SEMINAR

アイドル・ソングのつくりかた #1:『アイドルソングハッカソン』から誕生した現役プログラマー・アイドル、ハックガールズ

今年1月に東京・渋谷で開催されたイベント、『アイドルソングハッカソン』。制限時間内にアイドル・ソングの歌詞を作るという、たいへんユニークなイベントでしたが、その企画をしたのが、現役プログラマー2人組アイドル、ハックガールズです。ひとりはWebエンジニア、もうひとりは業務アプリケーションの開発を行っているという、バリバリのギーク女子であるハックガールズは、パズルガールズというアイドル・グループの内部ユニット。同じプログラマーであり、多くのアイドル・グループに楽曲を提供している“週末音楽家”CHEEBOWさんの何気ないツイート、“プログラミングできるアイドルプロデュースしたい”というひとことをきっかけに結成されたハックガールズは、先の『アイドルソングハッカソン』を経て、つい先ごろ、待望のデビュー曲『おしえて!恋のプロトコル』をリリースしました。そこでICONでは、ハックガールズの堤沙也さんと濱ヶ崎美季さん、そして『おしえて!恋のプロトコル』の作曲/編曲を手がけたCHEEBOWさんにインタビュー。なぜプログラマーがアイドルなのか、お三方にじっくり話をうかがいました。(Special Thanks to FabCafe

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パズルガールズの内部ユニットとして誕生したハックガールズ

——— ハックガールズの話に入る前に…… おふたりは、パズルガールズというアイドル・グループの一員でもあるんですよね。

 はい。パズルガールズは14人組のアイドル・グループで、ハックガールズはその内部ユニットなんです。パズルガールズのことはご存じですか?

——— すみません、あまり詳しくないので、おしえていただけますか?

 パズルガールズは、ちょっと変わったアイドルグループで、イベントの企画をするアイドルなんですよ。私たちは『リアル脱出ゲーム』(註:株式会社SCRAPが主催する観客参加型の謎解きイベント)というイベントを主催する会社に所属していて、渋谷にある“道玄坂ヒミツキチラボ”というハコをベースに活動しているんです。“道玄坂ヒミツキチラボ”では平日、毎晩のようにイベントをやっているんですが、その企画/演出/出演、ぜんぶパズルガールズが主体的にやっているんですよ。

濱ヶ崎 いちばん人気のイベントの『リアル脱出ゲーム』は、ひとことで言うと“謎解きゲーム”ですね。会場の中に少し頭を使わないと解けないような、難しいなぞなぞのような問題が隠されていて、お客さんは5〜6人でチームを組み、1時間以内にその“謎”を解いて脱出するんです。

CHEEBOW ぼくも参加したことがあるんですけど(笑)、ものすごく人気のあるイベントで、チケットもすぐにソールド・アウトしてしまうんですよ。“道玄坂ヒミツキチラボ”だけでなく、最近は野球場や遊園地とかでもやったりする人気イベントなんです。

 もともとはSCRAPが京都の小さな会場で始めたイベントなんですけど、どんどん人気が出てきて、こんどテレビでレギュラー番組も始まるくらい盛り上がっているんです。

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ハックガールズの堤沙也さん。普段は、Webエンジニアとして働くバリバリのプログラマー

——— そういうイベントに、パズルガールズというオリジナルのアイドルが絡んでいるのがおもしろいですね。

濱ヶ崎 『リアル脱出ゲーム』は、単なる謎解きイベントではなく、物語のような内容になっているんです。それと同じように、成長過程を応援することによってお客さんも参加できる、女の子たちのストーリーを作りたかったみたいで。何の後ろ盾もない女の子たちが集まって、アイドルとして成長していくストーリーを(笑)。そういった目的から、SCRAPが一昨年オーディションを開催して、結成されたのがパズルガールズなんです。

 私はもともと『リアル脱出ゲーム』のファンだったんですが、たまたまホームページ見たら“アイドル募集”という告知が載っていたので、おもしろそうだなと思って応募したんです(笑)。いまは1〜3期生合わせて、ぜんぶで14人在籍しています。

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ハックガールズの濱ヶ崎美季さん。最近まで、某大手IT企業で業務アプリケーションの開発を行っていたとのこと

ライブは“ハッカソン”で、ファンは“クライアント”のプログラマー・アイドル

——— そんなパズルガールズのおふたりが、ハックガールズという内部ユニットを始めたきっかけは?

