Musikmesse / Prolight + Sound 2012
Musikmesse: フランスからまったく新しいコンセプトのDAW「Springbeats Instinct」が登場！ スクリプト言語“Lua”を用いて機能を自由に拡張可能！
PreSonus Studio OneやBitwig Studioなど、最近は新種のDAWソフトウェアが注目を集め始めていますが、また新しいDAWソフトウェアが登場します。Springbeatsという新興デベロッパーが開発中の「Instinct」は、使い手が「音楽をつくる」ことに集中できるよう、余計な機能を可能な限り削ぎ落したシンプルなDAWソフトウェア。コンピューターやこの類のソフトウェアが苦手という人でも、録音 → 編集 → ミックスといった作業が簡単に進められるデザインに仕上げられています。
今回、Musikmesseに出展されていたのはベータ以前のアルファ・バージョンとのことでしたが、そのユーザー・インターフェースは、コンセプトどおり非常にシンプルかつユニークなデザインに仕上げられていました。基本的には流行のワン・ウィンドウ設計で、録音するための「Recording」、編集するための「Arrangement」といった画面を切り替えて使用します。
ウィンドウ左側にはファイル・ブラウザーが備わり、そこから「Arrangement」画面にオーディオ・ファイルやMIDIファイルをドラッグ＆ドロップすることが可能。もちろん、タイム・ストレッチ機能を内蔵しているので、オーディオ・ファイルの長さ／テンポを気にすることなく、思うがままにアレンジを進めていくことができます（ちなみにタイム・ストレッチ・アルゴリズムは、IRCAM製の高品位なものを採用しているそうです）。VST／AUプラグインにも対応しているので、好みのソフトウェア・インストゥルメントなどを使用することも可能です。
ここまで読んで、「結局はコレ、DAWの“LE”バージョンのようなソフトウェアで、この程度のことならフリーのソフトウェアでもできるんじゃないの？」と思った方も多いかもしれません。ぼくも最初、そういうソフトウェアなのかなと思ったのですが、実は「Instinct」ならではのユニークな機能がいくつか備わっているのです。
まず紹介したいのが、「Graph」画面。この画面では、オーディオ・トラックの入出力やプラグインの入出力、そしてオーディオ・デバイスの入出力を自由自在にパッチすることができるのです。小さなブロックを線で繋ぐというMaxやReaktorのような感じですね。
開発者であるSpringbeatsのAdrien Anselmeさんによれば、「DAWソフトウェアを使っていて、個人的に最も不満だったのが、内部のルーティングの分かりにくさだったんだ。オーディオ・トラックのバス／AUX送りの流れや、ミックスの全体像を把握するのがとても面倒だった。そこで思いついたのがこの「Graph」画面で、これならばオーディオ・トラックの出力がどのような経路を辿ってオーディオ・デバイスに送られるか一目瞭然だ。どう、とても分かりやすいと思わない？ もちろん、こういう画面が嫌いな人がいることも理解している。だから「Instinct」は、この画面を開かなくても使用できる設計になっているよ」とのこと。個人的にはこういう画面大好きなので、非常に嬉しい機能です。大昔、初期のCubase Audioには、同じような画面が備わっていたのを思い出しました。
さらには、Bitwig StudioやOhm Studioなどにも搭載されているインターネット・コラボレーション機能の搭載も予定されています。今回見れたアルファ・バージョンには、まだ実装されていませんでしたが、友だちと簡単にファイルをやり取りできる機能が搭載される予定とのこと。また、ウィンドウから直接、Dropboxにファイルをアップできる機能は既に備わっていました。
それともうひとつユニークなのが、「Middleware」という画面。現時点では最低限の機能しか備わっていない「Instinct」ですが、この画面で“Lua”という言語を使ってスクリプトを記述することにより、必要な機能を自由に追加することができるのです！ これはなかなか凄い機能だと思いませんか？ 汎用スクリプト言語である“Lua”は、高速に動作するのが大きな特徴で、これを機に勉強してみるのも楽しいかもしれません。
一見、初心者向けのDAWソフトウェアのようで、実はかなり奥の深い「Instinct」。Mac／Windows／Linux対応のマルチ・プラットホームで、9月頃のリリースを予定しているとのこと。価格はなんと100ドル以下を予定しているとのことで、そんなに安価なのなら「とりあえず使ってみよう」という気になりますね。間もなくパブリック・ベータ・テストを開始するとのことなので、興味のある方はぜひSpringbeatsのWebサイトからサインアップしてください。このソフトウェアに関しては、今後もその動向を追っていこうと思っております。
Springbeats
ウィキペディア: Lua
