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製品開発ストーリー #5:ローランド JD-XA 〜 JUPITER-8の技術とノウハウを受け継いだアナログ/デジタル・ハイブリッド構造のクロスオーバー・シンセサイザー

今日から始まったヨーロッパ最大の楽器の展示会、Musikmesse 2015。そこでローランドは、新製品「JD-XA」を正式に発表しました。1月のNAMM Showでもお披露目された「JD-XA」は、ローランドが満を持して送り出す次世代のフラッグシップ・シンセサイザー。アナログとデジタル、両方の音源を搭載したハイブリッド構造が採用され、SuperNATURAL シンセ音源を使ってアナログ・オシレーターの変調が行えるなど、“クロスオーバー・シンセサイザー”ならではの複雑な音作りが可能になっています。

アナログ音源部は4ボイス仕様で、ボイスごとに完全に独立させた4台のモノフォニック・シンセサイザーとして使用できるほか、全回路をスタックさせて4音ポリフォニックのシンセサイザーとして使用することも可能。フィルターは3タイプ搭載し、かなり幅広い音作りが行える仕様になっています。

名機JUPITER-8の開発者にインタビューを行い、ローランドのアナログ・シンセサイザーの技術とノウハウをしっかり継承して開発されたという「JD-XA」。そのコンセプトと機能について、開発を手がけたローランド 第一開発部 製品リーダー 山里尚和氏と同社営業推進部 シンセグループ 石井宏平氏に話を伺いました。

レスポンスの良さと滑らかな音の変化にこだわって開発した本格的なアナログ・シンセサイザーを搭載

——— 1月のNAMM Showでお披露目され、今回のMusikmesseで正式に発表となった「JD-XA」ですが、まずは開発のスタート・ポイントからおしえてください。

山里 なぜ今、ローランドがアナログ・シンセサイザーの開発に取り組み始めたのかというところからお話ししなければならないと思うんですけど、一番のきっかけはお客様からの強い要望があったからです。何かしらアナログの要素を取り入れたシンセサイザーを開発してほしいというリクエストは前々から寄せられていて、中にはJUPITER-8をそのまま復刻してほしいなんていう要望もありました。お客様からそういったリクエストがあるからには、メーカーとしてそれに応えていかなければならない。我々としても、本格的なシンセサイザーはしばらく手がけていなかったので、名機と呼ばれるシンセサイザーを多く世に送り出してきたメーカーとして、そろそろ新世代の製品の開発に着手してもいい頃なのではないかと。そんな感じで企画が持ち上がったのが一昨年(2013年)の春から夏にかけてのことで、実際に開発に着手したのが2014年に入ってからです。そして昨年の春に最初のプロト・タイプが完成しました。

——— 顧客からのアナログ・シンセサイザーを開発してほしいという要望への回答の仕方は、きっと何通りものパターンがあったと思います。まったく新しいアナログ・シンセサイザーを開発するのか、Dave Smith Instruments Prophet-12のようにアナログ/デジタル・ハイブリッドのシンセサイザーを開発するのか、あるいはJUPITER-8などの往年の名機を復刻させるのか……。そのあたりは悩まれたのではないでしょうか。

山里 そうですね。確かにけっこう議論にはなったんですが、他社と同じことをやっても仕方ないということは最初から考えていました。また、過去にやったことを焼き直すのも、開発者としてはおもしろいことではありません。

アナログ・シンセサイザーは、確かにサウンドはすばらしいんですが、欠点も少なくないんですよ。ポリフォニーが多く確保できないですし、その振る舞いは決して安定していない。我々には長い年月をかけて培ってきたデジタル技術があるわけですから、アナログ回路とデジタル回路を融合すれば、きっと凄い製品が出来るのではないかと。アナログとデジタルの単純なレイヤーではなく、2種類の音源がクロスオーバーすることで、これまでに無かったサウンドを生み出すことができるシンセサイザー。アナログとデジタル、両方の音源を搭載して、その2つに関係を持たせようというのが「JD-XA」の最初のアイディアでした。

