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待望のサード・アルバム『A.I Complex』を発表した、いま注目のチップチューン女子、TORIENA ロング・インタビュー

世界が注目するチップチューン女子、TORIENAが待望のサード・アルバムを8月1日にドロップ! 『A.I Complex』と名づけられた今回の作品は、人工知能を持つ2人の女の子をそれぞれ“正義”と“悪”に見立て、TORIENA自身以前から興味があったという2つのテーマ、“正義と悪”と“ナルシシズム”をチップチューンで表現した大作となっています。TORIENAの作品としては初めてプレスCDとしてリリースされ、ひじょうに凝ったアートワークも注目の『A.I Complex』。その壮大なストーリーとプロダクションについて、TORIENAにじっくり話をうかがってみることにしました。東京・吉祥寺のPico Pico Cafeと、彼女が住み、ゲームボーイの生まれ故郷でもある京都は祇園で撮影した写真とともにお楽しみください!(Special Thanks to Pico Pico Cafe and 浦飯幽子

TORIENA

インスト曲って、変幻自在なスライムのようなもの。歌詞がないぶん、すごくなじみやすい

——— 昨年の暮れに初のボーカル曲『Chip Brain Girl』を発表して、次のアルバムはもしかしたら全編歌ものなのかなと思ったんですが、新作『A.I Complex』はこれまでの路線を踏襲したコアなインスト・アルバムになっていますね。

TORIENA 歌ものをとりあえず1曲やってみて感じたのは、想像以上に難しいなっていうこと(笑)。歌詞があるので、ストーリーを伝えるにはわかりやすくていいんですけど、なんか直接的すぎるんですよね。歌い手と聴き手の感性がカッチリとハマればいいんでしょうけど……。今回の作品は、いつも以上にしっかりとしたストーリーがあるので、中途半端に歌ものを混ぜずに、全編インスト曲にしちゃったほうがいいかなと思ったんです。インスト曲って、歌詞がないぶん、すごくなじみやすいと思うんですよね。ことばというものが、硬くてきれいなものだとしたら、インスト曲は変幻自在なスライムのようなものなので、より多くの人になじむというか。インスト曲でも、ストーリーをじゅうぶん表現できますし……。それが人に届いたときに、わたしが考えていたことと別に違ってもいいんですよ。聴き手が気に入ってくれさえすれば、それでいい。たとえば、わたしが好きな人のことを想って曲をつくったとするじゃないですか。インスト曲だと、それがひとり暮らしを始めたばかりの寂しい女の子の、実家を思い出してたそがれる曲になるかもしれなくて(笑)。それはそれでぜんぜんいいと思うんです。わたしの想いがそのまま伝わらなくても、楽曲が相手の心に響いてくれさえすれば。

——— 1曲、ボーカル曲をやってみて、インスト曲の良さを再発見した感じ?

TORIENA そんな感じですね。わたしの場合、別に歌いたくて曲づくりを始めたわけではないので、これまで歌ものはやらなかったんですけど、いろんな人に“TORIENAちゃん、歌ものはやらないの?”って言われて。わたし的には硬派なチップチューナーに憧れていたので、“女の子で歌ものチップチューンやっちゃったら硬派じゃなくなっちゃう!”とか思って(笑)、ずっと“歌ものはやらないです!”って答えていたんです。でも、なにがきっかけだったかは忘れてしまったんですけど、ある日ふと自分のなかで吹っ切れたというか、硬派だとか硬派じゃないとか、人がどう思おうがどうでもよくなっちゃって。それで歌ものにも興味がないわけではなかったので、食わず嫌いは良くないなと、1曲チャレンジしてみることにしたんです。そして初めて作詞して、宅録して、ミックスとかマスタリングを勉強して、完成したのが『Chip Brain Girl』なんですよ。

今回またインスト曲に戻ったわけですが、『Chip Brain Girl』によって何かを打開できた気がしていますし、1曲歌ものをやってよかったなと思ってます。あの曲によってTORIENAを知ってくれた人も多かったですし……。歌ものはぜひまたチャレンジしてみたいですね。

“正義と悪”と“ナルシシズム”が『A.I Complex』のテーマで、さいきん興味があったことをぜんぶ盛り込んだ感じ

——— ファースト・アルバム『Black Dance Hole』とセカンド・アルバム『SPACE FUGITIVES』は、アルビノ化した少女と瀕死のライオンが恋に落ちるという壮大なストーリーが基になっていましたが、新作『A.I Complex』も引き続き同じストーリーがもとになっているのですか?

