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TDR、4基のEQとダイナミクスを統合した“パラレル・ダイナミック・イコライザー”、「TDR Nova」を無償配布中! 様々な処理に対応する超・高機能プロセッサー
市販製品に匹敵する(あるいはそれ以上の)クオリティのプラグインを無償で配布し、注目を集めるドイツのソフトウェア・デベロッパー、Tokyo Dawn Labs(TDR)。同社のEQプラグイン「TDR VOS Slick EQ」とダイナミクス・プラグイン「TDR Kotelnikov」は、今やフリー・プラグインの代表的存在と言っていいでしょう。そんなTokyo Dawn Labsが先月、フリー・プラグインの新作「TDR Nova」をリリースし、その高機能ぶりが大きな話題となっています(もちろん今回も無償で入手できます!)。
“パラレル・ダイナミック・イコライザー”を謳う「TDR Nova」は、フル機能のダイナミクス付きEQを4基装備したプラグイン。4基のEQ+ダイナミクスは並列に処理され、マスター・トラックでの最終的な音質補正から、ドラムやボーカルなど各楽器/バスの微妙なダイナミクス・コントロールに至るまで、様々なアプリケーションに対応します。
シグナル・フローは下の図のとおりで、「TDR Nova」に入力された音はハイパス・フィルター(HP)/ローパス・フィルター(LP)を経て、5系統のシグナルに分岐されます。そして分岐されたシグナルは各EQに入力され、個別にダイナミクス処理された後にマージされます。
EQ+ダイナミクスは4基のはずなのに、なぜ5系統のシグナルに分岐されるかと言えば、1系統は『W Band Filter』という独立したEQ+ダイナミクスに入力されるからです(シグナル・フロー図の一番下)。この『W Band Filter』は、4基のEQ+ダイナミクスで設定されたピーク周波数を維持したまま、シグナル全体のゲインを上げ下げできる包括的なプロセッサー。4基のEQ+ダイナミクスがフラットな状態では単なるゲイン・コントロールに過ぎませんが、フリケンシー・カーブが設定されている状態では、ピーク周波数以外の帯域を包括的に上げ下げできます。4基のEQ+ダイナミクスの設定を終えた後に、全体のカーブを微調整できるかなり便利な機能と言えるでしょう。もちろん、『W Band Filter』にも独立したダイナミクスが備わっているため、とても使いでがあります。
4基のEQ+ダイナミクスは、中央部の“I〜IV”ボタンで選択、下の“ON”ボタンでオン/オフを切り替えることもできます(“I〜IV”ボタンがどれも選ばれていない状態で、『W Band Filter』の設定となります)。4基のEQ+ダイナミクスのピーク周波数とゲインは、上部のディスプレイのポイントをドラッグすることでも設定できます。
また、ダイナミクスに関しては“THRESHOLD”ボタンによって、EQとは別にオン/オフを切り替えることができます。他のバンドとは独立した完全なダイナミクスとして機能させる場合は右側の“SPLIT”ボタンをオンにする必要があり、このボタンをオフにすると、選択バンドのダイナミクスは『W Band Filter』のディテクターとして機能するようになります。ディテクターとして使う場合、パラメーターは”THRESHOLD“のみが有効となり、“RATIO”、“ATTACK”、“RELEASE”は設定することができません(『W Band Filter』のダイナミクス側で設定します)。
「TDR Nova」に用意されているパラメーターは、以下のとおりです。
● HP FREQ:10Hz〜40.0kHz
● HP SLOPE:6、12、24、72dB/oct
● LP FREQ:10Hz〜40.0kHz
● HP SLOPE:6、12、24、72dB/oct
● EQ SHAPE:Low-shelf、Bell、High-shelf(『W Band Filter』は無し)
● EQ Q:0.10〜6.00 (『W Band Filter』は無し)
● EQ FREQ:10〜40.0kHz (『W Band Filter』は無し)
● EQ GAIN:-12.0〜12dB
● DYN THRESHOLD:-50.0〜0.0dB
● DYN RATIO:1.0:1〜10.0:1
● DYN ATTACK:0.10〜50ms
● DYN RELEASE:10ms〜2.0sec
● DRY MIX:0.0〜100.0%
● OUT GAIN:-20.0〜20.0dB
入力段に備わったハイパス・フィルター+ローパス・フィルター、並列処理を行う4基のEQ+ダイナミクス、シグナル全体を包括的に処理する『W Band Filter』、そして最終段での原音/エフェクト音のミックス。これらの処理により「TDR Nova」は、下記のようなプロセッシングを行うことが可能です。
● パラメトリック・イコライザー:4バンドすべてが10〜40.0kHzの帯域をカバーした高性能パラメトリック・イコライザーとして機能します。
● ダイナミック・イコライザー:「TDR Nova」はサイドチェーン入力を備えており、外部からの信号でEQのゲインをコントロールすることができます。音量に合わせてEQのかかり具合を変えられるダイナミック・イコライザーとして機能します(プリセットの“LF density”がダイナミック・イコライザーとしての使用例です)。
● マルチバンド・コンプレッサー:最大4バンドのマルチバンド・コンプレッサーとして機能します。
● ワイドバンド・コンプレッサー:4基のEQ+ダイナミクスをすべてオフにし、『W Band Filter』のみを使用することで、包括的なシングルバンド・コンプレッサーとして機能します。
● チャンネル・ストリップ:任意のEQと『W Band Filter』を併用することで、チャンネル・ストリップとして機能します。
このようにフリー・プラグインとは思えない音質と機能を誇る「TDR Nova」。リリース時は少し不具合があったようですが、短期間にバージョン1.07までアップデートを重ねており、現在は安定して使用できるようです。
「TDR Nova」は、Mac/Windows両対応で、VST/AU/AAX Nativeの各フォーマットをサポート(64bitにも対応)。Tokyo Dawn LabsのWebサイトから無償でダウンロードすることができます。なお、「TDR Nova」には最大6バンド仕様で、より詳細なダイナミクス・コントロールが可能な上位版「TDR Nova – Gentleman’s Edition」も用意されており、こちらの販売価格は40ユーロとなっています。
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