石井 今、何人かのプロの方にプロト・タイプを試していただいているのですが、みなさん“単純なアナログ・シンセサイザーではなく、デジタル音源と融合しているところがいい”とおっしゃってくださっています。バリバリやられているプロの方って、コンディションの良いアナログ・シンセサイザーと最新のデジタル・シンセサイザー、両方お持ちなわけじゃないですか。ですから、その2つが単にレイヤーしたのではない、アナログとデジタルが融合した新しいサウンドにみなさん興味を持ってくださいますね。

山里 「JD-XA」を見て、JD-Xiのポリフォニック・バージョンと捉えた方もいらっしゃると思うんですが、開発が始まったのは「JD-XA」の方が早いんです。JD-Xiは、「JD-XA」のアナログ回路とデジタル回路を融合させたクロスオーバー・シンセサイザーというコンセプトを一部継承しつつ、“遊べる”、“楽しめる”という要素を持たせた派生的な製品であり、中身は完全な別物ですね。別物と言うことは、それぞれ違った魅力があるとも言えます。

——— アナログ回路とデジタル回路を融合させた“クロスオーバー・シンセサイザー”というのが一番のコンセプトとして、それ以外に考えたことというと?

山里 やはり出音の良さですね。具体的には、レスポンスの良さと滑らかな音の変化ということにもの凄くこだわりました。エンベロープの反応、フィルターのキレ具合、LFOのスピードなどですね。

石井 おもしろいのはプロの方にプロト・タイプをお見せすると、何も説明していないのに、みなさん我々がこだわった部分に手を伸ばされるんですよ。エンベロープでどれだけ音をバッサリいけるのか、フィルターのキレ具合はどうかという部分を最初にチェックされる。わかっている人がアナログ・シンセサイザーに求める部分は同じなんだなと思いましたね。

山里 あとは現代の制作環境に加えたときに、しっかり使えるものにしたいなということは考えました。「JD-XA」は、アナログ・シンセサイザーが4パート、デジタル・シンセサイザーが4パート搭載されているんですが、それ以外にエクスターナル・パートも8パート用意されているんです。この8パートは“MIDI CTRL”ボタンを押すことで、MIDIコントローラーとして使うことができる。例えば、ソフトウェア側でアサインすれば、DAWに立ち上がっているソフトウェア・インストゥルメントのコントロールなども「JD-XA」の豊富なスライダーやツマミを使って行うことができるんです。また、CV/GATE出力が2系統備わっているので、エクスターナル・パートで外部のEurorackモジュールなどをコントロールすることもできます。現代の制作環境のセンター・ピースとしても機能するシンセサイザーということは強く意識しました。

——— ここ数年のローランドのシンセサイザーは、どちらかと言えば、クリエイターよりもプレーヤーをターゲットに開発されていたような気がします。

山里 おっしゃるとおりで、少々プレーヤー側に寄り過ぎていたのではないかというのは反省点としてありました。その反省を踏まえ、もっとクリエイター寄りの製品を作ろう、もう一度ワークステーションをしっかりやろうということで開発したのがFA-06/08だったんです。今回の「JD-XA」も、基本はハイ・レベルなシンセサイザーではあるんですが、ワークステーション的な側面もあるかと思います。高機能なパターン・シーケンサーも搭載されていますからね。

SuperNATURAL シンセ音源でアナログ・オシレーターを変調するなど、クロスオーバー・シンセサイザーならではの音作りが可能

——— それでは「JD-XA」の概要についておしえてください。

山里 「JD-XA」は、アナログ回路とデジタル回路の両方を搭載し、音源部はマルチ・ティンバー仕様になっています。アナログ音源の“ANALOG PART”が4パート、デジタル音源の“DIGITAL PART”が4パート、計8パートという構成ですね。“ANALOG PART”は、4基の完全に独立したモノフォニック・シンセサイザーとして使えるほか、“Poly Stack”ボタンを押すことで4音ポリのアナログ・シンセサイザーとして使うこともできます。一方、“DIGITAL PART”はJUPITER-80やINTEGRA-7でお馴染みのSuperNATURAL シンセ音源で、1パートあたり3パーシャルという構成になっています。“DIGITAL PART”は4パート全体で最大64音ポリという仕様で、“ANALOG PART”と合わせると、「JD-XA」は最大68音ポリのシンセサイザーということになります。