TORIENA いいえ、『A.I Complex』はまったく新しいストーリーがもとになっています。今回は未来のお話で、少しストーリーをお話ししますと…… サイボーグや人工知能の研究をしているグレイ博士と、女医のグレイ夫人という夫妻がいるんですが、ふたりのあいだにはシアンという女の子どもがいるんです。シアンは、謎の病気を患って昏睡状態になってしまっていて、まったく動かないんですよ。でも、パパとママは元気に動き回る娘の姿がどうしても見たくて、グレイ博士は遂にシアンそっくりのサイボーグをつくってしまうんです。それがマゼンダというサイボーグで、言ってみれば人工知能を搭載したシアンの双子の妹ですよね。マゼンダは、パパとママの望みどおり元気に動き回るんですけど、人間のような感情を持っているので、ある日ふと、パパとママの愛情は自分に対するものではなく、寝たきりのシアンに対するものだということに気づいてしまうんです。そしてマゼンダの中には徐々に、自分たちのエゴでサイボーグをつくってしまった人間に対する憎悪が芽生えてきて、寝たきりのシアンのことも嫌いになっていくわけですけど……。でも、シアンの見た目は自分にそっくりなわけじゃないですか。だから人間のことは嫌いになっていっても、シアンのことはどうしても嫌いになれなくて、ちょっとヘンな話なんですけど、途中から恋愛感情が芽生えてきちゃうんです。そしてマゼンダの人間に対する憎悪はマックスになって、遂にはパパとママを殺してしまい、彼女は悪になってしまうという……。“正義と悪”、そして“ナルシシズム”というのが、今回のテーマなんです。

——— なんだかすごいストーリーですね。

TORIENA ナルシシズムには、まえまえから興味があったんですよね。ナルシシズムって、ものすごく不思議な感情じゃないですか。他人を愛するのではなく、自分を愛するのって、良い悪いは別にして、すごく不思議な感情だなと。あとは正義と悪の定義にもずっと興味があって。いったいなにが正義で、なにが悪なのか。だから今回のアルバムには、さいきん興味があったことをぜんぶ盛り込んだ感じですね。

TORIENA

TORIENA『A.I Complex』(MADMILKY RECORDS MMCD-02)

——— 『A.I Complex』というタイトルは?

TORIENA もうそのまんまです。人工知能を持つ少女のコンプレックス。

——— ジャケットの女の子は、マゼンダ?

TORIENA いや、これはまた別の女の子なんです(笑)。この子は、パルスという名前の女の子で、天真爛漫なふつうの子だったんですけど、バイクの免許を取ってブイブイ走らせていたら瀕死の事故にあってしまって。そして大手術のすえに、サイボーグとして生き存えるんですけど、莫大な手術費用をまかなうために、アルバイトを始めるんですよ。そのアルバイトというのが“人助け屋”で、たまたま出会ったヒゲくま社長というおじさんの会社、株式会社ホログラムベアーの人助け課で働くんです。

で、これはさっきの話と繋がっていて、パルスをサイボーグ化して救ったのが、グレイ博士とグレイ夫人なんですよ。パルスもマゼンダも同じサイボーグなわけですが、わたしのなかでは事故にあって生き存えるために仕方なくサイボーグとなったパルスは“正義”、人間のクローンとして最初からサイボーグとして誕生したマゼンダは“悪”という位置づけなんです。でも、マゼンダも最初から悪かったわけではないですし、これはとても難しい問題で……。

そして最後は、パルスとマゼンダが対決するんです。つまりは“正義”と“悪”の対決。最終的にはパルスが矩形波でマゼンダを倒すんですけど。

——— インスト・アルバムなのに、相変わらずすごいストーリー……。

TORIENA 今回、割と全曲ポップな感じになっているんですけど、よく聴いてもらえればこのストーリーがちゃんと伝わるかなって。タイトルを見て、何度か繰り返し聴いてもらえれば……。そうですね、何度も繰り返し聴いてもらえる感じは狙いました。

TORIENA

——— もとになっているストーリーは、ブックレットとかに掲載されているんですか?