 パズルガールズのメンバーには、いろいろな女の子がいるんですよ。アイドルの活動に専念している子もいれば、声優やお笑い芸人といった芸能活動を両立させている子もいますし、昼間は普通のOLをやっている子もいる。私たちは普通のOLで、IT系の仕事をしているんです。

CHEEBOW とは言っても企画とか営業とかではなく、ふたりともガチで開発系の仕事をしているんですよ。

 私はWebエンジニアなんです。

濱ヶ崎 私はこのまえ、某大手IT企業を辞めてしまったんですけど、それまでは業務アプリケーションの開発をやってました。銀行のシステムとか、そういうお堅い感じのやつを(笑)。だからオーディションのときから何となくふたりで話していたんですよね。ふたりとも開発系だから、何か一緒にできたらいいねって。

 そんなときにTwitterで、CHEEBOWさんのツイートを発見してしまったんですよ。

——— え、CHEEBOWさん、どんなツイートをしたんですか?

CHEEBOW “プログラミングできるアイドルプロデュースしたい”って(笑)。本当に何気なくツイートしたんです。そうしたら彼女たちから、“はい、私たちプログラミングできるアイドルです!”というメンションが返ってきて(笑)。

 たまたま会社の同僚のリツイートで発見したんですよ。で、“これは!”って(笑)。

きっかけとなった昨年9月のCHEEBOWさんのツイート

CHEEBOW 見立てだけ職業のアイドルっていますよね。たとえば、PASSPO☆だったらキャビン・アテンダント。そういうアイドルって、特殊な呼び方をしたりしていておもしろいじゃないですか。

——— PASSPO☆で言えば、メンバーは“クルー”で、ファンは“パッセンジャー”、ライブは“フライト”ですよね。

CHEEBOW そうそう。で、もしプログラマー・アイドルがいたら、どういう呼び方になるんだろうって勝手に妄想していたんですよ(笑)。プログラマー・アイドルだったら、たとえばファンは“クライアント”だろうなとか(笑)。

 クライアント! ちょっと嫌ですね(笑)。

CHEEBOW ライブは、もちろん“ハッカソン”。CDを発売するときは“リリース”。仕事をいつまでにやらなければならないとなったら、やっぱり“納期”だよねとか(笑)。そんな妄想をしていたら、本物が現れたという(笑)。

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週末音楽家、CHEEBOWさん。コンピューター・プログラマーとして活躍する傍ら、夢眠ねむ、愛乙女★DOLL、Doll☆Elements、Jewel Kiss、T!P、丸山夏鈴、逢沢ありあ、Honey Squashなど、多くのアイドルに楽曲を提供している(WebTwitter

——— CHEEBOWさんも本職はプログラマーの週末音楽家ですし、まさに運命の出会いですね。

 そうなんですよ! 本当に運命だと思ってます。

CHEEBOW で、じゃあぼくが曲を作るよってことになったんです。それが去年の9月のことですね。

——— ハックガールズという名前は?

CHEEBOW 最初はギークガールズとか言ってたよね(笑)。

 そうなんです。でも、“ギーク”だとちょっと意味が広すぎるかなって。どちらかと言えば、開発をする側の名前がいいなと思ってハックガールズになりました。

Twitterで歌詞の断片を集め、『アイドルソングハッカソン』で完成

——— “プログラマー・アイドル”ということで、CHEEBOWさん的にはどんな曲調でいこうと考えました?

