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FL Studioとパソコン付属のスピーカーでワールドクラスの楽曲を生み出す! 世界が注目するトラック・メイカー、banvox:ロング・インタビュー

2011年、音楽制作を開始してわずか1年強で発表したデビュー作、『Intense Electro Disco』で、一躍注目を集めたトラック・メイカー、banvox。続く2012年にリリースした『Instinct Dazzing Starlight』は、デヴィッド・ゲッタやダーティーラウドといった世界中のDJ/プロデューサーから賞賛され、Beatport総合チャートで2位、iTunes Storeのダンス・チャートで4位を獲得。その名は世界中のエレクトロニック・ミュージック・シーンに、一気に知れ渡りました。その後は自作曲を発表するのと並行して、リミックスも手がけるようになるなど、意欲的な創作活動を続けていたbanvoxですが、先月末に待望の初CD作品となる『Watch Me Dance』を発表。これまで発表した楽曲をコンパイルしたこの作品は、まさに“第一期banvoxベスト”とも言える充実の内容で、発売以来大ヒットを記録しています。

ネットを検索すると、『Intense Electro Disco』発表時はまだ十代で、とても若いトラック・メイカーと噂されているbanvox。はたしてどのようなバックグラウンドを持ち、何がきっかけで音楽制作を行うようになったのか。気になる制作システムの話も含めて、じっくりと話をうかがってみることにしました。ぜひ『Watch Me Dance』をゲットして、楽曲を聴きながらお楽しみください!

banvox

死ぬか、音楽やるか。悩みに悩んでFL Studioを買った

——— 音楽は、小さいころから好きだったのですか?

banvox そうですね。家にジャズやスウィング、シャンソンとかのCDがたくさんあったんですよ。母親が元宝塚で……。家というか、車の中では、そういう音楽が常に流れていたんです。でも、自分ですすんで音楽を聴き始めたのは、小学校3年生くらいからですね。ヒップホップ…… 日本語ラップにハマって、もうずっと聴いてました。

——— 日本語ラップにハマったきっかけは?

banvox 何だったんだろう……。90年代は日本語ラップが熱かった時期なので、テレビとかの影響かも……。でも、あんまり憶えてないですね。

——— 日本語ラップのどのあたりに惹かれたのですか?

banvox もう、ぜんぶです。トラックもリリックも。強いて言うなら、“首を振れる”ということですかね。ラップのビートで、首を振れるのが良かったんです。

——— 具体的には、どういったアーティストを聴いていたのですか?

banvox 90年代のさんピン(CAMP)以前のアーティストや、もちろんさんピン世代の人たちなど……。けっこうドープなのが好きでした。

——— 周りの友だちもそういう音楽を聴いていたのですか?

banvox いや、ぜんぜんです。だからあんまり音楽の話はしませんでした。もちろん、友だちと遊んだりもしたんですけど……。自分は音楽をいつも聴いていました。

——— 野球とかラジコンとかはやらず。

banvox いろいろ親にはやらされたんですけど……。音楽がいちばんでした。

——— 海外のヒップホップとかは?

banvox もちろん聴き始めました。家に親のパソコンがあって……。Windows Meの。それを使っていろいろ調べて。

——— そんなに音楽が好きで、楽器をやろうとは思いませんでしたか?

banvox 特には。好きだったのがラップだったので、ギターとかには別に興味は湧かず……。ラップのトラックは作ってみたいなとは思いましたけど。

——— 中学校に入ってからも、音楽を聴くことがいちばんのホビーでした?

banvox 小学校は岡山だったんですが、中学校は香川の全寮制の学校に進んだんです。兄がその学校に通っていて、ぼく自身、やりたいことが何もなかったので、そのまま(お兄さんの進路を)なぞって……。共学の中高一貫校だったんですけど、そこの寮ではマンガと音楽以外の娯楽はぜんぶ禁止だったんですよ。だから中学に入ってからも、ずっと音楽を聴いていました。

——— パソコンは使えたんですか?

banvox 家でしか使えませんでした。中学校入るのはいちおう受験だったので、小学校6年生のときに、合格祝いでノート・パソコンを買ってもらったんです。

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——— 中学卒業後は、付属の高校にそのまま進んで……。

banvox いや、行かなかったんです。兄が東京の学校に通っていたので、ぼくもそこに行こうと東京に出て行くことにしたんですよ。その学校にはラップの先生がいるという話を聞いて、ちょっと気になっていたこともあって……。でも、半年くらいですぐに辞めてしまいました。何か違うなと……。何も楽しくないなって。

