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製品開発ストーリー #27:ローランド TR-09/TB-03/VP-03 〜 30年以上の年月を経て、名機TR-909/TB-303/VP-330が遂に蘇生!

ローランドは先週末、オンライン・イベント『THE FUTURE REDIFINED.』を開催し、実に30以上もの新製品をお披露目しました。いずれもかなり気合いの入った製品という印象で、各製品の特徴を把握するだけでも一苦労しそうです。

ICON的な製品と言えば、AIRAの新しいフラッグシップ・シンセサイザー「SYSTEM-8」、あのSeratoとの共同開発によるDJコントローラー「DJ-808」などが挙げられますが、中でも注目はやはり新しいRoland Boutiqueシリーズでしょう。ローランドの伝説の名機を、最先端のデジタル技術とコンパクト・サイズで再現したRoland Boutiqueシリーズは、昨年発売され大きな話題となりました。そして今回発表された第2弾製品のモチーフとなったのは、TR-909、TB-303、VP-330の3機種。いずれも説明不要の名機であり、世界中のアーティストに愛され続けている電子楽器史に残る製品です。

ローランドは今回、このレジェンダリーな3機種のサウンドを、独自の“ACB Technology”によって完璧に再現。「TR-09」、「TB-03」、「VP-03」として、見事に甦らせました。今回、サウンドと同じくらい注目なのが外観で、コンパクト・サイズながら実機のデザインが忠実に再現されています。きっとこの見た目だけでも物欲がそそられるという人も多いのではないでしょうか。

今回も数量限定生産で、今月23日に発売となるRoland Boutiqueシリーズ第2弾。その開発コンセプトと機能について、さっそくローランドの開発者に話を伺ってみることにしました。

Roland - Roland Boutique Series 2016

サウンドだけでなく、今回はルックスにも徹底的にこだわった

——— Roland Boutiqueシリーズは昨年発売され、大変な反響を呼びました。今回、その第2弾として3製品がラインナップされるわけですが、このプロジェクトはいつ頃スタートしたのでしょうか。第1弾製品の大反響を受けて企画されたものなのか、あるいはその前から予定されていたものなのか、まずはそのあたりからおしえていただけますか。

Roland 昨年、第1弾製品を発表した際に非常に良い反応をいただいたので、発売を待たずに第2弾製品の構想が持ち上がったという感じですね。ですのでトータルの開発期間としては1年弱ということになります。

——— 名機のサウンドを、ローランド独自の技術“ACB(Analog Circuit Behavior) Technology”で再現するというコンセプトも第1弾製品と同じですか?

Roland はい、同じです。あとはスピーカー内蔵/電池駆動で、“場所を選ばずに楽しめる電子楽器”というのもRoland Boutiqueシリーズのコンセプトの1つで、それに関しても同じですね。

——— 第2弾製品を開発するにあたって、モチーフとする名機の選択肢はいくつかあったと思います。その中からTR-909、TB-303、VP-330という3機種をセレクトしたのは?

Roland 第1弾製品では、JUPITER-8、JX-3P、JUNO-106というシンセサイザーの名機3機種をモチーフとしたわけですが、今回はアンサンブルを楽しめるものを選ぼうと思ったんです。かつ第1弾の3製品と役割が被らないものということで、最終的にこのラインナップに落ち着きました。いずれもその製品でしか出せない特徴的なサウンドを持っていますし、また音楽の発展に貢献してきた名機だと思っています。すべてローランドにとって特別な製品ですね。

——— Roland Boutiqueシリーズには、オプションでキーボードが用意されていますし、もし第2弾製品があるのなら、またシンセサイザーなのかと思っていました。TR-909やTB-303がRoland Boutiqueシリーズで登場したことに、驚いた人もきっと多かったのではないかと思います。

Roland Roland Boutiqueシリーズは、鍵盤楽器にこだわっているわけではありません。むしろ音源モジュールとしての使用を想定していたので、キーボードは脱着可能なオプションとして提供したんです。

——— 「TR-09」と「TB-03」を「K-25m」に装着することもできるのですか?