TORIENA いや、載せてないですよ。ブックレットとかにストーリーを載せるのって、あまり好きじゃないというか……。“わたしはこういうことを考えてつくったんダーッ!”(笑)と文章を載せてしまえば、聴き手もわかりやすいとは思うんですけど、ちょっと押しつけがましいじゃないですか。単にチップチューンを聴きたいというだけで買ってくれる人もいるでしょうし。それで音を聴いてストーリーに興味を持った人は、いまはTORIENAでググれば、こういう記事が読めるわけですしね。それくらいがちょうどいいのかなと思ってます。でも、このストーリーをもとにしたマンガは描きたいなと思っていて……。ちょっと時間がかかるかもしれないですけど。

——— 最初にストーリーをきっちりつくってから、1曲ずつつくっていったのですか?

TORIENA うーん、最初にがっちりコンセプトを固めてから曲をつくるという感じではないんですけど、ストーリーはぼんやりありましたね。それとわたし、最終的に1枚のアルバムにまとめることを意識して曲をつくるタイプなんですよ。

——— 曲順はストーリーに沿っている感じ?

TORIENA そうですね。だから気に入った曲を1曲単位で買ってくれてもいいんですけど、できれば1曲目から12曲目までとおして聴いてほしいというのはあります。

——— 8曲目の『ハイパークノイチサウンド -hyper female ninja sound-』は、少しまえにSoundCloudで先行公開されて大好評だった曲ですが、これだけ日本語タイトルというのは?

TORIENA 特に意味はないです(笑)。“人助け屋”として働き始めたパルスが、初めて助けたのは日本が大好きで日本に引っ越してきた外人の女の子なんですけど、その子が超進化して、クノイチになって逆にパルスを助ける…… この曲はそんなイメージなんです(笑)。その外人の女の子もめちゃくちゃ破天荒な子で……。ネタ曲っぽい感じですけど、自分的にはとても気に入ってます。

——— 音楽的なところで今回意識したのは?

TORIENA これまでどおり、ライブで盛り上がれて、お家でも楽しめる曲。たぶん曲づくりの技術は上がっていると思うんですけど、やろうとしていることはあまり変わってないですね。強いて言うなら、ポップで聴きやすい曲というのは意識しました。あんまり深いことを考えずに楽しんでほしかったので……。今回はいつも以上に速くて明るめな曲が多いですし、みんなに気に入ってもらえるんじゃないかと思っています。

——— 今回、初めてプレスCDとして発売されるとのことで、アートワークもかなり凝っているようですね。

TORIENA 1枚目と2枚目はCD-Rで販売したんですけど、すぐに無くなってしまったので、今回はがんばってプレスしてみました。アートワークもかなりこだわって……。ジャケットの女の子はさっきもお話ししたとおりパルスで、裏面の女の子はシアンとマゼンダです。そしてジャケットを開いた中のイラストは、マゼンダが誕生した手術台をイメージしていて。今回、CDの盤面はすごく質素なんですけど、これはパソコンに付いてくるOSのインストールCDをイメージしたんですよ。アルバムを聴いて、楽曲を頭にインストールしてもらいたいなって(笑)。だからジャケットの裏面には、そんなイメージのイラストが描いてあるんです。少しあとに、iTunesなどで配信もするんですけど、今回はアートワークにすごく凝ったので、わたし的にはCDをおすすめしたいです。ひとつひとつ意味があって、ぜんぶ含めてTORIENAの世界なので。

TORIENA

CDケースの裏面。左の女の子がマゼンダで、右の女の子がシアン

TORIENA

CDの盤面。“パソコンに付いてくるOSのインストールCDをイメージした”とのこと

TORIENA

ジャケットの盤面。CDを脳にインストールしているかのようなプログレス・バーが描かれている

——— ミュージック・ビデオは?