——— 高校を辞めて、どうしたんですか?

banvox 何もすることもなく。本当にヤバいなと思って……。死のうかなとも思ったんですけど、それだったら好きな音楽を作ってみようかなと思って……。……死ぬか、音楽やるかみたいな。それで新宿のビックカメラに行って、すっごく悩んで、Image-Line FL Studioを買ったんです。

——— 好きな音楽を作ってみようと。

banvox そうです。学校辞めた時点で何もなかったので、だったら死ぬ前に音楽をやってみようって。

——— それまでパソコンで音をいじったりとかは?

banvox まったく。何となくDJに興味があったので、そういうソフトを遊び程度に触ってみたことはありましたけど……。

——— 音楽を作るソフトはいろいろあったと思うんですが、FL Studioを選んだのはなぜですか?

banvox 当時、Pigeondustさんが大好きで、あの方がUstreamでFL Studioを使っていて。それでFL Studioというソフトの名前は知っていたんです。自分のパソコンはWindowsでしたし、FL Studio以外のソフトには興味はありませんでした。ただ、ヒップホップが好きだったので、AKAIのMPCには興味はありましたけどね。だからめちゃくちゃ悩んだんですが、結局FL Studioにしました。

キーボードなどは使用せず、すべてマウスで打ち込む

——— FL Studioを買って、すぐに曲作りはできましたか?

banvox もうぜんぜんでした。わからないことだらけでしたし……。でも、とりあえず曲を完成させることを目標に、ひたすら触り続けたんです。それこそ何かに取り憑かれたかのように。そうしたら、何となく曲になってきたんですよ。

——— 解説書を読んだり、YouTubeで使い方を見たり?

banvox いや、あんまり……。とにかく触って、ひたすら作るというか。FL Studioの使い方も、自分で見つけていったというか……。それで最初の1年半で、450曲くらい作ったんです。とにかく曲を完成させることを目標に、家に籠ってずっとやってました。

——— FL Studioと一緒に、入力用のキーボードも買ったんですか?

banvox 半年くらいしてから、AKAIのMPKというキーボードを買いました。最初、MPCと悩んだので、同じパッドが付いている鍵盤ということで。でも、基本的にキーボードは音を確認するときにしか使ってないですね。打ち込みはだいたいマウスでやってます。

——— 2011年、Maltine Recordsからリリースされた『Intense Electro Disco』によって、banvoxさんは一躍注目を集めることになるわけですが、Maltine Recordsから作品をリリースされたのは?

banvox その前にもネットに曲をアップしたり、他のレーベルからも曲を出していたんですが、もっとたくさんの人に聴いてもらいたいなと思って……。それでネット・レーベルだったらMaltine Recordsだろうということで、デモを送ってみたんです。

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banvox『Intense Electro Disco』(Maltine Records

——— それですぐにリリースが決まって。

banvox そうですね。最初に『Hands Up』と『Laser』の2曲を作ったんですが、(Maltine Recordsの)Tomadさんに“もう何曲か欲しい”と言われて、『Dirty Dirty Dirty』と『Cookie』と『Intense Electro Disco』を作って……。

——— 『Intense Electro Disco』は、わずか2日間で4,000ダウンロードを記録したそうですが、こんなに受け入れられると思いましたか?

banvox よくわからなかったです。“これで大丈夫なのかな?”と不安でしたし……。でも、いろんなところで取り上げてもらって、Twitterのフォロワーも増えて、よかったのかなという実感が湧いてきました。

——— その後すぐに、ティム・ヒーリーが主宰するSurfer Rosa Recordsから『Instinct Dazzing Starlight』を発表して、世界中から注目されるようになりました。

banvox 欲深いというか、『Intense Electro Disco』でリスナーの人は増えたんですけど、もっともっとたくさんの人たちに聴いてほしかったんです。それでティム・ヒーリーに曲を送ってみたら、“これはすごい! すぐにリリースしよう!”っていう熱いメールが返ってきて。それはとても嬉しかったですね。

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banvox『Instinct Dazzing Starlight』(Surfer Rosa Records

——— 『Instinct Dazzing Starlight』をリリースしたことによって、何か変わりましたか?

banvox いろんな人から連絡が来るようになりました。すぐに大手を含め、7社ぐらいから専属契約などしたいというオファーが来て……。一応ぜんぶお断りさせていただいたんですけど。

