナログ入力は4chに増やしました。そしてブレイクアウト・ケーブルの廃止により、背面には2chのアナログ入出力がXLR端子で備わっています。これによって、マイクやスピーカーなどをダイレクトに接続できるようになりました。右側側面には、ハイ・インピーダンスの楽器に対応した3〜4chのアナログ入力がフォーン端子で備わっており、またヘッドフォン端子は標準フォーンとミニ・ジャックの2基装備しています。そして左側側面には、ADATとS/PDIFを切り替え可能なオプティカルのデジタル入出力端子と、MIDI入出力用端子、USB端子、電源入力端子が備わっています。オーディオ入出力に関してはブレイクアウト・ケーブルを廃止しましたが、MIDI入出力に関してはスペースの関係上、引き続きブレイクアウト・ケーブルを使う仕様になっています。

——— RMEブースでは“Reengineered not remastered”というコピーが大きく掲げられていましたが、これの意味するところは?

MH 「Babyface Pro」は、オリジナルのBabyfaceをベースに、チップを新しいものに変えたりとか、改良を施した製品ではありません。“コンパクトでバス・パワーで動作する”というBabyfaceのコンセプトを元に、完全にゼロから開発した製品なのです。リマスターではなく、再び開発し直した新しい製品であることを強くアピールするため、“Reengineered not remastered”というコピーを採用しました。ちなみに開発当初は、製品名は“Babyface II”にする予定だったんですよ。しかしそれだとBabyfaceの改良版と捉えられてしまうと思い、「Babyface Pro」という名前にしたんです。

——— 見た目的には、オリジナルBabyfaceのデザインを踏襲した感じですが、中身は完全な別物ということですね。

MH そのとおりです。我々は新しい製品を発表する際、従来製品よりも音質が良くなったということを声高にアピールしません。なぜなら、そういう言い方をしてしまうと、従来製品がダメみたいに聞こえてしまいますからね。しかし「Babyface Pro」に関して言えば、ダイナミック・レンジ、S/N比、THD特性、ジッター、周波数特性、すべてにおいてオリジナルBabyfaceを上回っています。このクラスのオーディオ・インターフェースとしては、最高品質のサウンドを実現していると言っていいと思います。

——— どのようにして音質を向上させたのですか?

MH 様々な要因があります。まず第一に、BabyfaceはUSBバス・パワーで動作するということが特徴の1つになっています。USB 2.0のバス・パワーで動作する製品にするためには、消費電力を500mAに抑えなければなりません。1,000mA以上の電力を供給すコンピューターも少なくないんですが、どんなコンピューターでも動作する製品にするためには500mAに抑えなければならないのです。オリジナルBabyfaceの開発で一番難しかったのが、この供給電力の制限で、パーツを吟味して内部回路の消費電力を抑えなければならなかったのですが、それは音質とのトレード・オフとなります。消費電力の低さを取るか、それとも音質を取るか。オリジナルBabyfaceの音質は絶妙なバランスの上で成り立っていたわけですが、この4年間の間に市場には優れたパーツが数多く登場しました。消費電力が非常に少なく、なおかつ音質的にも優れたパーツがたくさん出回るようになったのです。その結果「Babyface Pro」では、USBバス・パワーで動作するという特徴は維持したままで、音質をかなり追求することができました。従ってこの4年間の間に優れたパーツが数多く登場したことは、「Babyface Pro」で高音質を実現できた大きな要因になっています。ちなみに「Babyface Pro」では、AD/DAコンバーターのチップに、高級機のADI-8 DS Mk IIIと同じものを採用しています。ADI-8 DS Mk IIIを2ch分、コンパクト筐体に収めた製品と言っても過言ではなく、その音質は完全にスタジオ・レベルと言っていいと思います。

あとは内部設計によるところも大きいですね。USB端子から供給される限られた電力を、いかに効率よく使用するか。音響機器の音質を左右するのは間違いなく電源なので、電力の効率使用とそのチューニングにかなりの時間をかけました。