TORIENA m7kenjiさんと一緒に、『Pulse Fighter』のビデオをつくりました。m7kenjiさんとはまえまえから知り合いで、なにか一緒につくれたらいいなと思っていたんですが、今回ようやく実現したかたちです。わたしがキャラクター・デザインと絵コンテを担当して、m7kenjiさんに少し脚色をしてもらって。ドット絵や映像はすべてm7kenjiさんの手によるものですね。随所に出てくるイラストはわたしが描いて、m7kenjiさんにビデオになじむように修正してもらいました。細かいこだわりがたくさん散りばめられた、とてもおもしろいビデオに仕上がったと思っていますので、ぜひチェックしてもらいたいですね。

曲づくりは、ライブのことを考えないとダメ。ここでこの音を入れたら盛り上がれるなとか、そういうことを考えながらつくるのが楽しい

——— 今回も全曲、ゲームボーイとLSDjだけでつくっているんですよね。

TORIENA そうです。すべての曲が4トラックでできてます。やっぱり、あとで重ねちゃうとロマンがなくなっちゃうじゃないですか(笑)。実機(ゲームボーイ)でぜんぶやっているロマンが大事かなって。あとで音を足せば、絶対にカッコよくなることはわかっているんですけど……。でも、わたしの場合は、ゲームボーイ1台でぜんぶやっていることのおもしろさを、多くの人たちに知ってもらいたいなって。

——— 使うカートリッジもLSDjだけ?

TORIENA nanoloopを試してみたこともあるんですけど、使い心地がわたしには合いませんでしたね。LSDjはTrackerみたいな感じなんですけど、nanoloopはループを重ねていくみたいなつくりかたで。同じチップチューンのソフトでも、ぜんぜん違うんですよ。使い勝手だけでなく、音もちょっと違っていて……。nanoloopは、なんて言えばいいんだろう…… LSDjにはない謎の低音(笑)が出るんですよ。よくわからないんですけど。わたしは最初からいまにいたるまで、ずっとLSDjだけですね。

TORIENA
TORIENA

——— 曲づくりのやりかたは、だいたい決まってます?

TORIENA わたしの場合、だいたい2パターンあって、ひとつは適当に音を鳴らしながら3音くらいの和音を組んで、そこからイメージを広げていくやりかた。もうひとつは、最初にメロディーをつくってしまうやりかたですね。

——— リズムはあとで。

TORIENA そうですね。だいたい口でリズム・パターンをつぶやきながら打ち込んでます(笑)。わたし、曲つくるときは踊りながらやるんですよ……。ゲームボーイにイヤフォン挿して、ヘンな踊りをしながら(笑)。

——— 夜とか苦情がきちゃいそうですね。

TORIENA 下の階には響かないように、静かにゆらゆら踊ってるので大丈夫です(笑)。やっぱり、ライブのことを考えないとダメなんですよ。ここでこの音を入れたら、こういうふうに盛り上がれるなとか。そういうことを考えながらつくるのが、とっても楽しいんです。あとは休符! 切ったりするところは、全身でノリながらやらないとダメですね。“あっ、ここ、ここダーッ!”みたいな(笑)。そういう感じでつくらないと、聴く側もぜったい楽しめないだろうなって(笑)。

——— 1曲つくるのにどれくらい時間かかります?

TORIENA わたしにとって曲づくりは日記みたいなものなので、基本的には1日ですね。楽しかった日は、“きょうは1日、楽しかったな〜”と思い出しながら、ダーッとつくる(笑)。もちろん音色とかパンの振りとか、細かいところはあとで直したりもするんですけど……。アタマからおしりまでは、だいたい1日でつくってしまいますね。

——— それにしても、どの曲も4トラックでできているようには聴こえないです。

TORIENA 耳の錯覚を利用しているので。パンの振りとかで、たくさん鳴っているように聴こえるんですよ。

TORIENA

——— ところどころで聴くことができるTB-303みたいなグライドも、LSDjでできるんですか?

TORIENA できます! わたし、うねるベースが大好きなんですよ。でも、グライドという機能があるわけではなく、いろいろな方法を使って、人力でああいうフレーズをつくっているんです。

——— 随所に人間の声のようなボイス・サンプルも入ってますね。

TORIENA “アイー”みたいな(笑)。LSDjでは、ああいうサンプルも鳴らせるんですよ。とは言っても、わたしが使っているのはプリセットで、パソコンから読み込むこともできるんですけど、面倒なので最初から入っているやつしか使わないですね。面倒くさがらずにやれよって感じなんですけど(笑)。でも、基本的に声は、キメどころでしか使わないようにしています。

——— LSDjで、特に気に入っている機能というと?