——— それはなぜ?

banvox どこかと契約してしまうと、自分のやりたいことができなくなってしまうことは、何となくわかっていましたし……。それとフリーで作品を出すことにも、すごく意味を感じていて。自分が作ったものは、自分の意思で世に送り出したい。何にも縛られたくないですし、自由にやりたいんです。たくさん売るんじゃなくて、たくさんの人に聴いてもらいたい。だから契約そのものを否定しているわけじゃなくて、より多くの人に聴いてもらえるんだったら、どこかと契約する可能性もあると思います。

——— ヒップホップをずっと聴いてこられたのにも関わらず、作られている音楽は違いますよね。いつごろからこういう音楽性に変わってきたんですか?

banvox 変わったという意識はないです。自分の根底にあるのは、日本語ラップというかヒップホップなので。ただ、聴く音楽の幅はどんどん広がっていて……。それで作りたい音楽を作ったらこうなったという感じですね。いまでもヒップホップは大好きです。めちゃくちゃ聴きますし。

——— 音楽はかなりチェックしている?

banvox SoundCloudとかでよく聴いてますね。最近は4つ打ちよりもヒップホップ寄りの音楽を聴くことが多いです。

——— 意識しているアーティスト、好きなアーティストというと?

banvox そうですね……。やっぱり同世代のアーティストですね。SEKITOVAとか。基本的にぼくの曲を最初に聴くのは彼なので。お互いに意識していると思います。

——— 海外のアーティストとかは?

banvox チェックします。好きな人は秘密です。

banvox

最初に曲を作る日を決めて頭の中で考え、“その日”が来たらすべてを発散させる

——— 曲作りについて、詳しく訊かせてください。頭の中に、ある程度のイメージを作ってからパソコンに向かう?

banvox ぼくの場合、最初に曲を作る日を決めるんです。作る日を決めて、その日までにどんな曲を作るか、頭の中でじっくり考える。それで、“その日”が来たら、すべてを発散させるというやり方ですね。

——— では、まっさらな状態でパソコンに向かうことはない? きょうは暇だから曲を作ろうとか。

banvox たまにそういうときもありますけど……。ほとんどの場合は、頭の中で完璧に作り上げてから、それをFL Studioに打ち込みます。締め切りとかが決まっている曲の場合は、特にそうですね。

——— 最初に曲の肝となるフレーズを打ち込むんですか?

banvox いちばん最初に作るのはビートですね。ダンス・ミュージックなので、ノレないと意味がないので……。ノレるビートを作ってから、次の音色を打ち込んでいきます。最近の曲とかは、そんなにEDMな感じでもないんですけど、それでもビートから作りますね。

——— そしてそこからバリエーションを作っていく?

banvox ぼくの場合、イントロから順々に打ち込んでいくんですよ。だから最初に作るのはイントロで、次にブレイクを作って…… みたいな。

——— パターンをコピーしてバリエーションを作っていくのではなく、ぜんぶ打ち込んでいくんですか?

banvox 基本的にはそうです。イントロから最後まで順々に打ち込んでいきます。ループを並べたりとかはあまりしないですね……。ふつうに打ち込むのが好きなんです。

——— 打ち込みはキーボードを使わず、マウスで?

banvox 基本的にはそうです。

——— シンセのフレーズとか、ただノートをトリガーしているのではなく、常にパラメーターが変化している感じがするんですが、ああいうのはどうやって入力しているんですか? MPKのエンコーダーとかを使って?

banvox マウスでオートメーションを書いて。FL Studioのオートメーションって、かなり優秀なんですよ……。MPKとかは触らないですね。

——— パンニングやディレイとかのエフェクトは、曲作りが終わった後に?

banvox いや、打ち込みと同時進行でやります。そういう音の変化があって完成という感じなので。ぼくの中で、ミキシングとマスタリングは曲作りの一部なんですよ。だからミキシングとマスタリングには、すごくこだわっていて……。FL Studioが優秀なので、それに助けられてもらっている面もありますけど……。

——— ミキシングだけでなく、マスタリングも作曲の一部であると。

banvox はい。1プロジェクトですべてを完結させて、ファイルを書き出したら終わりというか。ぼくの場合、それで曲作りが完成するんです。書き出したファイルに対して、また何か処理をするということはないですし、もちろん人にも触ってほしくない。だから頼まれた仕事のときも、“何もしないでください”ってお願いするんです。