——— パネルを見ると、“ANALOG PART”はトラディショナルな構成のアナログ・シンセサイザーという感じですね。

山里 そうですね。2オシレーター、EG付きのフィルター、ADSRを設定できるアンプという構成で、ピッチ・エンベロープを設定することも可能になっています。内部は、ディスクリートのパーツを使用した完全なアナログ・シンセサイザーで、3タイプのフィルターを切り替えられるのが大きな特徴です。“LPF 1”は、JUPITER-8やJUNO-60に近いローランドがこれまで採用してきたのと同じタイプの4ポール・フィルターで、“LPF 2”はトランジスター・ラダー型のMoogタイプのフィルター。そして“LPF 3/HPF/BPF”は、ローパス/ハイパス/バンドパスのマルチモード・フィルターになっています。注目していただきたいのが3番目のフィルターで、特性的には従来のマルチモード・フィルターとあまり変わらないんですが、「JD-XA」のためにゼロから開発した回路を搭載していて、レゾナンスがもの凄く激しい変化をするデザインになっているんですよ。これまでに無かったタイプのフィルターであると自負しています。

——— フィルターは、パートごとに異なるタイプのものを選択できるんですか?

山里 もちろんです。ですから「JD-XA」の中には3タイプのフィルターが4パートで、合計12基のフィルター回路が入っているということになります。こんなにフィルター回路を積んでいるシンセサイザーというのはなかなか無いと思いますよ。

——— JD-Xi同様、エンベロープ・ジェネレーターなどはデジタル制御なのですか?

山里 そうです。デジタル信号をコントロール電圧に変換して、オーディオ信号を制御しています。これは言葉で説明すると簡単なようですが、実際にはアナログ・シンセサイザーとしての“振る舞い”に影響を与える非常に重要な部分で、オーディオ信号をレスポンス良く滑らかに制御するには、かなりのノウハウと技術が必要になります。一朝一夕ではできない部分ですね。

石井 勘違いしていただきたくないのは、“ANALOG PART”のオーディオ信号は首尾一貫アナログであり、それを制御している部分がデジタル回路であるということです。最終段にはデジタル・エフェクトが備わっているんですけど、やっぱりアナログのままで音を出力したいという方もいらっしゃると思うので、「JD-XA」には“ANALOG DRY OUT”端子を搭載しました。この端子からは、デジタル回路を通らないピュアなアナログ・サウンドが出力されます。

——— アナログ回路とデジタル回路を“クロスオーバー”させることもできるんですよね。

山里 はい。まず、ミキサー部では、オシレーター1とオシレーター2に加えてAUX信号を混ぜることができるのですが、このAUX信号にはホワイト・ノイズ、ピンク・ノイズ、外部入力に加えて、“DIGITAL PART”の出力もアサインできるようになっています。要するに、“DIGITAL PART”の出力にアナログ・フィルターなどをかけられるということですね。さらにおもしろいのが、オシレーター1のモジュレーション・ソースとしても“DIGITAL PART”の出力をアサインできる点です。これは実際に試していただいた方がいいと思うのですが、SuperNATURAL シンセ音源でアナログ・オシレーターをクロス・モジュレーションしたり、リング・モジュレーションするのはかなりおもしろいですね。もちろん、モジュレーション・ソースとしてオシレーター2を使用することもでき、「JD-XA」はモジュレーションのルーティングの自由度はかなり高くなっています。

——— “DIGITAL PART”のSuperNATURAL シンセ音源は、JUPITER-80やINTEGRA-7などに搭載されているものと同じですか?