Roland できます。特に鍵盤で弾くTB-303の音は新鮮だと思いますよ。しかしそれは特殊な使い方だと思いますので、今回新たに鍵盤無しのドック「DK-01」を用意しました。「DK-01」はシンプルなドックですが、「K-25m」同様、装着したモジュールの角度を3段階で可変できるようになっています。内蔵シーケンサーを使ったパフォーマンス用としても最適なオプションですね。「DK-01」は、Roland Boutiqueシリーズのすべての製品に対応していますが、「TR-09」と「TB-03」には本体色にマッチしたものが標準で付属します。

Roland - TR-09
Roland - TB-03

——— 今回の3製品を見て、まず驚いたのがそのルックスです。実機のデザインが忠実に再現されていて、これだけでも相当物欲が刺激されます。

Roland 昨年発売した3製品は、おかげさまで非常に高く評価していただいたのですが、一方で購入していただいたお客様からは、“もっと見た目を実機に近づけてほしい”という要望が寄せられたんです。そこで今回はロータリー・ノブやボタンなども実機のデザインを踏襲し、ルックスに関しても徹底的にこだわることにしたんです。

——— 「TR-09」と「TB-03」のロータリー・ノブも良い感じなのですが、個人的に嬉しかったのが「VP-03」のボタンです。TR-808やJUPITER-8など、当時のローランド製品で使われていた特徴的なデザインのボタンが、しっかり再現されていますね。

Roland “コレクションしたくなる製品”、“所有欲を掻き立てられる製品”というのも、Roland Boutiqueシリーズのコンセプトの1つなんです。ですから今回は、ロータリー・ノブやボタンなどのパーツも新たに製作し、ルックスもできるだけ忠実に再現することにしました。実機と比べると当然サイズは小さいんですが、トルクや指触りにこだわったので、快適に操作できるようになっています。START/STOPボタンやステップ・ボタンに関しては、ライブでも確実に操作できる大きさとクリック感を確保しました。

——— 筐体の材質は?

Roland 第1弾製品と同様、金属製のパーツと樹脂製のパーツを組み合わせています。

——— Roland Boutiqueシリーズの礎とも言える“ACB Technology”について、あらためておしえてください。

Roland アナログ・パーツは、それぞれが固有の特性を持っているため、当然その集合体と言えるアナログの電子楽器のサウンドはユニークなものになります。“ACB Technology”は、アナログ・パーツの特性を一つ一つ丁寧に解析して再現するという技術で、それらを元の回路と同じように組み合わせることで、実機のサウンドを忠実に再現しています。アナログ回路ならではの個性的なサウンドと振る舞いを忠実に再現する技術、それが“ACB Technology”なのです。

例えばTR-909には、スネアとクラップを同時に発音させると、音がフェージングしてしまうという特徴があります。まさにアナログ回路ならではの特徴なのですが、“ACB Technology”によって実機のパーツと回路を再現した結果、そんな特徴もしっかり再現されています。また、音色によっては同じ強さで発音させても、毎回違った響きをするものがあるのですが、“ACB Technology”ではそんな違いまで再現されます。

——— “ACB Technology”で解析を行うにあたって、当然実機も必要になると思うのですが、どのようにして調達したのでしょうか?

Roland ローランドには当時の製品が所蔵してありますし、また所有している社員もいます。今回モチーフとした3製品はかなり古く、経年劣化や個体差がありますので、複数台用意してベストな個体を厳選しました。良い個体があると聞けば、社外へ出向いて触らせていただくこともありましたね。

Roland - Roland Boutique Series 2016

TR-09とTB-03は、シーケンサーを走らせながらライト・モードとプレイ・モードを行き来できる

——— それでは各製品について話を伺いたいと思います。まず「TR-09」ですが、TR-909のあの独特なキックの鳴りや、スネアのスナッピーなどを再現するのは苦労したのではないでしょうか?

Roland そうですね。キックとスネアはもちろんですが、タムの癖のある鳴りや、クラップの“まとまり感”を出すために相当な労力をかけました。もちろんタムは、LOW、MID、HIと個別に作り込んでいますし、ピッチを変えても毎回ぴったり同じ音色では鳴りません。全音色、かなりこだわって再現したので、そのサウンドをぜひ楽しんでいただければと思います。

——— TR-909の金物はPCM音源ですが、実機のサンプルがそのまま使用されているのですか?