——— FL Studioのプロジェクト上で、曲作りからミキシング、そしてマスタリングに至るまで、すべてが完結しているわけですね……。

banvox そうです。そのやり方にはすごくこだわっています。それでiPodとかで聴いて、よくないなと思ったら、またプロジェクトを修正して書き出す。それを何回も繰り返すんです。

——— そうなると、今回の新作もそうですけど、新旧の楽曲が混在した作品の場合は音量差とか音質の差が気になりませんか?

banvox 確かに、最近の曲と比べると、いろいろな面で差があるとは思うんですけど、それも自分の歴史というか……。いまの曲に合わせて補正するのではなく、そのままの状態で出したいという気持ちのほうが強いですね。

——— マスタリングが終わった時点で曲が完成となると、1曲作るのにどれくらい時間をかけるのですか?

banvox 基本的に1日です。

——— 作曲からマスタリングまで?

banvox そうです。昔の曲…… たとえば『Laser』とかは6〜7時間で作った曲です。FL Studioって、確かF11キーを押すと、プロジェクトを作ってからの時間が確認できるんですよ。それで時間を見たりするんですけど……。最近の曲だと20時間くらいかかっているので、むかしよりは時間をかけているかもしれませんね。

——— 20時間ということは、作り始めたら寝ないで完成させる?

banvox そうですね。むかしはキチンと朝起きてやらないとうまくいかないというジンクスがあったんですけど、最近になって、いつ作ってもうまくいくということがわかってきたので……。

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ヘッドフォンは使わず、パソコンに付いてきたDellのスピーカーで曲作りからマスタリングまで行う

——— FL Studioは、最新バージョンですか?

banvox 10です。11が出ているんですけど、何かフォントが変わってしまって、それが気に食わなくて……。だから10をずっと使っています。

——— いまはどんなパソコンを使っているのですか?

banvox 東京に引っ越して来たときにDellのデスクトップのパソコンを買ったんですけど、それが2年くらいで壊れちゃって……。いまは新しいHPのパソコンを使っています。Windows 7の。

——— けっこう速い機種?

banvox どうだろう……。まぁまぁのだと思います。

——— ミキシングまでぜんぶFL Studioでやっているという話でしたが、パワー的には問題ないですか?

banvox いや、めちゃくちゃ問題あります。1パートで何個もシンセを使ったりするので……。リバーブも何種類か使いますし……。だからFL StudioのCPUメーターは常に99%で、真っ赤っかですね。むかしの曲とか、開けないプロジェクトもあります。

——— 99%になって、さらにシンセやエフェクトを使いたいという場合、バウンスするんですか?

banvox バウンスは一切しません。書き出すと音が変わっちゃうので……。そこはこだわりというか。だからCPUがマックスでも我慢してやっています。ずっとバチバチいっているんですけど、最後に書き出したら、ちゃんといい曲になっているので。かなりイライラするんですけど……。

——— 曲にもよると思うんですが、何トラックくらい使うんですか?

banvox 数えたことがないのでわからないですけど……。……かなり多いと思います。シンセとか、たくさん使うので。

——— けっこうボーカル曲がありますよね。あれはどうやって録っているんですか?

banvox 人間の声が好きなので、ボーカルにはこだわりがあって……。初期の曲は、ボーカルのサンプルをカットアップしたものです。そのまま使うんじゃ絶対におもしろくないので。ボーカル・サンプルを細かく切り刻んで、歌っているように再構築する感じで……。『Love Strong』や『Watch Me Dance』とか最近の曲は、ボーカリストに歌ってもらったものですけどね。自分で作ったメロディーを軽く投げて、それを元に歌ってもらって。

——— ソフト・シンセは、どんなものを使っていますか?

banvox むかしはお金がなかったので、FL Studio標準のものとフリーのものだけでしたけど……。たとえば初期の『Dirty Dirty Dirty』は、3xOSCとTAL NoiseMakerだけで作った曲です。でも最近は、LennarDigital Sylenth1とかMinimoogとかも使っています。

——— Minimoogというのは、ArturiaのMinimoog-Vですか?

banvox そうです。『Love Strong』では、シンセ・メロディーとかでけっこう使っています。

——— いちばんよく使うのは?

banvox みんな使っていますけど、やっぱりSylenth1ですかね……。見やすくて、触りやすいのがいいんです。あとは、3xOSCも好きでよく使いますね。

——— シンセの音色は、かなりエディットするほうですか?