山里 基本的には同等なんですが、「JD-XA」の場合はスライダーやツマミでSuperNATURAL シンセ音源をエディットできる点が大きな特徴ですね。意外かもしれませんが、SuperNATURAL シンセ音源をフィジカルにエディットできるというのは「JD-XA」が初となります。シンセサイザーとしての基本的なパラメーターはすべて表に出ているので、アナログ・シンセサイザー感覚でSuperNATURAL シンセ音源をエディットできます。

石井 JUPITER-80は、サウンド面は高く評価していただいたんですが、お客様からは“スライダーやツマミが少なすぎる”という意見が寄せられていたんです。ですから「JD-XA」では、そういった声に応えようと考えていました。

山里 「JD-XA」では、エディット可能なパラメーターが赤く点灯する仕様になっているんです。スライダーは溝の部分、ツマミは周囲が赤く点灯する。これによって、現在選択されている音源でエディット可能なパラメーターが瞬時に分かるようになっているんです。

——— 最終段のエフェクトについておしえてください。

山里 各パートに1基ずつ独立したマルチ・エフェクトが備わっています。ですから、マルチ・エフェクトは合計8基備わっている形ですね。その他に、2系統のトータル・エフェクトとリバーブ、ディレイが入っていて、EQも各パートの出力とマスターに備わっています。

——— シーケンサーに関しては?

山里 JD-Xiに搭載されているものと同等の16トラック・パターン・シーケンサーが備わっています。内部音源は計8パートですから、余った8トラックを使えば外部音源を鳴らせるということですね。CV/GATE出力でEurorackモジュールを鳴らしたり、USB経由でソフトウェア・インストゥルメントを鳴らすこともできます。

石井 USBでコンピューターを接続すれば、DAWのMIDIトラックに入力した情報を「JD-XA」を介してCV/GATEから出力することも可能になっています。つまりは「JD-XA」がUSB-MIDI-CV/GATEコンバーターとして機能するというわけですね。小型のアナログ・シンセを手に入れたけどあまり制作に活用できていない、という話もたくさん聞いていたので、そういった方にもお勧めしたいです。

——— USB端子では、MIDIデータとオーディオ信号を送受信できるんですか?

山里 そうですね。USB端子を活用すれば、16bit/44.1kHzのオーディオ信号を送受信できます。MIDIコントローラーとしては、トリガー・モードというのを備えていて、あらかじめ設定したコントロール・チェンジなどを、パターン・シーケンサー部分の16個のボタンを使って一発で出力することができるんですよ。これによってソフトウェア・インストゥルメントのプリセットも一発で切り替えることができますし、DAWのドラム・トラックを入力する際にも便利に使うことができます。

——— キーボードは49鍵仕様ですね。

山里 49鍵がいちばんバランスがいいかなと。ステージでの演奏に対応するキーボードとしては最低49鍵は必要かと思いますが、制作環境の中心で使うキーボードとして、あまり鍵盤数が多くても使いづらいですから。49鍵がちょうどいいですよね。キーボードはアフター・タッチ対応のものを採用しています。

石井 先日、あるプロの方に試奏していただいたんですが、そのプレイヤビリティを非常に高く評価していただきました。その方は、ポルタメント・タイムを設定できるツマミが鍵盤のすぐ脇に付いているのもいいとおっしゃっていましたね。

山里 ローランド・スタイルのベンダーに加えて、大型のホイールを2基搭載している点もポイントかと思います。ホイールには様々なパラメーターをアサインすることが可能です。

JUPITER-8を手がけた技術者から、アナログ・シンセサイザー開発の技術とノウハウを継承

——— “ANALOG PART”に関して、これだけのアナログ・シンセサイザーを開発するのは大変だったのではないですか?

山里 そうですね。実際に手がけてみると、回路設計もそうなんですが、最も難しいのはツマミやスライダーを操作したときの“振る舞い”なんです。例えば、エンベロープ・ジェネレーターのアタック・タイムとディケイ・タイムの変化の仕方ですよね。レスポンス良く滑らかに変化させるためには、相当のノウハウと技術が必要なんです。

実は「JD-XA」の開発プロジェクトがスタートしたとき、JUPITER-8の開発を手がけた技術者が社内に在籍していたので、いろいろと話を聞かせてもらったんですよ。回路の作り込みやチューニングの方法、もちろんJUPITER-8についても話を聞かせてもらって。詳しい話はできないんですが、それはとても参考になりましたね。

石井 その技術者は先日、定年で退社したんです。ですから、ローランドのアナログ・シンセサイザーの技術とノウハウの継承がギリギリ間に合ったんですよね。「JD-XA」のプロジェクトが少しでも遅れていれば、間に合わなかった。

山里 我々もその技術者が退社することは知っていたので、これがJUPITER-8の技術とノウハウを継承できるラスト・チャンスだと思っていました。今やらないとローランドのアナログ・シンセサイザーの技術とノウハウを継承することができない。絶対にやらなければダメだという想いは強くありました。

——— やはりローランドにとってJUPITER-8の存在は大きいのですか?

