MUSIKTECHNIK

Musikmesse 2014: 最高384kHz/DSD256に対応した1Uサイズの高級オーディオ・インターフェース「HAPI」 〜 Merging ドミニク・ブルーハート氏インタビュー

Musikmesse 2014(正確には、Prolight+Sound 2014)で発表されたMerging Technologiesの新製品「HAPI」。最高384kHzのPCM、DXD、最高11.28MHzのDSD(DSD256)に対応した同社の高級オーディオ・インターフェース、HORUSを1Uラック・サイズに凝縮したニュー・モデルです。音質的にはHORUSとまったく同一ながら、価格は1,700ユーロからと安く、次世代オーディオ伝送規格“RAVENNA”を標準搭載し、コンピューターとのダイレクト接続にも対応した「HAPI」。現在、Pro Tools|HD/HDXとのダイレクト接続用カードの発売も検討されているとのことで、これから日本でも注目を集めそうな製品です。Musikmesse会場で、Merging Technologies社の開発者であるドミニク・ブルーハート(Dominique Brulhart)氏に話をうかがってみました。

Merging Technologies - HAPI

筐体サイズが1Uになり、拡張スロットの数が6基から2基になっただけで、オーディオ・クオリティはHORUSとまったく同一

——— 新製品「HAPI」は、HORUSの姉妹機という認識でいいのでしょうか?

DB 姉妹機というより、HORUSの子どもですね(笑)。HORUSは、エジプト神話に登場する天空と太陽の神ですが、その4人の子どもの中の1人が「HAPI」なのです。

——— HORUSと「HAPI」の違いについておしえてください。

DB 「HAPI」は、HORUSを1Uラック・サイズに凝縮した新しいオーディオ・インターフェースです。マザー・ボードはHORUSと同一であり、拡張スロットに装着するカードも同じものです。違いは、筐体の大きさと、拡張スロットの数(註:HORUSは6基で「HAPI」は2基)、そして前面のディスプレイくらいです。HORUSには、タッチ操作できる液晶ディスプレイが備わっていますが、「HAPI」では有機ELディスプレイと大型のエンコーダーという仕様になっています。マザー・ボードが同じということは、オーディオ・インターフェースとしてのクオリティに差は無いということですね。

Merging Technologies - HAPI
Merging Technologies - HAPI

——— 「HAPI」は、何チャンネル入出力のオーディオ・インターフェースとして機能するのでしょうか?

DB 拡張スロットに装着するカードに依存しますが、アナログ入出力の基本的なスペックとしては8ch入出力ですね。現在、アナログ8ch入力とアナログ8ch出力の拡張カードをそれぞれ2種類提供しているので、それらを1枚ずつ装着すれば、アナログ8ch入出力のオーディオ・インターフェースとして機能するというわけです。

——— アナログ8ch入力とアナログ8ch出力の拡張カードが、それぞれ2種類用意されているのはなぜですか?

DB 対応フォーマットの違いです。スタンダードなAD8DとDA8は、最高192kHzのPCMにのみ対応し、より高価なAD8DPとDA8Pは、最高384kHzのPCMとDXD、最高11.28MHzのDSDに対応します。AD8DとAD8DPには、マイク・プリアンプも備わっています。

——— デジタル入出力についておしえてください。

DB 標準で8chのAES/EBU入出力(註:D-Sub)と、ADATとS/PDIFが切り替えられるオプティカル入出力、そしてRJ-45のRAVENNAポートがプライマリーとセカンダリーで2基備わっています。また、MADM/MADSという拡張カードを装着することで、最大128ch入出力のMADIにも対応します。

もちろん、ワード・クロック入出力や各種同期に対応できるシンク端子も備わっており、シンク端子にブレークアウト・ケーブルを接続することで、LTC入出力、ビデオ・シンク入力、MIDI/MTC入出力に対応します。さらに現在、8系統のGPIOとSony 9-pin端子を備えた新しい拡張カードの開発を行っている最中です。

Merging Technologies - HAPI

——— コンピューターと接続してオーディオ・インターフェースとして使用する場合は、RAVENNAを使うということですね。

DB そのとおりです。コンピューターのEthernet端子に接続すれば、「HAPI」はASIOやCore Audio対応のオーディオ・インターフェースとして機能します。特別なオーディオ・カードなどは必要ありません。

——— DanteやAVBではなく、RAVENNAを採用した理由は?

DB 複数の理由があります。まず、RAVENNAは完全にオープンな規格であること。我々はこの規格についてすべてを知ることができますが、DanteはAudinateが開発した規格なので、ベールに包まれている部分が少なからずあります。我々は、自分たちが100%把握できない規格は採用しません。なぜなら顧客に迷惑をかけてしまうかもしれないからです。

また、RAVENNAはAES67という標準規格に準拠しています。正確には完全に準拠しているわけではなく、95%以上準拠という感じなんですけどね。でも大きな問題ではないでしょう。

そして来年には、Danteとも接続できるようになるはずです。RAVENNAとDanteは、規格的には大した違いはありません。

——— AVBに関しては?

DB AVBは、オーディオの世界では難しい規格だと思っています。RAVENNAとAVBは、将来的にも接続できるようにはならないでしょうね。おそらく、DanteとAVBの互換もうまくいかないでしょう。

——— いまのところRAVENNAよりもDanteの方が支持されている印象です。

DB それはDanteの方が実装しやすいからでしょうね。RAVENNAはオープンな規格であるぶん、実装して安定した製品として仕上げるのはそれなりの時間とノウハウが必要になります。

Merging Technologies - HAPI
Merging Technologies - HAPI

——— 高級なAD/DAコンバーターには、Pro Tools|HD/HDXをダイレクト接続できる拡張カードが用意されているものも少なくありません。そういった拡張カードを開発する予定は?

DB よい質問ですね(笑)。まだ開発しているという段階ではありませんが、現在前向きにリサーチしているところです。やはりPro Toolsは世界標準ですから、HORUSや「HAPI」がダイレクトに接続できれば便利になるでしょう。楽しみに待っていてください。

あと現在、1枚でアナログ8ch入出力が可能になる拡張ボードを開発しているところです。「HAPI」は拡張スロットが2基しかありませんから、アナログ8ch入出力の仕様にすると、それだけでスロットが埋まってしまいますからね。もしかしたら若干クオリティは落ちるかもしれませんが、1枚でアナログ8ch入出力できるようになると便利じゃないかと。マイク・プリアンプを搭載するかどうかは未定です。

——— 「HAPI」の価格とリリース時期をおしえてください。

DB 拡張スロットに何もカードを装着していない状態で約1,700ユーロ、アナログ8ch入出力の仕様で約3,700ユーロという感じでしょうか。既に生産に入っており、最初のロットは6月には出荷したいと考えています。

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