banvox そうですね。イチから作ることも多いです。

——— 作った音色は、保存して他の曲でも使う?

banvox そうですね……。FL Studioは、プロジェクトごとにデータを書き出してプリセットとして保存できるので、自分だけの“banvoxプリセット”というのを作って。シンセの音色だけでなく、ミキシング・データとかも書き出せるので。本当にFL Studioは使いやすいんです。

——— ヒップホップ好きとのことですが、サンプルとかも使います?

banvox たまに……。でも自分でイチから作りたいというのはあります。そんなにこだわりがあるわけではないですけど。

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——— プラグイン・エフェクトに関しては?

banvox 基本的に使っているのはFL Studio標準のものですね。イコライザーもディレイもリバーブも……。

——— そして最後に2ミックスをファイルとして書き出すと。

banvox そうです。納得がいくまで何度も書き出しを繰り返します。最初は上手くいかなかったんですが、何度も繰り返してミキシングとマスタリングの感覚を掴んできたというか。もちろんいまも、書き出してはちょっといじっての繰り返しですけどね。

——— 曲作りのときは、スピーカーで音を鳴らしていますか?

banvox ヘッドフォンはまったく使わないですね。家の隣りが教会なので、部屋が防音になっているんですよ。だからずっとDellのスピーカーを鳴らしています。

——— Dellのスピーカー?

banvox パソコンに付いてきたやつで、それをずっと使ってます。最後の確認だけ、曲を作り始めて2年くらいしてから買ったフォステクス NF-01Aを使って。

——— なぜ最初からNF-01Aを使わず、Dellのスピーカーを使うんですか?

banvox もうその音に慣れちゃってるので……。使いやすいというか、聴きやすい音なんです。音楽を聴くのもそのスピーカーですし……。最初からNF-01Aでやると疲れちゃうんですよ。そうすると正しいミキシングができない。ぼくのDellのスピーカー、すごくいいと思う。

——— では曲作りに使っているのは、Dellのパソコンとスピーカーと、AKAIのMPKくらい?

banvox それだけですね。

——— ハードのシンセとかドラム・マシンとかはない?

banvox ないです。ぜんぶパソコンの中で完結しています。

クラブに行かなくても、こういう感じで鳴るというのが想像つく

——— banvoxさんはまだ若いので、客としてはクラブに行けないわけですよね。それなのに、こういう大バコ感のある音楽を作れるのがすごいなと。

banvox そうですね……。インターネットのおかげで、クラブの雰囲気みたいなのはなんとなく掴めるようになりましたから。YouTubeとか、SoundCloudとか。そういうので、いろんな音楽を聴けるようになったので。

——— クラブには行きたい?

banvox いや。あんまり人付き合いが得意じゃないので……。部屋で曲を作っているほうが楽しいですし、これからもたぶん行かないと思います。出演したりする以外は。

——— つい先日、京都のWORLDでスクリレックスと一緒にイベントに出演されましたよね。

banvox ライブ・セットでやったんですが、スクリレックスが遅れてきたので、そのあいだにDJもちょこっと。4つ打ちの曲を。

——— クラブで自分の曲をかけてみて、“あそこをこうしたほうがよかった”みたいなことは思いましたか?

banvox いや、まったく。狙いどおりでした。クラブで聴いたときに確実にヤバいミキシングとマスタリングというのを狙っているので……。もちろんDellのスピーカーでは、低音とか聴き取りにくくて軽く聴こえてしまうんですけど、計算して硬いキックの音を作ったり。『Watch Me Dance』とか、キックを硬い音で作っているんです。

——— Dellのスピーカーでは、低域がしっかり再生されないのにも関わらず、そういう音をどうやって作っているんですか?

banvox 想像もありますけど、イコライザーで見えるので。あとは、本当にたくさん曲を聴いてきたので、それらを吸収した結果というか。とにかく曲をたくさん聴くことが大切だと思います……。そうですね、すべてはそこからだと思います。

——— では、ふだんはクラブには行かないものの、こういう感じで鳴るというのが想像つく?

banvox そうですね。こうやったら、こう鳴るみたいな。こないだのライブでも大体狙いどおりの音が鳴ってくれて、お客さんの反応もよかったので嬉しかったですね。

——— スクリレックスは何か言っていましたか?

