関連リンク:
FEATURE
製品開発ストーリー #17:Apogee Symphony I/O Mk II 〜 ボブ・クリアマウンテンが語る、新しいフラッグシップ・インターフェースのインプレッション
ApogeeからNAMM Showに合わせて、新製品「Symphony I/O Mk II」が発表されました。「Symphony I/O Mk II」は、Symphony I/Oの後継機となるApogeeの新しいフラッグシップ・インターフェースで、ADコンバーターを中心にコンポーネントと回路を見直したという新モジュールの装備により、定評あるサウンドがさらに向上。また、フロント・パネルには大型のタッチ・スクリーンが備わり、直感的で使いやすいユーザー・インターフェースとなっています。I/Oモジュールは旧Symphony I/Oと互換性が保たれているので、ユーザーは本体だけを入れ替えてアップグレードすることも可能。Thunderboltポートを標準装備したモデル、Avid Pro Tools|HDX/HD Nativeに直接繋ぐことができるDigiLinkポートを装備したモデル、そしてWaves SoundGridポートを備えたネットワーク対応モデルの3製品がラインナップされます。名門Apogeeが満を持して送り出す新しいフラッグシップ・インターフェース、「Symphony I/O Mk II」。同社のアドバイザーであり、誰よりも早く「Symphony I/O Mk II」を試したプロ・エンジニアであるボブ・クリアマウンテン(Bob Clearmountain)氏に、そのインプレッションを伺ってみました。
ヴィンテージ機器との接続が考慮された新しい回路は、アナログ機器を多用する私には嬉しい仕様
——— Apogeeは今日、新しいフラッグシップ・オーディオ・インターフェース「Symphony I/O Mk II」を発表されたわけですが、ボブさんは製品開発にどの程度関わっているのでしょうか?
BC 私は単なるアドバイザーであって、製品開発に深く関わることはありません。オフィスに行くのも週に1回程度ですしね(笑)。スタッフから開発途中の製品を見せてもらい、エンジニアの視点で“ここはこうの方がいいんじゃないか”と意見を言う程度です。音響機器の使い方というのは人それぞれなわけですが、エンジニアが実際に現場でどのような使い方をしているのか把握し、理解するのは、メーカーとしては非常に重要だと思っています。私だってもう40年以上のキャリアがあるわけですから(笑)。そうでないと、技術者の視点で仕様や機能が決まってしまい、その結果現場のエンジニアからはあまり評価されない製品になってしまいますよ。
——— 「Symphony I/O Mk II」は、Symphony I/Oの音質や使い勝手をさらに向上させたオーディオ・インターフェースとのことですね。
BC クリスマスくらいに使いものになるプロト・タイプができあがったばかりですので、まだそれほど使い込んだわけではありませんが、そのサウンドは本当に素晴らしいですね。新しい2種類のI/Oモジュール(8×8 Mk IIモジュールと16×16 Mk IIモジュール)はADコンバーター回路が刷新されていて、これまで以上に透明感のあるサウンドになっています。DAコンバーター回路に関しては、旧モジュールをベースにブラッシュ・アップされていて、ヴィンテージ機器との接続を考慮した設計になっているそうです。これはアナログ機器を多用する私には嬉しい仕様ですね。開発チームによれば、現在手に入る最新のコンポーネントを使い、考えうる最高のデザインを施したオーディオ・インターフェースが「Symphony I/O Mk II」とのことです。
——— ボブさんにとって、Apogeeサウンドの魅力というと?
BC 私は20年以上、Apogeeのコンバーターだけを使って仕事をこなしています。Apogeeのコンバーターは、無色透明であるという皆の意見はそのとおりだと思いますが、最も気に入っているのはそのサウンドが音楽的であるという点です。一体サウンドのどのあたりに音楽性を感じるのか、言葉で説明するのは難しいんですけどね(笑)。それとこういう機材は、一つや二つ必ず弱点があったりするものなんですが、Apogeeのコンバーターは、音質的にも機能的にもそういう部分がない。仕事で使っていて、“ちょっと困ったな”と悩むことがないんです。それもApogeeのコンバーターの大きな魅力ですね。
——— 「Symphony I/O Mk II」には、ボブさんの意見は取り入れられているのでしょうか?
BC 私がリクエストしたのはアクセシビリティの部分くらいです。タッチ・スクリーンのユーザー・インターフェースは非常によくできているんですが、どうせだったらスワイプ操作にも対応した方がいいんじゃないかとか、メーターの視認性を良くしてほしいとかその程度ですね。
——— プロのエンジニアの中には、こういうシンプルなユーザー・インターフェースを直感的ではないと好まない人もいます。
BC 確かにパッと見ただけでは直感的ではないと感じるかもしれませんが、実際に触ってみればノブやスイッチがたくさん備わったパネルよりも直感的であることが分かると思います。やりたいと思ったことがすぐに実行できる。スピーカーのアイコンを押せばモニターを操作することができますし、必要であればコンピューターからすべてのパラメーターをコントロールすることができます。本当によくできていますよ。
現在大量のSymphony I/Oを使用しているが、できるだけ早くMk IIにリプレースしたい
——— ボブさんが現在、仕事をするときのシステムについておしえてください。
BC DAWはAvid Pro Tools|HDXシステムです。Apple Logic Proも作曲家にとっては良いDAWなんですが、私はミックス・エンジニアなのでPro Toolsを愛用しています。システムは2セット所有していて、1セットがアナログ64ch入力/80ch出力のシステム、もう1セットがアナログ16ch入出力のシステムです。オーディオ・インターフェースはすべてSymphony I/Oですが、できるだけ早く「Symphony I/O Mk II」にリプレースしたいですね。
——— Pro Tools内での“In-The-Box”ミックスですか?
BC いいえ。相変わらずSSLでミックスしています。そのために64ch入力/80ch出力という大規模なPro Toolsシステムが必要になるんです。Audio Ease AltiverbをSSLのAUXで使ったりしますからね。もちろん、ラジオ・ショーのような仕事では“In-The-Box”で済ませてしまうこともありますよ。
——— コンソールは何を?
BC 20年以上使用しているSL 4000G+です。オートメーションもSL 4000G+で書いていますから、Pro Toolsは本当にテープ・マシンですね。SL 4000G+の後、SL 9000JやXL 9000Kも使用しましたけど、私的にはあまり良いサウンドには感じられませんでした。新しいDualityに関しては、私が使いたいと思う機能がなかったんです。
——— Altiverbの名前が挙がりましたが、プラグインはけっこう使用されるのですか?
BC いや、基本はアウトボードです。プラグインはコンソールの入出力やアウトボードを使い切ってしまったときに使用します。ピッチを補正するときは、もちろんプラグインを使いますけどね。
——— ピッチ補正時は何のプラグインを使っていますか?
BC Waves SoundShifterを使って耳で補正しています。Antares Auto-Tuneはあまり好きではないので使っていません。
——— Pro Toolsセッションの設定をおしえていただけますか。
BC 大抵24bit/96kHzですが、私はレコーディングをほとんどしないミックス・エンジニアですので、仕事によって違いますね。44.1kHzや192kHzのときもあります。192kHzはサウンド的には良いんですが、使えないプラグインが出てくるなどデメリットもあるので、現状では96kHzが一番良いのではないかと思っています。