Roland はい。サンプル・データは実機のものを使用しています。ただ、そのサンプル・データをそのままDAコンバーターに送ったのではTR-909のサウンドになりませんので、出力されるまでの回路も“ACB Technology”によって再現しています。その結果、単にサンプリングしただけの音源とは違う、当時のPCMサウンドが楽しめるようになっています。

——— 実機にはない「TR-09」ならではの機能というと?

Roland いろいろあるのですが、一番大きいのはリズムを走らせながらライト・モードとプレイ・モードを行き来できる点ですね。TR-8で初めて実現したこの仕様は、今やハードウェアのリズム・マシンには不可欠なものだと思っています。あとは小数点第2位まで細かくテンポを設定することができますし、1パターンあたりのステップ数は実機の倍となる32となっています。実機では7段階の決め打ちだったシャッフルも細かく設定できるようになっていますし、シーケンサーは実機を再現した上でかなり強化されていますね。

Roland - TR-09
Roland - TR-09

——— 次に「TB-03」についてです。「TR-09」以上に、納得のいくサウンドを得るのは大変だったのではないでしょうか?

Roland そうですね。国内外の様々なTB-303をチェックして、最終調整を行いました。実機と変わらないサウンドを得るには最終的な微調整が非常に重要になってくるので、そこはかなり試行錯誤を繰り返しましたね。

——— エフェクトが搭載されているようですね。

Roland TB-303サウンドとマッチするエフェクトを2系統搭載しています。OVERDRIVEは歪み系エフェクトを3種類、DELAYはテープ・エコーやリバーブなど3種類のエフェクトを切り替えられるようになっています。外部エフェクターを使用することなく、「TB-03」単体で様々なサウンドを作り出すことができます。

——— TB-303の大きな特徴と言えるのが、独特な操作方法のシーケンサーです。決して使いやすいとは言えないシーケンサーですが、それもそのまま再現されているのですか?

Roland シーケンサーに関しても“ACB Technology”によって完璧に再現しているので、実機と同じように入力することができます。ただ、実機を触ったことがある人なら分かると思いますが、非常に難解というか慣れが必要な入力方法なんですよ。なので「TB-03」では、実機の入力方法とは別に、新しいステップ・レコーディング・モードも搭載しました。ステップ・レコーディング・モードでは、直感的にパターンを入力することができ、シーケンサーを走らせながらリアルタイムに音程を入力することも可能になっています。また「TR-09」同様、ライト・モードとプレイ・モードを行き来することもでき、ライブ・パフォーマンスでも使いやすいシーケンサーに仕上がっています。

——— 4桁のディスプレイにはどのような情報が表示されるのですか?

Roland テンポなど様々な情報が表示されます。ユーザーにとって最もありがたいのは、シーケンサーへの入力時に現在のステップが表示される点でしょうか。入力時に現在位置が分からなくなってしまうのが、TB-303のシーケンサーの難点でしたからね。また、ファンクション・ボタンを押すことで、いろいろなメニューを表示することもできます。

Roland - TB-03
Roland - TB-03

——— 最後に「VP-03」について伺います。実機とはまるでサイズが違いますが、パネルの操作子などはかなり忠実に再現されている印象です。

Roland “ACB Technology”によってサウンドを完全に再現しているだけでなく、実機の操作子もそべて搭載しています。途中、“この操作子は省いてしまってもいいんじゃないか”という意見もあったのですが、すべて搭載することに最後までこだわりました。その上で、ステップ・シーケンサーやコード・メモリーといった実機にはない機能も盛り込んでいます。もちろん、MIDI対応というのも「VP-03」ならではのフィーチャーですね。実機はMIDI規格誕生前の製品でしたので。

——— “ACB Technology”がいくら優れた技術と言っても、単なる音源ではないボコーダーを再現するのは大変だったのではないですか?