山里 大きいですね。非常に高く評価されていますし、ローランドが世に送り出した究極のアナログ・シンセサイザーであると思っています。

——— 「JD-XA」の開発で、最もこだわった部分というと?

山里 とにかく出音です。出音に直結する部分として、繰り返しになりますが、レスポンスの良さと滑らかな変化には相当こだわりました。どうやってレスポンスの良さと滑らかさを実現したかというのは企業秘密なんですが、一つだけ言うなら、「JD-XA」では高価なパーツを贅沢に使用しています。例えば、デジタルでオーディオ信号を制御するためにはDAコンバーターが必要になるわけですが、それも相当良いものを使っています。今はJUPITER-8の時代には無かったような高精度のパーツが手に入るので、アナログ・シンセサイザーでありながらデジタル・シンセサイザー並の制御を実現することができました。メモリーできるポリフォニック仕様のアナログ・シンセサイザーで、ここまで高精度で滑らかなものは無いと思いますので、ぜひ数十万円クラスの他社のアナログ・シンセサイザーと比較していただきたいですね。

石井 今回、パーツ選定では妥協しませんでした。やっぱり、良いものはある程度の値段がしてしまうのは仕方ないと思うんですよ。妥協して安価なものを作っても、結局満足いかない。「JD-XA」は、最近のローランドのシンセサイザーとしては高価な部類に入ると思うんですが、価格を落としてまでパーツ選定で妥協しようとは思いませんでした。

——— デジタル・シンセサイザー並の制御を実現したということで、アナログ・シンセサイザー特有の不安定さは無いですか?

山里 決して不安定ではないと思いますが、今回開発してみて、アナログ・シンセサイザーっておもしろいし難しいなと改めて思いましたね。「JD-XA」には“ANALOG PART”が4パート載っているわけですが、厳密にはパートごとに微妙に音が違うんですよ。もちろん、「JD-XA」全体でも個体差があると思います。でも、個体差がありすぎるのは楽器としてどうかと思うんですよ。それはJUPITER-8の技術者からも言われたことで。ですから、微妙な音の違いはあるんですが、それは可能な限り抑えました。

——— 筐体は、JD-Xiと同系統の未来的なデザインになってますね。

山里 アナログ・シンセサイザーということで、最初は木製のサイド・パネルはどうかというアイディアも出たんですが、そんな昔ながらの外観ですと、我々がやろうとしていることが伝わらないのではないかと。“クロスオーバー・シンセサイザー”という新しいコンセプトの製品なわけですから、これまでに無かったテイストの未来的なデザインを採用しました。

——— 「JD-XA」という型番に関しては?

山里 “JD”ということで、JD-800を思い出す方も多いと思うんですが、あの製品はデジタル音源にアナログ・シンセサイザーのような操作感を取り入れるというのが大きなコンセプトだったんですよ。言ってみればデジタルの長所とアナログの長所を融合した製品で、今回の「JD-XA」も同じようなコンセプトの製品ですから“JD”という型番が合うのではないかと。“XA”はクロスオーバー・アナログの略ですね。

——— お話をうかがうと、相当な自信作という印象を受けます。

石井 JD-Xiを見て、コアなシンセサイザー・ファンの方は“もうちょっと気合いを入れてアナログ・シンセサイザーに取り組んでほしい”と不満だったと思うんですよ。「JD-XA」では、そういうコアな方から突っ込まれるようなツメのあまい部分は無いと思いますので(笑)、ぜひ実機をチェックしていただきたいですね。

山里 みなさんがローランドに期待していた製品だと思いますので、とにかく出音を聴いていただければと思います。