Musikmesse / Prolight + Sound 2012

Musikmesse: RME HDSPe MADI FX 〜 驚異のオーディオ・カードの開発ストーリー 〜

今回のMusikmesse 2012で発表されたRMEの新しいオーディオ・カード、HDSPe MADI FX。既にご存じかと思いますが、1枚のオーディオ・カードで計390chもの入出力チャンネルを扱うことができる驚異的な新製品です。その開発コンセプトと新機能について、プロダクト・マネージャーのマックス・ホルトマン(Max Holtman)氏に話を訊いてみました。

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——— HDSPe MADI FXの開発のスタート・ポイントをおしえてください。

MH 2週間くらい前にふと思いついて、パパッと開発してみたんです。……というのは冗談で(笑)、その開発プロジェクトは数年前にスタートしました。アイディアとしては、「より強力なDSPを搭載した新しい世代のMADI入出力用オーディオ・カード」という感じでしょうか。現行のHDSPe MADIは非常に人気のあるオーディオ・カードですが、ファースト・リリースからかなりの年月が経っています。ご存じのとおり、我々が昨年リリースしたFireface UFXは、強力なDSPを搭載し、TotalMix FXというソフトウェアを使ってかなりの処理が行なえる設計になっています。1Uのオーディオ・インターフェースの中に、多チャンネル入力のデジタル・ミキサー、フレキシブルなルーター/パッチャー、高性能なエフェクトが丸ごと入っているようなものです。そのアイディアをHDSPe MADIに取り入れ、完成したのが新しいHDSPe MADI FXなのです。

——— Fireface UFXと同じDSPが搭載されているのですか?

MH いいえ。HDSPe MADI FXには、390chもの膨大なチャンネルを余裕を持って処理できるよう、より強力なDSPが搭載されています。たとえば、Fireface UFXはTotalMix FXによって1,800chのデジタル・ミキサーとして使用することができますが、HDSPe MADI FXはその倍以上の4,096chのデジタル・ミキサーとして使用することができるのです。同時に使用できるEQやコンプレッサーなどのエフェクト数もかなり増加しています。

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——— しかし390chもの膨大な入出力チャンネルを、普通の音楽制作用システムで使いこなすのは難しい気がします……。RMEが想定しているターゲットは、映画のダビング・ステージなど、ハイエンドな現場なのでしょうか?

MH 390ch入出力の余裕あるキャパシティは、音楽制作用システムにも役立ちますよ! HDSPe MADI FXは、決してハイエンド・プロだけに向けた製品ではありません。TotalMix FXを使えば、390chの入出力を自由自在にルーティングすることができるので、スタジオ内にあるすべての機材を接続しておけばいいのです。ステレオ入出力のアウトボードを10台接続すれば、それだけで40chの入出力を消費してしまうわけですし(2ch×10入力+2ch×10出力)、大規模なレコーディング・スタジオならば390chの入出力を使い切ってしまうのではないでしょうか。HDSPe MADI FXにスタジオ内のすべての機材を接続することで、複雑なルーティングも簡単に実行できるようになります。

それとHDSPe MADI FXには、1系統のMADIの入出力を、残りの2系統のMADIの入出力にそのまま複製できるモードも備わっています。つまり3系統のMADI出力からは、まったく同じ64chの信号が出力されるというわけですね。このモードを使えば、システムに最高の冗長性を持たせることができます。2系統のMADI入出力をバックアップとして使えるわけですから、万が一1系統のMADI回線にトラブルが生じた場合でも、そのまま作業を進めることができます。このモードは、大規模なプロフェッショナル・スタジオやライブ・レコーディング用システムにおいて有効ですね。

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——— 390chもの膨大な入出力チャンネルを扱う上で、PCI Expressバスはボトル・ネックにならなかったのでしょうか?

MH まったくボトル・ネックになりません。PCI Expressバスは、みなさんが想像している以上に優れた規格で、48kHzの信号ならば数千チャンネル扱えるキャパシティを持っています。

それとHDSPe MADI FXは、“Hammerfall Pro Audio Core”という新しいオーディオ・コアをベースにした製品です。この革新的なオーディオ・コアによって、多チャンネルの信号をシステム負荷を抑えながら扱うことが可能になっており、また最新のコンピューターに搭載すれば、最小32サンプルという驚異的な低レーテンシーで使用することができるのです。

さらにHDSPe MADI FXは、使用していないチャンネルは自動的に非アクティブになるインテリジェントな設計になっています。搭載しているDSPは非常に強力ですが、処理能力や帯域幅を無駄に浪費しない賢い設計になっているんですよ。

——— 付属のTotalMix FXも進化しているのでしょうか?

MH 4,096chというチャンネル数の増加以外にも、細かい新機能がいくつか追加されています。その中でも私が特に気に入っているのが、スクリーン・セットの保存機能ですね。新しいTotalMix FXでは、最大6種類のスクリーン・セットを保存し、瞬時に呼び出すことができます。(下のビデオをご覧ください!)

膨大なチャンネルを扱えるTotalMix FXですが、必要なチャンネルだけを瞬時に表示させることができるのです。これらの新機能は、Fireface UFXなどのTotalMix FXでも利用できるようになる予定ですよ。

——— リリース時期と価格についておしえてください。

MH リリースはもう少し先で、現時点では9月頃を予定しています。我々の使命として、安定したドライバを一緒に提供しなければなりませんからね。満足のいくレベルまで仕上げるには、もう少し時間がかかるのです。価格は現行のHDSPe MADIとほとんど変わらず、若干高い程度でしょうか。HDSPe MADI FXリリース後もHDSP MADIの販売は続けますが、ほとんど変わらない価格なので、多くの人はHDSPe MADI FXを選択するようになると思います。

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シンタックスジャパン: Musikmesse 2012 HDSPe MADI FX

http://www.synthax.jp/messe2012-hdspe-madi-fx.html

ICON: Musikmesse: RME、1枚で計390chもの入出力が可能な新しいオーディオ・カード「HDSPe MADI FX」を発表

https://icon.jp/archives/1586