TORIENA うーん、なんだろう……。やっぱり“Kコマ”ですかね。“Kコマンド”と言って、休符というか、音をミュートさせる機能があるんですよ。さっきも言いましたけど、休符は本当に大事で。うまく抜けば、ライブですごく盛り上がれますからね。わたしがやっているLSDjのライブ・セットって、基本的にはゲームボーイを2台使ったDJのようなものなんですけど、その場のノリに合わせて音を抜くことができるというのは、CDJやレコードではできないLSDjならではのものじゃないですか。抜くだけでなく、ソロ・モードにもできますからね。ゲームボーイをいじって、音を抜いたり、ソロにしたりするのは、見た目的にもおもしろいんじゃないかなと思っています。

TORIENA

——— 他のチップチューナーが、LSDjをどう使っているかというのは知ってます?

TORIENA そう訊かれると、よく知らないですね(笑)。でも、基本的にはみんな同じだと思いますよ。あとはセンス次第というか。

——— ゲームボーイは改造しているんですか?

TORIENA わたしのゲームボーイは初代なんですけど、Pro Sound化してあって、あとはバックライトも入ってますね。

——— けっこう音は粗いですよね。

TORIENA 別に意図的に粗くしているわけではなくて、ゲームボーイとLSDjでやると、自然にこういうジャリジャリした音になってしまいますね。

——— そして曲が完成したら、パソコンに録音すると……。

TORIENA はい。オーディオ・インターフェースを経由して、Steinberg Cubaseに録音します。Cubaseで編集したりとかは一切してなくて、録音したあとはコンプレッサーとマキシマイザーで音を整えるくらいですね。音圧を上げたいので……。EQはまったく使わないです。

TORIENA

わたしのようなコアなチップチューンをやっている女の子はほとんどいないので、これからもこの世界を開拓していきたい

——— また歌ものにもチャレンジしてみたいとおっしゃってましたが。

TORIENA そうですね。いまはお試し期間というか。歌詞を書くのもなかなか難しくて……。

——— 『A.I Complex』のベースになった、あんな壮大なストーリーは考えられるのに?

TORIENA 物語を考えるのは大好きなんですけど、リズムやメロディーにことばをあてはめるのが難しくて。それに曲の展開の仕方も、クラブ・ユースの曲とは違うので難しいんです。もうちょっと勉強しないとダメだなって。でも、できないことはできるようになりたいので(笑)、がんばって修行しないと……。

——— このまえのライブでは、『Chip Brain Girl』でローランド AIRA VT-3を使ってましたね。

TORIENA チップチューンって、生声とめちゃくちゃ相性が悪いんですよ。ふつうに歌を載せただけでは、(オケの)波形が鋭いので、どうしても浮いちゃうんです。だからどうしようかなと悩んで、VT-3を買ってみたんですよ。ああいう機材で声を加工することで、歌を浮かないようにしたいなと。

TORIENA

TORIENA『Chip Brain Girl』(2014年5月17日、東京・吉祥寺のPico Pico Cafeでのライブのもよう)

——— 具体的にはどんな使いかたをしているんですか?

TORIENA Auto-Tune的な加工(笑)。あとはラジオ・ボイスとか。あとVT-3は、リバーブもかけられるので、それも使ったりして。でも、ボーカルはお家で思いっきりで試せないので、練習スタジオを借りてやらないとダメですね(笑)。

——— では次作はボーカル・アルバムになる可能性もある?

TORIENA 歌ものは歌ものでアルバムを出したいなとは思っているんですけど、いま歌ものだけで12曲つくるのは難しいですし……。もうちょっと修行してからでないと。だから次のことは未定です(笑)。とりあえず今回のアルバムにすべてのエネルギーを費やしてしまったので、今年いっぱいは『A.I Complex』をがんばって広めていきたいですね。後出しじゃないですけど、マンガとか映像とか、いろいろ表現できることはありそうですし……。と言いつつ、トラックは常につくってますけどね(笑)。

——— 最近Twitterで、DTMを本格的にやりたいみたいなことをつぶやいてましたよね。

TORIENA 実機だけでたくさん曲をつくってきて、いいかげんDTMで曲をつくれないというのを打開したいというだけです(笑)。

——— まえからClark好きを公言してますけど、チップチューンではないエレクトロニックなトラックをつくりたくなってきたとか?

