Developer Interview
Universal AudioのICHIさんに、みなさんの質問をぶつけてみました(その1)
昨日、来日しているUniversal Audioのユウイチロウ“ICHI”ナガイさんにお話を訊く機会を得ました。それだったらと一昨日、FacebookとTwitterでApolloに関する質問を募集したところ、たくさんのコメント/メンションが集まりました。そこでここでは、それら質問に対するICHIさんの回答を紹介することにします。
(NAMM会場で収録したICHIさんのインタビューはこちら)
● 質問その1:Thunderboltカードのリリース時期と価格についておしえてください。NAMMの時点では、夏頃のリリースで500ドルくらいとおっしゃっていましたが……。
ICHI リリース時期は夏をターゲットにしています。具体的には、7月あるいは8月という感じでしょうか。開発自体は順調に進んでいます。ご存じのとおり、Apollo本体の開発が少し遅れてしまったので、その影響はあるんですけどね。それでも夏のリリースには自信を持っています。
——— 価格に関しては?
ICHI すみません、まだ決めていません。
——— 500ドルくらい?
ICHI まぁ、大体その程度と考えていただければと思います。
● 質問その2:UADプラグインの64bit対応の時期をおしえてください。
ICHI ハッキリは言えないんですけど、今年中には対応します。我々としては、AAX対応とシャドウしたい(時期を合わせたい)と考えているんですよ。Pro Tools softwareの次期バージョンは、おそらく64bitに対応しますから、そのトランジション(移行)のときに我々もしっかり準備できているように……。
本日、我々はUAD Software v6.2をリリースしました。一番の目玉は、1176 Classic Limiter Plug-In Collectionが入ったことなんですが、ユーザーの目に見えない部分の変更点として、このバージョンから64bitのフレームワークになったんです。まだ64bitに対応したわけではないですが、ソフトウェア的にはレディ・トゥ・ゴーということですよね。そういったこともあって、このバージョンからUAD-1をサポートできなくなったんですよ。
——— AAX対応については「未定」というスタンスだったと思うんですが、サポートするんですね。
ICHI これまでどおりDSPを使うプラグインであることには変わらないんですけど、AAXはサポートします。
——— AAX対応の時期は?
ICHI 未定です。しかし既にAvidさんとウチのエンジニアリング・チームは何度もミーティングをしています。先ほども言ったとおり、Pro Tools softwareのトランジションが起こったときには(64bit対応の次期バージョンがリリースされたときには)、ウチもそのトランジションに遅れずに乗りたいですよね。
● 質問その3:Apollo/SatelliteはMac先行対応ですし、最近のUniversal Audioは、Macプラットホームを重視しているような印象を受けます。Windowsユーザーが待ち望んでいる64bit対応も遅れていますし……。Windowsユーザーは、現在のUniversal Audioの対応に不安を感じていますが、Windowsのサポートについてはどのようにお考えですか?
ICHI Satelliteのときは、ハードウェアの問題が大きかったんです。FireWire 800端子を装備したWindowsマシンというのは、当時はほとんど無かったんですよ。それに加え、ウチのQA(クオリティ・アシュアランス)のチームが、「Windows環境での使用は、我々の求める品質に達していない」という結論を下したんです。憶えているかもしれませんが、Satelliteを最初にアナウンスした段階では、Windowsにも対応させる予定だったんですよ。しかしMacと同じようなクオリティで提供するためには、Windowsマシンの条件があまりにも限定されたものになってしまったんです。CPUやマザー・ボード、チップ・セットの組み合わせですよね。そんな限定された対応だったら、出さない方がいいだろうというのが我々の判断だったんですよ。
しかしご存じのとおり、今年の夏にApollo/SatelliteはWindowsに対応する予定です。OSは、Windows 7限定ですけどね。Windows 7にターゲットを絞ったことによって、ようやくWindowsに対応することができたんです。ただ今後、Windows環境でのThunderboltの問題などもありますし、まだまだ超えなければならないハードルは多いんですけどね。実際に対応する際には、マシンのスペックをある程度限定することになると思います。
やはりMacがいいのは、マシンの構成が数種類しかないところ。Appleは我々デベロッパーに対してラボを開放していて、そこに開発中の製品を持って行けば、動作をチェックすることができるんです。その点、Windowsはとても難しい。我々が製品に求める質のレベルはとても高いので、そのラインを超えなければ商品として出荷することができないんですよ。
——— 特にMacプラットホームに肩入れしているというわけではないんですね。
ICHI もう本当にWindowsをサポートしたいんです。その考えは昔から変わりません。ただ、テクニカルな問題がたくさんあって、ウチが望むレベルまで持っていくことができないんですよ。ビジネスのことを考えたら、Windowsをサポートしないということはあり得ません。
Windowsで良かったのは、Windows 7の登場ですよね。VistaのときはXPから移行する人はとても少なかったんですけど、最近のアンケートを見ると、Windows 7への移行がかなり進んでいるようです。ここにきてWindowsユーザーのベースが固まってきたのは良かった。Windows 7はソリッドなOSですし、これに我々が64bit対応すれば、かなり良い環境になるのではないかと思っています。
● 質問その4:ThunderboltバージョンのSatelliteの開発は検討していませんか?