CHEEBOW 最初に考えたのは、彼女たちは『リアル脱出ゲーム』のパズルガールズの一員でもあるので、楽曲の中に謎を仕込んでおくのがおもしろいんじゃないかなと。たとえば、刻んでいるリズムが実はモールス信号になっていて、何かことばが隠されているとか(笑)。

 わははは、おもしろい(笑)。

CHEEBOW なんていうアイディアもあったんですけど、まずは普通に作ってみたんです。ふたりとも大人な雰囲気の女の子なので、最初はそれっぽい曲を作ってみたんですよ。ちょっとPerfumeっぽい、オシャレなコード感の曲。でも、少し作ってみたら何かピンとこなくて。それで彼女たちと話したら、元気な感じの曲がいいということで、作り直すことにしたんです。

濱ヶ崎 朝起きて聴いて、元気になれる曲がいいなと思ったんですよ。1日の始まりに聴いて、テンションが上がる曲というか。最初に作っていただいた曲もすごく素敵だったんですけどね。

CHEEBOW ぼくの場合、曲の作り直しはよくあることなのでオーケーです(笑)。

 自分たちも毎朝通勤しているので、サラリーマンやOLさんを応援する曲じゃないですけど、明るく元気な曲がいいかなって。私たちと同じIT系のサラリーマンやOLさんに聴いてもらいたいなと思ったんです。

——— そんなリクエストがあって、CHEEBOWさんとしてはどういう方向に軌道修正されたんですか?

CHEEBOW 明るく元気な曲というとアニソンじゃないですか。それにふたりともアニソンが好きそうだったので、そういう方向でいこうと考えたんです。アニソンといえば、何といってもシンコペーションですよね。4拍目の裏から食って入る曲。それだ!と思って、全体的にシンコペーションする感じで作り直し、完成したのが『おしえて!恋のプロトコル』なんです。

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ハックガールズ『おしえて!恋のプロトコル

——— 歌詞はどなたが?

 1月に“道玄坂ヒミツキチラボ”で『アイドルソングハッカソン』というイベントを開催して、そこでみんなで作ったんですよ。

CHEEBOW イベントの前に、Twitterで歌詞の断片をみんなにツイートしてもらったんだよね。

 そうなんです。CHEEBOWさんに作っていただいた『おしえて!恋のプロトコル』のデモをWebにアップして、それを聴いて思いついたフレーズや歌詞を自由にツイートしてもらったんですよ。メールだとちょっと敷居が高いなと思ったので、Twitterでハッシュタグを付けてもらって。そうしたら、“プログラマーあるある用語とかおもしろんじゃない?“とか言いながら(笑)、みんなどんどんツイートしてくれたんですよ。それでTwitterで集まった歌詞の断片を、『アイドルソングハッカソン』でみんなで組み合わせていったんです。

濱ヶ崎 40人くらいの人たちが参加してくれたんですけど、最初に“こんな感じの歌詞の断片が集まりました”と紙を配って、その組み合わせを6人ずつのグループで考えてもらって。それで最終的に各グループで出来上がった歌詞を提出してもらったんです。

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『アイドルソングハッカソン』のフライヤー

CHEEBOW その後はぼくとプロデューサーで微調整して、最後は彼女たちに整理してもらって完成した感じですね。

こうやって話すとスムースに事が進んだように感じるかもしれないですけど、何の段取りもなかったので、実際はかなりエクストリームなイベントでしたね(笑)。実際に作っている時間は1時間半くらいだったんですけど、脳が疲れました(笑)。参加した方はみんな楽しんでましたけどね。

 普段、“道玄坂ヒミツキチラボ”で開催しているイベントに来られるお客さんは、パズルガールズのファンの方が多かったりするんですけど、『アイドルソングハッカソン』には作詞に興味があって参加したという人もいましたね。“いちどアイドルに曲を書いてみたかったんだよね”とかおっしゃる人もいて、これまでなかったタイプのおもしろいイベントになったんじゃないかなと思ってます。イベントの前には、CHEEBOWさんに楽曲の説明もしていただきましたし。

CHEEBOW そうそう。最初に少し時間をもらって、どういう風に曲が出来ているのかというのを説明させてもらったんですよ。ステムを再生して、曲というのはこういう構造になっているですよということを。

——— 完成した歌詞は、まさしくハックガールズのデビュー曲に相応しい内容になってますね。

CHEEBOW もっと技術用語てんこもりな内容になるのかなと思っていたんですけど、最終的にはブラック企業の歌みたいな感じになりましたね(笑)。いまの時代を反映した歌詞というか(笑)。

濱ヶ崎 なので、IT系以外の人たちにも“うんうん”と頷いていただける曲になったと思います(笑)。

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細かいシンセ音やファミコン的な音で、ギーク感を演出

——— オケはぜんぶCHEEBOWさんの打ち込みですか?