banvox あんまり話せなかったんですけど、何度もグッド・サインを出してくれて嬉しかったです。ぼくの後にスクリレックスが出るとき、“キミはゲーム好き?”って訊かれたので、“イエス!”って答えたら、すごく盛り上がってくれました。

これからもジャンルとかは意識せずに、やりたいようにやっていくだけ

——— 先日リリースされた初のCD作品『Watch Me Dance』は、これまでの楽曲をコンパイルしたベスト盤的な内容になっていますね。

banvox iTunes Storeの“ニューアーティスト 2014”に選ばれて、今年は新しいことに挑戦していこうと思っているので……。ここでひと区切りというか。

——— 今回の作品は、banvoxさんのファースト・アルバムという理解でいいんでしょうか?

banvox いや、違います。ファースト・アルバムではないですね。ファースト・アルバムは、いずれフル・オリジナルで。

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banvox『Watch Me Dance』(Tower Records

——— 収録曲は、どうやって選んだんですか?

banvox 自分が好きな曲、聴いてもらいたい曲を入れた感じです。とにかく最近作った曲を聴いてもらいたかったので、記録みたいな感じで、あえてそういう曲は前半に入れて、むかしの曲は後のほうに入れて……。

——— デジタル・リリースではなく、CDでリリースしたのは?

banvox やっぱり音楽を作っているからには、CDを出したいとずっと思っていたんです。もちろん、デジタル・リリースには、デジタル・リリースの意味もあるんですけど……。ある程度経ったらCDで出したいなって。今回の作品は、タワレコ限定発売なんですけど、店員さんの中には以前からぼくの曲を聴いてくれていた人も多いみたいで……。ようやくCDが出たということで、店頭ですごくプッシュしてくれて嬉しいです。

——— この作品でひと区切りとのことですが、今後も方向性的には変わらないですか?

banvox やりたいようにやっていくだけです。ジャンルとかは特に意識していないので、そのときにやりたい曲をやっていきます。

——— J-POPとかは興味ないですか?

banvox あんまり……。自分で作りたいとは思わないですね。

——— VOCALOIDは?

banvox それも興味ないです。みんな使っているので、ぼくが使うまでもないかなと……。だから、VOCALOIDに対しての反抗じゃないですけど、ぼくはボーカル・サンプルのカットアップでいこうかなって。

——— いまは音楽がすべてという感じですか?

banvox はい。それ以外は……。マンガを読むくらいで。

——— 藤子不二雄先生が好きとのことですね。

banvox 大好きです。音楽と同じように、藤子先生の作品ももっと読みたいと思ってディグっていて、むかしの『バケルくん』や『みきおとミキオ』といった作品も大好きです。あとは『まんが道』も。いまは大全集とか出ているので……。

——— F先生もA先生も両方好き?

banvox そうですね。A先生の作品では、人生を学んでいます。特に『まんが道』は、音楽をやるうえですごく影響を受けてますね。banvoxのセルフ・プロデュースをどうしていくかとか、人生をどうやって進んでいくかとか……。曲自体には影響はないと思いますけど、どうやって発信していくかとか、リリース形態はどうするかとか。『まんが道』の影響は大きいと思います。

——— 自分は才野タイプ? それとも満賀タイプ?

banvox どうだろう……。……満賀タイプですかね……。心の奥にすごいものを秘めているみたいな……。

——— 『まんが道』が好きで、誰かとユニットを組んでみたいとは思わないですか?

banvox SEKITOVAとユニットをやっているので。それはまさに『まんが道』みたいなものですね。

——— 長いインタビューになってしまいましたが、今後の予定をおしえてください。

banvox 『Watch Me Dance』でとりあえずひと区切りつけたので、今年からはオリジナルをメインにやっていきたいと思っています。とりあえず来月、何か出したいですね。

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来たる6月3日(火)、タワーレコード渋谷店にてインストア・ライブが開催!

来たる6月3日(火)、タワーレコード渋谷店B1 CUTUP STUDIOにおいて、banvoxのインストア・ライブが開催。入場方法は、アルバム『Watch Me Dance』を提示するだけ(別途ドリンク代金500円が必要)。banvoxのライブが観れる貴重な機会なので、興味を持った方はお見逃しなく。サイン&握手会も実施されるとのこと。集合時間は21:00で、開演は21:30からとなっています。

banvoxサイン入りCD『Watch Me Dance』と特製ステッカーをセットで1名様にプレゼント!

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