Roland そうですね。しかしVP-330の大きな特徴であるENSEMBLEボタンの広がり感をはじめ、HUMAN VOICEとSTRINGSの両セクションのサウンドも完璧に再現できていると自負しています。余談ですが、試作機をチェックする際はYMOの楽曲を演奏したりしましたね。VP-330ならばYMOの楽曲がちゃんと演奏できないとダメだろうということで。最後は松武秀樹さんに試作機を見ていただき、お墨付きをいただきました。ですので、そのサウンドは間違いないと思います。

——— ステップ・シーケンサーには、コードも記録できるのでしょうか。

Roland はい。最大6音のコードを入力することができ、またステップごとに短い音声素材も記録できるようになっています。従ってマイクに声を入力していなくても、ボコーダー・サウンドを鳴らすことができますし、声以外の素材をボコーディングするのもおもしろいんじゃないかと思います。

——— コード・メモリー機能についておしえてください。

Roland あらかじめコードを記録しておくことで、指1本で和音を演奏できる機能です。16種類のコードがプリセットとして用意されています。

Roland - VP-03
Roland - VP-03

TR-09はUSB経由でのパラ・アウトに対応、VP-03はUSBオーディオをモジュレーター/キャリアとして使用可能

——— 「TR-09」は、USB経由でのパラ・アウトに対応しているのでしょうか?

Roland 対応しています。最初のRoland Boutiqueシリーズ同様、3機種ともUSB端子を装備しているので、コンピューターとオーディオ/MIDIデータを送受信することができ、その場合「TR-09」はパラ・アウトにも対応します。USBバス・パワー駆動もサポートしており、AIRA LINKにも対応しているので、“MX-1”に接続した機器とテンポ同期したパフォーマンスにも対応します。あと便利なのが「TR-09」と「TB-03」に備わっているMIX IN端子。これによって出力を簡単にミックスできるようになっています。

——— 「VP-03」をコンピューターと接続した場合、USB経由で受け取ったオーディオ・データをボコーダーのモジュレーターやキャリアとして使用することもできるのですか?

Roland できます。「TR-09」や「TB-03」と同じように普通にオーディオ/MIDIデータの送受信もできますが、「VP-03」はボコーダーのモジュレーターやキャリアとしてもオーディオ・データを使用することが可能です。つまり、マイク入力の音だけでなく、DAWのオーディオ・トラックの出力もボコーダーの音素材として使用できるということです。

——— 3機種ともパラメーターの設定範囲は実機と同じですか?

Roland 基本的には同じです。ただ、設定範囲を完全に同一にすることよりも、実際の操作感を踏襲することに重きを置きました。その結果、パラメーターによっては少し設定範囲が広くなっているものもあります。その辺りはぜひ試していただければと思います。

Roland - TR-09
Roland - TB-03 width=

——— 今回、開発で苦労した点というと?

Roland 実機の外観をそのままRoland Boutiqueシリーズの筐体サイズに収めるのは苦労しましたね。特に「TR-09」はロータリー・ノブやボタンの数が多いので、それを上手く配置するのに苦労しました。「VP-03」に関しては、状態の良いVP-330を手に入れるのが大変でした。途中で壊れてしまい、修理したこともありましたね。

——— 新しいRoland Boutiqueシリーズ、ここに注目してほしいというのがあればおしえてください。

Roland そうですね。サウンドは“ACB Technology”によって極上の仕上がりになったと自負していますし、コンパクト・サイズながら操作性やフィジカルな感覚がそのまま維持されている点にぜひ注目していただきたいですね。今回の3製品は前回以上に、実機がそのままコンパクトになったという印象を持ってもらえると思います。サウンドも外観も、非常に満足のいく仕上がりの製品になりました。

——— 昨年の第1弾製品は限定生産とのことでしたが、今回の3機種に関しては?

Roland 今回も限定生産になります。ですので欲しい方はぜひ予約していただければと思います。

——— Roland Boutiqueシリーズは、今後も続いていくのでしょうか?

Roland 今回の3製品を発売した後、いろいろなフィードバックがあると思いますので、お客様からの意見に耳を傾けながら次の展開を考えていきたいと思っています。

Roland - Roland Boutique Series 2016