TORIENA いや、そういうのではないです。単なる気分転換というか、わたし、すっごく気まぐれなので、“ちょっとDTMやってみたいかも”とかそんな感じですね。

なので最近、パソコンに向かってちょこっと練習してみたんですけど、そうしたらゲームボーイからヘンな波動がビンビンくるんですよ(笑)。“TORIENAちゃん、きょうは曲をつくらないの?”って。だからわたしは心のなかで、“え、だってもうたくさん曲つくったじゃない”って返すんですけど……。こういう話をすると、アタマおかしい子みたいですけど(笑)。要するに、わたしとゲームボーイは相思相愛ってことなんですよね。

でも、ゲームボーイに固執しすぎるのもよくないなと思っているので、DTMをやったり、幅を広げていきたいですね。ちょっとずつ幅を広げていきながら、LSDjを極めていきたいなって。

TORIENA

——— もうじゅうぶん極めている感じがしますけど……。

TORIENA ぜんぜんですよ! 極めるとかそんなレベルではないです。わたしは曲の展開を考えるのは得意なんですけど、音づくりが苦手で、あとは音量のバランスもいまだにしっくりくることが少ないんです。わたしの音、まだ雑味があるんですよね……。LSDjでも、もっとピュアで聴きやすい音にできるんじゃないかなって。だからもっと修行しないと……。

——— 『A.I Complex』は、完成したあとも聴いてます?

TORIENA はい(笑)。めちゃ聴いてます。やっぱり、メロディーにせよ、キックにせよ、ベース・ラインにせよ、自分の好きな要素を詰め込んでいるので……。自分でも超お気に入りですね。いま流れている曲(2曲目の『Sweet Delusion』)とか、めちゃ気に入ってます(笑)。

――― ところで、TORIENAさんって出身は札幌なんですよね。ゲームボーイの生まれ故郷である京都の大学に進学したというのは、たまたまですか?

TORIENA それはたまたま(笑)。家を出て、ひとり暮らしができれば、どこでもよかったんです。でも、チップチューン自体は高校生のときから知ってましたね。イベントでチップチューンをやっている人がいて、“ゲームボーイで音楽やるんだ。おもしろいなぁ“って。当時、わたしはミニマル・テクノが好きだったんですが、チップチューンの矩形波とミニマル・テクノの矩形波はなんとなく似ている気がするなと。

TORIENA

――― すぐにはハマならかった?

TORIENA わたし、ハマるよりもつくり始めたほうが早くて(笑)。大学1年生のときに、チップチューンが大好きな女の先輩がいて、“一緒につくってみない?”と誘われて。でも、そのときわたしはDTMをやりたいと思っていたので、ゲームボーイとLSDjを手に入れても1ヶ月くらいは放置してましたね(笑)。それで2年生になるまえの2月くらいに、Cafe la Siestaでのイベントに誘われたんです。そのイベントに出演するために、チップチューンをつくり始めてみたんですが、それで一気にハマってしまって。そのときのイベント、最高におもしろかったんですよ。そのイベントには、NNNNNNNNNNやUSKさんといったチップチューナーたちも出演したんですが、実機でのライブって、こんなにもエモーショナルでロックなものなんだって。だからそのときの衝撃が大きいですね。最高すぎるから、これはチップチューン続けなきゃって。

——— 最後に。“TORIENA”が目指しているものって何ですか?

TORIENA 目指しているものか…… なんだろう…… わたしはチップチューンが大好きなので、とりあえずカッコいい曲をガンガンつくっていきたいというだけですかね。そもそもチップチューン人口は多くないですし、わたしのようなコアなサウンドでやっている女の子なんてほとんどいないと思いますし。だからわたしがこの世界を開拓していきたいというのはありますね。

——— 長いインタビュー、ありがとうございました!

TORIENA

TORIENA『A.I Complex』サイン入りCD&ステッカーを抽選で1名のかたにプレゼント!

このインタビュー記事の掲載を記念して、2014年8月1日発売のTORIENAのサード・アルバム『A.I Complex』を、本人の直筆サイン入り&特製ステッカー付きで抽選で1名のかたにプレゼントします。欲しいかたは、ぜひふるってご応募ください!(Facebookの懸賞アプリの仕様で、応募受付は2014年8月4日0:00からとなります。応募締め切りは、2014年8月17日23:59です)

TORIENA