CHEEBOW 今回はそうですね。ギターに関しては発注することが多いんですけど、今回は生楽器は入ってないです。

——— 使用した機材をおしえてください。

CHEEBOW コンピューターは自作のWindows PCで、DAWはSteinberg Cubase。音源はぜんぶソフト・シンセで、ドラムはNative Instruments Battery、ベースはSpectrasonics Trilianですね。最近はベースは大体Trilianで、ドラムは打ち込みっぽい曲ではBattery、ロックっぽい曲ではXLN AUDIO Addictive Drumsという感じで使い分けています。上もののシンセは、Steinberg HALion Sonicが好きなので多用していて、あとはCubase標準のRetrologueやNative Instruments FM8とか。いつも使うSynth1やNative Instruments Massiveは、今回は使わなかった気がします。ファミコンっぽいピコピコいっている音は、YMCKの人が作ったフリーのMagical 8bit Plugですね。

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CHEEBOWさんのプライベート・スタジオ。DAWは、自作のWindows PC上で走るSteinberg Cubaseで、オーディオ・インターフェースも同じくSteinberg UR28M。最初にヤマハのMSXを購入して以来、DTM機材はほとんどヤマハ(Steinberg)製とのこと

——— ギターは?

CHEEBOW Steinberg Virtual Guitaristです。ぼく、Virtual Guitaristが大好きで、かなり使い倒しているんですよ。普段の仕事ではMacを使っているので、作曲用のコンピューターもMacにしようかなと思うんですが、Virtual Guitaristが使えないから移行できないんです(笑)。もちろん、Windowsでももう危ういんですけど、jBridgeを使って何とかだましだまし使ってますね。Virtual Guitaristは本当に良く出来た音源ですよ。ドミソと鍵盤を押さえれば、そのコードでギターのフレーズを弾いてくれるわけですから(笑)。そのフレーズをあとで組み替えたりすれば、かなり使えます。

——— DAWソフトとしてCubaseを使われているのは?

CHEEBOW 使い慣れているというのが大きいんですけど、コードトラックなどの便利な機能が備わっているのもいいですね。自分でコードを作ってメロディーを載せた後に、別のコード感を試してみたいと思うことってあるじゃないですか。そんなときもCubaseのコードトラックなら、簡単に別のコードを試すことができる。あとはぼくの場合、鍵盤が弾けないので、入力したら即タイミングとベロシティを一定にするというショートカットが組んであるんですよ(笑)。そういうショートカットが自由に組めるのも、Cubaseのいいところですよね。

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『おしえて!恋のプロトコル』のCubaseのプロジェクト

——— プログラマー・アイドルということで、アレンジでそれ風のしかけを入れたりとかは?

CHEEBOW 特に無くて、いつもと同じ感じなんですけど、アキバ系ポップということは意識しましたね。MOSAIC.WAV的なイメージというか、シンセ音やファミコン的な音を多めにして。そういうところで、ギーク感を出しました。そうそう、今回の曲はアルペジオの数がメチャクチャ多いんですよ。細かい音をピコピコ鳴らすことでもギーク感を出してみたんです。でも、そういう細かい音をたくさん入れてしまうと、ミックスが難しくなってしまうんですよね。歌メロとピコピコ音がぶつかってしまって……。だからアルペジオも8分と16分で使い分けたりしました。

——— 歌録りはどこで?

