PRODUCT REVIEW

Product Review #2:Shure MOTIV MV88 〜 イトケンが試す、人気のiPhone/iPad用モバイル・マイクロホンの実力

世界中で大ヒットを記録しているShureのiOSデバイス用マイクロホン「MV88」。堅牢なメタル製筐体にカーディオイドと双指向性コンデンサーの2種類のカプセルを搭載、iPhoneやiPadのLightning端子に装着するだけで高品位なステレオ・レコーディングが行える優れもの製品です。流行のM/S(Mid-Side)レコーディングにも対応し、ウインド・ノイズ・リダクション/EQ/ダイナミクスといった各種DSP処理も内部で行うことが可能。ボーカルや楽器、バンドの録音からフィールド・レコーディング、さらにはサンプリング素材の収録に至るまで、あらゆる用途に対応する万能なモバイル・マイクロホンです(さらに詳しいことを知りたい方は、こちらの開発者インタビュー記事をご一読ください!)。

今回ICONでは「MV88」の実力を探るべく、シュア・ジャパンの協力のもと、プロ・ミュージシャンの方に試していただくことにしました。お願いしたのは、相対性理論やd.v.dのドラマーとして活躍する傍ら、NHKの子ども向け番組などの劇伴制作も数多く手がけているイトケンさん。トイ楽器の愛好家としても知られるイトケンさんに、その使用感について伺いました。

Shure MV88 - Itoken

MV88で録ると天井の音もしっかり入る。この立体感をサンプラーで鳴らしたらおもしろいんじゃないかと思う

——— イトケンさんは、オーディオ出力が付いていないトイ楽器を多用されますが、そういったものをサンプリングするときはマイクを立てて?

イトケン そうですね。マイクを立てて、ここ(註:イトケンさんのプライベート・スタジオ)で録る場合はAvid Pro Toolsに直接レコーディングしてしまいます。トイ楽器を録るのはおもしろいですよね。録音する度にいろいろ実験していますよ。マイク自体を買うのも好きだったりするので。

——— トイ楽器を録るときのマイクの立て方は?

イトケン オンで録るのが基本なんですけど、最近はオフ気味に立てることも多いですね。空気感も一緒に録ってしまうというか。オンで録った場合は、Audio Ease Speakerphoneとかを使って、後から好きな感じに加工したり。

——— モノで録ることの方が多いですか?

イトケン モノで録ることもありますけど、基本ステレオですね。ステレオで録っておけば、後でいろいろできますから。もちろんモノで録ったものをステレオにすることもできるんですけど、どうしても人工的な音になってしまうんですよね。録りのレベルは、それほど大きくなくて、しっかりマージンを残します。トイ楽器と言ってもダイナミック・レンジは結構広いので、すぐにピークに達してしまうんですよ。だからレベルはできるだけ余裕をもって。

Shure MV88 - Itoken

イトケンさんのプライベート・スタジオ。DAWは、Avid Pro Tools

——— 今回イトケンさんには、ShureのiOSデバイス用マイク「MV88」を数週間試していただいたわけですが、音質や使用感はいかがでしたか?

イトケン バンドのリハーサルに持って行ったりして、いろいろ使ってみたんですけど、凄くきれいに録れましたね。ドラム無しで歌とギターだけでも録ってみたんですが、これは普通のレコーディング用途にも全然使えるマイクだなと。Shure製品はいろいろ持っていて、マイクはSM57を2本とSM58を1本、イヤモニはSE215とSE535を愛用しているんですが、さすがはShureのマイクだなと思いました。音質的にはフラットで、SM57っぽさというのは感じませんでしたけど(笑)。

——— 音質はフラットでしたか?

イトケン そうですね。クセが無くて、とても扱いやすい音質だなと思いました。音で一番感じたのは、立体感があるサウンドだなということ。このマイクで録ると、天井の音もしっかり入るんですよ。普通のステレオ・マイクではここまでの立体感は出ないと思います。この立体感をサンプラーで鳴らしたらおもしろいんじゃないかと思いましたね。

Shure MV88 - Itoken

イトケンさんは今回、以前使用していたiPhone 5sで「MV88」を試されたとのこと

——— 「MV88」は専用アプリでステレオ幅を自由に変えられるのが特徴ですが、今回はどのような設定で?

イトケン 基本めいっぱい広げて録りました。24bit/48kHzで。

——— 操作性はいかがでしたか?

イトケン 問題なくすぐに使うことができました。iPhoneに装着して思ったのは、メタル製のボディが重量感があっていいなということ。やっぱりマイクって、ある程度の重さがないと良い音がしないんですよ。こういうiPhone用のマイクって、いろいろ出ていますけど、どれもプラスチック製じゃないですか。プラスチックだと軽くて持ち運びにはいいんですけど、そういう“コン”とした音になってしまうんですよね。「MV88」の低域がしっかりしているのは、この重量感も大きいのかなと感じました。

イトケンさんが「MV88」を使って録音したデモ・トラック

——— 試用されて、「MV88」はどんな用途に向いているマイクだと感じましたか?

イトケン 録り音がとてもしっかりしているので、楽器やバンドのレコーディング用にいいと思います。モバイル・マイクということで、フィールド・レコーディングとかそういう用途向けなのかなと思ったんですが、実際には普通のレコーディングで使いたくなる音質を持ったマイクでした。MSでレコーディングすることもできますしね。だから今度は普通に歌だけを録ってみようと思っているんですよ。コーラスなんかも「MV88」の広がり感や立体感が合うかもしれない。モバイル・マイクなので、歌いながら動く人も録ってみたいですね。あとは自分ではあまりやらないんですけど、環境音のレコーディング用途には超向いていますよね。電車の音を録ったり。それにしても本当に良くできたマイクだと思いますよ。iPhoneやiPadでしか使えないのがもったいないと感じてしまうくらい(笑)。

——— お忙しいところありがとうございました!

Shure MV88 - Itoken