ICHI 今のところ、そういうニーズが無いので、まったく考えていません。
● 質問その5:ユーザーの中には、入出力チャンネルの数は4ch程度でいいという人もいると思います。ハーフ・ラック・サイズのApolloの開発は検討していませんか?
ICHI Apolloを発表した後、世界中のユーザーから「こういうものを出してほしい」という意見をたくさんもらっています。中にはおもしろいアイディアがあったりするので、これから検討していこうと思っています。
● 質問その6:入出力チャンネル数が少なく、DSPパワーも抑えられた廉価版Apolloのような製品が登場する可能性はありますか?
ICHI 現時点では考えていません。まだApolloをローンチしたばかりで、Windows対応、Thunderboltカードのサポート、64bit対応、そしてマルチ・ユニットのサポートと、クリアしなければならない問題は山積みなんです(笑)。個人的には、マルチ・ユニットは早くサポートしたいと思っています。Apolloを複数台同時に使用することができれば、ライブ・レコーディングをはじめ、よりチャンネル数が必要なアプリケーションに対応できますからね。
● 質問その7:Pro Tools|HD/HDXシステムには、DSPで動作するインストゥルメント・プラグインというのが存在します。Access Virus Indigoや、McDSP Synthesizer Oneなど……。今後、DSPで動作するインストゥルメント・プラグインをリリースする予定はありませんか?
ICHI 前も話したと思うんですけど、我々はWebサイトでよくアンケートを実施しているんです。そのアンケートで、過去にそういう質問をしたこともあるんですが、インストゥルメント・プラグインが欲しいという回答はごく少数だったんですよね。それによってUADは、クリエイターよりもエンジアリング寄りの製品なんだということを改めて認識しました。我々のプラグイン開発は、本当にユーザーの要望が第一なんです。だからインストゥルメント・プラグインが欲しいというユーザーが多ければ、我々は間違いなく開発に着手します(笑)。しかしそんな状況もApolloの登場によって変わるかもしれないですね。Apolloはクリエイターにも人気があるようなので、今後インストゥルメント・プラグインが欲しいという声が増えてくるような気がしています。
● 質問その8:UADプラグインは、リバーブやフランジャー、テープ・シミュレーターなどもラインナップされて、ミックス/マスタリングに必要なエフェクトは一通り網羅された感があります。今後はどのようなプラグインをリリースしていくのですか?
ICHI ハッキリ言って我々は、UADプラグインのラインナップが十分とは考えていません。プラグイン化したいアウトボードのほんの一握りしか実現できていませんし、正直まだまだですね(笑)。
——— これだけ充実したラインナップで、そんな認識だとは驚きました。
ICHI 本当、まだまだですよ。カタログを見てみてください。ブランドはズラリと並んでいますが、ManleyにしてもEmpirical Labsにしても、1製品しかプラグインになっていないじゃないですか。ユーザーからは「あの製品のプラグインはいつ出るの?」といつも訊かれますよ(笑)。実際、ラインナップを見れば、ヒット製品のプラグインが無いことにすぐ気づくと思います。これからもアンケートの結果を参考にしながら、ユーザーが欲しいと思っているプラグインを開発していきたいと思っています。
その2に続きます……。
フックアップ: Universal Audio Apollo
http://hookup.co.jp/products/audiointerface/apollo.html
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