CHEEBOW 今回はちゃんとしたレコーディング・スタジオで行いました。彼女たちは一度もレコーディング・スタジオで歌を録ったことがなかったので、今後のためにも経験しておくのはよいことじゃないかなと思って。今回は、ぼくが曲を書いている愛乙女☆DOLLでも使っているNONEWYORK studioというスタジオで、慎秀範さんというエンジニアさんにお願いしました。

 パズルガールズの活動が忙しくて、『アイドルソングハッカソン』からレコーディングまで間が空いてしまったんですけど、歌入れ前にCHEEBOWさんにキーを下げてもらいました(笑)。Twitterで何気なく“明日のレコーディング、高いところが出るか心配だけどがんばろう!”とツイートしたら、CHEEBOWさんが“だったら下げようか?”と言ってくださって(笑)。

CHEEBOW それだったら下げた方がいいんじゃないかなって(笑)。今回はぜんぶ打ち込みだったので、下げるのは簡単でしたしね。ギターとかを録った後だったら勘弁してほしいところだったんですけど(笑)。でも、彼女たちは低い音域の方がきれいな声質なので、結果的に良かったんじゃないかなと思ってます。

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プログラマー御用達のGitHubは、容量制限も無く、音楽配信にも十分使える

——— そして完成した『おしえて!恋のプロトコル』ですが、無料で配信されていますね。

CHEEBOW 最初はCDを作ろうかというアイディアもあったんですけど、ハックガールズに関しては無料で配信してしまった方がいいんじゃないかと。その方がハックガールズっぽいじゃないですか(笑)。それにハックガールズのことをたくさんの人たちに知ってもらうためにも、無料配信の方が絶対にいいと思ったんです。

——— まだ配信が開始されたばかりですが、反応はいかがですか?

 Webエンジニアの人とかにTwitterで“聴いてます!”と声をかけていただいたり、意外と反応が大きくて驚いています。もっともっとアピールしていかなきゃいけないと思っていて、いろいろな人たちに聴いてほしいと思っています。

濱ヶ崎 『おしえて!恋のプロトコル』って、IT系の職場でウケる曲だと思うんですよ。私も会社の人に聴いてもらったんですが、“おもしろい!”と言ってもらえましたし(笑)。ITが切り口のアイドルって、これまでいなかったと思うので、もっとがんばっていきたいですね。

——— 配信のプラットホームが、GitHub(註:ソフトウェア開発のための共有ウェブ・サービス)というのも、ハックガールズっぽくて最高ですね。

 それもCHEEBOWさんのアイディアなんですけど、“それはおもしろい!”って即採用になりました(笑)。

CHEEBOW ぼくらは普通に使っているサービスなんですけど、考えてみればGitHubで音楽を配信している人っていないなって。でも、容量制限も無さそうですし、音楽配信にも十分使えますよね。特に複数のメンバーでリミックスとかの制作をするにはバッチリのサービスなんじゃないかと思います。

——— ボーカル・トラックやパラのトラック・データをGitHubで公開して、みんなにリミックスしてもらう『アイドルソングハッカソン 2』なんていうのもおもしろいかもしれないですね。

CHEEBOW そうなんですよ。そういうことを見越してGitHubにしたというのはあります。GitHubだったら、いろんなデータを簡単に追加することができますしね。

——— で、WebサイトはTumblr

CHEEBOW そのへんはもう彼女たち自身で。本職なので大得意(笑)。

 一日でピッと作りました(笑)。出来ることはなるべく自分たちでやる方向で。

——— ハックガールズのロゴはどなたが?

 デザインが得意な同僚のエンジニアに頼んで作ってもらいました。最初にイメージを伝えたんですけど、何案か作ってくれて、気合いを入れてやってくれましたね。ジャケットは、パズルガールズのアー写を組み合わせて適当に作ったものです。

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ハックガールズのロゴ

——— 『おしえて!恋のプロトコル』には振り付けはあるんですか?

 いま作っている最中なんですけど、そんなにガッツリ踊る感じの曲ではないので(笑)、サビの部分とかで軽く。5月以降のライブでお披露目できたらいいなって思ってます。

濱ヶ崎 私はパズルガールズに入るまでダンスをまったくやったことがなかったので、踊りに関しては苦労しているんですけど(笑)。彼女みたいに出来る子におしえてもらいながら、何とかやっています(笑)。

 私はずっとダンスをやっていたんですよね。

——— ミュージック・ビデオもおもしろいものが出来そうですよね。

CHEEBOW 作りたいですよね。予算次第です(笑)。

 ミュージック・ビデオじゃないですけど、カラオケ・ビデオはファンの方が作ってくださったんですよ! YouTubeにアップされているんですが、ちゃんと歌詞が流れるんです(笑)。

Redmineでガントチャートを作って、作曲の工程を管理

——— おふたりもコンピューターを使って、自分で曲を作ってみたいなとは思いませんか?

