MUSIKTECHNIK

iZotope RXのように、スペクトログラムでノイズの除去/音成分の分離が行える波形編集ソフトウェア「ISSE」が無償配布中

「ISSE(an Interactive Source Separation Editor)」という波形編集ソフトウェアの無償配布が開始され、注目を集めています。

ISSE

Nicholas J. Bryan氏という技術者を中心に開発が続けられている「ISSE」は、オープン・ソースの波形編集ソフトウェア。Webサイトでは、Mac版、Windows版、Linux版、ソース・コードが配布されています。

「ISSE」は、いわゆるフル機能の波形編集ソフトウェアではなく、オーディオ・データの中の特定の周波数帯域を取り出す(切り分ける)ことに特化したソフトウェア。iZotope RXに搭載されている“Spectral Repair”のような機能に特化したようなソフトウェアです。

YouTubeにアップされたデモ・ムービーでは、Adobe PhotoshopのMagic Wandツール(背景などを切り抜くツール)を引き合いに出し、「ISSE」では同じように音を“レイヤー化”することによって、携帯電話の着信音や咳払いなど、特定の音だけの除去を可能にすると紹介。また、そういったノイズ音の除去だけでなく、楽曲からボーカルだけを取り出すといった複雑な処理も実現すると紹介しています。

機能面を絞ったソフトウェアのため、使い方はシンプルで、起動したらまず「New」コマンドで任意のオーディオ・ファイルを開きます(「Open」ではない点に注意)。するとオーディオ・ファイルは自動的に解析され、いちばん上のレーン(「Mixture」レーン)に、縦軸を周波数、横軸を時間として、スペクトラム表示されます。

ISSE

そして上部のツール・バーで、「Paint Mode」を選択し(筆のイラストのボタン)、さらに右側の「Box Brush」ツール(四角い矩形のボタン)を選択してから、「Mixture」レーン上をドラッグし、取り出したい音成分を選択します。なお取り出したい音成分を選択するためのツールは、「Box Brush」以外にも時間軸だけで選択できる「Time Brush」や、周波数軸だけで選択できる「Frequency Brush」なども用意されています。

そして「Process」メニューから「Process」コマンドを実行すると、選択した音成分が真ん中のレーン(青色の「Source 1」)、それ以外の音成分が下のレーン(赤色の「Source 2)に分離されます。しかし、選択ツールで一度選択しただけでは、きれいに分離されません。「ISSE」の選択ツールは、同じ部分を何度か繰り返し選択することで、分離の具合を強くする仕様になっています。つまり、1回の選択では“弱い分離”となり、必要に応じて繰り返し選択することで、徐々に“強い分離”となる仕様のようです(消しゴムでゴシゴシ消すのと同じ要領です)。

Webサイトによると「ISSE」は、ユーザー操作の相互作用によるパラダイムと、ユーザーの選択内容の学習結果に基づいた演算、以上の2つを融合した独自のアルゴリズムを採用しているとのこと。従って他の同種のソフトウェアでは分離が難しかった素材も、「ISSE」では上手くいく可能性があるかもしれません。

少し使い勝手にクセのあるソフトウェアですが、無償ですので、興味のある方は試してみては……。