——— 内蔵のマイク・プリアンプやヘッドフォン・アンプも新しく開発したものなのでしょうか。

MH 「Babyface Pro」用に新しく開発したものを搭載しています。実はオリジナルBabyfaceに搭載されているマイク・プリアンプは、USBバス・パワーで動作するオーディオ・インターフェースにはマッチしない回路構成だったんですよ……。これは後から気づいたことだったんですけど、USBバス・パワーでの動作ではその力を十分に発揮できない回路構成だった。今回はその反省を踏まえ、USBバス・パワーで動作するオーディオ・インターフェースに合うよう開発し直しました。具体的には、オペアンプを一般的ではない組み合わせで使用しています。

また、ヘッドフォン・アンプも新たに開発したものです。こういうオーディオ・インターフェースに内蔵するヘッドフォン・アンプで難しいのが、インピーダンスの設定です。最近のヘッドフォンは、インピーダンスがどんどん低くなっているんですけど、それに合わせて2Ωとかに設定してしまうと、プロ向けのヘッドフォンとマッチしなくなってしまいます。一般にヘッドフォン・アンプとヘッドフォンは、8倍のインピーダンスのものを使うのが一番マッチすると言われていますからね。そこで「Babyface Pro」には、標準フォーンとミニ・ジャック、2種類のヘッドフォン端子を装備して、それぞれ異なるインピーダンスを設定することにしたんです。具体的には、標準フォーンの方は10Ω、ミニ・ジャックの方は2Ωというインピーダンス設定になっています。これによりプロ向けのヘッドフォンを使用する際は標準フォーンを、最近の新しいヘッドフォンを使用する際はミニ・ジャックの方を使用していただくことで、より正しいモニタリングが可能になります。

——— 入出力のレベル・メーターの下には、4つのスイッチが備わりましたね。

MH このスイッチには様々な機能をアサインすることができ、スタンドアローン・モードで使用する際も本体で様々な操作が可能になっています。使い方はユーザー次第ですが、私は“MIX”ボタンを使って、下側のエンコーダーでTotalMix FXのフェーダーを操作するのが好きですね。また、一番右側の“OUT”ボタンには、2種類のスピーカーの切り替えをアサインしておくと便利です。

——— 筐体は金属製ですね。

MH オリジナルBabyfaceの筐体はアルミのプレス成形だったんですけど、「Babyface Pro」ではアルミの削り出し筐体を採用しました。AppleのMacBookシリーズとかと同じような感じですね。背面の端子周りとかを見ていただければ分かりますが、継ぎ目の無い本当に美しい仕上がりになっています。底面の黒い部分は、写真で見るとプラスチックのようですが、ここもアルミ製ですね。デザインは、Fireface 802などと同系統の最近のRME製品の流れを汲んだものになっています。そうそう、底面にはネジ穴が空いているので、マイク・スタンドにも取り付けられるようになっているんですよ。このネジ穴は、こういう展示会でスタンドを取り付ける際にも便利ですね(笑)。

——— DSP機能は、オリジナルBabyfaceから変わっているのですか?

MH いや、DSP機能に関してはオリジナルBabyfaceと同じです。TotalMix FXを使って、DSPミキサーやエフェクトを使用することが可能です。

——— 最後の質問ですが、新世代のBabyfaceでも引き続きUSBを採用した理由は? ThunderboltやUSB 3.0を採用することは検討しませんでしたか?

MH まったく検討しませんでした。なぜなら、12ch入出力のオーディオ・インターフェースでThunderboltやUSB 3.0を採用する意味が無いからです。チャンネル数を考えるとUSB 2.0の帯域幅で十分ですし、Thunderboltを採用してしまうとWinodwsユーザーが使えなくなってしまいます。ThunderboltやUSB 3.0を採用するメリットはまったくありません。