 曲を作るのは難しそう(笑)。

濱ヶ崎 でも私は、CHEEBOWさんが作っているところを横で見させていただいて、“ あ、簡単じゃん!”って思いましたよ(笑)。いや、実際は簡単ではないとは思うんですけど、CHEEBOWさんが作ってると簡単に見えるんですよね(笑)。

 ものすごく早いですし……。

CHEEBOW ぼくの場合、曲作りのフローが固まってしまっているので、こういう感じの曲と言ったら、とりあえずはパッパッと出来てしまうんですよ。自分専用の“CHEEBOWワークフロー”というテンプレートがCubaseに用意してあって(笑)、それを立ち上げればすぐに曲作りができるようになっているんですよね。

 他の作曲家さんはどういう風に曲を作っているのかわからないんですけど、CHEEBOWさんはあらかじめ用意されているパーツを組み合わせて曲を作っている印象を受けました。そのあたりは、さすがはプログラマーだなという(笑)。プログラムの世界でも、処理ごとに細かなパーツにしておくことは大切ですから。あ、通じる部分があるなって。

CHEEBOW フレーズをパーツ化して、別の曲で使うというわけではないんですけど、自然とそういう作り方になっているなとは思いますね。でも、プログラマー経験が活きていると思うのは工程管理の方ですね(笑)。

 わははは(笑)。

CHEEBOW ぼくは曲作りのときもガントチャートを作るんですよ。普段の仕事で使っているRedmine(註:オープン・ソースのプロジェクト管理ソフトウェア)を使って(笑)。大体、1曲を完成させるのに1ヶ月半かかるので、そのうちのこの期間は作曲、この期間は編曲という感じで、ガントチャートに線を引く(笑)。ギターはこの日に発注したら、この日に返ってくるだろうなとか(笑)。もちろん、複数の曲が同時に進行していることもよくあるので、半月分はチャートが重なっていたり。

濱ヶ崎 CHEEBOWさんが曲作りにを使っているという話を聞いて、私はプライベートでRedmineを使い始めてしまったんですよ(笑)。自分でサーバーを立てて(笑)。

CHEEBOW いいでしょ?(笑)

——— CHEEBOWさんは、いまや売れっ子作曲家ですが、せっかくなので最近オススメのアイドルをおしえていただけますか?

CHEEBOW 最近のいちばんのお気に入りは、神戸のKOBerrieSですね。曲がギター・ポップですごくいいんですよ。あとは愛媛のnanoCUNE。あそこも曲がすごくいいですね。アルバムも本当に捨て曲が無いというか。つい先日、KOBerrieSとnanoCUNEが対バンしていたので、初めてライブを見てきたんですが、めちゃくちゃ良かったですね。そうそう、忘れてはならないのが、つりビット。ももクロと同じ作曲家さんが書いていたりするんですが、つりビットも曲がすごくいいんです。これは見たい!と思って、ライブも申し込んでしまいましたよ(笑)。

——— 長いインタビューになってしまいましたが、最後にハックガールズの今後の展開をおしえてください。

 5月14日に“道玄坂ヒミツキチラボ”で、『アイドルソングハッカソン』に続くハックガールズのイベントを開催します。著名なエンジニアの方々をお呼びして、がっつりシステム寄りのライトニングトーク大会をやるんですよ(笑)。

濱ヶ崎 ぜひ遊びに来てほしいですね。

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5月14日、東京・渋谷の“道玄坂ヒミツキチラボ”で開催されるハックガールズ主催のイベント第二弾、『システムライトニングトークBar』。CHEEBOWさんも出演

——— 2曲目は?

濱ヶ崎 まずは『おしえて!恋のプロトコル』を広めていきたいですね。

 でも、歌詞のアイディアはたくさんあるので、2曲目も出来たらいいなと思っています。

——— がんばってください! ICONはこれからも応援します!

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