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東京・渋谷のRock oN Comapnyで、杉山勇司氏を講師に迎えた全6回のミックスダウン・セミナーが開講! 〜 杉山勇司氏インタビュー

これまで何度か開催され、好評を博しているエンジニア/プロデューサー:杉山勇司氏のミックスダウン・セミナーが、今月25日から全6回に渡って開催されます。

MIM Educationが主催する『音楽をつくるために必要な基本姿勢とその実践、杉山勇司MIXセミナー』は、エンジニア/プロデューサー:杉山勇司氏を講師に迎えたミックスダウン・セミナーで、音の聴き方からエフェクトの役割/効果、さらには電気知識に至るまで、ミックスに必要な知識やテクニックを杉山氏が丁寧に解説。初回/最終回では受講者のミックスの比較チェックを行い、習得度を確認する機会も設けるとのことです。このセミナーの狙いについて、講師である杉山勇司氏に話を伺いました。

Yuji Sugiyama Mix Seminar

何事も基礎が重要で、それが自分が理想とするサウンドへの近道

——— 約1年ぶりに開催される『音楽をつくるために必要な基本姿勢とその実践、杉山勇司MIXセミナー』ですが、内容はこれまでと同じですか?

杉山 ほぼ一緒ですけど、今回は1回増やして全6回にしました。これまでは第1回目が『音の聴き方』という回だったんですが、その前に『状況把握/目標設定』という回を追加したんです。ぼくのセミナーは、最後にレコーディング・スタジオを借りて受講者の音源をチェックするんですけど、セミナーをスタートする前に皆さんがどのような問題を抱えているのか、一緒に把握しておいた方がいいんじゃないかと。改善点をしっかり把握し、目標を設定した上でセミナーを受講してもらい、最後にその問題をどこまで改善することができたのか、一緒にチェックできたらと考えたんです。

——— なるほど。杉山さんに音源をレビューしてもらうことで、自分のミックスの何が問題なのか、改善点が明確になりそうですね。

杉山 そうですね。前回大阪でセミナーをやったときに、皆さん一体何に興味を持って受講したのかリサーチしたんですけど、やはり最後の『ミキシング・クリニック』に一番興味があるみたいなんですよ。それだったらセミナーに入る前に、改善点を一緒に把握しておいた方がいいんじゃないかと思ったんです。

——— 杉山さんはPro Toolsの使い手としても知られていますが、セミナーの方はと言うと、ソフトウェアやプラグインの使いこなしをレクチャーする内容ではないですよね。

杉山 もちろんそういう内容にすることもできるんですけど、でもソフトウェアやプラグインはどんどんバージョンが上がって中身が変わっていってしまいますし、それよりも基礎をしっかり理解してもらった方がいいんじゃないかと。これからミックスで躓いたときも、基礎がしっかりしていれば、そこに立ち返ることができる。やっぱり基礎は重要ですよ。

——— だからこそセミナーの最初のテーマが『音の聴き方』なんですね。

杉山 そうです。音を聴くと言っても、いろいろな聴き方があるわけじゃないですか。スピーカー、イヤホン、パソコン内蔵のスピーカー。それらすべてに特化させてミックスをするなんてのは不可能です。しかし『音の聴き方』がしっかりしていれば、自分の音楽がどう聴こえればいいかということを理解していれば、どんな装置からでも同じ音が聴こえるはずなんです。

具体的に言うと、『音の聴き方』の回では“音の焦点”の話をします。ぼくの師匠で、キングレコードのチーフ・エンジニアを定年まで務められた高浪初郎さんという方がいるんですが、大昔高浪さんに“オフマイクでオンで録れ”と教わったんですよね。最初そう言われたときは何となくしか理解できなかったんですけど、しばらくしてマイクのセッティングをしていたときに、音がくっきり聴こえる距離があることに気づいたんです。カメラのフォーカスでもピントが合う瞬間というのがあるでしょう。それと同じで、なるほど、高浪さんが言っていた“オフマイクでオンで録れ”というのはこのことなんだと。カメラと違って音の焦点は1箇所ではないんですけど、最初の回ではまずこのことをみんなに理解してもらいます。誰しも音の聴こえ方の変化については分かっているんですけど、ぼんやりとしか理解していない。みんな能力は持っているはずなのに。前回のセミナーでは、受講した人は全員『音の聴き方』を身につけてくれました。本当に『音の聴き方』は重要で、ぼくのセミナーはこれで終わりと言っても過言ではありません(笑)。次の回からは、その応用編というか。

——— 杉山さんは専門学校の講師も長年やられていますが、DAWでミックスを始めた若い人が共通して抱えている問題点とかってありますか?

杉山 みんな熱心ですし、ほとんどないですよ。みなさん基本的なことはできていますし。若い人に必要なのは、自分のミックスのどこがダメなのか気づくことができる能力くらいだと思います。

——— それがプロとの違いであると。

杉山 いや、違いなんかないですよ。いつ入れ替わってもおかしくない。それを職業にできるかどうかというのも、基本的には運ですから(笑)。でも、運だけの人は結局長く続いていかないんですよね。誰しもチャンスがあればプロになれると思いますけど、続けていくには実力が必要になる。

——— こういうセミナーを続けているというのは、若い人にノウハウやテクニックを伝授したいという想いからですか?

杉山 ノウハウやテクニックの伝授に関しては、本を出したのでそれでいいかなと思っているんですけど(笑)。それに先輩エンジニアから教わることも実際にはそんなに多くないんですよ。ぼくらが若い頃は“教わるんじゃなく盗め”と言われましたからね。でも、昔を振り返ると、“あれを訊いておけばよかったな”というのがあったりするんです。

——— 今週開催される『Inter BEE』では3日間、スピーカー・セッティングに関するセミナーを行うそうですね。

杉山 最近は自宅の部屋で作業する人が増えていますが、そんな劣悪な環境でもスピーカーの置き方一つで音は劇的に変わるんだよという話をしようと思っています。クオリティ・アップのためのスピーカーの設置法ですね。コンピューターのディスプレイと並行にスピーカーを置いて、“なかなか音が決まらないんですよ”とか言う人がいますけど、そんなの当たり前だろうと(笑)。居住性よりも良い音を優先させようぜという話をするつもりです(笑)。

——— 最後に杉山さんのセミナーに興味を持っている人にメッセージをお願いいたします。

杉山 最近はコンプレッサーのプラグインでもたくさん種類があるので、選ぶのが難しくなっていると思うんです。“1176のモデリングだから”とか、“画面がカッコいいから”とか、そんな理由でプラグインをチョイスしてしまっている人もいるんじゃないでしょうか。しかしエフェクトの原理をしっかり理解していれば、プラグインの開発者の意図を汲むことができて、使いこなすことができるようになるんですよ。そうすると、自ずとプラグインのチョイスも早くなる。何事も基礎が重要で、それが自分が理想とするサウンドへの近道なんです。基礎をしっかり学びたい方は、ぜひぼくのセミナーの門を叩いてください。

Yuji Sugiyama Mix Seminar